患者さんの命を守る大事な薬。安定した品質で生産できるように奔走する日々

▲安定した品質を保証するには実験したり現場を見たりやるべきことがたくさんあります

私は現在、大日本住友製薬の生産本部で働いています。生産本部の中でも、生産技術部製剤技術グループという部署におり、主に工場で錠剤や注射剤、坐剤などを作る際の製造方法を確立するのが仕事です。

大日本住友製薬の生産本部の中で、基幹工場である鈴鹿工場では多くの製品が生産されています。私たちの部署では、実際にどんな製造方法で薬を製造していけばいいか、実験を重ねながら検討しています。患者さんの健康を守る大事なお薬ですので、どの季節でも、どの製造担当者でも、同じ品質の錠剤を作ることが必要不可欠です。安定性のある生産を叶えるためにも、製造方法を作り込みます。

製造方法の確立のほかには、既にある工程の生産性を上げるための取り組みも行っています。多品種の薬の製造を行いつつ、一品種あたりの製造量はそんなに多くはない「少量多品種」が当社の特徴なので、さまざまな品種を効率よく製造する必要があります。つまり、製造スピードを上げていくことが、当社にとってはとても重要です。

工場で錠剤が完成するまでには、基本的に5~6の工程を経ていきます。原料となる粉を量るところからスタートし、液体を加えて顆粒にし、型に入れ、杵と臼で固めます。錠剤をコーティングして外観検査したら完成。例えば、杵と臼の稼働スピードを上げると品質が変わることがあるため、品質に問題がない条件を現場の方と協力して調整しています。各工程をスピードアップさせることで、全体の製造時間の短縮を目指しているのです。 

機械を速く動かす取り組みのほか、経年で製造設備が使いにくくなってきた場合は、整備管理部門と連携して、新しい機械を導入することもあります。スムーズな生産のために、さまざまな工夫をしているところです。

私が今いる製剤技術グループは、マネージャーを含めて15人ほど。同じ生産技術部には、他に、薬に入れる有効成分を製造する原薬技術グループ、製品の包装工程を作る包装技術グループ、そしてできあがった製品の品質をチェックするための試験法を考える試験技術グループがあり、これらの3グループと関わり合いながら、一体となって薬の生産を支えています。

ヘルスケアとものづくり。前から興味のあった2つがこの仕事には揃っていた

▲オフは会社の近くにある鈴鹿サーキットで、会社の先輩と車のレースを見て楽しみます

大学時代、私は応用生物学を専攻していました。生物学の中でも、とくにヘルスケア領域に興味関心があり、大学院では、ショウジョウバエという昆虫を人間のモデル生物として、老化・エイジングの研究をしていました。

その延長で、就職活動の際はヘルスケアに関わることができる企業を中心に探していましたが、一方で昔から手元にあるモノがどのように製造されたのかに興味があり、工場見学で工程を見るのも大好きでした。広い意味での「ものづくり」に強い関心があったんです。

思い出深いのは、大学時代に、微生物学の授業としてビール工場やウイスキー工場を見学したこと。ラボで開発された工程が、工場というダイナミックな場所で何倍もの規模になって再現されていることにワクワクし、ものづくりの面白さを再確認したことを覚えています。

ヘルスケアとものづくり。その2つの興味が就職活動の軸でした。そんな私にとって、大日本住友製薬の製剤技術グループは、まさにピッタリの仕事という感じでしたね。(F1と美味しいもの好きの私にとっては、サーキットがあって、名古屋にも近く松阪牛も気軽に楽しめる鈴鹿という街は、働く場所としてピッタリでした(笑))

私は薬学部出身ではありません。薬学の基礎知識はなく、未知の領域の仕事をすることになると思うと不安はありました。でも、実際に入社してみて感じたのは、薬学領域の仕事だからといって、薬学部出身であることが必ずしも重要ではないのだということです。私にとっては大学での経験より、実際の業務を通して経験を積み上げていくことが、結局は重要でした。

