日々が新たな発見。本業とは異なる、もう一つの場所

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▲大府市民活動センターでの新たなチャレンジ

私がデンソーに入社したのは1992年で、かれこれ30年のキャリア。これまでの経験は、金属を精密に加工する現場でのものづくりや、電子基板開発の業務にたずさわってきました。現在はセンシングシステム技術2部第3技術室技術2課に所属し、センシングシステムの開発に従事しています。

今関わっている開発プロジェクトは2つあります。1つは車の車内環境の快適化に役立つセンシングシステム開発。もう一つは農業向けのセンシングシステムで、よりおいしい野菜や、より多くの野菜を作ることに役立てられるものです。

こうしたデンソーでの業務と並行し、今年11月からNPOの有給スタッフとして、ボランティア活動に参加しています。

ボランティア活用の拠点は、デンソーの本社がある刈谷市から車で15分ぐらいの、大府市民活動センター。そこでの主な業務は3つあります。1つ目は市民の活動支援で、会議室の使用や予約の整理、利用料をもらい領収書を切る、などの仕事。2つ目はお祭りや交流会などのイベントを設営するお手伝い。3つ目がセンターの机や備品の修理と、パソコンの自動化や効率化を図る仕事です。

会社では、的確に情報を伝え、業務を遂行することが重視され、楽しく働く要素をついつい忘れてしまいがち。しかし、センターでの活動は地域の人に楽しんでもらうために、"自分たちも楽しもう" という発想を大切にしながら、ボランティアに参加しています。

新しい何かでセカンドキャリアをつかみたい。ボランティアとして貢献する

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▲30年以上続けてきた自転車競技

ボランティアに参加することにしたのは、50歳を目前にして、セカンドキャリアを考えはじめたことがきっかけです。

私は学生時代からずっと自転車競技をしていて、かれこれ30年ほどになります。デンソーにも自転車部があるんですが、30歳後半に入部し、現在もトレーニングを続けています。

自転車競技の魅力は、なんといっても徹底的に勝ち負けにこだわること。勝負の世界ですから、最後の1周で駆け引きがあることも少なくありません。また、デンソーの自転車部の仲間と一緒に走り、切磋琢磨しながら練習するのが本当に楽しくて。大会に出て、入賞したときの達成感もひとしおです。

自転車は大好きで、これからもこだわり続けたいのですが、最近体力の衰えを感じるようになりました。このまま自転車ばかりしていると、自転車しかできない人になってしまうな、という危機感を覚えたのです。

同時に、老後の資産や、会社をリタイアした後の第二の人生が気になりはじめ、60歳以降の老後の不安が頭をよぎるようにもなりました。このままでいいのだろうかという思いと、年を重ねるにつれて社会に貢献して、何かを残したい、という気持ちも芽生えてきて、自分の生き方やセカンドキャリアを見つめ直すようになってきました。

そして、せっかくであれば、仕事で取り組んでいることとは、違うことをやってみたい。仕事の延長戦ではなく、新しいことをやってみたいし、自分のスキルを活かせるなら活かしたいという考えもありました。でもどこでどんな活動があるのか、どこに連絡をすればいいのか。わからないことだらけでした。

そんな時に出会ったのが今参加しているボランティアの募集です。募集は、デンソー社内の情報発信サイト、「デンソーコネクション」で見つけました。今回のようなボランティア募集のチラシ掲載をはじめ、会社から社員に向けての連絡事項など、あらゆる情報が載っている中の一つにあったんですね。

募集チラシには、「副業」「社会貢献」「セカンドキャリア」「人生100年時代」「老後資金」といった、まさに私の頭の中にあったキーワードが書かれていて。決定打となったのは、時間の融通も利きます、という言葉。自転車のトレーニングもまだ続けたかったので、ぴったりだと直感し、すぐに会社の総務部へ連絡しました。

人の目線で話す難しさを経験──自動化や効率化の対象となる活動を洗い出す

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▲相手が気軽に話せるコミュニケーションを意識

実際にボランティア活動をしてみて難しいと感じたのは、相手の目線で話すこと。

幼い子どもたちが遊んでいたりすると、目線を合わせて一緒に楽しむことは簡単です。ですが、たとえば母親に待たされて、不機嫌そうに1人で立っている子どもの気持ちを的確に汲み取り、相手に合わせて話すことは難しい。

