哲学からテクノロジーへ。「知らないことを知る」を原動力に異世界の扉を開く

私が米国ウェスタンミシガン大学へ留学したのは、大学3年生の時です。大学では、行動分析学を学びました。日本では教育哲学を専攻し、考え方のアプローチなどを学んでいたので、行動として表れるものに軸足を置いてみたかったんです。

米国で過ごして気付いたのは、自分の考えの狭さでした。行動に注目するほど考え方は無限に出てきますから、社会がどう動き、人がどう反応するのかを学ぶにはまず、自分の世界(視野)を広げる必要があるなと。そのために世の中や社会を知ることが先決だと感じ、帰国後すぐに就職活動を始めました

希望の業界として選んだのは、IT業界でした。社会を知りたい欲求が根底にあり、「自分の知らないことを知る」がモチベーションであるため、これまでとは別の世界の人と接したいと思ったからです。また、社会を知るためには変化が多くてたくさん意思決定がなされている場所が良いと考えたからでもあります。IT業界は社会的影響力が大きく、長期的スパンでビジネスを仕掛けていける業界だと思いました。

そしてIT業界を見る中で、とある女性向けの合同企業説明会で出会ったのが、EMCでした。

その時の話は今も覚えています。他企業が、女性社員の目線に立ったアピールをするなかで、EMCだけ「男女の性差なく活躍しているので、特に女性向けの制度というはあまりありません」と話していたんです。

そこで、私自身は“女性”を意識した働き方を求めていないことに気が付きましたし、「働く従業員」の一員として、人として、平等に捉えるというEMCの姿勢に共感しました。後日EMCの座談会に参加した際も、社員と学生がとてもフラットだったので、性差や年齢に関わらず活躍できる環境だという確信が深まりました

こうして2015年、私はEMCにプリセールスとして新卒入社をしましたが、プリセールスを選んだのには理由があります。

当時の役員(現CTO*)の飯塚さんの「営業としてお客様と向き合いつつ、私たちのソリューションで何ができるのか知識を持ったうえでコミュニケーションを取る”のがプリセールスだ」というお話を聞いて、「まさに私の求めていた仕事だ!チャレンジしてみたい!」と思ったんです。

*2022年4月現在

知らないことを知り、知識として習得したうえで、自分自身がどう組み立てていくか。これは、大学時代に経験した、“原理を学び、知識をもってプラクティス(実践)する”と、似たアプローチでした。

ただ、フレームワークは同じでも技術知識はゼロだったので、入社後、猛勉強しましたね。

私のバリューは何か。探し、行動し、結果に結びつけたプリセールス時代

入社後、プリセールスとして私が配属されたのはパートナーSEチームです。日々の仕事は、パートナーの方々向けに、EMC製品やストレージなどの技術に関するトレーニングや啓蒙活動をすることでした。

しかし、プリセールス職のOJT期間は当時3年間あり、なかなか直接役に立てる場面がなかったため、私は段々と「私が出せるバリューは何だろう」と深く考えるようになりました。そこで始めたのがブログ発信です。

当時はベテランのプリセールスが製品アップデート説明をすることが基本でしたが、パートナー会社の担当者やユーザー企業の方々がストレージプロフェッショナルとは限りません。素人の私が感じた疑問は他の誰かも同じではないかという点に目を付けました。

ストレージとは何か。なぜ必要か。どうしてこの構成なのか。当時のマネージャーやメンター、各製品部門の方々にサポートしてもらい、「そもそも」の疑問に答えるコンテンツを用意しました。パートナー様主催のイベントでは、HCI(ハイパーコンバージド・インフラストラクチャ)のコンセプトを料理に例えてプレゼンすることもありました。

入社5年目となる2017年にはEMCとデルが合併し、私は組織編成のためエンタープライズチームへ社内異動しました。これまで、勉強会の開催や情報発信などプリセールス単独で動くことも多かった仕事の仕方から一転、営業とプリセールスが二人三脚で動くスタイルへ切り替わりました。また、エンタープライズのお仕事は、お客様の要望に即してシステムをアーキテクト(構築)していく必要があります。

プリセールスとして半人前の私は、ここでまた自分が発揮できるバリューを考えました

プリセールス職の女性、しかも新卒は珍しかったこともあり、営業に同行するとお客様から「営業アシスタント?」と聞かれることもありましたが、その時の私は、「経験ある人たちが、経験から来る印象や先入観で未熟な自分を判断するのは当然だ」と思っていました。

私の場合、その時は良い意味でプライドがなかったんですね。頼りなさは、事実ですから(笑)。

でもだからこそ知識不足を強みに、ぶつかってみようと決めました。これまでの当たり前が実は、単なる過去の踏襲で本質を見失っているケースもあります。知識のない私の存在が過去の踏襲を見直すきっかけになるかもしれない、と思ったのです。

手始めに顧客向けのジャーニーマップを作り、数年スパンで業界変化やトレンド、目指す姿をひとつのシートにまとめました。新規開拓のお客様を担当したので、そのジャーニーマップを元にゼロからのリレーション構築を目指しました。

