「苦しんでいる人を笑顔にしたい」身近な人の死をきっかけにがん創薬の道へ

▲会議室での1枚。人々の笑顔のため、日々のがん創薬研究に取り組んでいます。

私の価値観の軸は、「みんなを笑顔にする」ということです。昔から人を笑わせるような話をするのが好きで、小学生のときには芸人になることを考えていたこともあります。喜んでいる人、笑っている人を見ると、私自身も楽しくなるのです。芸人も含め「みんなを笑顔にする」仕事はたくさんあると思いますが、その中でも特に「苦しんでいる人を笑顔にしたい」と思い、創薬の道へと進みました。

様々な職業の中で、創薬の道を選んだ理由は主に2つあります。1つ目は私自身が薬に助けられた経験があることです。実際に私自身、子どもの頃は熱が出やすく、薬に度々助けられてきました。熱で苦しいときに、抗生物質や自分の栄養を高める薬を飲んで楽になったことを今でも覚えています。このように、幼少期から薬で病気や不調を治すことを身近に体験しており、薬の恩恵に与っていた私は、同じように苦しんでいる人に薬を届けたいと思うようになりました。 

2つ目は大勢の人を助けられるということです。疾患に苦しんでいる人を助ける一番身近な仕事を挙げるとすると「医者」であると思います。「医者」は目の前の苦しんでいる人を笑顔にできるという意味で本当にすばらしい仕事だと思います。その一方で、創薬は疾患に苦しんでいる人が目の前にいなくても、医薬品をという形を介することで世界中のたくさん人々を笑顔にできると思っています。

なお、このような考えの基盤ができたのは大学生の時です。大学の講義を通して、実際に感染症やがんで苦しんでいる患者さんが世界中にいることを知りました。もし薬を開発し、これらの病気を治すことができたら、多くの人たちを助けることができると思ったのです。

創薬と一口に言っても様々な疾患があると思いますが、私は特に「がん」に注力したいと考えています。その理由は、大学生の時に叔母ががんで亡くなったことに起因しています。叔母ががんを患ってから亡くなるまでの間、叔母自身がんによる様々な辛い症状に苦しみ続けてきましたが、その叔母を支える家族も心労が溜まり辛い思いをしました。私自身も苦しむ叔母を見続け非常に辛かったですし、何もできない無力感に苛まれました。

当時、同時期に大学の講義で日本国内のがん患者が非常に増加しており、死因の1位になっているということを学びましたが、これほどまでに苦しく辛い疾患なのかということを実感しました。そして叔母の亡くなった後、自分の家族と同じように、がんで苦しむ患者さんとその周りの人々を助けたいと強く思うようになりました。

学生時代から一貫してがんを研究 薬を創るために製薬企業の道を選択

▲実験室での1枚。学生時代に身につけた様々なスキルは今の研究にも活きています

学部は薬学部ではなく、工学部の化学バイオ工学科に所属し、抗体をつくるラボで研究していました。学士過程ではがんに関連する抗原に特異的な抗体を創る研究、修士課程ではがん幹細胞の研究、博士課程では薬剤抵抗性がん細胞の研究をしていました。

就職活動では、「薬を創りたい」という自分軸の基、製薬会社のみを受けました。その中でも当社に入社した決め手は、社員を「人財」というほど個々人のことをとても大切にしており、サイエンスに忠実で柔軟な会社であると感じたためです。座談会や面接を通じて社員の方々とお話しする機会の中で、自身の研究内容についてサイエンティフィックな深いディスカッションができたのが印象に残っています。就職活動の段階から感じた雰囲気は入社後もギャップがなく、とても働きやすいと感じています。

現在は、多種多様ながんをターゲットに、細胞や動物などを用いて抗がん剤の候補化合物の評価をしています。学生時代に学んだがんをはじめとするバイオロジーの知識・経験を活かしながら、仕事に取り組んでいます。

私の所属するがん創薬研究所内のグループは、一人ひとりが複数のテーマを持ち研究を進めています。がん創薬研究所では、私のように学生時代からがん研究をしている人は珍しいケースのように思います。植物を専攻していた方や、バイオインフォマティクスを学習してきた方など、さまざまなバックグラウンドの方々が集まっているのも当社の研究所の魅力です。

研究を進める上で、アカデミアや海外の子会社の研究者とも協働しています。COVID-19の影響で国内や海外の研究機関を行き来して研究を進めるケースは減ってしまっていますが、ウェブ会議で進めているプロジェクトの進捗報告や情報共有は日頃から行っています。多い時期では週に1回のペースで実施しているテーマもあります。

