最先端のデジタル技術を駆使してファイナンス組織と業務を改革する

ファーストリテイリングは海外展開のスピードを速めている。主要ブランドであるユニクロは、2019年にインドやベトナムなどに新規出店し、25の国と地域で店舗を展開。2019年にロシア、2020年にフィリピンでオンラインストアを立ち上げ、ほとんどの展開国と地域でEC事業も行っている。

ユニクロ海外事業の売上は1兆円を超えた。今後さらに、ユニクロの店舗やECのない新規国への展開を加速させるために、ファイナンス(企業会計・財務)部門でデジタルファイナンスプロジェクトが始動した。

このデジタルファイナンスプロジェクトをリードしているのが、永江竜太だ。当然、ファイナンスとITの両軸での推進が必要である。そのため、永江は計画管理部 次世代ファイナンスチーム部長、デジタル業務改革サービス部(一般的にはIT部門)コーポレート領域部長、IT戦略室室長を兼務している。

永江「すでに当社の主要ブランドのユニクロとジーユーでは統一のファイナンスシステムの導入が全世界で完了しました。これにより、グローバルでの会計と財務をリアルタイムで把握し、より精緻な経営計画(FP&A)ができるようになりました。おそらく、ここまで進んでいる企業は日本でもほとんどないと思います。

次は、いよいよ従来型のファイナンス組織と業務を、デジタルを駆使して改革し、グローバルでのデジタルファイナンス構想を実現させるフェーズです。これを最速で進めるためのプロジェクトが、『デジタルファイナンスプロジェクト』です。

真の意味で、グローバルでデジタルファイナンスを実現できている企業は、世界でも数社で、日本企業では一社もありません。私たちは日本初を目指しています」

最近よく耳にする「デジタルファイナンス」という言葉だが、ファーストリテイリングの目的は、単なるデジタル化とファイナンス業務の効率化ではない。次世代ファイナンスへの4本柱である、業務プロセス、システム、組織、人材、このすべての領域で、最先端のデジタル技術を活用し、全社を巻き込んで、これまでにない経営の高度化と提供価値の向上を実現させようとしているのだ。

今後の海外展開と意思決定を加速させるデジタルファイナンスプロジェクト

永江が言うように、ここまで規模が大きく、グローバルで一気に進めるデジタルファイナンスプロジェクトは、日本では類を見ない。ファーストリテイリングはこの大規模プロジェクトで、具体的に何を実現しようとしているのか。 

永江「デジタルファイナンスプロジェクトの目的は、グローバルのトップ企業のあるべき姿の実現です。従来型のファイナンス組織や業務のままでは、グローバル展開において、いずれ限界がくるのは明らかです。

具体的には、次の3つの実現を最速で進めます。

1つは、デジタル技術を最大限活用した、ファイナンス業務の極限までの効率化・標準化です。いま各国事業で行われているファイナンス業務の多くは、デジタル技術によって自動化できます。これまでは新規国で事業展開する場合、それなりの人数のファイナンスチームを送り込まねばならず、人数もコストも膨らんでしまう。それがボトルネックになって、新規国への展開を阻害していました。これを解消します。

2つめは、 完全に標準化された専門業務を自社センター(Shared Service Center)で運営します。私たちは25の国と地域で事業を展開しており、今後さらに事業国の拡大を加速化させていきたいと考えています。そこでタイムゾーンに応じて数カ所の自社センターを設置し、よりスピーディなファイナンス業務を行えるようにします。 今後、高度かつ専門性の高い業務であってもルーティン業務はグローバルで集約し、より効率化と生産性の向上を図っていきます。

3つめは、各国にはCFO機能のみを配置し、CEOと共にビジネスを推進する体制です。ルーティン業務は自社センターで行うので、各国のCEOとCFO機能は意思決定と判断業務に集中できます。これにより、お客様や社会の激しい変化にも迅速かつ柔軟に対応できる、戦略的な経営が可能になります」 

つまり、デジタルファイナンスプロジェクトは、ファイナンス領域の組織はもちろん、業務プロセスもシステムも、すべてを変革するプロジェクトなのだ。

日本発で日本初。グローバルでデジタルファイナンスを展開するフェーズへ

デジタルファイナンスプロジェクトは、ある意味、アパレル企業のイメージを打ち壊すプロジェクトでもある。ファーストリテイリングは世界第3位のアパレルで、すでに営業利益と時価総額で世界第2位。とはいえ、服という身近な商品と、デジタル化によるファイナンス領域のイノベーションは、企業イメージとして結びつきにくいようだ。

