組織のトップに立つ!経営者としての意識は無意識のうちに
DXCテクノロジー・ジャパンの代表として、営業、サービスデリバリーから管理部門まで、日本のビジネスすべてを統括しています。
学生時代から、自分はいずれ組織のトップに立つ経営者になるだろう、ならなければいけないと考えていました。なぜかはわかりません、自然に沸き起こる感じでした。生意気ですね(笑)。そのためか、高校では理系の科目が得意でしたが、経営も学びたいと考えて、大学で経営工学の道に進みました。入学してみると、インターネットが台頭してきた時代でもあったため、経営工学として「経営+IT」を学ぶことができました。就職活動の際は、自然とIT業界への道を選び、日本IBM(以下、IBM)に新卒で入社しました。
IBMではアカウントマネージャー、通信事業者向けソリューション責任者、最新ハードウェアのビジネス立ち上げなど、さまざまな経験をし、精力的に働いていました。ただ、当時のIBMは製品やサービス、ソリューションなどを兼ね備えた大きな複合企業だったため、社内の組織間の複雑な調整が必要で、自分の意思と権限で舵を切り、リスクをとってビジネスを進めていくことに限界を感じていました。
もっと自分の意思でリスクをとって、思い切ってビジネスを進めたい、単一領域を扱う企業であればそれがかなうのではないかと考え、IT領域の中で一番おもしろみを感じていた、ITサービスを専門とするCSCジャパンに転職しました。営業全体の責任を持つセールスリーダーとして、前職よりも権限を持ってビジネスを進めていく働き方に、やりがいを感じていました。
そうこうしているうちに、CSCはヒューレット・パッカード エンタープライズのサービス部門(HPE ES)と合併することになり、合併の話を聞いた半年後には、新会社としてDXCテクノロジーが発足しました。
合併後の第一印象は、異文化交流です。CSCジャパンはどちらかといえばベンチャー気質の外資系な会社でした。一方で、HPE ESは日本に深く根を張って成熟した、外資系ではあるものの日本的な組織。まったく違うカルチャーを持つ社員や制度が、突然クロスする感じでした。この独特の環境の中で、既存のお客様とのビジネスを継続しながら、新しくビジネスを拡大していき、そして新しい会社のカルチャーも作っていくことに、難しさ感じつつも、ワクワクしたのを覚えています。
異なるカルチャーを持つ2社が合併した直後の、会社の代表に就任
DXCテクノロジー発足の8カ月後、DXCテクノロジー・ジャパンの代表に就かないか、という打診を受けました。指名してもらえたことは有難く、また自分のキャリアの目標として若いころから思い描いていた、組織のトップについに!と嬉しく思った反面、不安を感じたことも事実です。
私のキャリアプランとしては、まずはもう少し小さな組織の経営者になり、ビジネスを拡大していくことを思い描いていました。しかし、想定よりもずっと大きく複雑な、しかも異文化の組織が合併したばかりの、まだ混沌とした状態の企業の経営です。多くの著名な企業が顧客であり、失敗することはできません。当然、不安もありましたが、新しいビジネスや新しいカルチャーを作っていきたい、挑戦したいという気持ちの方がずっと大きく、引き受けました。
それからは、チャレンジングな日々にワクワクしながら過ごしていますが、正直、苦労の連続でもあります。代表になる前までは1年かけて経験していたような量のハプニングが、3カ月ぐらいの間にぎゅっと凝縮されています。しかも、緊急度の高いハプニングばかりなので、即座に判断をし続けなければなりません。濃厚で、充実した日々を過ごしています。
DXCテクノロジー・ジャパンの経営をしていて、改めて最も強く感じるのは、ITサービスは人そのものである、ということです。社員のみなさんの成長が、ビジネスの成長につながることを実感しています。そのため、とくに会社のカルチャーの醸成には、大きく力を入れています。
DXCテクノロジー・ジャパンでは、会社のカルチャーを「大企業だけどベンチャー」「身近なグローバル企業」「懐の深い自己実現機会」「千人千色の活動フィールド」「ちょうど良い温度感」「らしさの尊重」という6つの特徴で表しています。これらの特徴は、日本の社員の皆さんが、自分たちのカルチャーの良いところを書き出して言語化したものです。2021年に言語化・図式化しました(下図参照)。
自分たちでカルチャーをまとめ、それを繰り返し自分たちで見返して実践することで、このカルチャーが強いものになり、浸透して、会社が良い方向に進んでいることを肌で感じています。実際、2022年1月には、働きがいのある会社の調査を行う専門機関Great Place to Work ®から「働きがい認定企業」に選出されました。また、私もこのカルチャーを意識して経営に取り組むようになり、これが経営に大きくプラスに働いています。
