よそはよそ、うちはうち。マイノリティな一面も、自分らしさと捉えよう

「よそはよそ、うちはうち」
これは子どもの頃、母からよく言われた言葉です。当時はその言葉に良い印象は持っていなかったのですが、社会人になって色んなことを経験してきた今では、自分らしさを表す言葉になっています。  

私は社会人になってから、“自分はマイノリティなのかな”と感じる場面が何度かありました。
配属された営業部門に女性が少なかったこと、結婚して夫が専業主夫になったこと、子どもを2人産んで産休・育休と復帰を繰り返したこと、難病を患ったこと。そんな風に、周りに比べて少数派になることが多かった私は、その都度、疎外感や孤独感みたいなものを抱いていました。 

でもよく考えたら、それは会社という狭い範囲の中でのマイノリティであって、世間的にみると普通のこと。
男性が専業主夫になることも、日本ではまだまだ事例が少ないかもしれませんが、世界に目を向けると何百万人も専業主夫をしている人はいます。全然少数派ではないですよね。

逆に、自分達が当たり前だと思っていることも、世間的にみたらマイノリティになることもあります。
デンソーも東海地方では多くの人が知っている企業ですが、他の地方に行けば知名度が低かったりしますし。

つまり、環境次第で誰だってマイノリティにもマジョリティにもなる。
そう考えると、自分の気持ちが楽になることがわかりました。

ある環境の中で自分がマイノリティだからといって、「周りに配慮しなきゃいけないのかな」とか「周りの基準に合わせなければいけないのかな」とか、そんなことは気にしなくていい。

「よそはよそ、うちはうち」って考えて、自分らしくやっていくことを、今は大切にしています。

「つながり」が私の楽しい未来を切り拓いた

今でこそ楽しんで仕事ができていますが、以前は自分のキャリアに悩んだこともあります。
同じ業務を長い間担当していたためか、仕事に対する停滞感を感じていた時期があって、周りをみると同僚や学生時代の友人がキャリアアップしているし、自分はこのままでいいのかと不安や焦りを感じていました。その時は正直、外に出ることも選択肢として考えていましたね。

悩みながら仕事をしていた私に転機が訪れたのは、2017年。育休から復職したタイミングで、部署の若手中心で結成されたワーキングチームに参加させてもらう機会があったんです。

“組織の縦割り感をなんとかしたい、いろいろな人とつながって何か生み出したい”というコンセプトで、他の部署の人たちと交流する活動をしていったのですが、そこで社内に面白い人がたくさんいることを初めて知りました。すごい発明家がいたり、社外でバリバリ活躍している人がいたり、とんでもないスキルを持っている人がいたり。自分がこれまで見ていた「会社」はほんの一部分だけだったんだと思うと同時に、デンソーを100%味わい尽くすまでは辞められないな、という気持ちに変わりましたね。 

そのワーキングチームは部署を超えて、あれよあれよと会社全体に広がり、「DOIT(DENSO Open Innovation Team)」という名の大きな有志団体に成長していきました。2022年現在、メンバーは約1,700人で、オンラインを中心にグループ活動や意見交換、イベント開催などを行っています。

私もその中で「育休を考えるワーキンググループ」を企画しました。育休取得経験のある男性・女性の社員が集まって意見交換をしたり、育休取得に不安を感じている社員に対してオンラインで悩み相談会を開催したりしています。リアルな体験談が飛び交って、大いに盛り上がったんですよ。今でも積極的に活動を続けていて、同じ課題を持つ他の会社の方達とも連携し、活動の幅を広げていっています。

DOITの存在は、本業にもいい影響を与えていると思います。DOITでの私の活動を上司も見てくれていて、仕事でも新しいことに挑戦させてもらえるようになりました。社内でカーボンニュートラル事業のプロジェクトが新たに立ち上がった時にも声をかけてもらって、今は本業として新規事業戦略に取り組んでいます。   

このつながりの中でもらった“ある言葉”も、私が仕事を楽しむようになれたきっかけの1つになっています。
人間関係で気持ちがモヤモヤしていた時期があったのですが、有志活動関係で他部署の人と会話している時に「他人に期待しているからこそイラっとするんじゃないかな。そういう感情を持てるのは優しいからだと思うよ」と声をかけてもらったんです。なるほど……。と、目から鱗でした。
その言葉をきっかけに、他人の心なんてそうそう変えられるもんじゃないことに気付き、“自分が楽しく仕事をするためにどうしたいか” という目線で仕事に取り組んだり、進め方を変えてみたりするようになりました。 

予期せぬつながりは本当に面白く、それに伴って仕事がもっと楽しくなりました。仕事を楽しくするための火種を探しながら動いている自分がいますね。

30歳、難病が発覚。週5日フルタイムで働けるありがたみ

もちろん、今でも時々、仕事がしんどいなとか、楽しくないなと感じることもあります。それでも、私にとっては週5日フルタイムで働けることが、本当にありがたい。そういう風にポジティブに働けているのは、難病を患っていることが発覚したことが少なからず影響していると思います。

