WebデザイナーとしてFICCへジョイン

2020年現在、FICCで取締役を務める戸塚は、Webデザイナーとして2005年に入社。ディレクターやチームリーダーなど現場業務を経て、FICCの経営に参画しました。戸塚がこの業界を志したルーツ──。それは学生時代にまで遡ります。

戸塚 「子供のころから海外や国際関係に興味があって、大学卒業後に渡英しました。ジャーナリズム学部の評価が高かったカーディフ大学院に進学したのですが、コースの中に『オンラインジャーナリズム』というクラスがあって、Webサイトをデザインするというものがありました。

そこで自分の何かが爆発したんですね。クラスの中でも高い評価をいただいたことで、デジタルの世界に進みたいとはっきり思うようになりました」

また、Webデザインに興味を持った背景には、家族の影響もあったと振り返ります。 

戸塚 「父も祖父も結構こだわりが強い人たちだったんですね。自動車関連の仕事をしていたこともあり父は丸いフォルムのフォルクスワーゲンに乗っていました。

僕も小さいときにソニーのディスクマン(CDを再生する携帯音楽プレーヤー)をもらってからプロダクト愛みたいなのを持つようになりました。

当時にしては、海外のモノとかにも触れる機会が多かったので何となく格好いいものとか、素敵なもの、モノの本質的な魅力に憧れを持っていたような気がします」

その後、日本に帰国した戸塚はFICCに入社し、晴れてWebデザイナーとなったのですが、あらゆるクライアントからの要望に応えていくWebデザインの仕事には多くの苦労がありました。

何度も何度もデザインを作っては先輩に差し戻され、その都度新たなアイデアを追加していく──。入社まもなき頃の戸塚はこうした修行の日々を重ねながら過ごしたのでした。

自分にない発想を活かしてもっと良いものをつくる

ディレクター時代の様子

次第に組織が拡充されていくと、自然と戸塚の役割にも変化が出てきました。デザインの領域そのものを任せてもらえるようになり、戸塚の下にも後輩が増えていったのです。

戸塚 「デザインをする立場から、束ねる側の、ディレクションする側になっていったときは、振り返ると結構つらかったですね。自分でデザインできないもどかしさがあったんです。デザインしたくて入ったのに、スケジュールを見たり、何か情報をまとめたりとかばっかりで」

しかし、あることに気づいたときに、ディレクターとしての在り方に面白みを感じるようになったといいます。

戸塚 「これ以上、私が口を挟んだら、多分後輩や部下の良さが消されてしまうだろうと思う経験が何度もありました。自分には無い発想のものが出来上がるという可能性に気づいたんです。

この体験は人を評価する立場になったいまでも活きていると感じます。結果的にディレクターをやることで、もっと大きいもの、いいものができる喜びみたいなことも感じるようになって、だんだんと自分がプレイヤーじゃない状況を受け入れるようになりました」

より社員が主体になる組織の未来像を描く

現在ではCROとして組織全体をまとめることに取り組む戸塚。修行ともいえる現場で培ってきた経験を活かしながら組織全体にも視野を広げ、責任のある立場を任されるようになっていきました。

そして、2014年に執行役員に就任、2016年には取締役を任されることとなりました。

戸塚 「当時代表だった荻野から言われたのは、自分は会社を立ち上げた人間で社員ではないということ。だから社員として入社し経験を積んできた私と森(現代表)に、その目線を持ったまま取締役になることで、社員が主体の会社にしていきたいという話でした。

私自身、その話をもらう前から、社員が主体になれるようなアプローチを続けてきたこともあったので、その役割に責任を与えてもらったという受け取り方をしました」

しかし、社員が主体になる組織をめざすには、ある課題がありました。

戸塚 「創業者の荻野はビジョナリストであり、数年後の市場やマーケティングの未来を照らすことのできる人物です。それもあり創業当初から、FICCは荻野のイメージが強い会社でした。

この数年取締役の3人でそれぞれの役割について話してきましたが、森が新しく代表に就任するにあたって、より社員がFICCの主体となる組織に変えていこうとしています。

それが、社員一人ひとりの興味や学びからイノベーションを生み出す「学際的リベラルアーツ」という組織です。

そして、取締役の役割も、荻野が示す未来予測と連携しながら、森がビジョンやビジネスの輪郭をより明確にし、私が会社の資源、広く言えばブランドや組織の未来を描いていくように整理しました。」

ただし、2020年現在のFICCの経営陣のこうした方針は、今になって生まれたものではないと付け加えます。

戸塚 「荻野自身、ずっと社内では“みんな”という言葉を使っています。荻野が提唱するマーケティングの各フレームワークも、社内の共通言語としてインストールしていますが、あくまで何かを生み出すための仕組みでしかありません。

フレームワークを実行するために組織があるわけではありませんから。荻野のビジョンに対し、“みんな”からの発信もウェルカムですし、それでより良くしていこうというスタンスは創業当時から変わっていないんです」

2019年10月に、森が荻野から代表を引き継いだことで、取締役のメッセージが社員により深く伝わりはじめています。

戸塚 「一人ひとりのメンバーの可能性、価値を信じているというのが私達の根底にあります。これまでに何を学んできたのかはみんな違っているし、趣味や経験によってユニークネスは形成されているんです。

その一人ひとりのユニークネスに対し、互いに興味をもって理解しあうことが、コミュニケーションが重視される私達の仕事において大事な資源になるんです」

ユニークネスを認め合い、イノベーションを起こす組織へ

戸塚は取締役就任以来、具体的なアクションとして会社のブランディングやミッション・ビジョンの策定をリードするほか、社内の人事制度を見直すなど、FICCが大切にする想いと、これからの時代に即した働き方が両立できる環境づくりに取り組んできました。

一方で、自身の役割や想いがうまく社内に伝わっていない、という課題を感じているのだといいます。

戸塚 「会社が大きくストレッチしようとするときに、社員が混乱しないよう、間に入って現実的な仕組みを作ることを続けてきましたが、どうしてもその時々のテーマによって、やっていることがいろいろ変わります。

現場のメンバーにとっては私の役割は分かりにくいのかもしれません。私のデザイナーというバックグラウンドを含めて、ミッションを知っているメンバーは少ないでしょう。もっと私の想いを知ってもらうことも必要だと思っています」

働くメンバー同士がお互いを認知しあうプロセスは、社員全員に必要なもの。戸塚はこうしたプロセスを社員一人ひとりがFICCという環境の中で経験することで主体性が生まれてくるものだと考えています。

戸塚 「これからもっとFICCをカラフルな組織にしたいと思うんです。世に言う多様性(ダイバーシティ)というものも含まれているんですけど、自分が見つめているのはもっと“その人そのもの”に寄った話で、いろいろなバックグラウンドを持った社員のユニークネスが発揮され、そのことを当人たちも堂々としていられる状態をつくりたい。

メンバー同士が互いを真に理解して認め合い、刺激をもらい合って切磋琢磨するカルチャーを強めていきたいんです。そして、そこからビジネスやイノベーションが生まれるような組織にしたいですね」

社員一人ひとりが自身のユニークネスや興味をもっと自由に発信し、お互いが理解し認め合う。そして、有機的にそこから新しい価値が生まれる。そんな組織の実現に向けて、戸塚は組織をリードする存在であり、切磋琢磨する一員であり続けることで、自ら成長することも楽しんでいます。