初めてゼロから作った「移動ロボット」開発で実感できた仕事のおもしろさ

2022年現在、プロダクト事業本部のFAM室に所属し、自社プロダクトの開発・改善に従事している石田。室長としてメンバーをまとめ、事業の推進に向けて日々取り組んでいる。

石田 「FAM室のミッションは、自社製品として『FAMoffice』という仮想オフィスを開発し、販売、そして多くの方に利用してもらうことです。2021年6月に販売開始と、まだ生まれたばかりのプロダクトですから、お客様の声を聞いたり社会情勢を見たりして、試行錯誤しながら進めています。私はチームの室長として、10名以上の開発メンバーを取りまとめ、技術開発や販売戦略を検討し推進しています」

大学時代は生物機能工学を専攻し、AIのはしりとなる研究をしていた石田。研究のツールとしてプログラミングを独学で勉強しているうちに、これを仕事にしていきたいという気持ちが強くなったという。

石田 「当時はプログラミングをやりたい気持ちはあったのですが、実際に何を作りたいのかというところまでは定められていませんでした。

そんな中、就職活動をしていくうちに独立系と呼ばれる会社があることを知りました。親会社を持たないからこそ、使用するハードウェアやソフトウェアに制限がなく、さまざまなことを手広くできるところに魅力を感じたんです。富士ソフトも独立系企業の1つで事業の幅が広いことから、入社を希望しました」

そうして石田は、2003年に富士ソフトへ入社。入社後はシステム事業本部で開発職を担当し、客先の要望に合わせたシステムの開発やテストを行っていた。しかし2007年に社内で移動ロボットに関して、筑波大学との共同研究プロジェクトが立ちあがることを知り、石田は自ら名乗りをあげた。

石田 「国内でも最先端の移動ロボット技術を有している筑波大学と、富士ソフトのソフトウェアの力を掛け合わせる研究が始まることを知りました。移動ロボットとは、たとえば飲食店だと無人で料理を運んでくれるロボットのことです。ちょうど、上長におもしろいことをやりたいと話していたことから自ら声をあげ、経済産業省の知能化技術開発の公募の一分野である、移動知能モジュールの開発に参加しました」

石田はプロジェクトに5年弱携わり、実際に移動ロボットを1km走らせるところまで形にできた。これが、ロボット開発に初めてゼロから携わるという、石田にとって大きな経験になった。

ロボット開発で気づいた“声にならない課題”を見つけ出す重要性

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▲コミュニケーションロボット「PALRO」と石田

筑波大学との共同研究で技術を習得した2008年頃、富士ソフトは新たな試みとして高度な人工知能を有したコミュニケーションロボット「PALRO(パルロ)」の開発をスタートした。移動ロボット開発の知見を持つ石田は、そのプロジェクトにも抜擢された。

石田 「PALROは当初、工学系の教育・研究機関向けに発売しました。その後、さらなる用途を検討していく中で、介護の人手不足が社会問題となりました。何かお手伝いができないかということで、まずは今人手が必要な介護分野にPALROを最適化していこうという流れになりました」

介護向けコミュニケーションロボットにシフトチェンジしたPALRO。現場の反響を調査するために、石田は何度も介護施設を訪れた。

石田 「おじいちゃんやおばあちゃんたちと一緒に歌を歌ったり、クイズや雑談をしたり、PALROはそういったセラピー的な役割が大きいです。そんなPALROの特性を介護現場で活かすために、何度もPALROと一緒に介護施設へ足を運びました。

そこでPALROが入居者の方々と話している姿を見ながら、『どうすれば喜んでもらえるのか、夢中になってくれるのだろうか』と考え、検証を繰り返しました。さまざまな施設にお邪魔して、実際に自分の目で現場を見ながら施策を練り、2012年に高齢者福祉施設向けモデルを発売。その後、日常会話の相手やレクリエーションの司会進行役、健康体操のインストラクターとして活用できるソフトウェアを搭載して、バージョンアップをしました」

介護現場でPALROは一体何ができるのか。現場の声を拾い上げることを意識し、月に1回はダンスや歌などのアップデートをするようにした。石田は、ただ言われたものを作っているだけでは良いものにはならないという。

石田 「移動ロボットのときもそうだったんですが、現場の声を聞くことはもちろん大事ですが、お客様が本当に必要なものの中には声にならない部分が多いのです。

『こんな機能が欲しい』というお客様の要望に応えながらも、その裏にある本当の課題をしっかりと捉えていかなければいけないと思っています。本当に喜ばれる良いものを作るには、われわれがその課題を見つけ出すことが必要だと思っています」

これは現在の仮想オフィス「FAMoffice」開発にも共通していると石田はいう。

石田 「FAMofficeで何ができるんだろうって考えたときに、お客様自身もまだわかっていない部分ってあるんです。『こういう使い方をすると、今のお客様の課題が解決できますよ』というように、われわれが課題を見つけて提案をしていくというのは、現在の仕事にも共通していますね」

お客様が求める本質に注目し、課題を吸い上げる石田。石田のヒアリング力、クリエイティブ能⼒により、新たなプロダクトが生みだされる。

思いつきや感覚を取り入れたことが、サービスの差別化ポイントにつながる

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▲開発内容について説明する石田

富士ソフトの仮想オフィス「FAMoffice」は、新型コロナウイルスの影響で普及した在宅勤務への対策として開発がスタートした。

石田 「当社ではコロナ禍前からすでに在宅勤務を取り入れていましたが、2020年からのコロナの影響により、全社での在宅勤務が始まりました。そうなるとコミュニケーションに課題が出るということで、上層部の中でプロダクト事業本部として何かできないかという話になったのです。

