100時間の瞑想合宿で湧いてきた「海外で働きたい」という気持ち
マレーシアに渡る前の大友は、日本で企業向けのヘルプデスクや、オンサイトサポートを提供する業務のほか、外資系金融機関でヘルプデスクの立ち上げに携わってきました。忙しく働き、疲れ果てていたところを見かねたインド人の同僚に「瞑想に行ってきたらいい」と勧められて参加したのが、当時流行っていた100時間の瞑想合宿でした。
大友 「自分と向き合う中で、潜在的に抱えつつも抑え込んでいた『海外で働きたい』という気持ちが湧いてきました。日本の職場にも外国人の同僚がいたので、よりグローバルな環境を経験したいという気持ちはもともと持っていましたが、帰国子女でもなければ留学経験もない、語学力にすごく自信があるわけでもない私が外国で働くなんて夢のまた夢だと思っていたんです」
自分が「外国で働きたい」という気持ちを持っていたことを再認識し、やりたいことがクリアになると、海外勤務に関する情報が自然と目に入るようになります。そんなとき、偶然見たタイのフリーペーパーに掲載されていた、日本語でのシステム管理者の求人に応募すると、話はとんとん拍子で進み、採用が決まります。しかし2011年の3月、タイへ移住する準備を進めていたところに東日本大震災が発生し、採用は白紙になってしまいました。
大友 「半ば諦めかけたところで、マレーシアにあるグローバルIT企業で、日本語話者のITヘルプデスクの求人を見つけて応募しました。職位としてはキャリアダウンになるので考え直してはどうかというエージェントの助言もありましたが、初めての海外就職でしたし、まずは経験を積みたいという気持ちで、そのままその仕事に決めました」
いざマレーシアへ!マレーシア人と日本人の仕事に対する考え方の違いに触れる日々
マレーシアに渡った大友は、企業向けのITヘルプデスクのシニアアナリストとして、ユーザーからきた問合せに回答する業務や、同僚のマレーシア人の日本語スキル向上を目指す品質管理の業務に従事した後、2020年 にDXCテクノロジー・マレーシアにARL(アカウントランリード)として入社しました。
大友 「ARLは、簡単に言うと日本のお客様とマレーシアチームの調整役です。ARLの仕事は、マレーシアの同僚の気持ちも汲みながらお客様の要望に応える必要があり、その調整が難しかったです。
たとえば日本では、発生した問題が解決しても、その原因を特定して再発を防止したり、次回はより迅速に解決できるようにプロセスを見直したりするのが一般的ですが、マレーシアでは『問題が解決すれば一件落着』というような、過程にはあまりこだわらない感覚があるため、はじめは戸惑いました。
仕事をする中で、マレーシアチームとお客様の言い分はどちらも理解できるものの、内容は相反するということもあり、その調整に苦労しました」
仕事に関する感覚のギャップには難しさを感じるものの、マレーシアでの働き方は、仕事のオンとオフがはっきりしていて、ワークライフバランスの取りやすさが良いところだと考えていました。
大友 「自分や家族との時間をとても大切にしていて、周りもそれを認めています。それとともに、マレーシアは多民族国家なので、お互いの違いを尊重し、譲歩し合う文化があります。職場ではお互いに心地良く仕事ができる関係を大事にしています」
大友のチームでは、同僚たちとの会食や、チームビルディングなどのイベントに、家族を連れて参加することが一般的でした。同僚の子どもたちも一緒に参加することも多く、ほのぼのした雰囲気があったと言います。
マレーシア人のムスリムたちは「Inshallah(インシャアッラー)(神のみぞ知るという意味)」という言葉をよく使います。物事に対して日本人ほど心配することが少なく、とにかく明るい人が多いのは、そうしたイスラム教の精神に拠るものかもしれません。
人によってカレンダーが違う?興味が尽きないマレーシアでの暮らし
マレーシアは日本との時差が1時間、1年中安定したトロピカルな気候です。人口は大きく分けてマレー(ネイティブ)系、中国系、インド系の3民族で構成されていて、信仰する宗教によって暦が異なります。それゆえ、民族によって祝日や新年が毎年変わるなんてこともあります。
