研究から開発まで幅広く関わっていく、「薬物動態評価」という仕事

▲薬物動態の仕事は幅広く、いろいろな部署を「つなげる」役割を果たします

2021年現在、私は薬物動態担当の研究職として仕事をしています。薬の候補品について、薬効や安全性を評価するのと同じように薬物動態を評価しています。

薬物動態評価というと少しピンとこないかもしれません。具体的には、薬が体内にちゃんと吸収されるか、目的の部位(たとえば癌細胞や脳内)に到達するか、薬がどれくらいの時間体内に存在するか、薬物相互作用がないか、といったことを評価しています。

こうした評価をすることは、しっかり薬効を発揮しながらも、安全性の高いより高価値な薬を探す上で重要な仕事です。

薬物動態の仕事は幅広く、いろいろな部署と関わりがあるため、三つの意味で「つなげる」という役割を果たしていると感じます。 

一つめは、創薬初期段階で専門性が異なる各部署をつなげる役割です。たとえば、薬理部門で薬が思ったより効かなかったというデータが出たときに、薬物動態の観点から解析して原因を突き止めます。

そして、脳にちゃんと入らなかったことが原因なので、脳にちゃんといくような化学構造にしよう、ということを化学部門に伝えることがあります。このように、有効性と化学構造について、血中濃度を介してその二つをつなげることがあります。

二つめは、創薬初期段階と創薬後期段階をつなげる役割です。たとえば有効性が確認できた化合物は創薬後期段階を担う一つの部門である、製剤部門に渡されます。化合物を錠剤などの「薬」のカタチへ製剤化していく部分に関しても、薬物の吸収に関わる内容なので、製剤部門の担当者と密に情報交換して連携しています。

三つめは、研究でみつけてきた薬の候補を開発部門につないでいく役割です。薬物動態では研究段階で候補品を見つけて終わりではなく、その後も長い期間にわたり、開発部門や製剤部門と協力しながら薬に携わっていきます。 

たとえば、臨床試験でヒトの薬物動態評価をするにあたって、実際に臨床試験を実施し血液サンプルを採取・評価していく主担当は開発部門です。しかし、薬物動態部門も開発部門の担当者と連携しながら試験デザインを相談したり、データを一緒に解析して次の計画を考えたりしながら臨床試験を一緒に進めています。

開発職と研究職でどちらの道に進むか、入社時に悩まれる人も多いそうですが、薬物動態担当の研究職でも臨床試験にかかわることができるという特徴があります。

ルーキーサポーター制度で、社会人として研究者として大きく成長

▲就活時は、薬物動態学の専門知識は高くなかったので不安もありましたが、社員の人柄に惹かれて入社を決めました!

大学時代の研究は、体内に投与してがんの有無を確認する「放射性イメージングプローブ」の開発でした。研究室では化合物の合成や薬理評価、動態評価とさまざまなことをしていたので、一連の創薬研究の難しさとおもしろさの一端を体験できたのかなと思います。 

このときは、薬物動態に特化した研究をしていたわけではなかったです。ただ、薬物動態分野では伝統的に放射性物質を使うことが多かったことから、この研究室から薬物動態に行く人が多かったため、わたしもその道に進むことにしました。

そういった背景もあり、薬物動態学の専門知識はそこまで高くなかったので、就職活動のときには不安もありました。

ただ会社紹介や面接を受ける中で、大日本住友製薬では現場の社員さんがでてきて、誠実で真摯に対応してくれたり、率直に質問に答えてくれたりしてくれました。そこから現場の雰囲気がわかり、この会社にはこういう人たちがいるんだな、ここならやっていけそうだなと親近感のようなものを感じたのを覚えています。 

入社してからは薬物動態学についていろいろと勉強しましたね。勉強してその本質を考えていくにつれて、非常におもしろいと感じ始めました。それと同時に、とても理論がしっかりした学問分野だと知ることができました。

また、教育体制として、ルーキーサポーター制度があったのがありがたかったです。この制度は、半年間、新入社員にマンツーマンで先輩社員がついてくれるという制度です。社会人としてあるいは研究で困ったことがあればその先輩社員に気軽に質問できるようになっています。

私の場合は、毎日の終わりに、ルーキーサポーターである先輩に5分くらいで今日の出来事や学んだこと、困っていることを伝えていました。また、実験の際は別の先輩に教えてもらっていたので、すぐに相談できる先輩社員が二人いて、お得感は二倍だったなと思います(笑)。

