データの向こうにある現場の声に寄り添って

LOGINECT®データ可視化のご紹介

私は現在、ICT開発センター DXソリューション開発一部で、データサイエンティストとして働いています。主な業務は、物流倉庫や製造工場のデータを活用した分析案の企画や分析ツールの開発です。

具体的には、物流倉庫における人手不足解消や工場の環境配慮・持続可能な生産のため、現場のデータを取得・整形して以下のサービスを手掛けています。

・シフトの自動作成ツールの開発
・CO2削減に向けた電力量の将来予測

また、工場・施設のさらなるDX拡大に向けて、次の分析テーマをもとに、企画提案にも携わっています。 

・トラック待ち時間の解消
・PLCデータの利活用
・熱源機器のエネルギー効率の評価

データ分析の仕事は時として抽象的で難しいものですが、私はそこにやりがいを感じています。日頃から「なぜこんなことが起こるんだろう?」という疑問を持つ性格を活かし、どんな分野でもデータと向き合う際には好奇心を大切にしています。

特に心掛けているのは、現場に足を運んでお客さまの生の声を聞くことです。データサイエンティストは、ずっとパソコンに向かっているイメージがあるかもしれませんが、実際はそうではありません。データを通じて様々なお客さまと関わり、データや分析についてわかりやすく的確に伝えることで、良好な関係を築いていけるよう意識しています。

物流現場特有の課題として、データ項目の標準化がされていないことや、倉庫の規模によってロボットやシステムの導入状況が異なることがあります。そのため、ツールの汎用化が非常に難しい分野なのです。現在開発中の人員配置最適化ツールでは、この課題に対応するため、自社工場への見学や現場の方々からの声の収集、社内の物流知見を持つメンバーへのヒアリングなど、様々な角度から情報を集めています。

常に意識しているのは、「本当にユーザーのためになっているだろうか?」という視点です。データと向き合う中で、時には立ち止まって考えることも大切にしています。なぜなら、最終的には現場で働く人々の役に立つソリューションを提供することが、私たちの目指すところだからです。

医療データの最前線で培った分析力と使命感

私は大学の医学系研究員として、4年間にわたって外科系医療ビッグデータの分析業務に携わってきました。SQL、Stata、R、SPSSなど、複数の分析ツールを駆使しながら、医療現場の課題解決に向き合ってきました。

その後、厚生労働省の業務委託として、電子レセプトデータの集計や急性期病院の実態調査分析など、医療政策などのより広い視野での医療データ分析に1カ月半ほど従事しました。医療分野でのデータサイエンティストとして、着実にキャリアを積み重ねていました。

特に印象深い経験として、日本の外科医における男女格差の研究があります。この研究では、『女性外科医が男性と比べて手術経験数が少なく、それが指導的地位への昇進機会を制限する要因となっている』という実態が浮き彫りになりました。研究結果はYahoo!ニュースにも取り上げられ、私はセカンドオーサーとして論文に名を連ねることができました。

私はこの業務を担当し、社会的な課題に対して、データを通じて問題提起できることの意義を強く実感しました。研究者の「社会を公平にするためにデータで証明したい」という熱意に触れ、データサイエンティストとしての自分の在り方をあらためて考えるきっかけとなりました。

しかし、医療分野では新しい知見、特にAIによる発見については慎重な姿勢が求められます。一口にデータ分析といっても、医療の領域では、単純な集計やグラフ作成が重視され、機械学習による高度な分析の価値が十分に認められにくい現状がありました。「データ分析で未知の知見を明らかにしたい」という私の志向と、業界の実情との間にギャップを感じるようになっていました。

そんな中で出会ったのが、TOPPANでした。データドリブンな意思決定を重視し、AIの活用にも積極的な企業姿勢に共感を覚えました。さらに、歴史ある印刷技術を基盤としながらも、様々な社会課題の解決に様々な形で挑戦している点に魅力を感じました。物流業界未経験にもかかわらず、私の医療分野での経験を評価していただき、新たな分野でのチャレンジを後押ししてくれる環境だと確信し、転職を決意しました。

