中国と香港で成長するユニクロ

主要ブランドにユニクロを抱えるファーストリテイリングは、あらゆるお客様に最高の顧客体験を提供するために「情報製造小売業」への進化を目指している。中でもサプライチェーン改革はこの進化をより確固なものにするもっとも重要な取り組みだ。重要なマーケットである中国と香港で、この改革をリードしているのがパトリック・コー。彼のミッションは、いまだどの企業も成し遂げていない“究極の物流システム”の構築だ。

パトリック 「私たちは年間13億点を全世界で販売しています。ユニクロがつくるLifeWearとは、生活をより豊かにする服。年齢、性別、国籍、人種を越えた、あらゆる人のための服。シンプルで快適な、繰り返し着られる、高品質で洗練された服です。私が担当する中国と香港だけをみても、毎年急激な成長を続けています。

しかし、既存の物流システムではこの成長スピードには追いつけず、思うように対応できません。先端テクノロジーと最高の才能を集結して、物流改革をし続けなければならないのです。中国と香港の物流チームは、ファーストリテイリンググループだけでなく、社会にも大きな影響を与える可能性を秘めた、最先端の物流システムの実現を目指しています。

サプライチェーン改革では、最先端の技術を持つ世界の先進企業との協業で、企画・製造・物流・販売のすべてのプロセスで、世界中から集まってきた膨大なお客様情報を一気通貫で可視化することを目指しています。これまでとはまったく質もレベルも違う物流改革への挑戦に、心が踊っています」

多様な人物がグローバルに活躍できる社風

ファーストリテイリングが急成長を続けているのは、彼らが言うところの「全員経営」にあるのかもしれない。とてつもなく高い目標を掲げ、全社一丸となって達成に向かっていく。「その背景には社員と経営陣が共有する強い信頼感がある」とパトリックは言う。

パトリックは物流責任者として約50名のメンバーを束ね、明確なゴールを提示し、グローバルな成長を支える、最高の物流チームを築き上げようとしている。

パトリック 「私は世界的な物流企業を経て、7年前にファーストリテイリングに入社しました。入社してまず驚いたのは、すぐに私のことを信頼してくれたことです。過去の会社では、本当に信頼できるか見極めるために、かなりの時間をかけます。FRはまったくそんなことはありませんでした。すぐに私を受けいれてくれました。

当時はボトルネックが発生していて、遅配することもありました。そこで、私は物流パートナー企業を含めた大きな変更を提案したのです。一般的な企業では、こうした業務への影響も大きい案件は、通常、決断を下すまでに数カ月はかかります。

しかしFRは、1~2回の経営会議を行い、わずか2週間で私の提案の実行を決断したのです。官僚主義や大企業病の真逆です。この経験で、私は会社と上司からとても信頼されていて、私への会社と上司からの信頼がとても高く、大きなビジョンと目標を追求する自由と勇気を与えてくれると確信しました。

もし、より高い目標に挑戦し、ハンズオンで課題解決と成果を出したいと考えている人ならば、絶好の環境だと思います。多くの会社では業界でトップ5~10に入っていればいい、という空気が漂っていたり、高い目標を掲げていても、社員の士気を挙げるだけが目的だったりもします。

入社したばかりのころは、FRはなぜ、アパレル領域で世界ナンバーワンになるという、とてつもなく高い目標を目指しているのが不思議でした。でも、今はわかります。世界ナンバーワンを目指すことは、『we are all in this together』と互いへの信頼を育むからです。

だからこそ、私たちは誰もやっていないことに挑戦し、実現させ、成長をし続けられているのだと思います」

時代と3PLの先をゆく理想の物流改革

パトリックはややオーバーではあるが、「物流はより良い未来への解決策になるかもしれません。人間がもっとも効率的な物流システムを構築して運用するならば、社会も文明もはるかに持続的に成長することができる」と言う。だから、FRに入社したのだ。