新人という立場を活かし、浮かんだ疑問や立てた仮説をお客様にぶつけてみる。お客様が今どういう状況にいるのか。どういう課題を抱えているのか。どういう道を歩みたいのか、想像して、理想を描く。

間違いを恐れず積極的に関わることで新人のプリセールスでもお客様と会話できるようになり、ゼロベースでこれからを共に考え、数年単位で未来を作っていくことができました。

入社8年目に訪れた転機。プリセールスから、新たなキャリアステップを築く

キャリアの転機が訪れたのは、プリセールスとして7年が過ぎた頃でした。

この7年は、「知らないことを知る」をモチベーションに、一人前を目指して「自分の業務」を全うすることに集中してきました。ですが、同期の卒業などもあり、自然と次のキャリアに目を向けるようになりました。

そこでまず始めたのが、CSR活動やDWEN*という起業家育成プログラムのアンバサダーを務めることです。コロナ禍で考え方が変化したことを機に、社会的取り組みに「ライフワーク」として関わりたいなと思い、業務とは別でこうした活動を始めました。

*デル女性起業家ネットワーク(DWEN)

それから、社内でもキャリアアップを目指しました。その際に活用したのは、プリセールス部門が行っているキャリア支援のひとつ、「Connected Development Plan」です。自分の経験やスキルを可視化し、目標を決めていくプロセスの中でマネージャー視点の評価も教えてもらえます。

私の強みが、グローバルとの連携や新しい提案を積極的にお客様へ打診していくところだったので、キャリア面談では「移住して海外勤務してみたい!」という夢を伝えたんですが、上司は受け止めてくれました(笑)。

グローバルとの連携や社内ネットワークを広げたいことを話していたおかげで、マネージャーからアジアパシフィック地域のAPEXアンバサダーに推薦してもらいました。

APEX*とは、デル・テクノロジーズのインフラ製品やデータセンターオペレーションをアズアサービス型で提供するサービスのことで、これに関するブートキャンプに参加し、その学びを日本の営業やプリセールスに伝える役割を担いました。

* Dell Technologies APEX

私は2021年にこのアンバサダーを務め、2022年の今はAPEXのプロダクトマーケティングコンサルタントを務めています

DXの必要性もベンダーとしての変化の必要性も明白な今、APEXを通してデル・テクノロジーズは変革を遂げようとしています。会社が大きく変化していくフェーズであるため、根幹をなすサービスのブランディングに関わっていける今のポジションに非常にやりがいを感じています

具体的な仕事は、サービスローンチに向けた各準備です。経営陣とのブランディング戦略、プロダクト開発チームとのサービス改善、マーケティングチームとのプロモーション戦略、営業チームとの営業支援制作、ドキュメントのローカライズ化など……。大小問わず業務があります。

さらに今はEMEAチーム配下におり、USチームがレポートラインです。国が違えばトレンドも異なり、お客様の傾向も営業の仕方も変わってきます。とても刺激的ですね。

When one door closes, another door opens.

プリセールスだった頃を振り返ると、正直技術は得意じゃなかったです(笑)。それでも、好奇心の強さと苦手意識の低さがスキルアップを支えてくれたと思いますし、今のポジションに就けたのはプリセールス時代にそうして培った経験があったからです。

キャリアは点ではなく、「線」で描くものだと私は思うんです。     

プリセールスの方々に転職の話を聞くと、 “技術”を軸としたキャリアを築く方が多かったですが、私は技術軸ではなく企業ブランディングに関心を持ったため、「デルで次のキャリアを考える」ことを決めました。そこでロールチェンジの道を選び、今に至ります。今やっていることを活かしながらポジションをチェンジするのが、線で捉えるキャリアです。

こうやって話すと私がキャリアに対してはっきり主張するタイプのように映るかもしれませんが、昔はそうではありませんでした。     

でも、発信することはとても大事だと今は実感しています。言葉にして発信することで、誰かがフィードバックなどのアクションをくれます。アウトプットの機会によって、自分を知ってもらい、チャンスが巡ってきた時に「あの人に声をかけてみよう」につながります。

私の好きな言葉に、When one door closes, another door opens. がありますが、チャレンジしてみて、その時たとえダメだったとしても、別の扉が開くんです。必ず次につながる

実は今のポジションに就く前、3回ほど異動のチャンスにトライしました。

コロナ禍による組織変更や、1on1で「それって本当にやりたいことなの?」という意見を受けて、いくつかのタイミングを見送り、そして決断したのが今の仕事

私の希望や想いを伝えていたから、このポジションが出てきた時にマネージャーたちが動き、応援してくれました。

異動したいと相談する度に、いつも肯定的に受け入れ、応援してくれたマネージャー陣に感謝しています。また、デルでは社内公募の制度があり、社内キャリアパスの相談にのってくれる方々が多くいることはとても心強かったです。

この経験から、私が多くの方に支援してもらったように、私も自分の働き方や仕事観を伝えて、誰かの後押しになれば良いなと感じるようになりました。キャリアの描き方はみんなそれぞれ違いますが、今この話を読んだ人がチャンスを掴み、次の扉を開いていくことを願っています