お客様、スタッフ、自分。三者が連携することで生まれる一体感のある空間に
僕が店長を務めるSTATES(ステイツ)は、2018年に表参道でオープン。2022年に現在の場所に移転して、プライベートサロンとして運営しています。
目指しているのは、年齢や性別を問わず、すべてのお客様に「生涯通いたい」と思っていたただけるような美容室。そのために、美容師である僕たちの強みを生かし、適度に流行も取り入れながら、スタイル提案や内装デザインなどを行っています。お客様の層は、学生さんからシニアの方まで幅広く、カップルや親子三世代で通ってくださる方もいらっしゃいます。
移転前はプライベートサロンではありませんでしたが、最近は店舗ではなく美容師個人にお客様が付く傾向があります。「人対人」のコミュニケーションを大事にしたいという想いから、現在のかたちを選びました。
STATESとは、国家や州を意味する単語。どちらもひとりでは成立しないものなので、お客様、スタッフ、そして僕が集合してひとつのSTATESを形成するという意味を込めています。また、STATESには“現在の状態”という意味もあるんです。皆様の協力があって、はじめて運営できているという感謝の気持ちも込めました。
店舗のスタッフは、僕を含めて3名です。多くのスタイリストが在籍していた移転前も、スタッフが担当以外のお客様とも会話するなど、和気あいあいとした雰囲気がありました。プライベートサロンとなったことで、よりいっそうアットホームな雰囲気になっている気がしますね。
世の中に何十万人という美容師がいる中、自分を選んで来ていただいていることに対して、強い感謝の気持ちがあります。その責任を果たすために、一人ひとりのお客様とていねいに接することを、ずっと大事にし続けてきました。
2社で培った経験値が強み。お客様と接しながら新しい挑戦できる場を求めて、dotへ
専門学校を卒業後、2社で経験を積んでからdotに入社しました。
2000年に入社した1社目では、配属されてすぐのころ、自分が勤めるサロンを友人知人に紹介し、来店者の人数を競う紹介キャンペーンに参加。2〜3カ月の間に60人以上が来てくれて、全店で60人ほどいる同期の中で1位を獲得しました。
また、シャンプーの指名人数を競うキャンペーンでも、何度も1位を獲得。毎月トップ3の常連となることができました。カットコンテストにも年2回ほど出場し、数百人ほどいる中で、20位以内に入る成績を残しています。
1社目に6年勤務した後、2社目に移りました。撮影やトレンドのヘアスタイルについて勉強をしたいというのが理由です。転職後、撮影やセミナー、商品開発、ヘアショーのほか、テレビの変身企画などを担当。約12年勤務し、店長も経験しました。
トレンドを学びたいという想いで入った会社でしたが、人とのご縁がつながって、結果的に幅広いことに携わることができました。僕はやると決めたら絶対に成し遂げるタイプ。どんな高度な技術や難しい撮影であっても、一つひとつの仕事に真摯に向き合ってきたことが、いまにつながっていると思っています。
dotのことを知ったきっかけは、10年来の友人がヘアメイクとして所属していたことでした。当時、店長を任されながらも、新しい挑戦がしたいという想いがあったんです。独立して自分の店舗を開くことも考えましたが、経営面に意識を取られすぎてしまうのではないかとの不安があり、なかなか踏み出せずにいました。
プレイヤーとして常にお客様と関わりながら、新しい挑戦ができる環境はないか。そう考えていたときに、dotから声がかかったんです。好きな立地で自身がプロデュースする店舗を出させてもらえると聞いて、入社を決めました。
スタッフの個性も生かした店作りを。見せ方へのこだわりがブレイクスルーのきっかけに
「年齢や性別を問わず、すべてのお客様が生涯通いたいと思える美容室」というSTATESのコンセプトは、僕が若いころから温めてきたものです。誰からも「おしゃれだね」「かわいいね」といってもらえるような内装を目指し、自分のカラーもきちんと主張できるようなデザインにしています。動線への配慮など、仕事のしやすさにもこだわって、いちから作り上げていきました。
店舗を運営するにあたって一番悩んだのは、スタッフの子たちの個性をどう生かすか。僕のカラーを出しすぎて、「STATESはこうあるべきだ」とかたくなになりすぎると、各スタッフの個性を埋没させてしまいます。オープンから1年くらいは、どうバランスを取るべきか、試行錯誤する毎日。直属の店長や若手スタッフと話し合って軸を決め直し、写真に統一性を持たせるなど、広告を掲載している美容院の検索・予約サイトでの見せ方も工夫していきました。
そのころから作品作りを精力的に行うようになり、同サイトに掲載していったことも手伝って、ページ閲覧数がぐんぐん上昇。僕の提案するヘアスタイルが人気上位ランキングに入ったことを機に、数字はさらに跳ね上がりました。
いまの時代はとくに、自分が作ったものをどう見せるかが大事。スタッフにとっても、一連の過程はすごく勉強になったのではないかなと思います。はじめたばかりのころは未熟さが目立ちましたが、同サイトが主催する2022年のヘアスタイルコンテストでは、僕とスタッフふたりの作品が、約42000ある応募の中からベストスタイル350に選出されました。(※ホットペッパービューティアワード2022において)。積み重ねてきた経験や努力がかたちとなり、スタッフたちもすごく喜んでいましたね。
dotに移ってきてから、スタッフたちのスキルや経験を伸ばすことに対して、より責任感が強くなったように思います。そのせいか、スタッフたちが何かを成し遂げたときは、自分事のように大きな喜びが感じられるようになりました。
ベーススキルの底上げを徹底しながら、個性を伸ばしていきたいというのが僕の育成方針。その子自身がどうなりたいか、どのようなテイストが好きなのか。持ち味を発揮させるためにはどのような教え方をしていけばいいかと、一人ひとりに向き合いながら考えています。
髪型だけでなく、仕事のあらゆる側面をトータルで評価していただけることが喜び
美容師は、髪型を作っていく過程をお客様にダイレクトに感じてもらえる仕事。つまり、お客様は、完成した髪型だけでなく、その美容師の人間性も含めて評価して、通ってくださっているんだと思うんです。
また、お客様は僕が作ったスタイルで数カ月を過ごすことになります。それがプレッシャーにもなるわけですが、その点に、美容師としてのやりがいや喜びを感じますね。
今後は、dotの一員として、STATESの代表として、同じような想いを持つ店舗がどんどん増えていけばと思っています。自分の育てたスタッフがグループ内で独立したいと思ってくれたらうれしいですが、仮にそうでなくても、皆が一人前になって活躍し、お客様に喜んでいただく光景を見ることが楽しみでなりません。
個人としては、オールラウンダーとしてさらにスキルを伸ばし、「STATESの山口に頼めばなんでもできる」と思ってもらえるような存在になりたいと思っています。
「美容師の仕事が好き」、「美容を楽しみたい」という純粋な気持ちを持っている人と一緒に働きたいですね。何事にもとらわれない、柔軟な発想を持って、共に勉強していければと思っています。