保険会社、IT企業、そしてデル・テクノロジーズへ。それぞれで磨かれた営業スタンス
──2022年8月現在、Senior Account Exective(外勤営業)としてどのような案件を担当していますか?
吉武 「国内の大手保険業界のお客様を担当しています。外資である私たちにとって、日本の金融業界はまだまだ白地がある領域。顧客深耕・新規開拓どちらも行っています。
ひとつ具体的な案件を挙げると、大手生命保険会社様のセンター集約基盤案件があります。お客様事例にも挙げられていますが、インフラ全体を更改する大きなビジネスを当社に任せていただきました。以降は継続してご発注いただき、強固な関係を築いています。取引実績がほぼない状態から始まり、ビジネスの根幹を担う基盤システムを任せてもらうまで、信頼を作っていくことが営業のやり甲斐ですね」
──競合他社にシェアを取られている環境下でどんなことを意識していますか?
吉武 「大切なのは、製品紹介で終わらないこと。製品紹介よりもお客様に“気づき”を得てもらうことに重点をおいています。最初は仮説になりますが、続けることで私自身もお客様の理解が深まり、より踏み込んだ提案ができるようになります。お客様の信頼感も上がってきます」
──先ほどの大手保険会社様の事例ですと、デル・テクノロジーズを選んだ決め手は何だったのでしょうか?
吉武 「提案がうまくマッチしなくても継続して訪問していたある日、お客様から、今やろうとしているインフラ整備の中でバックアップに大きな課題があることを伺いました。
最初のきっかけは、そのバックアップの課題について、お客様の判断が正しいかどうかを評価してほしいという依頼でした。しかし詳しく伺うと、その課題の周辺に複数の問題が絡みあっていて、それらを解決しなければ、本来お客様がやりたいことも実現できない状態でした。課題の優先度を整理し直し、他社とは異なる切り口で私たちは提案しました。すぐに検証環境も用意し、私たちのソリューションが本当に実現できるものだと理解いただき、決定いただきました。
提案視点、検証環境の準備、QA対応の迅速性などソリューションだけでなく、営業姿勢も評価され、採用いただきました。まさにお客様自身が『こういうことができるのか』と気づきを得られた商談だったと思います。 後からお客様から伺った話ですが、どんな質問に対しても自信をもって即答する態度から、私たちを“本物”だと感じてくれたようです」
──本物である、とは具体的にどういうことでしょうか?
吉武 「お客様の立場に立ってしっかり考え、準備しているかということですね。保険会社へ新卒入社した当初、保険がまったく売れませんでした。綺麗な言葉で営業しようとするあまり、お客様を理解せず、役に立ちたいという気持ちも弱かった。それをお客様も感じ取ってしまい、私からは加入しないと判断されていたんだと思います。
そういった背景に気づかせてくれたのは、私にとって初めての契約をくださったお客様でした。商品ではなく私の姿勢を評価いただきました。『あなたが私のためになるといっていることは本心だと思ったから、あなたから加入します』という言葉は、20年以上経った今も鮮明に覚えています。お客様のことを本気で考えていれば、何を心配されるかはわかるので、それに対して準備ができ、いざ受ける質問には即答できるはずなんです。そういう姿勢が“本物”だと評価してもらえます」
──大きなビジネスを作った後、お客様との関係性はどう変わりましたか?
吉武 「一方的に提案することがほとんどでしたが、お客様からも相談をいただくようになり、インフラ全体の将来についてディスカッションする機会が増えています。ビジネスパートナーの一歩が踏み出せたと感じます」
──ビジネスパートナーになるためは、どういったことが求められますか?
吉武 「真のビジネスパートナーになるためには、やはり(そのお客様における)実績が必要です。小さな実績を積み重ね、コアのインフラを任せてもらって初めて真のビジネスパートナーになったといえるでしょう。コアのインフラを任せていただくには、 製品が良いだけではなく、絶大な信頼関係が求められます。信頼関係の構築は難しいですが、恐れずに本丸の領域に踏み込まなければ、われわれが目指すビジネスパートナーの立ち位置は見えてきません」
デル・テクノロジーズならではの営業カルチャーとは
──これまでの営業と比べて、どういった点にデルらしさを感じますか?
