興味とご縁が重なり生まれた出会い
先日、「瀬戸・ものづくりと暮らしのミュージアム」の改築費用を集めるクラファンを支援しました。これは、瀬戸焼を通して瀬戸地域を盛り上げようというプロジェクトです。
愛知県には瀬戸焼や常滑焼など、多くの焼き物の産地があります。しかし、私は福岡県出身で、愛知に来てもう10年以上経ちますが、焼き物に対して実はそれほど興味はありませんでした。ですが2020年の末、子どもと常滑焼の体験教室に参加して、職人さんと触れ合い、手作りの器の良さを体感しました。
また、昨今、働き方や生き方という面で価値観が多様化しており、東京などの都市部で生活をするのではなく、地方に魅力を感じる人がどんどん増えています。同じように、私も地方の良さに気付いた1人ですが、今回いろんなご縁があり、たどり着いたのがこの瀬戸プロジェクトだったのです。
瀬戸のクラファンを知ったのは、会社の先輩のFacebookがきっかけ。デンソーには、新しいことにチャレンジしていくことをコンセプトにした有志団体がいくつかあります。その中の一つであるD-SPRINGsを立ち上げた先輩の同級生が、クラファンの発案者である水野さんでした。
数世代続く瀬戸の窯元の家で生まれ育った水野さんは、自分の生まれ育った瀬戸のまちを盛り上げ、まちの可能性を広めたいという想いからプロジェクトを立ち上げました。もともと水野さんのお祖父様が、50年以上前に瀬戸焼の展示館のような施設を作りましたが老朽化がひどくて。そこで、新しい人流を作るためにその建物をリノベーションし、瀬戸焼を紹介するミュージアムの建設計画が始まったのです。
プロジェクトページからは、お祖父様の想いを受け継いで瀬戸のまちを盛り上げていきたい、という水野さんの想いが伝わってきましたし、そんな同級生を応援しようとSNSに投稿した先輩も素敵だなと思いましたね。
クラファンは人を支援するもの。失敗を活かしアフリカの教育支援で目標達成
実は瀬戸のクラファン支援の前に、私自身も2021年6月から1カ月間、NPO法人『TOFA』のメンバーと一緒にクラファンに挑戦をしていました。TOFAはアフリカの子どもたちの教育支援を行っており、 昨年から私も正会員としてTOFAに参加しているのですが、コロナ禍で街頭での募金活動がやりづらいと漏らしていたのを聞き、クラファンをしてみませんか、と提案したのです。
アフリカのタンザニアにある、ニャンブリ村とその周辺の小学校に教科書を届けるというプロジェクトで、TOFAのメンバー6,7人と行いました。目標金額を120万円に設定していたんですが早めに目標金額に到達したので、ニャンブリ村以外にも声をかけ、参加を希望する学校をもう1校追加しました。そして、ネクストゴールを150万に設定して活動を続けたところ、ネクストゴールも達成できたんです。
実は、教科書を送るプロジェクトの半年前に、個人的にクラファンに挑戦したことがあります。コロナ対策をしながら、子どもたちが楽しめるイベントができたらいいな、という想いから始めたのですが、うまくいかなかったんです。
クラファンは、顔が見える人だと支援しやすいのですが、顔を知らない、不特定多数の人に向けて支援をお願いするのは本当に難しい。プロジェクトをちゃんとやりきってくれるのか、極端にいうとお金だけ取って何もしてくれないかもしれない、という疑心暗鬼の部分を取り払う必要もあります。
プロジェクトの中身がよければ支援してくれるだろうと思っていましたが、そうではありませんでした。クラファンは、人を支援するものです。この人なら応援したい、という気持ちで支援してくださる人が大勢いるのです。
タンザニアの教育支援プロジェクトでは、そうした自身の経験やノウハウ、そしてプロジェクトを支援してくれた人々からいただいたアドバイスを活かしSNSの拡散、友人・知人への声掛けなど、積極的に行ったのが功を奏したのだと思います。
勇気を持って発信している人を応援したい。恐れずに1ミリでも前に進もう
クラファンから学んだことは、勇気を出して広く外に発信することが、応援してくれる人を集めることに繋がる、ということです。
