ついつい使いたくなる。多くの人に愛されるアプリを目指して

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▲サンクスプロジェクトメンバーでの一枚

2022年8月現在、デジタルシステムプラットフォーム本部クラウドサービス統括部に所属する以西。富士通が進める全社DXプロジェクト「フジトラ」のひとつである「サンクスプロジェクト」にて、プロジェクトリーダーを務めています。

以西「富士通が、原則テレワーク勤務に移行してから約2年が経ちます。テレワーク化によって、育児や介護をしながら安心して働けるようになったり、遠隔地での勤務が可能になったりと、さまざまな働き方に対応できるようになりました。その恩恵を受けている社員はたくさんいるのではないでしょうか」

しかし、テレワークはいいことばかりではないと語る以西。

以西 「以前は、毎日のように顔を合わせていた同僚やチームメンバーと、今では特別な会議や用事がある時にしか会わなくなりました。オンラインミーティングやチャットでは会話していますが、直接顔を合わせる機会は、うんと減ったと感じています。『テレワーク勤務になって、雑談が減った』という話をよく耳にしますが、同じくらい『ありがとう』を伝える機会も減っていると思うんです」

そんな中はじまったのが「サンクスプロジェクト」。これまで以上に社員同士で感謝を伝え合い、富士通の新しい文化として定着させるための取り組みだといいます。

以西 「仕組みとしては、『サンクスアプリ』と呼ばれる専用アプリを通じて、感謝を伝えたい相手に対しメッセージを発信します。そのメッセージは相手に届くとともに、社内SNS上でも共有されます。

今回あえて、ほかの人のメッセージを見えるようにしたのは、社内で交わされる『サンクス』を是非参考にしてほしいと思ったから。『さあ、感謝を伝え合いましょう』といわれても、ちょっと照れくさいですし、長続きしにくいと思います。

社内SNSを開くと、どんな人が『サンクス』をいっているのか、いわれているのか。どんなことに対して感謝しているのか、されているのかを見ることができます。是非『サンクス』を贈るきっかけにしてもらえると嬉しいですね」

「サンクスプロジェクト」には、もうひとつ特徴があるという以西。

以西 「メッセージを贈るために使用する『サンクスアプリ』を、みんなに愛されるようなデザインや世界観にしました。業務システムは業務上必要だから多くの人に使われますが、『サンクスアプリ』は違います。ついつい『使いたい!』と思えるものでなければ、多くの人には使ってもらえない。そう考え、色味や画面構成、アイコンの一つひとつなど、ユーザーエクスペリエンスにはこだわりました。簡単に贈れる、そして贈ると楽しいアプリです」

失敗から学んだ「ユーザーエクスペリエンス」視点の大切さ

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▲入社間もない頃の失敗が「いまに活きている」と語る以西

ユーザーエクスペリエンスにこだわったのは、過去の苦い経験も影響していると語る以西。入社後に配属された部署では、半導体工場向けの製造制御システムを担当していたといいます。

以西 「新人の頃に工場見学をしたことがあったので、自分が作ったシステムが工場のどこで使われているかはなんとなく理解していました。でも、そのシステムを使う人や業務のことまではあまり把握できていなくて」

その時の自分を「プログラムの世界に生きていた」と表現する以西。ある時、システムを導入したお客様からお問合せがきたといいます。

以西 「システムにエラーがでているようで、業務が止まり、困っているとご連絡をいただきました。話を伺うと、システムを再起動すればエラーは解消されることがわかったので、その操作方法だけをお伝えしました。システムとしては再起動すれば終わりですが、お客様の業務としては課題が残ったまま。その時の私には、それがピンと来なくて。その後のやりとりはかみ合わず、別の担当に代わってもらうことになりました」

これまでで一番の失敗だったと振り返る以西。しかし、この失敗のおかげで、実際に使う人を理解することの大切さを、身をもって学ぶことができたといいます。

以西 「システム開発の現場はとても忙しく、日々向き合っているのはプログラムコード。それに当時は、早く一人前のプログラマーになろうと必死で。プログラムとして正しく動作するかどうかにだけ、意識が向いていたんです。

その経験は、『サンクスアプリ』を開発する上で役立ったのかなと思っています。このアプリを、どんな人に、どんなシーンで使ってほしいのか。そして、一度だけではなく何度も使いたいと思ってもらうためにはどうしたらよいか。そこはプロジェクトメンバーで議論を重ね、考え抜きました。