カルチャーにフィットする、ミニマム・バイアブル・プロダクト(MVP)経営
カルチャーを意識して経営を始めて再認識したことは、当社は最小駆動単位で何かをやっていく経営(社内ではMVP経営と呼んでいます)が、フィットして機能する、そしてそれができる稀なIT企業であるということです。新しいビジネスでも、社内での新しい取り組み、たとえば社員育成プログラムやプロセス改善などでも、何かをやってみたいと思ったら、最小駆動単位で、ともかくやり始めることを推奨しています。
たとえば、あるお客様の担当チームで、VRアプリケーションを開発して新サービスを始めてみたいという案が出たら、とりあえず小さな投資で開発してみるのです。やってみて、これはビジネスにならないとわかればそこでやめればいいし、上手くいって大きなビジネスになると判断できれば、大きく投資して、他のお客様への展開も考える、そんな感じです。
最初から精緻な絵を描いて大きな体制と投資を用意しようとしがちですが、できるだけ小さく、そして意味のある、最小駆動単位で始めるのです。
私が代表となった当時からこの形で進めてきたわけではありません。最初から壮大な計画に基づいて大きな体制で挑戦してみたこともありますが、ベンチャーのように、一つひとつ素早く試していくこのMVP経営の方が、当社にはうまく機能することがわかってきました。この成功の大きな要因の1つが、カルチャーとの相乗効果です。
前述した通り、当社のカルチャーに「懐の深い自己実現機会」という特徴があります。MVP経営では、社員が「こういうことをやってみたい」と考えたら、「まず小さくやっていいよ」と実現できる環境を与えようとしますが、これがまさに、さまざまな場面で自己実現の機会を提供することにつながっています。
また「千人千色の活動フィールド」という特徴との相乗効果もあります。エンドツーエンドのITサービスで、あらゆる領域をサポートしている当社には、アプリケーション、クラウド、セキュリティなどさまざまな部門が存在します。社員が部門を越えて連携するプロジェクトも多く、自身の所属する部門以外の領域に興味を持つケースも少なくありませんが、そうした場合でも転職せずに、自社内で小さく挑戦し始めるフィールドを用意し続けることができるのです。
MVP経営の特徴とカルチャーの相乗効果によって会社が活性化し、進化していることを、ここ最近とくに感じています。
エンジニアが目をキラキラさせている会社を目指して
「DXCテクノロジー・ジャパンを、エンジニアが、そしてそれをサポートするすべての社員が、毎日目をキラキラさせている場所にする」というのが、私の経営者としての2022年現在のビジョンです。
私は、社員の皆さんが楽しいと感じながら働ける環境を、会社から提供できるように経営を進めていますが、会社からそういった環境を提供するだけでなく、社員の皆さんが自分自身でも楽しい環境を作っていける、サステナブルな組織にしていきたいと考えています。環境やビジネスを含め、何か新しいものを、社員が常に自発的に作り出している組織を実現したいのです。
楽しさを感じるポイントは人によって違います。大きなビジネスを実現することにワクワクする人もいますし、一日の中に小さな変化を加えることが楽しく、できた!と笑顔になる人もいると思います。たとえば、IT運用業務を担当している方が、ある1つの作業のやり方を少し変えてみて、スムーズな運用を実現することができた、そういった小さな変化を日々重ねていくことが楽しい、今日よりも明日が少しでも楽しくなることが好きといった感覚を、尊重したいと考えています。
社員一人ひとりが自分にあった楽しみ、つまり成長の機会を自発的に作り出し、目をキラキラ輝かせている環境──前述した当社のカルチャーの特徴に「らしさの尊重」と「ちょうど良い温度感」というものがありますが、まさにこれです。社員一人ひとりが自分らしさを尊重して、それぞれにとってちょうど良い温度感でワクワクできる環境を、自発的に作り続けている組織を実現したいんです。
ITサービスは人そのものですから、このようなカルチャーによってサステナブルな組織に近づき、それによって社員の皆さんが成長し続けることによって、ビジネスも大きく成長し続けていくと私は考えています。そして、社員とビジネスが共に成長し続ける自然な循環が成り立てば、おのずと知名度も大きくなっていくと考えています。社員が目をキラキラと輝かせていることが、当社にとって最高の宣伝手法であると信じています。