吉武 「カルチャーコードが、まさに当社らしさだと思いますね。Customer(お客様)、Winning Together(共に成功する)、Innovation(革新)、Results(結果)、Integrity(誠実)の5つの言葉を聞いたとき、それまで考えていたことを端的に表していると感じました。
Customerには“お客様との関係性が当社の差別化要因だ”という言葉が続くのですが、まさにその通りだと思います。お客様は製品の良し悪しだけではなく、当社が付き合うに値する会社かどうかを見ています。
たとえば、お客様が求める難しい要求や高い期待に対して100%で返せないときもありますよね。その場合、簡単にゼロ回答してしまうのか、社内であらゆる調整をしきった上で回答するのか、面倒なプロセスをやりきった上で回答するのか……。背景が透けてしまうと思っています。
あるお客様の担当を外れる際、ご挨拶した日に、『吉武さんは、私たちのために、いつも社内で闘ってくれていましたよね。直接見ていなくてもわかります。そういう方が変わるのは残念です』という言葉をいただいたことがありました。社内と闘った話などしたことがなかったので驚きました。お客様はさまざまなパートナーと付き合っているので、私たちの姿勢・態度からいろんなことを読み取り、見えてしまうんだなと。普段からお客様のことを考え、誠実に対応することが大切ですね」
不安があったとしても、飛躍の可能性を信じて成長を選ぶ意義
──安定した日系企業から外資企業へ転職する際、不安はなかったですか?
吉武 「不安は大きかったですよ(笑)。しかし、それ以上に自分を成長させることを優先しました。入社した当時はデル株式会社でしたが、“PCの会社”からの脱却を図り、サーバー、ネットワーク、スイッチ、ストレージというエンタープライズに強い会社へ変革することを目指していました。
そのための組織改革も進めており、これまでの整った組織・環境ではないところで会社と一緒に成長していくことに魅力を感じました。結果、統合などを経て会社が急激に大きくなる過程でチャレンジができ、本当によかったです。
──吉武さんにとって成長とは?
吉武 「過去の自分をリセットしてでも、新しいことにチャレンジすることですね。というのも、人間にも賞味期限があると思っています。同じことだけをやり続けると賞味期限が切れてしまい、5年後には“いないほうが良い人”になってしまう。
保険のリテール営業、次に日系ITのホールセールでアプリを得意とした営業、そして外資系ITのインフラ営業と、すべて違う環境でキャリアを積んでいます。違う世界に飛び込んでいるからこそ、私の賞味期限は延びていると感じます。現状の役割や実績に満足せず、成長できているかを常に考えていきたいですね」
営業キャリア27年──その先に目指すもの
──現場一筋で営業力を磨き続ける要因は何ですか?
吉武 「営業以外をやろうと思ったことがないんです。お客様と会っているときが好きですし、一番自分に成長の機会を与えてくれる仕事が営業職だと思っています。営業の楽しさは、商談を通してお客様と一緒に成長できること。ダイレクトに結果・フィードバックが見えるわかりやすさも好きですね。
振り返ってみると、自分を育ててくれたのも、社内よりもお客様だと感じています。お客様が私に対して示す反応から、学びを深めています。しっかりお客様に向き合って対応していれば良い反応がもらえますし、そうでないとき、想いが至らないときには逆の反応を受けます。それらを見て、感じながら、常に自分をアップデートするよう努めています」
──ベテラン営業として、今後はどんな挑戦をしていきたいですか?
吉武 「30年近く営業職をしても、まだまだ足りないところがあります。仕事を辞めるその日まで、極めたことにはならないのではないでしょうか。賞味期限を迎えないよう、同じことを続けず、新しいチャレンジを重ねていきたいですね。今後はもう一段、上の立場から社内を動かしてお客様を支える存在を目指したいです」
──長年携わった保険業界でどんな変化を起こしたいと考えていますか?
吉武 「温暖化による地球環境の変化や少子高齢化を迎え、生損保業界ともに変革を迎えていると思います。業界全体が変わるフェーズで、自分がそこにどれだけ貢献できるか。その観点を大切にしたいです。そして、お客様と一緒にまだまだ成長していきたいと思います」