ウガンダで情報格差の問題に直面。ICTの可能性を信じて富士通へ

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▲学生時代に訪れたウガンダでの一枚

学生時代、途上国開発のための国際協力について学びを深めた酒井。経済的貧困の問題に取り組む中で、とりわけ深刻な状況にあるのはアフリカと考えた彼女は、「現地の現状を見てみたい」「援助だけではなく別の関わり方があるのかもしれない」という想いで、ウガンダへと旅立ちました。

酒井 「現地では半年間、衛生用品を販売する日系企業でインターンとして働いていました。当初は業務サポートをしていただけでしたが、そのうち病院を訪ねて、衛生用品が活用されている様子を撮影してSNSにアップするなど、マーケティング施策にも関わるようになったんです。

また、ウガンダの現状を知ってもらおうと、日本人学生などを対象にスタディーツアーの企画にも関わったことも。医療現場や食品工場などを訪れて、業務の現状や会社について説明したりしていました」

ウガンダでの仕事を通じて、人集めや計画立案などを地道に進め、アイデアを形にしていくことの難しさを痛感したという酒井。日本との文化の違いに戸惑うことも多かった、といいます。

酒井 「仕事で待ち合わせた相手が、約束の時間に3時間も遅れてきたことがありました。日本の感覚だとありえないことなので、衝撃と戸惑いを感じてしまったのですが、現地の日本人の方から『ウガンダにいる以上、ここでの当たり前に合わせていく必要がある』と諭されて。


その一件以来、自分の中にあった当たり前を疑うようになり、相手の文化的背景なども考えながらコミュニケーションを取るようになりました。それは日本人相手でも同じこと。皆がそれぞれ違う背景を持っていることを受け入れ、相手を理解するよう努力しながら人と交流するようになっていきました」

ウガンダでは、ICTを活用した課題解決の可能性にも気づいたという酒井。帰国後、ICT企業に的を絞って就職活動を始め、縁あって富士通に入社します。

酒井 「ウガンダでは、医療サービスや教育などソフトの面において、居住地ごとの格差が大きいと感じました。ICTをうまく活用すれば、場所に関係なく誰もが同水準のサービス・教育が受けられて格差が緩和される。そんな期待が、ICT企業に興味を持つきっかけになりました。

中でも富士通に決めた理由は、面接で『人の意見に耳を傾け、対等に会話してくれる方が多い』と感じたこと。どんなことでもいったん肯定した上で、『どうしたら実現できるかを一緒に考える』姿勢に共感し、自分もそんな大人になりたいと思ったんです」

Jobチャレ!!を利用して徳島へ。ICTを活用し、地域の課題解決に取り組む

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▲Jobチャレ‼実践者として、社内オンラインイベント「FUJITRA Festival」に登壇

入社して酒井が最初に配属されたのは、ヘルスケア業界を担当する部門でした。

酒井 「お客様となる病院に導入する基幹システムを担当しました。翌年以降も担当は変わらず同じ仕事に携わっていたのですが、ある時、社内短期異動制度(以下、Jobチャレ!!)を知って、新しい経験をしてみたいと思うようになったんです」

Jobチャレ!!とは、社員自身が希望する部署に期間限定で異動し、異なる業務を経験できるプログラムのこと。

酒井 「Jobチャレ!!を利用して、半年徳島支社に異動することになりました。現在は、地域課題の解決をテーマに、今までとは違ったアプローチで新規顧客を開拓したり、新しいビジネスを見つけていったり。地元企業などと新しい関係を構築するのが主な仕事です。

取り組みの一例として、デジタル人材の育成には力を入れています。年々進んでいるICT教育に対応できる人材を育てるため、社外の組織と協力しながら、ICT支援員育成講座の企画・開催・運営などを担当しています。

他にも、ICTを活用できる人とできない人の格差、いわゆるデジタルデバイドを解消するための人材育成支援に昨年度から関わるようになりました。今年度も引き続き取り組んでいく予定です」

徳島支社での取り組みは、すでに取引がある会社に商品を売り込むのではなく、地域に住む人と地域課題を共感し、一緒に考え解決していく点が新しいと強調する酒井。

酒井 「初めに売りたい商品があるのではなく、地域の皆さんと一緒に課題解決の方法を考え、私たちにできることを提案し、アイデアを形にしていくというデザイン思考のプロセスです。協力者と共に地域を盛り上げていきたい、という想いを持って活動を進めています」

