テクニカルサポートとして技術の基礎を身につける
経済学部でバンド活動に励んだ大学時代。就職活動では外資系企業もIT業界も、とくに志望していたわけではなかったと話す坂井。ただ、デル・テクノロジーズの選考ではフィーリングの良さを強く感じて、自然と内定を承諾した。
そこから14年。事業拡大とともに坂井自身の仕事もどんどん広がっていった。
「文系出身でIT知識はゼロ。英語も苦手。手探りの中でテクニカルサポートとしてのキャリアが始まりました。実力主義と言っても、自分はどこまで活躍できるんだろうと疑っていましたね(笑)」
初めて学ぶテクノロジーの世界は、驚きの連続。知識の一つひとつが頭の中でつながっていったと当時を振り返る。
「学びのプロセスにすぐ夢中になりました。テクニカルサポートとして知識を身につけると、そのままお客様へ価値が提供できる。知識が実務に直結する。また、自分の勉強法を社内で展開すればみんなに喜ばれ、勉強会の依頼も増えていきました」
インプットとアウトプットの循環はテクニカルサポートのおもしろさの一つだと坂井は言う。プレイヤーとしても、チームを率いるマネージャーとしても、そして現在のテクニカルトレーナーとしても、「いいサポートを提供する」ことが坂井のミッション。
「職種が変わっても、一貫して“技術”と“人”を軸にしたキャリアを歩んでいます。やりがいがありますね」
着実な目標達成がモチベーションと、周囲からの期待になる
テクニカルサポートは、製品を導入したお客様に対して技術的なサポートを行う。サポートといっても、求められる結果はKPI(数字)。国を超えてグローバルに存在する職種だからこそ、定量評価がフェアだ。対応件数や対応時間のほか、お客様からのアンケート回答数といった各KPIが可視化される。
「お客様窓口へ問合せしたとき、後ほどアンケートに答えた経験はありますか?なにかトラブルがあって、クレームとして回答することはあっても、問題が無事に解決した場合にわざわざ手間をかけて回答するでしょうか。ユーザーとしてご自身の行動を振り返っていただくと、テクニカルサポートに対して目に見える形で評価することがいかにめずらしいことか、イメージいただけるかと思います」
問題解決は当たり前の世界。問題解決以外の部分においてお客様の期待値を上回らなければアンケートは返ってこない。技術知識に加えて、先を読む力・対応力・臨機応変さといったサポートスキルが求められるのだ。想像以上に難易度は高く、奥が深い。
「まずは自分を客観視すること。録音データを聞いて、成績上位の方との差分を検証すれば、やることは明確。技術の勉強と同じで、計画性と着実性があればスキルを伸ばしていけます」
そうして2015年、個人としてもマネージャーとしても実績を残していた坂井に転機が訪れる。日本を含む、アジアパシフィック地域のテクニカルトレーナーの公募だった。
「テクニカルサポートとしてフロントを務めていた当時から、サポート品質を根本的に上げるには社内のトレーニング(研修)が鍵だと感じていました」
身につけた技術知識をアウトプットして、誰かの成長につながることが自分自身のモチベーションでもあったと話す。トレーナーの仕事は、坂井の経験と志向が合致した最高のチャレンジだった。そして2015年、Education Serviceに異動してテクニカルトレーナーとなった。
「トレーナーの日々の業務は、社内のテクニカルサポート、パートナー企業、お客様(法人)に対して、デル・テクノロジーズの製品や、関連する外部ベンダーの製品技術を学ぶ研修を提供することです。知識を武器に、ぐんと影響範囲を広げることができましたね」
また、外資系企業に入社したからには、いつかは英語を使ってみたいという想いがあったと言う。
入社当初のTOEICの成績は300点台。大好きな技術の説明であれば、英語で話せるかもしれないと考え、「技術の紹介」をテーマに英語学習を進めた。日本語で行うトレーニングのように、いつのまにか英語で技術の説明ができるようになった。
「現在は日本のみに留まらず、アジア各国の社員に対して技術トレーニングを行っています。海外出張の機会もあり、トレーナーとしても幅が広がっています」
ハードウェアエンジニアのタレント性
入社当初、文系出身でIT知識がないことがコンプレックスだった坂井は、コンプレックス克服のために、クオーターに1つ何らかの技術資格取得に取り組むことを決めた。
「アクションがわかりやすく、モチベーションとも直結しました。さまざまなKPIの達成に加えて、いくつかの資格を取得していきました。そうした実績は確実に評価へつながり、組織の中でも注目が高まっていきました」
ITの世界に入った14年間で取得した資格数は、82種類に及ぶ。
「ただ、資格を取ること自体が目的化してしまった時期もありました。時間は有限なので、会社の方針や、現在の業務に直結する資格に絞って学ぶことをおすすめしたいですね。それに、テクニカルサポートはお客様と向き合う仕事。自己満足ではなく、知識はお客様に還元してこそ価値があります」