また、ご年配の方から「自分の畑で採れた野菜がたくさんできて、おいしいんだよ」と話しかけていただくことがあるのですが、その野菜の名前を聞いたこともなく、食べたこともない野菜だったため、どう反応すべきか困った経験もあります。

仕事をしている時は、年齢の離れた社員と話す機会はあるものの、同じ社員ということもあり、コミュニケーションに難しさを感じたことはありませんでした。しかし、センターには、毎日会う人、初めて会う人など、さまざまな人が出入りしています。気軽に話せる環境を作り、利用者に楽しんでもらうために、コミュニケーションの取り方も意識するようになりましたね。センターの企画セミナーの中には、コミュニケーションの上手な取り方というものもあり、メンバーも地域の人に交じって参加し学んでいます。

その一方で、デンソーで当たり前のように取り組んでいることが役に立つことも多くあります。

ボランティアでは9人のスタッフが予定を書き込んでシフトを組むのですが、それまではシフト変更の作業や最終的なチェックを人の目で確認していました。
そこでピンときました。人が関わり労力が必要となる作業は、まさにデンソーの自動化効率化の対象ど真ん中。
パソコンやタブレットなどに入力することで、自動で計算などを行うツールを使い、効率化をしていく予定です。チェックする必要がなくなると、より市民活動に注力できますからね。

ボランティア活動を始めてみて、私にとって出来て当たり前だったことが一歩外に出れば当たり前ではなく、感謝してもらったり頼ってもらえたりすることもあると気づきました。
効率化をすすめる上で、デンソーのメンバーにも協力を得られることが理想ですが、まずは自分でできることを行い、ステップアップしていきたいです。

実績を積み上げ、未来につなぐバトン

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▲理想の60歳に向けてこれからもトライしていきたい

これからトライしたいことは2つあります。

1つは市民と交流を深めるという点で、自分でイベントを開催したい。自分の持っているスキルを活用した企画で、自転車を活用し健康になるイベントや地域の名所を案内するイベントを検討中です。デンソーの社内で、スキルを持っている人に講演してもらうことも考えています。

2つ目は、ボランティアに関する資格取得です。まず取得を目指している「ボランティアコーディネーター」は、ボランティア活動のいわば仕切り役。活動希望者を募集したり、受け入れる団体から相談を受けたりできます。もう1つ取りたい資格が「ファンドレイザー」。ボランティア活動に関する資金調達と、ボランティアをしてみたいけれど何をすればわからないという人と受け入れ団体をマッチングすることができる資格です。 

現在のボランティアや資格取得を通じて、社会貢献として、地域の問題を改善する役割を担う人になりたいのです。

これまでも、自転車競技を通じて、いくつかボランティア活動をしてきましたが、現在のように、もっと大きな視点で活動してみたいという想いはありませんでした。しかし、活動センターにいると、同じ志を持ったメンバーが大勢いるので、話しているうちに、マインドが自然に変わってきた感じがします。

この思いや行動は自分だけに留めるのではなく、デンソーの社員にも広めて行きたいと思っています。

私は来年、50歳。センターでの経験や実績が、60歳になったとき役に立つのか、セカンドキャリアとしてどのような形になるのかなどを確かめて、未来の私世代の人に伝えていきたいですね。

それと並行して、次にボランティアをやりたいというデンソー社員がいた際に、すぐに行動できるよう、道筋を作りたいです。実は、労務の問題や働き方などの課題をクリアせねばならず、7月の募集に対して、実際に参加し始めるまでに5カ月ほどかかりました。そうした課題も私がファーストペンギンになり、会社としても実績を残せればと思っています。

また、デンソー社内でもそうですが、ボランティアの現場からも「デンソーの人、いいね。もっとボランティアに参加してほしい」と思ってもらえたら嬉しいですね。 

私には、理想の60歳の姿があります。
それは、自分の経験を多くのデンソー社員に紹介しながら活動する人を増やし、デンソーから未来の大きな社会問題を解決する手助けができた、と胸を張って語っている姿。

まだ想像の域を超えませんが、理想を実現するために、経験と実績を積み重ねて行こうと思います。