データサイエンティストとしての成長

入社してから最も印象に残っているのは、人員配置の自動化サービスの開発に携わったことです。以前は業務委託が多く、自分のアイデアを思うようにアウトプットに落とし込めないもどかしさを感じていました。しかし、研究開発者という立場になり、必要だと考えたことを形にできるようになったことで、大きなやりがいを感じています。責任は重大ですが、製品開発の最初から最後まで深く関われることは、私の性格に合っていると実感しています。

ただ、データサイエンスの専門家がまだ少ない環境での仕事は、様々な困難も伴いました。最初は相談できる相手を探すところから始めなければなりませんでした。幸い、部署間の横断的な連携を推進する文化があり、他部署の方々とデータについて相談する機会に恵まれました。

特に苦労したのは、事業開発のメンバーとの意見の相違でした。事業開発側は「お客さまファースト」で、1社でも早く現場でツールを使ってもらいたいという思いが強く、一方で私は、データサイエンティストとして論理的な分析結果の提供や、ツールの汎用化・標準化を重視していました。今思えば、どちらの考えも重要でしたが、当初は価値観の違いから話がうまく進まず、悔しい思いをしました。現在はプロダクトマネージャーを立てることで、うまく連携がとれるようになっています。

私自身の成長という面では、データ分析への向き合い方が大きく変化しました。以前は分析に行き詰まると、解決するまで残業を重ねるような働き方をしていましたが、それは効率的ではないと気づきました。今では、行き詰まりを感じたら、別の作業に切り替えたり、メンバーに相談したりすることで、気持ちをリフレッシュするようになりました。

また、前職でのデータに対して常に慎重な姿勢が求められてきた経験を経て、現場の感覚と分析結果の整合性を重視する対応は、今も引き続き活きていると感じます。どんなに技術が進歩しても、最終的な意思決定は人間が行うものです。焦らず、じっくりとデータに向き合い、何か違和感や問題を感じたら速やかにメンバーと共有するという姿勢は、前職での経験があったからこそ身に付いたものだと感じています。

データの力で製造現場の未来を切り拓く

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物流倉庫生産性向上プロダクトのPdM

今後の目標として、まず取り組みたいのは、私が入社当初から担当している物流倉庫の生産性向上ツールの製品化と市場への浸透です。現在、部内ではデータ基盤設計などのデータエンジニア業務が中心となっている一方で、データ分析の案件はまだまだ数が少ない状況です。そのため、まずは担当している新規分析ツールのリリース・物流業界への定着化を進めることが一番の目標です。

私の描く中長期的なビジョンは、データサイエンティストとしての実務経験を活かしながら、社内の複数のデータ分析事業や案件の定着化を図ることです。特に注力したいのは、深刻化する製造現場での人手不足や労働人口の高齢化という社会課題の解決です。そのためには、現場の方々との密な情報連携ができる環境づくりや、分析目的に適したデータベース設計にも力を入れていく必要があります。データ分析できる基盤をつくり、分析業務の定着化と周囲への理解の深化を推進することで、社会課題解決を当たり前に実現していきたいです。また、将来的にはAI人財育成の場へとつなげていきたいと考えています。 

TOPPANの大きな魅力は、自分のやりたい仕事を明確に言語化し、アピールできれば、その実現に向けた環境を整えてくれる点であると思います。日頃から自分の考えをまとめ、発信していくことで、より充実した仕事ができる環境があります。また、定期的な勉強会や技術共有会を通じて、個々の技術力向上を支援する文化も魅力の一つです。

これから当社で活躍したい方には、「社会課題を解決したい」という強い意志を持っていただきたいと思います。データ分析事業の企画・提案の場面では、明確な目的設定、すなわち社会課題の解決へとつなげていくことが重要です。 また製造業に歴史ある会社ですので、世の中をモノつくり・コトづくりで変えていきたいという熱意のある方に、ぜひジョインしていただきたいです。難しく考える必要はありません。日々の些細な気づきを発言や行動に変えて形にしていける方であれば、きっと TOPPANで素晴らしい活躍ができるはずです。