そこで仮想オフィスに目を付けました。今でこそさまざまなサービスが各社から提供されていますが、その当時はまだ世の中に普及していなかったんです。ならば「自分たちで作ろうよ」という流れから、最初は製品というよりも、社内のコミュニケーションの課題を改善するためのツールという目的でスタートしました。私を含めたPALROの開発メンバーのほか、Web系に強いメンバーにも参加してもらって開発が始まりました」

当初は緊急事態ということから、品質よりも機能開発スピードを重視し、毎週のようにリリースを実施。全社員が使うツールとして、使う側の意見をどんどん取り入れ、それを改善するというサイクルを石田たちは繰り返していった。

石田 「自分たちがユーザー側になるということで、社内からじゃんじゃん意見や要望が届き、毎週のように新機能を作っていましたね。プロトタイプを作るのは本当に苦労して、『どういう機能が必要なのか』と試行錯誤しながら作り上げていきました。発想力を大切にし、思いつきや感覚的なものをどんどん実装していった結果、つぶやき機能やマイク音量表示機能など、おもしろいものが作れました」

こうした石田たちの努力が、仮想オフィスの差別化ポイントになったのだ。

石田 「今はさまざまなコミュニケーション手段がありますが、チーム内でコミュニケーションが取れているかなど、管理職からするとひと目でわからない部分もあります。“あつまる、つながる、ひろがるオフィス”をコンセプトに掲げるFAMofficeは、全体像を見られるようにすることを大事にしていて、チーム内の稼働状況がひと目でわかるというのがポイントです。また部下の立場からも、上司の会議状況などを知れるため、気軽なコミュニケーションをとりやすい環境になっているというメリットもあります」

その後、石田たちが開発した仮想オフィスを使った働き方がテレビで紹介される。すると企業からの問い合わせが殺到し、結果、「FAMoffice」として販売されることになったのだ。

石田 「そのころから外販の検討を始めていき、半年かけて製品化しました。FAMofficeの最大の特徴は、オフィスを“俯瞰”できることです。『会議が長引いているな』とか『営業職は今日、電話が多いな』というような、リアルオフィスでは当たり前のように感じ取れていた社内の状況を俯瞰して見ることができ、感じることができる。そこをかなり重視して作りました。

また、一緒に働いている感覚も味わってもらいたくて、メンバーの発案から仮想オフィスに自席やつぶやき機能を作りました。PALROもそうだったんですが、正解がないからこそ、感覚や声って大事だと思うんです。感覚的に良いと思うものを取り入れたことが、差別化にもつながったのではないかと思っています」

正解がない中、まずは作って使ってみて初めて見えてくるものもある。スピード感を重視しながら、FAMofficeの開発に成功したのだ。

大変さと楽しさはセットである。今までにない新しいものを作り続けたい

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▲仮想オフィス「FAMoffice」のイメージ

FAM室の室長をしている石田の目標は、FAMofficeを数年以内に1,000社以上の企業で利用してもらうことだ。

石田 「コロナと共存する生活の中で、在宅勤務をする社員がいたり、オフィスに出社する社員がいたりと新しい働き方が社会的に浸透してきていると感じます。そういった中で、物理的な距離に縛られることなく気軽にコミュニケーションをとりながら仕事ができるFAMofficeは、ニューノーマルな働き方を実現するプロダクトです。

富士ソフトでは、コロナ禍以降の新入社員研修は在宅で実施されましたが、懇親会などはイベント用に開発したFAMeventを使い、オンラインでも横とのつながりを大切にしています。同僚や社内のつながりは、仕事をする上での醍醐味だと感じています。

だからこそ、FAMofficeで自席がある嬉しさや、離れていても一緒に働いているような一体感を味わってもらうなど、みなさんに何かしら貢献できたらいいなと考えています」

富士ソフトでは、FAMofficeを改良し、イベント時に使用するFAMeventや、学習塾・通信制高校向けに開発したFAMcampusの販売も開始した。今後も、今までにない新しいものを考え、世に送り出すであろう。

石田 「移動ロボットもPALROもFAMofficeも、ある意味、今まで世の中になかった新しい製品です。前例がないからこそ正解もありませんし、開発は本当に大変ですが、その大変さと楽しさはセットなんですよね。

プロダクト事業本部は、どんどん新しいものを企画として出して、商品化を目指すことが重要ですし、その楽しさを若手社員にも感じて欲しいと思っています」

プロダクト開発に必要な資質は、受け身ではなく熱意だと考える石田。いわれるままに作り上げていくだけでは、仕事の魅力を味わえないという。

石田 「プロダクトを作る上では、熱意を持って取り組むことが何よりも大事だと思っています。若手社員の方たちには、自分の中でプロダクトを理解し、それをどう開発や行動に移すかといったことを意識してほしいと思います。

また自分本位ではなく、お客様に喜んでもらうにはどうすれば良いのか、というイメージができるようになるといいですね。これは若手とか関係なく、関わる人すべてにいえることですが、やはり基本的な軸になると思います」

富士ソフトには新しいことへ挑戦させてくれる社風がある。石田はメンバーの声に耳を傾け、みんなが実現したいことをサポートしていく存在でありたいと考えている。常に新しいものを作り出したいという石田自身の挑戦から今後も目が離せない。