最初に自分でやったとき、実際にふたを開けてみると8人が支援してくれました。8人しか集まらなかったという事実、自分がいいだろうと思うものに対して、お金が集まらない状況を目の当たりにして、がっかりしました。しかし、その経験があったからこそ、今回のプロジェクトを最後までやり抜くことができたのです。
今回のTOFAのクラファンは、幸いにも目標金額に達成できたんですが、目標金額の達成だけにとらわれるのは本質的ではありません。たとえ、一歩進もうとした中での半歩だったとしても、前進している。「半歩進めたからいい」という思いでやろうとメンバー全員で決めたので、恐れずに前に進むことができました。
初めてのことをやろうとすると、SNS上でいろいろいわれる世の中ですが、勇気を持って発信している人を応援したいし、自身もそうでありたい。思っていることを口にすることで、誰かがわかってくれます。もちろん批判はされますが、全員が全員否定するわけではありませんから。絶対に賛同してくれる人がいるので、信じて一歩踏み出す、1ミリでも踏み出すことが大切なのです。
とはいえ、最近でこそ恐れずに前進していますが、私にもそうではない時期がありました。仕事で「こうあるべき」という未来ばかりを話していると、「足元を見るべきだ」と反感を覚える人がいます。
でも、違う部署の人たちにも広く発信するようにしたところ、周りの部署の部長が聞きつけてサポートをしてくれました。限られたコミュニティだけでなく、少しでも外にいくことで認めてくれたり、応援してくれたりする人が増えるんだなと実感しましたね。
休職中に感じた、周りへの感謝と幸せ。利他の気持ちで誰かを応援し続けたい
今のように、積極的にクラファンに携わるようになった背景には、子どもが生まれて、クラファンに対する想いや姿勢が変わったことがあります。
今いる環境は、私の親の世代、祖父の世代が私たちのことを考えて築き上げてくれた世界です。同じように、クラファンには環境や仕組みをより良くしていこうというものが数多くあります。私も子どもたちに対して、今よりも住みづらい、生きづらい環境を残したくない。そんな想いが行動に繋がっているのです。
それだけでなく、私は3年前、自分を精神的に追い込みすぎて半年くらい休職した経験があります。最初の1カ月は寝ることしかできなくて、何も考えられませんでした。本当に何もできなくなってしまっていたと思います。でも、妻が毎日昼ご飯を作ってくれた。最初は食欲もなかったんですが、徐々に回復してくると、ご飯を作ってくれるだけでもありがたいと思うようになりました。
会社にも感謝しています。休職して復帰するか分からないような人間を雇用したまま休ませてくれました。これから、会社に本気で恩返ししたいですね。
いろいろな人たちに支えられて元気になった自分がいる。休職をきっかけに、自分のようになった人や子どもたちに何かをしてあげたい、という思いが芽生えました。
今、こうして生きていられることが本当に「幸せ」だと思います。だからこそ、次の世代の人たちに「幸せ」を感じてもらうために何ができるのだろうと考えながら動くのが私の行動指針なんです。
「幸せ」にも段階があると考えています。子どものころは、何かしてもらうのが当たり前で、それが幸せだという段階からスタートし、次第に自分でできるようになって、自分で幸せを得られるようになる。そして成長していくと、自分が他人を幸せにしてあげられるようになります。自分ですることの幸せを感じながら、常に利他であればベストです。だから、この状態をずっと続けていきたいですね。
周りの人に喜んでもらえるための行動が、クラファンやTOFAの活動です。応援することで「利他の世界」に近づけるなら、もっともっと参加しようと思います。
海外だとクラファンのプラットホームは昔からたくさんあるのですが、日本では最近火が付いて来ました。まずは目についたプロジェクトのページを見てください。次に、共感したプロジェクトに支援してみてください。ワンコインで応援できるものもあります。社会貢献をしたいと考えている人は、クラファンからその一歩を踏み出してみるのもいいと思いますよ。