また、アプリをリリースしたら終わり、ではないと思っています。これからも、使ってくれる人を想像しながらアプリの改善を行っていくつもりです」

検証段階で感じた危機感。新しい仲間たちと動きだす

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▲サンクスアンバサダーたちとの一枚

これまではシステムを開発し、リリースするところまでを主な業務範囲としてきたという以西。だが、「サンクスプロジェクト」では自ら宣伝推進も手掛けているといいます。

以西 「先ほどもいいましたが、『サンクスアプリ』がなくても仕事をする上では何も困らないと思うんです。つまりは、使ってくれる人が絶対的にいるわけではないということ。『いいアプリができた!』とは思っていたものの、同時に『売り込まないと使ってもらえないのでは』とも感じていました」

以西が所属する部門でトライアルをしたところ、実際に使ってくれた社員は3割にも満たなかったといいます。この状況にますます危機感を覚えたという以西。

以西 「ちいさな感謝で世界を埋めつくそう。そう思って進めていた『サンクスプロジェクト』ですが、自部門でさえ使ってもらえなかったことにショックを受けました。このままでは、富士通全体には到底浸透しない。自らプロジェクトリーダーとなり、チームメンバーと考え抜いてつくったアプリです。多くの人に知ってもらいたいし、使ってもらいたいと思い、行動に移しました」

プロジェクトメンバーが率先して宣伝していこうという話にはなったものの、すぐに壁にぶつかったといいます。

以西 「掛け声をかけたところまではよかったのですが、私たちには経験もノウハウもないことに気がつきました。それに私自身が、前に出ることが好きだったり、得意なわけでもなくて。これからどうしようかと悩んでいた時、メンバーのひとりが呟いたんです。『得意な人にお願いすればいいんじゃない』って」

そこで以西が取り掛かったのは、「サンクスプロジェクト」に共感し、一緒に活動を広めてくれる仲間を募集すること。「サンクスアンバサダー」と名付けた新しい仲間たちに、宣伝活動の一部をお願いしたといいます。

以西 「募集したところ、たくさんの人が集まってくれました。現在では30名以上のアンバサダーの方がいらっしゃるのですが、皆さんの所属部門を中心に、全社に『サンクス』を広めてくれています。皆さんには、感謝の気持ちでいっぱいですね」

仕事はやっぱり楽しいほうがいい!仕事の価値観もアップデート

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▲「ちょっとした感謝を伝え合うことで、チームとして生産性があがったり、大きな力を発揮できる」と語る以西

「サンクスプロジェクト」が本格始動してから約半年。現在、毎月1~2万件の「サンクス」が発信されています。しかし、これまでの道のりは決して楽なものではなかったといいます。

以西 「これまで経験したことのないことが次々とやってきて。もう何から手をつけていいかわからないくらいに。すべてが手探りの状態でした。考えられる選択肢はたくさんできるものの、取るべき選択肢がなかなか決まらない。『これが正解』というものがあるわけではないので、判断がすごく難しかったです。

たとえば、『サンクスメッセージ』を社内SNSに掲載するかはとても悩みました。最終的には載せることにしましたが、検討段階ではプロジェクトメンバーの意見が真っ二つに割れたんです」

悩みの尽きない日々を過ごしていたという以西。しかし、ある時から「失敗したとして、次につなげられればいいや」と思えるようなったといいます。その気持ちの変化を「脱皮」と表現します。

以西 「どんな選択肢にも必ず反対意見はつきもの。『サンクスプロジェクト』みたいな新しい試みだったらなおさらです。どうしたって意見は割れるんだ。ならば、みんなの意見を聞いたうえで、自分が一番やりたいと思ったものを選ぼうと。失敗しないものを、みんながいいと思うものを選びたい、という考えを脱ぎ捨てることができた気がします。まさに『脱皮』した感覚ですね」

そう思えるようになってからは、心が軽くなり、プロジェクトを楽しめるようになったという以西。それにともない、仕事に対する価値観も変化したと続けます。

以西 「これまでを振り返ると、上司や同僚たちに本当に恵まれていたなと感じています。『サンクスプロジェクト』に関わるメンバーは、みなさん素晴らしい方々で。そんなみんなのために、チームの目標を達成したい、自分自身ももっと成長したい。これまでの私の原動力は、そこにありました。

また、仕事は仕事といいますか、そこに楽しさは必要ないと思っていたんです。でも、『サンクスプロジェクト』を経験して考え方が変わったんです。やっぱり仕事は楽しいほうがいいなと」

そう、笑顔で答える以西。彼女が目指すちいさな感謝で埋めつくされた世界は、いつ訪れるのか。「サンクスプロジェクト」の全社浸透、そして今後の以西のさらなる活躍から目が離せません。