マネジメント能力が追いつかない背景には、「ゆるいカルチャー」の存在が

▲freeeオフィスの様子

西村 「2018年当時、freeeは、目標設定や振り返りが弱い、規模拡大に対してマネジメント能力が追いついていないという課題意識が社内にありました。新たなプロジェクトを連続して立ち上げていく中で、次の一手にフォーカスするあまり、目標設定や、実施したことに対する振り返りが甘くなっていたんです」

すでに社内にはいくつかのマネジメントトレーニングは存在していましたが、自分自身の課題に正面から向き合い、変化や成長にコミットするような取り組みは不足していました。そこで社外に調査を依頼し、組織の特徴を調べたところ「使命感や情熱、個の力は高い」が「目標設定と振り返り、そして計画性が弱い」という結果が出ます。

西村 「社内全体的にゆるいカルチャーであるという結果が出たんです。その状況を変えるため、経営陣20名で外部のトレーニング(株式会社チームボックスにより提供)に参加しました。より本質的な変化や成長を促すために、コンフォートゾーンを抜け自己と向き合いながら前に進む、というプログラムです」

トレーニング参加後、組織力のスコアが大きく向上するなど高い成果が得られたため、さらに自社らしさを高めた独自プログラムを社内で構築することに。パートナー企業の理解・協力も得ながら、大規模な投資を行い、自社オリジナルのプロセスを確立していきました。

西村 「freee は本質的な価値を社会に届け、社会の進化を担おうとする、いわば社会運動(ムーブメント)のような組織であると自認しています。状況が変わってもそうあり続けられるために、 自己認識向上と自己変容を促す行動指針として『ジブンゴーストバスター』というものを掲げています。

過去の成功体験などがつくり出した、誤った行動パターンや自己認識(=ジブンゴースト)を顕在化させ、それと向き合いながら、新たなジブン、新たな組織をつくり出していこうという行動指針です。本プログラムは、この行動指針にちなんで、GBJ(ゴーストバスター・ジャーニー)(以下、GBJ)と名づけています」

対話技術を取り入れた1on1が、それぞれの壁を打開する

▲GBJの体制図

GBJでは参加するリーダーに対し、バディと呼ばれる伴走役が約4カ月もの間、内省の壁打ち役となります。

バディは1on1を通じて、過去の体験などがつくり出した無意識の思考や行動パターンをリーダーが自己認識できるようにし、ありたい姿に近づけるようなアクションを取ることをサポートするのです。1on1は全9回。その中にさまざまな対話技術を応用して取り入れています。

西村 「1on1の開始前に参加するリーダーの周りで働く人にヒアリングを行い、リーダーに関する情報を集めています。周りから見た正直な意見をヒアリングし、できるだけ生の情報のまま本人にフィードバックするところからプログラムをスタートさせるんです。それだけでも、本人にとってかなりの情報量の刺激になり、参加意欲がより高まります」

その後のプログラム初期の1on1で行うのは、主に現状把握。周りからのヒアリング情報を参考にしながら、リーダーとして成長を続けるために阻害要因となっているものがあるか、あるならばそれは何か、過去のどのような体験がそれをつくり出しているのかを掘り下げ、明らかにしていきます。

西村 「リーダーは個々に、メンバーのマネジメントにコミットできていない、他人に権限移譲ができないなど、なんらかの足元の課題を持っています。しかし、そこからさらに掘り下げてみれば、過去の体験がつくり出した行動パターンや、信念が大元となっている事も多いものです。

GBJに参加することで、これまで本人が目を背けていた課題にもフォーカスし掘り下げるというプロセスを経験することなるので、居心地の悪そうな参加者もいます。しかし、それは多くの場合、コンフォートゾーンを抜けている証拠なので、プログラムとしては効果が出ていることを示しているんですね」

現状把握を行った後は、1on1を通して、今後リーダーとしてどうありたいか、どう変わりたいかという目標設定を行います。その後、プログラムの後半では言語化した目標に対して実際にアクションを取っていきます。その上で良かった点(Good)、改善すべき点(Bad)、次はどうするか(Next)の3点を定期的に振り返るのです。

西村 「GBJで得た自己認識や掲げた目標は、現場でも共有することを勧めており、社内ではそれを“あえ共”又は“さらけ出し”と呼んでいます。人に共有することはつまり、自分でもそれを認めるということ。次に進む覚悟の醸成として役に立つんです」

初回から48名のリーダーが参加し、全体の70%でポジティブな変化

▲GBJに参加するリーダー

初回のGBJは2019年8月にスタートし、48名もの事業長やチーム長、そして8名のバディが参加。バディは1名あたり6名の1on1を担当し、全員の行動変容に4カ月間コミットしました。

西村 「初回から参加人数が多く大規模なプロジェクトとなり、途中では困難な局面も経験しましたが、なんとか走り切ることができました」

結果として、90%のリーダーがジャーニーを完走し、多面評価のアンケートでは「メンバーの主体性を引き出す態度が向上した」が19件、「リーダーの自己開示が促進された」が13件、「メンバーをよりケアするようになった」が11件、「チームビルディングが促進された」が8件、「自分の想いを発信することが増えた」が8件、「以前よりフィードバックが増えた」が6件あるなど、参加者全体のうち70%でポジティブな変化が見られました。

また、リーダーについてのアンケート調査にて「私のリーダーはジブンゴーストを言語化し、フィードバックを貪欲に求め立ち向かっている」という設問への回答が10%上昇したのです。           

2020年3月には、前回の振り返りを踏まえて改良を施し、2回目のGBJがスタート。今後を見据えて、30ページ以上の詳細なガイドやテンプレートを作成し、プログラム・パッケージとして確立します。急遽、新型コロナウイルス感染症拡大によりフルリモート勤務となりましたが、プログラムも全面的にリモート実施へ切り替え、対応を行いました。

今後も"マジ価値"を届けきる集団であるため、変化し続ける組織を

▲ムーブメント研究所 西村尚久

西村 「変化こそ、多くの人や組織が恐れるモノのひとつです。成功体験を積み重ね、歴史が長くなっていくほど、 そしてカルチャーが強固になっていくほど、それをあえて壊し、変えていくことが難しくなっていきます。

しかし、文化そのものに変化に対する前向きさを初めからプログラムしておくことができれば、進化し続ける組織の礎をつくることができるのではないかと考えています。GBJは、今後も爆速成長を続けるfreeeを支える基盤の1つとなってほしいと思っています」

2020年現在、GBJはリーダーを対象としたプログラムですが、入社や役割の変化、異動の直後など、変化の節目にある方に参加してもらっています。

西村 「GBJのようなプログラムは、メリハリが大切です。自分のありのままの状態や課題に目を向けるのは、とても疲れますし負荷もかかります。変化の節目にある方に、成長の機会として参加してもらい、期間を定め集中してやり遂げることが大切だと思っています」

今後はGBJをマネジメント全員に展開していき、将来的には役割を問わず、リーダーシップを発揮しようとしている全ての人にも展開することを考えています。社内で立場に関係なく誰でも参加でき、いつでも伴走役になってくれる人が見つかる──そんなプラットフォームに成長させていこうとしているのです。

西村 「freeeは、『マジ価値』を届けきる集団です。マジ価値とは、ユーザーにとって本質的な価値があると自信を持って言えることを行うこと。そのためには、今後も進化を続ける会社でなければなりません。変わり続けられるチカラを根付かせたい──GBJがその礎になればと思っています」

GBJを基盤に、組織が拡大しても変化し続けるfreee。今後も挑戦は続きます。