リーダーとして、率先して自律した働き方を選択
2022年7月現在、富士通総務本部総務部のシニアマネージャーとして、首都圏オフィスのファシリティマネジメントを担当する山岸。汐留にある本社と川崎駅前のFujitsu Uvance Kawasaki Towerを中心に首都圏エリアの大規模オフィスの管理を担っています。
山岸 「富士通は、事業所や自宅、社外のサテライトなど、働く場所を従業員が自由に選べるボーダレスオフィスを提唱しています。
私はその事業所部分の管理責任者として、たとえばファニチャーや設備をはじめとするオフィス環境の整備や、『Work Life Shift』* にともなって発生したニーズを汲んだ新企画の立案、お客様向けの館内見学対応、オフィスにかかるコストの管理、防災管理など、オフィスに関する運用全般を担当しています」
山岸が率いるチームのメンバーは7名。リーダーとして大事にしているのは、働く場所や時間を柔軟に選びながら、働き方を自律的に選択する姿勢を見せることだと話します。
山岸 「管理職になる数年前は時短で働いていましたが、当時は働く場所も時間も決まっていました。そのため、1分1秒を無駄にしないようにと、常に気を張って働いていたように思います。
ところが今は、働く場所と時間が選べるようになり、状況に応じて柔軟に働き方を変えられるので、心身ともに余裕を持って仕事に取り組めています。チームメンバーにもそうあってほしいので、私が率先して臨機応変な働きぶりを見せるようにしているんです」
山岸がこのように「柔軟な働き方」に価値を置くようになった背景──そこには、自身の働き方が変わったことでキャリアの展望が変わり、大きなチャレンジに踏み切れたという成功体験がありました。
*Work Life Shift……富士通が推進するニューノーマルな世界における新しい働き方。「働く」ということだけでなく「仕事」と「生活」をトータルにシフトし、Well-beingを実現していく。
「Work Life Shift」をきっかけに開いた、管理職への道
2児の母でもある山岸は、過去に2度、産休・育休を経験。1回目は9カ月間、2回目は1年間の休暇を取得し、職場復帰を果たしました。
復帰後は6~7時間の時短勤務を選択していましたが、当時は社内にまだ「Work Life Shift」の考え方がない状況。勤務場所や時間が一様に決められている中で、早めに仕事を切り上げて帰ることに罪悪感があったといいます。
山岸 「当時から、介護や子育てなどの事情を抱える社員は、時短勤務のほかに在宅勤務を選ぶことができました。とはいえ、いざ利用する側になってみると、どこか特別扱いという印象があり、周囲の社員に対して後ろめたい気持ちがあったんです」
また、2人の子どもを送り出したあと約1時間かけて出勤し、迎えの時間を気にしながら夕方まで働く毎日では、先々のキャリアを考える余裕はなかったと振り返ります。
山岸 「管理職の社員はメンバーからの急な承認依頼などに対応するため、いつも職場にいなければならないという印象がありました。当時の私は、目の前の1日をこなしていくだけで精一杯で、自分が管理職になるなんて考えもしませんでした」
しかし、社内で「Work Life Shift」が提唱され始めると、在宅勤務が浸透。時短勤務や在宅勤務に対する罪悪感が解消され、時間にも気持ちにも余裕が生まれたといいます。
山岸 「これを機に、社内でもデジタル化がより一層進み、管理職が行う承認処理の一部はスマホを利用して、柔軟に対応できるようになりました。管理職だからといって、常にオフィスにいる必要はなくなり、これならもっといろいろなことにチャレンジできるのではないか。そう思うようになったんです」
社内ポスティング制度で、Fujitsu Uvance Kawasaki Towerの立ち上げに関わるマネージャーの募集があったのは、ちょうどそんなタイミングでした。
山岸 「それまでもオフィス管理の経験を積んでいて、ボーダレスオフィスをコンセプトとした富士通ソリューションスクエア(蒲田にある自社ビル)のリノベーションプロジェクトにも携わっていました。そのプロジェクトでは、拠点や組織に縛られることなく、社員一人ひとりが業務内容にあわせ適切な場所を自由に選択できる、これからのオフィスのあり方を形にしました。
そういった経験があったため、約1万5千人の従業員が利用するFujitsu Uvance Kawasaki Towerの立ち上げは、自分にとって集大成となるような仕事だと思い、その中心人物として携わりたいと考えたんです。管理職に挑戦したいというよりは、新オフィスの立ち上げをやってみたいという気持ちの方が強かったですね」