パトリック「私はFRで働くことを、とても楽しんでいます。物流企業にいたときは企業や顧客の視野はいささか狭く、運送や倉庫、配達など、個別の問題ばかりに集中しがちなことに気づきました。サプライチェーンをひとかたまりの有機的で動的な存在と見なしていなかったのです。

そのため、本質的な物流改革ができず、機会を逸していました。私はFRに入社して、こうした既成概念を打ち壊して、ハンズオンで変えていきたかったのです。

私は物流企業と荷主の両方の視点で物流の世界を見てきました。その経験を評価されて、今物流改革プロジェクトで当社の物流システム全体を新たに構築する責任者を任されています。

当社はサプライチェーン改革を加速させ、大規模投資もしていますから、既存の物流企業では不可能だった、究極の物流システムの実現できます。この物流改革をリードすることができるのですから、こんなにやりがいのある仕事はありません。

それと同時に、FRが年齢、性別、国籍などのバッググラウンドに関係なく、グローバルでポテンシャルの高い人材に、信頼して大きな仕事、新しいビジネスの開拓など、重要なポジションを任せるカルチャーに誇りを持っています。

私は大学で物流を学びました。驚くことに、理論上の最適概念と思われていた理想の物流が、FRでは現実のものになりつつあり、すごくエキサイティングです。

『無駄なものをつくらない、無駄なものを運ばない、無駄なものを売らない』を追求することで、理想の姿が現実になります。そして、適正な商品を、適正な時期に、適正な場所、適正な量をお客様に届けることができます。

私たちはお客様の声を起点にしたビジネスをし、サステナブルな社会のための最高の効率性のある物流システムの構築を目指しています。こうした考えからもわかるように、私たちはワンシーズン着たら終わるファストファッションをつくっている会社ではありません。LifeWearの提供を通して、最高の顧客満足とサステナブルな社会への貢献の両方を実現していきます」


究極の物流システムが持続可能な社会に貢献する

FRはLifeWearを通して変革をもたらすと同時に、パトリックの使命感もより強いものになっている。FRでの経験は洞察力を高め、彼自身を変えた。そのためか、世界経済は前例のない危機に直面しているが、パトリックはポジティブにビジネスを通して社会に貢献することを考えている。

パトリック「FRのユニークさは、すべてにおいて最高を目指すことと、コアバリューへのこだわりです。これは、アジア発のグローバルブランドであることを際立たせています。

私がFRへの入社を決めたとき、ある知人は、日本の企業は硬直的だから日本人以外が働くのは難しいんじゃないかと、冗談めかして言いました。しかし、これは完全に間違っています。日本の旧態依然の会社とはまったく哲学や行動原理が異なるからです。

とにかく、スピードが速く、決断は大胆です。本当に自由で、強い信頼で結ばれています。これらはすべて、最高の品質と効率を追求することから生まれています。

『無駄なものをつくらない、無駄なものを運ばない、無駄なものを売らない』というサプライチェーン改革で掲げているのも、サステナブルな社会の目指す方向と合致します。本当に人や社会のためになるビジネスだと実感できます。

だから、よく自分に『ベストを尽くしているか?』『本当に社会に貢献しているか?』と投げかけています。こうした自問自答を繰り返していると、私の視点とアビリティが広く、深くなっていくと感じています。

中国はまだ欧米や日本より人件費は高くありません。そのため、ただ単に労働者を増やせば、安易な短期効果として業績もさらに良くなるかもしれません。しかし、私たちは自動化倉庫を含めて、物流の各プロセスで先端テクノロジーの導入を進めていきます。なぜなら、それが限られた地球資源を効率的に、そして持続可能に活用する一つの方法だと考えているからです。

今、新型コロナウィルスパンデミックで、最悪の時期には世界各地で人や物の移動に深刻な影響が出ました。より安全で平和な持続可能な世界のために、私は物流が重要な鍵を握っていると思っています。だからこそ、物流改革に果敢に挑んでいきたいです」