試行錯誤を繰り返しても「まだ足りない」と感じたフリーランス支援

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フリノベプロジェクトメンバー岩崎・井下・高澤

2016年7月から「エンジニア不足時代の救世主たれ」を事業ビジョンに掲げているギークスのIT人材事業本部。政府の推し進める「働き方改革」の一環のなかで、経産省が「雇用関係によらない働き方に関する研究会」を設立するなど、フリーランスという働き方が注目を浴びています。この研究会では、働き方の現状の実態と課題について把握し、今後の方向性を検討するため、有識者による議論が行なわれています。

「フリーランスエンジニアは、自分のキャリアや働き方に責任をもって、仕事に取り組んでいる。そんな彼らを、もっと支援していきたい」——ギークスでは、15年の期間をかけ、さまざまな試みを続けてきました。

特に、会社員に比べ孤立しがちなフリーランス同士をつなげる取り組みを積極的に実施。2014年からは、東京と大阪で、フリーランスエンジニア同士の交流を図る大規模な懇親イベント「Tokyo Engineer Connection」、略して「TEC(テック)」を実施。半年ごとのペースでこれまで6回ほど開催しました。

並行して2015年からは、10~20人で行う小規模なイベント「ミニテク」を開催。“性別” “スキルタイプ別” “年代別” といったテーマの絞り込みを行い、参加者同士でより濃密な交流が図れる場づくりも試みました。

しかし、まだまだ何かが足りない気がする……。さまざまな仕掛けを投入しながらも、カスタマーサポート担当の井下と高澤には、日頃からフリーランスエンジニアと接するなかで、もやもやとした思いがありました。


井下「エンジニア同士がつながると、その場ですごく盛り上がる。名刺交換をされる光景もよく見受けられます。しかし、実際にその後の具体的な動きへとつながっているのだろうか、という心配もありました。もっとエンジニア同士が本質的につながれるコミュニティを作り出すことはできないだろうか……」

一方、マーケティングを担当し、フリーランスエンジニアにギークスの世界観を広める役割であった岩崎は、別の課題について考えを巡らせていました。



岩崎「新規登録のご応募をいただいたエンジニアさんと接するなかで、フリーランスとしてのキャリアを踏み出そうとする方が増えているのを体感していました。しかし、そこから実際のお仕事に至らない方もいます。『本当に自分はフリーランスになって大丈夫なのだろうか』という不安を拭いきれないケースは少なくないんです」

ギークスでは、フリーランスも会社員と同等な福利厚生を受けられるサービスを提供していました。しかし、一歩を踏み出せない人がいるということは、それが浸透していないということではないか……?


岩崎は、それがどのような形であれば、新たなキャリアを踏み出す一歩を後押しできるかを考えはじめます。

しかし彼女たちが「フリノベプロジェクト」として合流・始動するのは、もう少し先のこと。このときはまだ、それぞれの想いを胸に秘めたままでした。

目指すものは同じはずなのに、なぜかすれ違いを感じていた…

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フリノベコミュニティ構想の元となるエンジニア懇親会

2016年1月に、ギークスはIT事業本部の組織編成を変更。それまで別部門であったカスタマーサポートとマーケティング部門の間にも相互理解の機会が生まれ、お互いが感じていた課題が徐々に見えてくるようになりました。

そして2016年4月、岩崎は事業本部長の小幡に、「これまでの制度を束ねたフリーランス向けの新しいサービスを作りたい」と提案。返ってきた答えに岩崎は驚きます。

「カスタマーサポートチームからも相談を受けていたんだ。一緒にやってみるのはどうかな?」——実はその3ヶ月前に、メンバーの一人ひとりと面談していた小幡。井下と高澤が考えていたコミュニティの構想も吸い上げていたのです。

こうして2016年6月、岩崎、井下、高澤の3人は晴れてひとつのチームに合流。プロジェクトを推進することになり、さっそく初回の打ち合わせが実施されました。しかし、最初からすべてが順調に進んだわけではありませんでした。


岩崎「エンジニアの声を生かしたこのプロジェクトが実現すると、多くの方にフリーランスという魅力ある選択肢を提供できる!と、大喜びでやりたいことを次々に提案していきました。でも、いまいち腑に落ちていない表情のふたりがいて……」
高澤「本当に私たちが提案したものができるのかな、という漠然とした不安があったんです。私と井下が考えていたのは、エンジニアのコミュニティ化。一方、岩崎が話してくれたのは、フリーランス支援サービスのパッケージ化というアプローチ。『あれ、私たちのアイディアはどこに行ってしまったんだろう?』と不安に感じてしまっていたのかもしれません」

マーケティング担当としてサービス設計の観点から打ち合わせを進める岩崎に、エンジニアのためのコミュニティ構築を考える井下・高澤。それぞれの立場で考えるからこそ、初回の打ち合わせで3人は、お互いに上手く意思疎通を図ることができなかったのです。


“職種の壁“を取り払って、ひとつになったプロジェクトチーム

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リリースまで20回以上にわたった打ち合わせ

「エンジニアの声を聞き、彼らが活躍しやすい環境を作る」という共通の目的があっても、職種によって、手段や考え方は変わります。互いが大事にしてきた仕事への責任感が、スムーズな意思疎通を妨げてしまいました。


岩崎「この新制度を立ち上げるにあたって、エンジニアのコミュニティの重要性は十分に感じていました。だからこそ、言葉にして説明をすることをしなかったのですが、彼女たちにとっては、自分たちのアイディアがおざなりにされているように感じたかもしれません……」

