なぜ、グローバル統一のプラットフォームが必要なのか。なぜ、内製するのか

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2020年7月、ファーストリテイリングは、自社開発のプラットフォームを稼働させた。

このプラットフォームは、ものづくりから販売までEnd to Endで行うファーストリテイリングの商売全体の成長を速めるためのものだ。自社で開発した「デジタルコマース」プラットフォームをグローバルで統一し、国や地域、ブランドの垣根を越えて、グローバルヘッドクォーターと各国・ブランドがつながることを目指す。

なぜ、ファーストリテイリングは、内製化にこだわるのだろうか。

このプロジェクトを牽引するのが、増田 直だ。現在、グローバルデジタルコマース部部長(コマースプラットフォーム企画)とデジタル業務改革サービス部(一般的にはIT部)部長(EC領域)を兼務している。

増田 「ファーストリテイリンググループは、ユニクロを中心に現在25の国と地域に出店、21の国と地域でECを展開しています。グループとして世界№1を目指し、『世界中のお客様の本当にほしい服が、ほしいときにそこにあって、すぐに買える』という、最高の顧客体験を提供するのが使命です。

これまでは、各国や各地域でEC事業を開始することを優先していたために、グループ各社のブランドごと、同一ブランドにおいても国や地域で異なるECプラットフォームを使っていました。

しかし、ECプラットフォームが異なると、どうしても統一性や標準化が難しく、お客様の使いやすさや利便性にバラつきが生じます。しかし、自社開発の『グローバル統一デジタルコマースプラットフォーム』ならば、迅速な横展開が可能で、スピーディなアップデートをグローバルで常時実行して、お客様の要望に応える進化をし続けることができます。

私たちが目指す世界一のECをつくるためには、そのグローバル展開と、その内製化が急務でした」

増田が牽引する、この統一プラットフォームの導入プロジェクトは、EC事業を、そして増田自身を大きく変えていった。

会社の覚悟がわかるECへの大型投資。その中枢で経営の意思決定にかかわる

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ファーストリテイリングは「ECを本業に」を掲げ、将来的にはグループEC売上比率30%を目指している。それは夢ではない。EC事業は2011年から年平均31%のペースで成長を続け、2019年8月期実績で2,583億円、EC化率11.6%を達成。

さらに、グループ全体でのEC事業の拡大をスピードアップするために、組織を一新した。それが、増田が所属するグローバルデジタルコマース(GDC)部である。 

増田 「私の役割は、『企画』『ものづくり』『販売』までを、商売としてつなげていくことです。開発の内製をより強化するために、現在、GDC部の組織拡大をはかっています」 

増田自身も、新たにEC事業に参画した中途入社組だ。情報通信会社に新卒入社し、外資系コンサルティングファームのITコンサルタントを経て、2017年にファーストリテイリングに入社した。 

増田 「この仕事の最大の魅力は、グローバル企業のヘッドクォーターとして、経営の意思決定に関われることだと思います。経営陣からダイレクトにフィードバックがもらえ、即実行できる環境がある。成長領域なので、個人に与えられる裁量が、他社のプロジェクトとは比べものにならないくらい大きい。

これだけ大規模なプラットフォーム構築に戦略的に投資して、自社で開発できるのは、アパレルを含めたリテールでは、日本では他にないと思います」

増田は「事業投資から、その会社の覚悟がわかる」と言う。増田が入社を決めたのも、EC事業への投資の大きさだった。それだけ覚悟を決めて、EC事業の成長を目指す会社ならば、その中枢で新しいチャレンジと、最高のECの構築ができると確信したからだ。そして、増田はこのプロジェクトをやり抜くことで、自らの活躍領域を広げていく。

転職して2つめのプロジェクトで、最大規模の基盤構築のリーダーに抜擢

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増田が入社直後に任されたのは、小さなプロジェクトでメンバーも数人だった。

増田 「ユニクロのEC事業におけるパーソナライズのプロジェクトでした。この件を依頼した役員は、企画提案までと考えていたのかもしれません。

しかし、ユニクロはお客様の声を反映して、本当にほしいと思える商品をつくるブランドです。お客様一人ひとり、ほしいものが違いますから、パーソナライズすることは非常に重要です。そこで、構想策定を固めて、実証実験までを提案。最終的には、当初の3倍ほどの規模のプロジェクトになり、実装されました。