年次役職関係なく、純粋なサイエンスベースでディスカッションをできる環境

▲リフレッシュルームでの1枚。サイエンスが本当に好きな社員ばかりでディスカッションも弾みます

当社では、年齢や役職に関係なく対等な立場で意見を出し合い、サイエンスベースでの活発なディスカッションが可能な環境であることが、特に魅力的な特徴であると感じています。テーマリーダーは役割上、テーマを進めるための戦略を立てることになりますが、その戦略が本当に妥当なのか、科学的に間違っていないかなどについて、テーマのメンバーは、役職や入社年次に関係なくフラットにディスカッションする風土があります。

また、入社してからは、さまざまな分野を研究してきた同僚や上司から刺激を受け、自身の視野が広がりました。例えば、バイオインフォマティクスの専門性を持つ人とディスカッションした際には、自分にはない視点での解析法を提案され、新たな気づきを得ることがありました。また、学生時代は、基礎研究を重点的に行っていたので、臨床に近いところで研究されてきたバックグランドの人とのディスカッションでは、臨床目線でのコメントをいただけ、学びや気づきが多かったです。

サイエンスに忠実な人が揃っていることは、創薬研究において最も重要なことの1つであると私は思います。なぜなら、専門性と多様性の高いサイエンスがないと本当に良い薬を創ることはできないからです。したがって、そういった環境が整っている当社は創薬研究に向いており、とても働きやすいです。周りの研究員と日々サイエンスの話をするのがとても楽しく、創薬に対するモチベーションを高く保ちながら研究ができています。

私の一番の目標は、人々を笑顔にするために、革新的な抗がん剤を生み出すことです。一般的に、新薬開発は初期研究から薬ができるまでに約9~17年かかるといわれています。1つのテーマだけを進める取り組み方では、途中でそのテーマが中止になった場合に、路頭に迷うことになります。それを避けるために、複数のテーマを同時進行で進めていくことが重要です。PDCAサイクルを可能な限り速く回し、適切なタイミングでテーマのGo/No-go(進めるか中止するか)の判断をすることを意識し、一歩ずつ着実に目標へと向かっていきたいと思います。

「情熱」と「サイエンス」を大切に、抗がん剤の創出に挑戦し続けたい

▲動物室での1枚。細胞よりもワンランク上の、動物を用いた検討でも薬の種をしっかり評価します

昨今の製薬業界において、候補化合物が薬として上市される確率は、約0.03%、約3万分1とい言われています。その中でがんの治療薬をつくることはとても難易度が高いですが、それを補って余りあるほどのやりがいもあります。真に革新的な抗がん剤が上市できれば、世界中の多くの患者さんとそのご家族を助けることができます。そのため、長い期間をかけてでも、どうにかして多くの人を助ける抗がん剤をつくりたい、という想いは非常に強いです。

その上で自身のモチベーションをコントロールすることは、この仕事においてとても重要だと考えています。研究に失敗は付きものです。失敗を正しく分析し次の研究に活かすことはもちろん大切ですが、失敗の度に落ち込んでいると心労が溜まり精神的にもよろしくありません。ある程度の失敗は割り切って、「◯◯をしたい」と自分の軸をしっかりと保持して、研究を進めることが大事です。

当社に入社してくれる学生の皆様も、自分がやりたいと思うことを自分自身の軸としてしっかり持ち、それに対するやる気を高く保てることが最も大切であると思います。研究分野のバックグラウンドは研究員によって様々なので、ご自身のバックグラウンドはあまり気にする必要はありません。会社では創薬について学ぶ教育・研修制度が充実しているので、がんを研究していなかった方でも、入社後にがんについてしっかり学ぶことができます。「情熱」と「サイエンスについて楽しく語れること」が、何より大切なのではないでしょうか。

また、当社は初期の萌芽的な研究に対して、とてもポジティブな会社ということも入社してからずっと実感しています。やる気と情熱があり、サイエンスベースでロジカルに考えることができていれば、アカデミアに近しいレベルでいろんなことに自由度高く取り組める環境が整っています。

私自身まだまだ勉強中ですが、これからはテーマの立ち上げから臨床試験までの、創薬の一連の流れを学び理解し、経験を積んでいきたいです。将来的には、自分自身でテーマを立ち上げてそのテーマのリーダーとして主導的に研究開発を進め、一日でも早く患者さんに画期的ながんの治療薬を届けることのできる研究者になれるように精進していきます。