入社時は「右も左もわからない」という状態でしたが、教育係の先輩に一から丁寧に教えてもらい、自分の知識を増やしていくことができました。また、少しでも業務をスムーズにしようと、工場で生産を担っている現場の人に積極的に顔を見せにいくようにもしていました。おかげで現場の人とはプライベートな話題や共通の趣味についても気軽に話せる仲です。

このように、薬学部出身というベースがなくても、知識と経験を重ねていくことで今では問題なく仕事に取り組むことができています。

ずっと興味のあった、ヘルスケアとものづくり。その2つの要素がある仕事に就けた今、やりたいと思っていたことがそのまま叶っているなと感じています。

自分が製造工程を決めた薬が、患者さんへ渡る瞬間が一番のやりがい

▲自分の考えた製法をミーティングでディスカッションすることもたくさんあります

新卒で製剤技術グループに入り、今年で9年目になりました。長い期間同じセクションで仕事に取り組んでいますが、変わらずやりがいを持って業務に取り組むことができています。一番やりがいを感じる瞬間は、自分で製造条件を決めた製品が実際に患者さんの手元に渡っていくときですね。

今までのキャリアで私は、「○○錠」と名前のつく商品を6品目ほど担当しており、その中には新製品も含まれていました。

長い期間をかけて治験を重ねて、有効性や安全性を確認していくため、新規医薬品の開発には、大抵の場合10年くらいかかります。実は、新製品を作るとなった場合、私たち生産本部に製品の詳細情報がくるのは、その長い期間のうちの最後の3年くらいのタイミングです。医薬品開発において「フェーズ3」と呼ばれている、最も多くの患者さんに協力してもらって治験を進めている段階ですね。

この、いわば最終段階に近いタイミングで関わり始めるため、短い期間で実験や初回の製造を完了させる必要があります。どんなにスケジュールがカツカツでも、絶対に遅らせることができません。新製品を世に出したいタイミングは会社の方針として決まっているので、それを目指してタイトなスケジュールの中であっても進めていくのです。

時間がないだけでなく、原料の量や実験にかけられる資金にも当然限りがあります。そのため、実験の回数はなるべく少なくする必要があるのです。最低限の実験回数で、必要なデータをすべて取るにはどうしたらいいのかを、頭を使って考えていきます。

ただ、これが結構難しいんですよね。たとえば、2回目の実験でトラブルが発生して、3回目の実験をどのように行うべきかをみんなでもう一度考え直さなくてはならない……など、上手くいかない場面も少なくありません。

大変な業務ではありますが、自分で何か方法を提案してそれが上司に採用されたり、トラブルが解消されたりすると嬉しいですね。自分の考えが間違っていないんだな、上司に認められたんだなと思えて、成長していることを感じることができます。これまで関わってきたたくさんの案件が、成功体験として自分の中に蓄積されているような感覚です。


 

目指すは経験豊富な頼れる存在

▲今後のキャリアは“走りながら“考えている最中です

やりがいのある日々ですが、9年目になって、自分の課題をひしひしと感じることもあります。

私の課題は、いつも目の前のことに巻き込まれてしまい、中長期的な目線を持てないこと。その点について、グループマネージャーやチームリーダーの方から指摘をもらうこともあります。目の前のことに必死になるのではなく、一歩引いて、全体を見て物事を判断できるようになることが、今の自分からもう一歩成長するために必要です。

会社の方針がどうなっているのか、今やろうとしていることは会社にとってメリットなのかデメリットなのかを考えられるよう、スキルアップしていきたいですね。

またいずれは、製剤の仕事だけではなく、他の部署も経験したいです。

現在の業務では、品質管理部門や薬事部門などと関わることが多々あり、他部署の方からも自分とは異なる専門的な視点でコメントをもらったり、一緒に製造方針を決めたりしています。今後、そういった部署で経験を積むことで、広い視野を持ったマルチに働ける人になれるのではと考えながら、今後のキャリアを具体化していこうとしている真っ最中です。

私自身は、マネージャーというよりは、実働部隊としてこの先も長く働いていくことに興味があり、そのためにも、業務で関わり合ういくつかの部署での経験を増やしていくことで、より視野を広げ、自分のスペックを高めていければと、今は考えています。