そういう意味では、『お客様にとってより良いものを』と、言われた予算や立場を超えてでも粘り強く交渉し、役員をはじめ、周囲を巻き込んでプロジェクトを完遂したことで、私の活躍領域は広がったと思います」

この直後に任されたのが、今回のグローバル展開を見据えたプラットフォームの構築である。増田は淡々と話すが、入社1年足らずの社員を、自社開発のリーダーに指命したのだ。

大規模な開発のため、すべてを自社で開発するのは難しく、協力会社の力を借りてのハイブリッド体制でプロジェクトがスタートした。開発のピーク時、増田は社員と協力会社を合わせて数百人を率いることになる。 

増田 「正直、きつかったですね。とにかく一緒に働くメンバーからの信頼を勝ち得るのに苦労しました。協力会社もウォーターフォール型とアジャイル型の両方で、開発手法が異なります。技術的にも先端ツールを積極的に使ったので、初めて使う人もいる。その当時の私は実力不足で、それぞれのメンバーが置かれている状況の理解が足りませんでした。当然、開発スケジュールに遅れがでてきました」

増田は自身の考え方を変え、コミュニケーションとプロジェクトマネジメントの方法を抜本的に見直し、開発をジャンプアップさせたのだ。 

増田 「人は言われたからといって動くわけではありません。まず、リーダーである私が、あるべき姿を描き、明確に伝える。そして、事象や問題を整理し、解決するべき課題を抽出し、現実的な方法と手段を提示する。私が言ったこと、お願いしたことが有効だと実感してもらって、初めてワンチームになってゴールを目指せると痛感しました。

まだまだ模索中ですが、メンバーより数年先を見据えるリーダーとしてのあり方、そして、メンバーの将来に向けたキャリアパスや組織づくりに取り組んでいます」 

そして、増田はこの3年間で、GDC部のリーダー、部長、そしてIT部門も兼務する部長となった。

グローバル統一基盤の世界展開を開始。いよいよ全社に貢献するフェーズへ

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現在、最大のマーケットである日本において、新しいプラットフォームの導入は、徐々に完了しつつある。しかし、増田は「準備は整った。これからは、EC事業のみならず、全社に貢献できるフェーズだ」と話す。

増田 「今回のプロジェクトの最大の意義は、おそらくファーストリテイリング始まって以来の内製システムだということ。このプラットフォームの構築は、部分的にパートナー企業の力を借りたとはいえ、自社で初めて、最初から最後まで自分たちでつくったものなんです。

しかし、まだまだお客様にとってより使いやすいシステムを構築できるし、改善と進化に終わりはありません。今後は、ある国で行われた改善を、一瞬でグローバル全体にアップデートしてベネフィットを得られるという環境をつくりたいと考えています」

そのためには、グローバルヘッドクォーターで、増田と共に、プロダクトマネージャーやデベロップメントマネージャーを束ね、プロジェクトを推進するリーダーが必要だ。では、どういう人材を求めているのだろう。 

増田 「私が入社してすぐに気づいたのは、『やりきったか。やりきってないか』を常に問われる会社だということです。失敗を恐れて小さくまとまるより、自分の役割を超えてでも、熱意を持って何かをやりきる人が評価される。そして、次により大きな仕事を任せるんです。

何かをやりきるためには、最後まであきらめずに、矛盾や葛藤、時には自分の能力や経験をはるかに超えた難題に立ち向かっていかなければなりません。

『お客様にとって何がベストなのか。事業と全社にとって何がベストなのか』を考え抜き、社内外のあらゆるリソースを活用して、より難易度が高いプロジェクトや改革をやりきる人が、当社の考える『経営人材』です。ぜひ、そういう胆力のある方を新しい仲間に迎えたい」 

日本にとどまらず、グローバルでのEC事業の飛躍のため、ITプランニングやエンハンスプロジェクトは、まさにこれからだ。自らの可能性を広げ、世界一のECをつくるチャンスが、目の前にある。

▼グローバルデジタルコマース(GDC)部のコンテンツ

【第1回】 野田 隆広/ECを本業に。世界一のECをつくり、情報製造小売業を目指す

【第2回】 増田 直/グローバル統一デジタルコマースの基盤を自社で開発。全世界への展開を進める

【第3回】 岡山 拓/EC事業を新規展開国で立ち上げ。世界中のお客様がユニクロを待っている