しかし、ここ最近のファーストリテイリングの最先端デジタル技術を活用した改革には驚くべきものがある。デジタルファイナンスだけでなく、サプライチェーンやデジタルコマースにおいても、ビッグデータやAI、ロボティクス、IoTなどで世界トップクラスの先進企業とパートナーシップを組み、すさまじいスピードで進化を続けている。

永江「当社のデジタルファイナンスへの取り組みは、世界的にも先進的です。ここまで思い切って舵を切れるのは成長を続け、2兆を超える売上があるからです。今後の成長・拡大のためには、先進的なデジタル技術は欠かせません。

だからこそ、いま私たちに必要なのは新しい仲間です。 外から新しい知見を取り入れたい。そのために、これまでの採用基準とは異なる、新しい人材を世界中から広く求めています」

では、永江が考える「新しい人材」とは、どういう人材を意味しているのだろうか。

ある意味、永江自身がその人物像を体現している。永江は工学部を卒業後、BIG4系コンサルティングファームに入社し、在職中に公認会計士試験に合格。その後、大手監査法人を経て、2012年にファーストリテイリングに入社した。

永江「これまで当社のファイナンス部門では、企業内会計士や経理・財務に精通した人材を採用してきました。もちろん、この方針は今も変わりません。しかし、これからは業務プロセス分析やITなどデジタル技術に強い、新しい仲間の力が必要です。

グローバル統一のファイナンスシステムの全世界導入が完了した今、デジタルファイナンスへの土台は整いました。これからは、実際にこの基盤を活用・改善して、日本発で日本初の、グローバルでのデジタルファイナンスを展開するフェーズです。

様々な難しい課題がありますが、この難題を乗り越えて一緒に実現したいと強い思いのある、新しい仲間とチャレンジしていきたい。そのためには、多様かつ、これまで当社にはいなかったような新しい才能を持った人を求めています」

多様な才能を持つ新しい仲間と共に未来のファーストリテイリングをつくる

デジタルファイナンスプロジェクトは、「未来のファーストリテイリング」をつくるプロジェクトと言える。だから、グループCFO直轄の最重要プロジェクトなのだ。

日本企業では前例のない、グローバルで最適化されたファイナンス組織の構築に向けた初期フェーズにあるため、組織としても個人としても裁量権が大きく、グローバルで活躍する機会も多い。

永江「私たちは新しい仲間から多くを学びたいと考えています。デジタルファイナンスへと走り出した私たちに、いかに業務プロセス改革やデジタル技術を活用していくかを示し、組織全体のレベルアップを図ってほしいと考えています。

その一方で、新しい仲間になる皆さんにとっては、豊富なリソースや最先端ツールを活用できる環境や、世界トップクラスの先進企業との協業は、これまで培った能力を発揮しながら切磋琢磨し、自分自身をより高めていけるチャンスではないでしょうか。

私自身、2012年に入社したときは、当社の未来をつくるプロジェクトをリードすることになるとは考えてもいませんでしたし、当社が世界的にも先進的なデジタルファイナンスを構築するまでになるとは思ってもいませんでした」

永江がファイナンス部門とIT部門を兼務してデジタルファイナンスプロジェクトをリードしているように、部内のメンバーのファイナンスとデジタル技術の両方の知識と経験を増やして、本人のキャリアパスの広がりと組織のレベルアップを同時に図ってもらいたいと考えている。

永江「デジタルファイナンスプロジェクトによって、ファーストリテイリングは、日本における次世代グローバルファイナンスの先駆けとなっていくでしょう。私たちは常に新しいチャレンジを続け、これまで成長してきました。ファイナンスにおいてもこの新しいチャレンジで、スピードを落とすことなく、グループ全体でのグローバルな持続的成長を目指していきます」 

数年後、「ファーストリテイリングの躍進は、いち早くデジタルファイナンスを実現させたからだ」と言われる可能性は高い。デジタルファイナンスプロジェクトとは、次世代のグローバルファイナンス、そして次世代CFO機能を創り出すことなのだ。