私自身も、入社三年目にルーキーサポーターを担当しました。私がサポーターをしたときは、実験もいっしょにやりましたね。そのときは自分の考え方を伝えると同時に、他の人の研究の仕方や考え方もどんどん学んでいくようにアドバイスしました。

一人一人が専門性を持つ「Think Tank」で新たな価値提供を目指す

▲当社では誰もが「オンリーワンの研究者」。年齢や役職に関係なく、専門性や知識が重視される環境があります

大日本住友製薬では、研究プロジェクトを進める際に「プロジェクト制」を採用しています。プロジェクトリーダーのもとに、各部署の担当者が集まってチームを形成するのですが、通常のチームよりも現場の担当者の責任や権限が強く、担当者同士の一体感も強いと感じています。 

私もその中の薬物動態担当として、ただ薬の候補品を評価してその結果を返すという受け身な対応ではなく、幅広い視点で考察して「もっとこうすれば良くなるのではないか」と新たな提案をするようにしています。

また、チームの一員として、安全性や薬理評価についても自分事として意見やアイデアを出すことを心がけています。これは私だけが心がけていることではなく、 “当社スペシャライズドな(特徴的な)新たな価値を提供しよう”という考え方で、当社の薬物動態部門の特徴、強みだと思います。

このスペシャライズドな新たな価値提供をするために、薬物動態部門では「Think Tank」という活動をしていています。何人かでチームをつくって、薬物動態に関する各分野の専門性を高めていく活動をするものです。

これまでのノウハウを継承したり、自分たちに必要な技術を取り入れたり、世の中の最新状況をチェックしたりしています。また、コンサルタント的な役割も担っていて、あるプロジェクトで出てきた薬物動態の課題は、その課題に特化したThink Tankにアドバイスをもらったり、Think Tankで作り上げてきた技術を使って解決を図ったりします。

他社がどうかはわからないですが、当社では一人一人が強みや専門性をもっていて、薬物動態の各分野を網羅できるようになっています。つまり、誰か偉い人が一人いて、その人の意見を重視するのではなく、それぞれ専門性が高い人がいて、課題ごとに最適な人に聞くという体制になっているのです。 

このように当社では、年齢や役職に関係なく、専門性や知識が重視される環境があります。

全ての領域の橋渡しである「薬物動態学」だから感じるやりがいとともに

▲薬物動態研究の仲間です。みんな「真面目にチャレンジングなことをしよう!」としています

当社の社員は真面目な人が多いと感じます。

単に真面目というと、おもしろくない、融通が利かないみたいな印象なのですが、そうではなく「ものごとに真摯に取り組んでいる」イメージです。会社や部門としての方針・方向性を理解し、ちゃんと達成しようという風潮が強いと思います。

製薬業界は今非常に変化が激しい環境です。その中で当社は積極的にチャレンジしよう、新しい変化に柔軟に対応しようとしているので、一見矛盾があるように聞こえますが、「真面目にチャレンジングなことをしよう!」としていますね(笑)。

私が今後チャレンジしていきたいのは、ヒトの薬物動態の予測精度を高めることです。それと同時に、「個別化医療」を見据えて、臨床試験の成功確度を見積もっていくことにもチャレンジしていきたいです。

個別化医療のイメージですが、たとえばAさんとBさんがいれば、薬物動態面でも薬効や安全性の面でも、決して二人とも同じ効果じゃないですよね。50人いたら効果はばらつくので、ばらついたとしても人で有効と言えるのかを含め、人での効果にもっと自信をもてるようになりたいです。

日々仕事する中で、「こういうふうにしたら良いんじゃないか」と提案して、それが上手くいったときは達成感を感じます。さらに、薬物動態以外の薬効や安全性の課題について、自分がもっている薬物動態の知識や技術で解決できたときに強くやりがいを感じますね。

たとえば薬効や安全性に関することでも、薬物動態の実験と組み合わせてみたり、薬物動態部門で持っている装置や技術を使ったり、解析の方法を組み合わせてみたりと次々に提案しています。

提案するときに、「薬物動態学」という学問の基礎的な考えをマスターしておくと、薬物動態学ならではの考え方を他の分野にもインプットしやすいと思います。薬物動態学は、関わる領域を一個一個勉強しなくても、薬の全体像を把握できる学問です。私は薬物動態学の基礎を勉強すればほかにも応用がきくと考えているので、おもしろい学問ですよね。

そうした薬物動態学の知識を広く応用しながら、今後も挑戦を続けていき、さまざまな課題解決に貢献していきたいです。