「VOICE」を使った現状調査から見えてきたもの

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▲「新しいことにチャレンジする徳島支社のカルチャーが好き」と語る酒井

そんな中、酒井が新たに参加することになったのが、マイナンバーカードの取得率を向上させるためのプロジェクト。課題解決に取り組むにあたって、まずは徳島支社内の現状調査から始めることに。

酒井 「マイナンバーカードを所有しているかどうかは、個人情報にあたります。そのため、通常の記名式アンケートを使うことができません。そこで、匿名でできるアンケートツールを探していて見つけたのが、富士通社内で活用を進めている、『Fujitsu VOICE』(以下、VOICE)でした。『VOICE』とは、声を起点としたDXフレームワーク。支社内には新しい仕組みはどんどん使ってみようという空気もあり、活用してみようということになったんです」

初めて「VOICE」を活用した酒井たちでしたが、調査の結果はすぐに得られたといいます。

酒井 「徳島支社内のマイナンバーカード取得率は、県全体に比べてかなり高いことがわかりました。また、すでにカードを取得している人の周囲には、同じようにカードを取得している人が多いなど、いろいろな周辺的状況を知ることができました。

最も驚いたのが、アンケート回収率の高さ。アンケートへの協力を口頭でお願いできた人は全体の1割程度で、ほかはメールなどでの依頼だったにもかかわらず、8〜9割もの人が回答してくれたのがとても印象的でした。

そのうちの1人に回答してくれた理由を聞いてみたところ、『徳島に住んでいる人限定という点が目新しく、おもしろいと思った。当事者意識が芽生え、自分が回答する意義を感じた』という答えが返ってきました。今後同様のアンケートを実施していくうえで、とても参考になる気づきだと思っています」

まずは実情を把握することが、お客様の課題解決のための糸口に

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▲「Jobチャレ‼で得たもの、元の部署に持ち帰れるものは多い」と語る酒井

現在はまだ、集計結果を具体的な施策に落とし込む段階には至っていないという酒井。「VOICE」は、アンケートを実施する側にとっても、回答する側にとても使いやすかったと振り返ります。

酒井 「とても回答しやすい仕様になっている点が、回収率の高さにもつながったのだと思いました。たとえば、全設問のうち今何問目まで答えたかがわかるのは、回答者の心理的な負担を軽減できると感じました。匿名性が保たれるのも大きな利点ですね。一般的なアンケートフォームと比べてセキュリティ上の安心感もあるので、社外アンケートでも大いに活用できるのではないでしょうか」

さらに、「VOICE」の可能性について酒井は次のように続けます。

酒井 「これまで徳島県のみで開催してきたICTの人材育成講座ですが、四国のほかの県にも横展開できないか?という話が上がっています。そこで、近隣他県のニーズや状況について調査するときにも『VOICE』は有用だと思いますね。

また、『VOICE』を活用すれば、富士通社内で手軽にアンケートを実施して、巨大な母数のデータを得ることができます。それは、地域や中小企業のお客様相手にビジネスを展開していく上で、重要な説得材料になる。徳島においても、富士通ならではのバリューを発揮できるのではないかと思っています」

途上国の現状を知るために単身ウガンダに渡るなど、実情を自分で確かめ、課題の本質を掴むことを大切にしてきた酒井。今後も、そうやって現場の声に寄り添っていきたいと話します。

酒井 「東京で勤務していたとき、お客様からあるシステムの見積依頼があった際に、『そのシステムがどうして必要なんですか』と聞いてみたことがあるんです。すると『わからない』という答えが返ってきて。お客様が本当に必要とするものを提供するためには、言われたことや自分のなかの常識だけで動いてはダメだと気づきました。まずはしっかりと情報を収集して実情を把握し、本当の課題を見つけることが大切だと感じています」

Jobチャレ!!を利用して新しい職場で新しい人と出会い、新しい仕事に挑戦し続ける酒井。やがて、新たな視点・スキルを元の職場に持ち帰り、富士通の変革の原動力となっていくことでしょう。