原料から出荷までのすべての工程で医薬品の品質を守る責任感と誇り
私は2023年2月現在、鈴鹿工場の品質保証部に所属しています。品質保証部のミッションは、シンプルに言えば「できあがった医薬品が、出荷しても問題ない品質レベルに達しているのか」を判断することです。
医薬品製造というのは、まず原料を入荷するところから始まります。その後、錠剤や散剤などに製剤化し、包装して完成し、その後、出荷されます。この一連の工程が適切に管理されているかを製造部門から独立した立場で管理・統括するのが私たち品質保証部の仕事です。
製造部門が製造工程でとっている製造記録や試験部門が実施・記録した試験内容を確認します。最終的に、規制当局に提出している規格どおりの薬になっているのかを判断します。こうして、品質が担保された薬剤のみが患者さんに届けられる仕組みになっているのです。
「品質保証」と言うと、多くの方がすごくお堅い仕事だというイメージを持たれるかもしれません。確かにさまざまなデータを見て、各部署と議論を重ねていくので、ハードルが高い側面もあるとは思います。でもシンプルに言えば、作られた薬を自分が飲みたいか。もしくは家族に薦めたいかということを考えて、薦めたいと言えるものを世に出していく。そういう仕事です。
品質保証部は、これらの仕事を試験グループと品質保証グループにわかれて担っています。試験グループは、実際の試験を実施するポジション。一方の品質保証グループは、製造・試験が適切に行われているのか、また試験結果が適切なものであるのかをチェックするポジション。私は後者の品質保証グループに所属しています。
私の所属する品質保証グループは、鈴鹿工場で取り扱いのあるすべての医薬品の品質保証を担っており、糖尿病・精神神経系の薬など、100種類を超えるたくさんの薬を扱っています。グループ内は、製造工程ごとチームにわかれていて、私は製剤工程を担当するチームにアサインされています。医薬品製造において日々発生する事象に対して、是正や改善に向けて取り組んでいます。
チームメンバーは8人いて、40代のメンバーが中心です。社内のいろいろな部署を経験してきた経験豊富なメンバーが集まっていて、みなさん頼りがいがある仲間です。 薬の品質を保証するという仕事は、非常に責任重大な仕事です。薬を服用する患者さんの方たちの安心と安全に関われることにやりがいを感じています。
ハイレベルな環境で新しい仕事に挑戦するため、転職を決意
私は2021年に住友ファーマに入社しました。それまでは、別の医薬品メーカーにて7年ほど、今と同じ品質保証の業務に従事してきました。
住友ファーマへの転職を決意したのには、ふたつの理由があります。
ひとつは、GMP(Good Manufacturing Practice)のレベルの高さです。GMPとは、医薬品製造のための要件をまとめた国際的な規範のことなのですが、住友ファーマはそれを高いレベルで遵守していると、入社前から聞いていました。
GMPのレベルが高いメーカーとは、「医薬品の品質に対する高い意識と、自分の担当業務だけでなくそれに関連する幅広い知識や経験を有しているプロフェッショナル性の高い社員が多くいる組織」だと、私は考えています。そういったハイレベルな環境に身を置いてみたいと思い、当社を志望しました。
もう一つは、先発品を手掛ける新薬メーカーだからです。
前職では後発品(ジェネリック医薬品)を担当していたため、先発品と後発品とで、製造にどのような違いがあるのかを学びたいと常々思っていました。当社は先発品を取り扱っているので、そこに魅力を感じましたね。
「困ったら、必ず誰かが手を差し伸べてくれる」温かく、働きやすい雰囲気
これまでの業務で、特に印象的だった仕事は、少し前に担当したある案件です。
担当した品目の製造において、規格に合う製品が完成しないという事態に陥りました。いろいろな可能性を精査し検討した結果、最終的に、原材料の部分に問題があることが、明らかになりました。
この答えにたどりつくまで、原材料を扱う部門や、製剤を扱う部門、そして、生産技術部門など多くの部署と連携しました。連日、調査や話し合いを重ね、原因を見つけ出してからも、今後の対策について、みんなで考えていきました。大変な仕事ではありましたが、他部署とも連携しながら、医薬品の品質を守ることができ、大きなやりがいを感じてとても印象に残っています。
住友ファーマに入社し、いろいろな社員と関わる中で感じているのは、みなさんの知識や経験の豊かさ。一人ひとりが、多様な知識を持っていることに驚かされます。何か業務上の悩みがあって相談したときにはすぐに聞いてもらえるし、必ず誰かが解決の道しるべを示してくれる。いつも近くのメンバーが手厚くサポートしてくれるので、本当にありがたいです。特に入社してすぐのころには、周りの方々にたくさん救われました。
本当にみなさん人が良くて、いろいろと聞きやすい雰囲気があって、いい会社だなと思います。私はコロナ禍で入社したため、入社当初は会社にちゃんと馴染めるのか心細く思っていたのですが、みなさんのおかげで、人間関係にはなにも苦労することなく働けています。
コミュニケーションを丁寧に取り合い、常に納得した上で仕事を進める雰囲気があり、上下関係もあまり厳しくないので、すごく働きやすい組織ですね。
「薬は、地球の裏側の人まで治せる」学生時代に出会った言葉が活力に
私が医薬品メーカーに入ろうと思ったそもそものきっかけは、祖父が糖尿病を患っていたことでした。祖父の姿を見ていて、将来は病気を治す仕事に携わりたいと思ったのです。大学では、生命工学を扱う研究室に所属し、研究に励みました。
その当時、他大学の先生の講演を聴き、そこで、忘れがたい言葉に出会います。それは「お医者さんは目の前の人しか治せないけれど、薬であれば、地球の裏側の人まで治すことができる」というもの。この言葉を聞いて、医薬品業界に携わりたいという決意を抱いたことを覚えています。
今は鈴鹿工場での品質保証業務に従事していますが、いずれは本社組織で、品質保証の業務に取り組みたいと思っています。本社組織では、国内のみならず、海外子会社の製品を含め、住友ファーマグループ全体の製品を取り扱うことで、全世界に関係する仕事に取り組みたいと考えています。
最後になりますが、品質保証の仕事でおもしろいと感じることは、自分の信じた仮説に沿って、データを集めて、人を納得させていくことです。
関わる部署が多いので、多くの人と話をする機会があり、いろいろな知識や考え方を吸収できるのも、刺激的です。そして何より、自分の仕事が、安全な医薬品を世に出すことにつながる。それが結果として、社会や患者様の幸せに貢献することにつながっていく。責任重大な仕事である分、やりがいや達成感をたくさん得られる仕事だと感じています。