難病がわかったのは2019年。30歳、これからバリバリ仕事頑張るぞ、と思っていた矢先のことでした。
胃が痛い状態が1年以上続いたので病院に行ったところ、すぐに入院して手術しなければならないと言われました。検査の結果、「クローン病」という難病であることが発覚。一生完治しない病気と向き合っていくことになったのです。 

夫が専業主夫ということもあり、私が家族を養っていかなくてはいけないので、自分が死んだら保険金が入るようにはしてありました。でも、まさか自分がこの歳で働けなくなることは正直想定していなかったですね。当時はさすがにこたえました。どうして私なんだろう、戻って仕事ができるのだろうかと。不安な日々を過ごしました。 

ネットの情報や患者会で聞いた話だと、クローン病が原因で仕事を辞めてしまった人も少なくありません。働き方を変えないといけない人もいるみたいです。そんな中、私は幸いにも症状が落ち着いていたので、元の職場に復帰することができました。急な体調不良が起きたり、通院しないといけない日もあったりしますが、フレックスタイムや在宅勤務の制度のおかげで、フルタイムで働くことができています。理解のある同僚や上司にも恵まれていて、会社や職場には感謝してもしきれないですね。

約2カ月の入院を終え、退院後初めて会社に行った時に久しぶりに同僚と会話したのですが、「会社っていいですよね」とぽつりと漏らしたら、とても驚かれました(笑)。働き方に悩むことなく、普通に仕事ができるって、本当にありがたいことだなと思います。

そして今では、病気のことも前向きに捉えられるようになりました。
もともと嫌なことがあっても寝て忘れるタイプですし、病気を知らされたときはびっくりしましたけれど、逆に体調不良の原因がちゃんと判明してよかったとも思っています。

食事制限と投薬が続いていますが、それも仕方ないことだなと受け止めています。この病気は幼少期から食事制限を強いられる人も多いのですが、私はこれまで30年間好きなものを食べてこられましたし、今後少々食べられなくても全然いいじゃんって感じです。

やりたいことをリンクさせて仕事を楽しむ。自分で決めた挑戦にリスペクト

会社生活を送っていると、「挑戦しろ」「変われ」と変化を強く求められることがあります。私はそういうのに少し違和感を覚えています。子どもが親に「宿題しなさい」って言われて「今やろうと思ってたのに!言われたらやる気なくなった!」と思うのと同じで、言われれば言われるほど気持ちが動かなくなっちゃうというか、そんなに変わらないといけないものなの?と思ってしまいます。

「挑戦」という言葉と聞くと、新しいことに取り組んでいるとか、社外でバリバリ活動してるとか、上昇志向のキラキラ感をイメージされるのではないかと思います。もちろん、それができるのはすごく素敵なことですよね。

だけど、私は“新しいことへのチャレンジ”だけではないと思っていて、“あえて挑戦しないこと”や“現状を維持すること”についても、意思を持って取り組んでいるんだとしたら、それは立派な「挑戦」と言えると思います。それこそ私は「入院しないようにする」も挑戦だと思っているくらいですし(笑)。挑戦へのハードルは高くなくていいじゃないかと。

私の夫は自ら望んで専業主夫をしているのですが、私の健康管理も含めて、家族が毎日平和に過ごせるために、今の日常をキープし続けてくれています。“もっと頑張る”という選択もあるけれど、それをわかった上で、あえて“今自分はこれをやる”と意思を持って行動しているのであれば、それは立派な挑戦と呼べるのかなと思います。

私のモットーは、“仕事は楽しく” 。
原点は、新入社員の時のカーディーラーでの営業研修です。仲良くしていただいたお客様から「仕事は楽しまないともったいないわよ!」と声をかけていただきました。  

それまで「仕事は仕方なくやるもので、理不尽なことがあっても我慢する。自分を殺してでも頑張る」ようなイメージを持っていたのですが、その言葉に出会って、「楽しんで仕事をしてもいいんだ、自分のやりたいことをもっとリンクさせていいんだ」と殻を破ることができました。

無理にハードルを高くするのではなく、自分の意思を持って、楽しく仕事をする。
そんな生き方をこれからもしていきたいですし、そういう人が周りにも増えていってほしいですね。

【あとがき】

話しづらいことも含めて、自らの経験を赤裸々に語りながらも、ずっと笑顔で話をしていた廣田。
自分らしく、自分が楽しいと思える働き方をしてほしい。——彼女は、何度もこの言葉を口にしていました。
「なんか仕事楽しいなぁ」、「仕事をしている時の自分が好きだな」と思える人が増えるように手助けしていくことが、今後の目標であると語ります。

そんな彼女の生き方を聞いていると、自分も心の声に耳を傾け、自分らしくあれる働き方を探してみようという、ポジティブな気持ちにさせてくれるのです。