しかしすぐに、二度目の打ち合わせがカスタマーサポート側から設定されます。井下と高澤は感じていた“違和感”を岩崎に伝え、彼女もそれに向き合いました。



井下「改めて自分たちの価値観やミッションを共有し、本当の意味で目的を分かちあうことができました。よかった、3人とも考えていることは同じなんだ。そのうえで自分たちはコミュニティを育てることを任されているのだと理解することができました。二度目の打ち合わせで、点と点だったものがひとつの線につながった感覚です」

その後、メンバー増強により5人に増えたプロジェクトはいよいよ本格稼働。


早速、これまでどんな「福利厚生」を提供していたか、そしてこれからどんなことを新たに提供したいか── 30個以上にのぼるプランの洗い出しを経て、それぞれのサービスの提供先へ具体的な提携の打診をはじめます。


高澤「今ある福利厚生制度では、解消できないフリーランスの不安があるなら、それを解決するためにはどんな企業と提携したらよいか……。一つひとつ洗い出して、一人ひとり担当を割り当てていきました」

全員にとっては、はじめてとなる「ゼロからのサービス立ち上げ」——。通常業務とは異なるこのプロジェクトに戸惑いつつも、だんだんと夢中になっていきます。はじめは違和感を覚えていた井下と高澤も、いつしかコミュニティ化だけでなく、「フリノベ」プロジェクトを成功させる〟という、全員でのひとつのゴールに向かい走りはじめていました。


15年の積み重ねが生んだ、「フリノベ」のスピリット

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ロゴの由来(自立した一人ひとりのフリーランスが緩やかにつながり輪を作っている)

2017年1月、彼女たちの想いは「フリノベ」というサービスとなってリリースされました。

名前の由来となったふたつのキーワードは、「フリーランス」と「イノベーション」。もともとはエンジニアコミュニティにつけられていた名前でしたが、サービス自体がその構想の延長線上にあることから、そのまま想いを引き継ぐかたちでサービスの総称となりました。

フリノベは5つの分野でサービスを展開しています(※ 2017年1月現在)。

(1)仕事・キャリア

ITフリーランスのための案件紹介・営業・事務手続き代行をはじめ、複数のキャリアアップを支援するサービス。具体的には「定期的な個別キャリアカウンセリング」「勉強会・セミナーへの優先参加」、さらには「副業紹介」や「格安な英語学習の支援サービス」まで網羅。現在の仕事を快適にするだけでなく、将来のキャリアアップを目指しやすくします。

(2)ネットワーキング

フリーランス同士が実際に会場へ足を運んで直接コミュニケーションを図ることのできる、いわば「オフラインミーティング」と、ビジネスチャットツール「Slack」を利用した「オンラインコミュニティ」のに2軸で、ネットワーキングの場を提供。特に交流会では、月に一度、さまざまなテーマで開催され、同年代や同業界など境遇の近いフリーランス同士で情報交換をすることができます。

(3)ヘルスケアサポート

健康診断や、ジム・マッサージの優待利用などのヘルスケアサービスを割引価格で提供するサービス。フリーランスにとって生命線ともいえる「健康の維持」を促進します。

(4)エンターテインメント

飲食店での割引や、レジャー施設の優待利用を提供するサービス。10,000店を超える飲食店での利用をはじめ、映画や演劇・舞台の鑑賞、遊園地やカラオケまで、幅広い娯楽の場面でお得になります。

(5)ライフイベント

引越し・結婚・出産・育児・介護などあらゆるライフイベントの際に、関連サービスを格安で利用できるサービス。

サービスの分野はこれにとどまりません。なぜなら「フリノベ」は、これからも進化を続けていくからです。そして、その背景には常に、「エンジニアの声を聞き、彼らが活躍できる環境を作る」という想いがあります。


井下「フリノベを通じ、エンジニアの皆さんとともに、フリーランスの働き方の“土台”を一緒に作っていけたらと思っています。だからドンドン要望を挙げてほしい。ギークスは、エンジニアの皆さんとのつながりには、他の誰にも負けない自信があります。信頼関係の上にこそ成り立つものがあるという想いで、これまでエンジニアの皆さんと接してきましたから」
高澤「フリーランスエンジニアの世界では、スキルの有無がそのまま仕事に直結します。そんなシビアな環境に身を置いているからこそ、目の前の課題へ真剣に取り組む、志のある人が多いんです。自分の力を試そうという熱意と覚悟を、私たちは心から尊敬しています。だからこそ応援したい。何かを変えたくてフリーランスを選ぶというその決断から、少しでも不安を取り除いてあげたいんです」

フリーランスエンジニアの不安を取り除くために生まれた「フリノベ」。そこに込められた想いは、この課題と15年以上向き合ってきたギークスの想いそのものでもあります。



岩崎「私たちの先輩は、ギークスが今よりずっと小さなオフィスだったときから、ずっとフリーランスと向き合ってきました。そのなかで得たこと、感じたことを、フリノベで結実させていきたいんです。フリーランスという働き方は、かならず社会貢献につながっていく──私たちはそう信じています」

ギークスが、まだギークスという名前ではなかった創業時代から続いている、フリーランスエンジニアを支援するIT人材事業。その背景には、数えきれないほどのフリーランスエンジニアの方との対話があり、そのたびに多くのメンバーによって気づき・想いが積み重ねられてきました。


私たちはその過去を忘れることはありません。「エンジニア不足の救世主になる」——その目標が途絶えない限り、今日からまた、ひとりでも多くのフリーランスエンジニアを支援し続けていきます。