データからみえる課題の本質はコミュニケーションから。悩み事を聞き出し、輪が広がる

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経営企画部長、コーポレートコミュニケーション部長、Lキャリア推進室長。これが現在の吉田の肩書きだ。この3部門に共通するミッションは、会社の価値を高めること。直近では、2024年に向けた中期経営計画の作成を中心的業務として担当した。

吉田 「課題抽出・解決に向けた打ち合わせ、その整理をするために時間を割くことが多いですね。約9,000人いる社員のうち、本社のスタッフ部門で働く人は500人ほど。こうした本社機能の可視化と改善、それを担う人々の働き方の仕組み構築にも取り組んでいます」

全社の最適化を進める上で、その検討・推進をしていく本社部門自身の現状把握と改善が、全社最適への近道と考え、実態を可視化するため、吉田はまず関連部門の人々へ声を掛け、コミュニケーションを深めてヒアリングを開始した。

吉田 「最初は部門長から話を聞いていったのですが、業務を進める担当者の課題は部長の課題とは異なります。そこで、いろいろな立場の人から話を聞く必要があると考え、幅広くコミュニケーションを取っていきました」

そのコミュニケーションから出てきた課題対策のひとつとして、2018年からRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)導入の推進をスタートし、2020年からは本社部門のDX化プロジェクトもスタートした。吉田は、各部門の機能や工数を可視化しDX化へつなげるために、課題がありそうな部門、工数の多そうな部門から話を聞いた。社内導入事例発表会でRPA導入実績を発表したことをきっかけに、多くの人から声を掛けてもらえるようになった。

吉田 「課題解決に向けたヒアリングでは、1回30分から1時間ぐらい。何をどうしたい、と解決策まで聞こうとすると答えに詰まってしまいかねません。ですから、困っていること、つらいことをざっくばらんに話してもらい、解決策を共に導き出していくことにしました」

持ち前のコミュニケーション能力で、積極的にヒアリングをする吉田。スタッフ部門の仕事の流儀を語る。

スタッフ部門の仕事にはゴールがない。やりきることで達成感や学びが得られる

2000年に富士ソフトへ管理系職種で新卒入社した吉田。大学時代、好きだった数学と興味のあった情報処理を両方学べる理学部 情報数理学科でプログラミングを学んできた。

吉田 「学生時代はチームではなく、個人に対する課題が多く、簡易なゲームや、数学の証明に関するプログラムなどを作りました。でも、私自身人と話すことが好きなので、1人で黙々と作業をするのは向いていないと思い、就職時は技術職を希望しなかったんですよね。けれども富士ソフトに入社して、エンジニアはひとりで仕事をするわけではないし、私の持っていたイメージ自体が大きな勘違いだったと気づいたのですが、だからといって技術職を選ばなかったことを今は後悔していないです。当時学んだ経験があるからこそ、今の役割でも現場の人とスムーズに話せることもあります」

入社を決めた理由は、富士ソフトのベンチャー魂とチャレンジ精神に魅力を感じたからだ。

吉田 「当時富士ソフトは『日本最大級のSE集団をつくる』という目標を掲げていました。『日本最大』という言葉に挑戦するマインドを感じ、今でも『Challenge and Creation』というスローガンを社内外で打ち出しています」

吉田は入社後、現場の事業本部内で人事労務、経営数値の管理、本部長の秘書業務などを経験した。リーダーに昇格したのは2010年のこと。2017年に本社スタッフ部門に異動するまでの17年間、現場スタッフとして経営管理に携わり、課題解決に取り組んだ。

吉田は現場スタッフ時代、年間200人ほどの社員へ、ヒアリングを行った経験を持つ。ヒアリングの対象となる技術者の6割近くはお客様のもとに常駐して働いていた。

吉田 「常駐先で勤務しているからこその情報過疎や帰属意識のあり方などで悩む人も少なくありませんでした。話すことで課題は出てくるのですが、表面に現れるのはごく一部。まだ言葉になっていない情報を認知するためには、現場へ行くのが一番なんです」

そんな吉田が常に心がけているのは、富士ソフトの屋台骨を支える技術者や営業担当者が仕事に専念できる状態でいられること。

吉田 「入社した当時、富士ソフトはここまで大きな会社ではなく、隣を向けばすぐそこに技術者や営業担当者がいるような状況でした。ですから、開発やお客様対応で苦労している姿を自分の目で見てきたんです。中核となる人が最適な状態で仕事をすることが、ひいては会社の業績や企業価値の向上につながると思っています。経営数値とそれ以外を分けてしまいがちですが、私は連動していると思うので、常に結び付けて考え、それを忘れずにいたいですね」

また、吉田はスタッフ部門の仕事に関しても、特別な想いを持っている。

吉田 「スタッフ部門の仕事には、ゴールがありません。成功体験を聞かれることもあるのですが、どこまでいけば『成功』と呼べるかはわかりません。私が言えるのは『今できることをやりきる』。やりきらないと達成感もないし、失敗によって得られる学びもありませんから」