学びのアウトプットとして、外部への発信も続けている。技術ブログの執筆を7年ほど続けてきたことが出版社の目に留まり、共著で「徹底攻略VCP-DCV教科書 VMware vSphere7対応 徹底攻略シリーズ」を出版するに至った。また、X(旧称Twitter)での発信も欠かさない。
「ハードウェア業界には“技術タレント”がいないと思ったんです。ソフトウェア業界には「〇〇社の△△さん」といった風に有名なエンジニアが存在していて、発信も見かけますが、ハードウェア業界のことを語る人・その内容はほとんどいないなと……。だったら自分がその存在になろうと思ったんです」
ソフトウェアサービスには機能面のアップデートや独自性が多く、ニュース性あるコンテンツがつくりやすい側面はあるが、それに合わせてハードウェアにおいても情報発信は可能だ。ハードウェアがないとソフトウェアサービスは動かず、常にハードウェアとの組み合わせが求められる。
「ソフトとハードの組み合わせを考える上で求められる情報など、さまざまな角度で発信可能です。デル・テクノロジーズが持つ技術や製品ポートフォリオは幅広いのでもっと伝えていきたいです」
また、技術的側面だけにとどまらず、働くほどに会社の魅力を感じ、大好きな場所になっていったと言う。
「サポートの仕事を通して知った技術の世界だけではなく、そこで出会えたデル・テクノロジーズの人たちが大好きなんです。デル・テクノロジーズがこんなにおもしろい環境であること、おもしろい人がいることを伝えたいと純粋に思っています。
『デル・テクノロジーズには坂井というおもしろい人がいるらしい』と知ってもらえるように、これからも発信を続けていきたいですね。一緒に発信できるタレントエンジニアも、育てていきたいところです。
また、最近は当社へエントリーを検討する学生からSNS上で質問をいただく機会が増えました。気になることがあればぜひ、気軽にSNS上で話してかけてもらえればと思います」
働くほどに魅力が増えていく
最初に内定が出た会社、なんとなく感じ取った当時の面接官とのフィーリング──いわば、たまたまの連続で幕が明けたとも言えるデル・テクノロジーズ生活。そこからキャリアを重ねるほどに、仕事のおもしろさがどんどん増していった。
「転職する同期や同僚を多く見てきましたし、私自身、転職を考えたことも、魅力的なオファーをいただくこともあります。でも、やっぱり自社が充実しているんです。
築いてきた人脈を生かし、必要なリソースをもらって、毎年新しいチャレンジができる環境。グローバル組織にいれば、対象範囲が日本以外にも広がり、可能性は無限大。ロール(職種)が変われば、それはもう転職といえるくらいのインパクトがあります。
でも、土台にあるカルチャーは同じ。だからこそ新しい仕事そのものに集中できて、早く順応できるんです。経験を活かして新しい仕事でパフォーマンスを出すには今の環境が一番なんです」
ITという業界特性もあり、会社としての戦略変更や組織体制の変化が多い。捉え方次第で、変化は戸惑いではなく楽しさになる。
「トレーナーとなってからの10年間のキャリアを振り返っても、私の担当領域はサーバーやストレージ、ネットワークから、クラウドなど仮想化のソフトウェアに広がり、そして今では5Gやオートメーションといった新しい領域を担うようになりました。描いたキャリアプランや立てた目標を変えることに躊躇う人もいるかもしれません。
しかし、世の中のニーズや状況に合わせて自分自身がアダプトしていけるのは良いことですし、チャンスだと思うんです」
柔軟性を大切に、気づきや変化を自分の力に変えていける人が活躍している人の特徴だと言う。
デル・テクノロジーズにはCreate your careerというキャリア観がある。
「自ら希望すれば、チャレンジが与えられ、全力で応援してくれる環境です。成長のために用意してくれるチャレンジと自分の行動が合わさるほど、加速度的に成長していけます。現時点において私自身の次なる目標は、自動化やコンテナテクノロジーのスキルを身につけるため、Red Hat社の上級認定資格を取得すること。
VMware認定インストラクターとMicrosoft認定インストラクターのライセンスも保有しており、常に技術の最新トレンドを抑えたマルチクラウドな指導者になりたいと思っています」
技術者として勉強家でありながら、普段は3人の子どもの育児や、家族との時間を優先する坂井。スキマ時間を活用し、子どもの寝かしつけの横でタブレットを見ながら問題集を解くことなど10分でも20分でも無駄にはしない。技術の学びは自分のためであり、誰かのためだからだ。
「14年間働くデル・テクノロジーズの技術も、環境も、人も、どれも大好きなので、たくさんの人にそう感じてもらいたい。だからこそ、仕事を楽しむためのスキルセットや環境のつくり方を今後も若手を中心に伝えていきたいですね。トレーニングという形にかぎらず、SNSであっても書籍でも、私の知識やノウハウを広範囲に展開して、これからも誰かの成長に役に立っていきたいです」
※ 記載内容は2023年8月時点のものです