管理職として初めて取り組んだプロジェクトが成功。新たな立場に就いて広がった視野
2021年、Fujitsu Uvance Kawasaki Towerの立ち上げに総務部マネージャーとして携わった山岸。これまでのキャリアの中でも、とりわけ記憶に残っている仕事だといいます。
山岸 「約1万5千人が使うオフィスの立ち上げ・運用に携わったことは、私も含めチームメンバー全員にとって、今後の財産となるような価値ある経験だったと思います。中でも、全社員に対してオンライン配信も行われたタウンホールミーティングや入社式を、Fujitsu Uvance Kawasaki Towerのオフィスで実施できたことは、大きな成果でした。
当時、チームのなかで『新オフィスでは、従来では考えられなかったようなことをやっていこう』『オフィスの景色を変えよう』という話をしていました。そこで、オフィスの雰囲気を活かした中でタウンホールミーティングを開催し、その様子を生配信することにしたんです。また、現地だけでなくオンラインでも参加できるハイブリット型のイベントにしました。
周囲にはもちろん、通常業務をしている社員がいますから、その人たちの仕事を妨げないように、かつスムーズに進行・配信できるようにと試行錯誤しました。回数を重ねるうちに運営が洗練され、さまざまな役員からも要望をもらうようになり、今では毎月、多い月では複数回開催するまでになりました」
また、マネージャーになってからの心境の変化について、「自分だけでなく、チームメンバーのキャリアや働き方も責任を持ってサポートしなければ」という意識が高まったと話します。
山岸 「自分以外の人のキャリアを自分ごととして考えるのは、初めての経験です。決まった答えはありませんし、キャリアはその人自身が考え、答えを出すもの。『自分のやりたいことと向き合ってほしい』という想いのもと、メンバーと対話する時間を大切にしています。
たとえば、日々の仕事に追われ、この先のキャリアを考えることができずにいるメンバーには、定期的に実施する1on1を『キャリアについて考える時間』にしてみようと提案しています。
私が彼ら彼女らのキャリアを決めてあげられるわけではないので、その時間だけでも、まずは自分自身の興味や今後について考えてみてほしい。そう思って働きかけています。その過程は、子育てと少し似ているかもしれませんね(笑)」
こうして一人ひとりと向き合ううちに、「マネージャーを目指してみようかな」「山岸さんはどうして管理職になったんですか?」と、興味を持つメンバーも出てきたという山岸。メンバーにとって身近なロールモデルであると同時に、キャリアについて気軽に相談できる存在でありたいと話します。
キーワードは「柔軟性」。誰もがしなやかに生きられる職場作りを目指して
2022年、シニアマネージャーに昇進した山岸。管理職としての職務を果たしつつ、2人の子どもの育児にも取り組んでいます。両立の秘訣は「柔軟性」だと語ります。
山岸 「働く時間や場所に柔軟性が求められるのはもちろんですが、家庭においても柔軟性を大切にすることが、両立のコツだと思っています。
たとえば、家事分担をきっちり決めるのではなく、できる人がやって、やってもらったら『ありがとう』と伝える。何事も楽しんでやろうと意識するだけで、取り組むときの気持ちが変わります」
育児をはじめ、さまざまな事情を抱えながら働いている人にとって、「私もなりたいもの、やりたいことを目指せるんだ」と思えるロールモデルになりたい──それが、山岸のありたい姿です。
山岸 「以前の私のように、さまざまな事情から管理職に就くことをためらっている人に対して、『こうすれば管理職も目指しやすいんですよ』と伝えられればいいなと思っています。
また、オフィスの管理や運営を担う立場としては、出社したときに刺激を与えてくれる人に出会えたり、気づきやアイデアが得られたり。オフィスをそんな場所・環境にしていきたいんです。自宅やほかのワークスペースにはない価値を、オフィスを使う人たちに提供していけたらと思います」
チームメンバーだけでなく、自分の子どもにも「富士通っていいな、こういう働き方っていいな」と思ってもらうことを目標に掲げる山岸。シニアマネージャーとして、母親として、挑戦することは、あきらめません。
オフィスと、そこに関わる人たちの人生を輝かせるために。