最後までやりきる決意と強い気持ちで進んでいくと語る吉田。本社スタッフ部門の課題を話す。

フラットな視点を持つことで見えてきた本社スタッフ部門の課題。あるべき姿を上申

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▲RPA社内導入事例発表会を主催し、発表する吉田 亜美

現場スタッフ部門から本社スタッフ部門へ異動になった吉田。まずは、本社スタッフ部門の業務を知り、理解を深めた。業務改善に本腰を入れ始めたところ、課題が次々と見えてきたと話す。

吉田 「ずっと同じことをしていると課題に気付きにくいのですが、新しい場所へ行って、フラットに見ると、見えてくることは意外なほどに多いです。『本社にはこうあってほしい』という期待や、『こうあってほしかったのに』という違和感を上申して、改善を進めていきました」

次から次へと物申す吉田。当時の自身について「当時は主任という立場で、実行に向けては、上司と散々議論を重ねました。面倒臭い存在だったんじゃないかな」と振り返る。本社部門の業務改善として、課題の仮説を立て可視化していった。

吉田 「本社部門として制度や規程、運用面を見直し、経営課題や全社課題の解決を進めるべきだと思っているので、上申した時点で現状よりも良くしようと固く決意しています。上司は私の性格をよく理解してくれていたので、課題解決を実現するため、たくさんの機会を与えてくれました」

吉田は、スタッフ部門が行う業務を、RPA技術等を使って自動化を進める。できる限りオペレーションの部分を軽くし、やりたいこと・やるべきことをするために時間を使い、スタッフ部門の付加価値を向上したいという想いからだ。

吉田 「類似業務でいくつかトライアルをして、業務部門の声を拾い上げながら、業務の効率化を進めてきました。体感してもらうことが推進の近道になると思い、多くの関係者がいる業務や効果はいったんおいて『やってみたい』という声に応えるようにしました」

吉田の熱い思いによって、富士ソフトの本社部門の業務改善がますます推進されていく。

女性が自分らしく働くために「活動」から考える──アクションの旗振り役がミッション

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▲左から、女性活躍を推進する取締役 執行役員の森本 真里、代表取締役 社長執行役員の坂下 智保、吉田 亜美

多様な人財登用と多様な働き方を実現していくことを人事ポリシーに掲げ、さまざまな人事施策を実施してきた富士ソフト。2021年、女性活躍を加速するべく、全社横断の「Lキャリア推進推進室」を発足し、吉田はLキャリア推進室の室長に任命された。

吉田 「会社から、Lキャリア推進室というミッションが降りてきました。これまでは自分で課題をとらえて自分で発信・実行する形で進めてきましたが、今回は『なぜ私がこの役割を与えられたのか、どうすすめるべきか』と悩みました」

Lキャリア推進室のLは“えるぼし認定”からとっていることに加えて、Lady(女性)、Labor(働く)、Lead(手本)、Laudable(賞賛)の4つの意味が込められている。メンバーは、吉田を含めて19人。所属や役職、性別、年代も関係なく集まり、問題解決に取り組んでいる。

吉田 「“女性活躍”という言葉は、逆に女性を差別しているという見方もあり、実はマイナスに働くことも少なくありません。そこで、女性がキャリアを積んでいくための課題抽出や改善・解決に取り組んでいこうと考えました。その中で、“女性”ではなく、“社員自身”が望む活躍にしたいと思い、『活躍』とは何かを考えるところから始めました」

⼀⼈ひとりが⾃分らしい働き⽅を実現し、誰もが実⼒によって正当に評価される会社にするためにはどう動くべきか、吉田は思案している。

吉田 「みんなが何を望んでいて、何が足りないのかを常に考えています。富士ソフトも管理職比率や女性の比率を開示していますが、『女性活躍』という言葉を使わなくてもすむようになってはじめてゴールだと胸を張って言えるはず。そこはブレずにやっていきたいです」

早速、2022年3月22日には経済産業省より女性活躍推進に優れた上場企業として、なでしこ銘柄の「準なでしこ」に認定という成果を残した。2人の子を持つ母親でもある吉田にとって、富士ソフトはフラットで働きやすい職場だ、と自らの体験からも振り返る。

吉田 「私が最初に育児休業から復帰したのは15年前になりますが、子どもが病気になったとき、あるいは保育園の送迎があったときも、メンバーみんなが厚くフォローしてくれました。また、フレックス制度や在宅勤務、フレキシブル有休なども活用し、育児と両立してきました。富士ソフトは女性活躍推進法の前から、ライフステージの変化においても柔軟に働ける環境が整っていました。そういうこともあって、私自身は富士ソフト内で女性特有の課題を感じたことがありません。

以前は『ワーク・ライフ・バランス』という言われ方をしていましたが、最近では『ワーク・イン・ライフ』に進歩してきている。その過程の中にヒントがあると思います」

仕事と生活の調和から、仕事は人生の一部へという進化。生活に軸足を置いてどう仕事をするかが問われる時代、吉田は「企画」という言葉にもこだわっている。

吉田 「1人でやるのではなく、多くの人の意見や話を“聞(き)”いて“描く(かく)”からこそ『企画』なんです。色々な機会をもらっている今、まさにこのことを自覚し、実行していかなければいけません」

吉田は周りを巻き込みながら、一人ひとりが活躍する職場づくりを推進している。働くメンバー一人ひとりの顔を思い浮かべながら丁寧に、しかし情熱的にアクションを起こす吉田がけん引する富士ソフトの改革から、今後も目が離せない。