大友 「おもに3つの民族が、それぞれの暦で暮らしているので祝日が多いです。祝日にはよく花火が上がりますが、足元で打ち上げられているのを見たときは驚きました。ほかにも、マレーシア国内のサッカー大会で自分の住んでいる州が優勝したときは、その州だけ翌日休みになったのも印象深いです」
食事は米文化ということもあり、「料理が口にあう」ということも多いと話す大友。
大友 「私は、朝はあまり量を食べませんが、南国フルーツにコーヒーが定番で、ランチはローカルのレストランや社員食堂でナシチャンプルー(ごはんに、おかずを数種類載せた1プレート料理)、夕食は日本食を自炊していました。マレーシアには外国人も多く暮らしているので、いろいろな国の料理を気軽に食べることができるのも魅力の1つです」
マレーシアのスーパーにはハラール(※)対応の食品が並んでいることが多いですが、最近は日本食コーナーが設置されているお店も多く、日本の食材を調達することもさほど苦労しません。
※イスラム教を信仰するムスリムが食べられるもの
ただ、お酒に関しては、宗教上飲む人が少なく、酒税も高めに設定されているため、近隣の東南アジア諸国と比べると高めの価格設定です。
住居は、日本と比べると安価で豪華な物件に住めるのが魅力だと話します。
大友 「何度か引っ越しをしましたが、広めの1LDKの高層コンドミニアムに住んでいました。物件にはプールとジムが付いていて、部屋にもスチームサウナが付いていました。マレーシアに移住してすぐのころは、ジャングルを切り開いたような街に住んでいて、会社へ向かう途中で目の前をイグアナが歩いているのを見たときは、さすがに叫んでしまいました(笑)」
街によって雰囲気に特色があり、自然豊かで穏やかな場所もあれば、クアラルンプールのような都会では高層ビルが建ち並び、きらびやかな雰囲気もあります。最近は古い建物を上手くアレンジしたお店も増えていて、多国籍で新旧織りなす不思議な魅力があります。
人生は一度きり。海外で働くことに挑戦して良かった!
スーツケース1つでマレーシアに移住し、すぐに帰るだろうと思っていた大友ですが、気づけば10年近くの月日が流れていました。
大友 「日本にいる年老いた母のことも気になっていましたし、このままマレーシアにいて良いものかと考え始めたころ、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、マレーシア国内もロックダウンを余儀なくされました。
2年近く続いたロックダウンで先行きも見えなくなったこと、またマレーシア国外からのリモート業務には制限もあり、マレーシアと日本を行き来することも難しく、帰国を決意しました」
日本に戻った大友は、DXCマレーシアや、仕事で関わっていたDXCジャパン双方の上司の勧めで、2022年3月にDXCテクノロジー・ジャパンに入社します。2023年1月現在はモダンワークプレイス部門で、航空業界のお客様のヘルプデスク業務を効率化するプロジェクトの一翼を担っています。そんな大友に、海外勤務に挑戦して良かったことを聞きました。
大友 「たくさんありますが、1番は、いろいろな国の友人ができたことです。今はみんなバラバラの環境になりましたが、人生の節目には各国から集まります。実際に、その友人のひとりが結婚式をあげるので、久しぶりに友人たちで集まります。とても楽しみです」
加えて、これから海外勤務に挑戦したいと考えている人、その中でもマレーシアを行先として検討している人には次のようなアドバイスを送ります。
大友 「海外で働くと、流れる時間の感覚が違ったり、日本では考えられないハプニングが起きたりするので、ある程度の忍耐力やサバイバル能力は必要だと思います。とりわけ、相手を尊重する付き合い方のできるコミュニケーション能力は重要です。
私が暮らしたマレーシアは、多民族国家で日本と異なる文化を経験することができます。その上気候も良く、物価も割安で暮らしやすい国なので、初めて海外勤務に挑戦したい人には適した国だと思います。言葉も第2外国語に英語を使用するため、日常会話ができればほとんど困りません。
使える言語が日本語だけだとしても、マレーシアの人たちはフレンドリーなので、知り合ったばかりでも親身になって相談に乗ってくれたり、助けてくれたりします。
仕事面で言うと、DXCマレーシアには日本語で業務を行う職種も複数あり、キャリアアップの機会もトレーニング環境も整っています。グローバルな環境で自分の力を試したい人にお勧めです」