ダーツに触れる、きっかけ作りを。人気作品とのコラボレーションする理由
私は創業以来、ダーツのプロツアートーナメントや店舗の立ち上げなど、さまざまな事業の立ち上げに携わってきましたが、2022年現在は企業アライアンスやキャンペーンタイアップ獲得の責任者をしています。
タイアップとは、ユーザーに対するキャンペーンの元になる企業からIP(知的財産)のライセンスアウト、つまり使用の許諾をいただくこと。分かりやすく言うと、その獲得のために企画・提案することから始まります。
IP獲得後は、IPを効果的に使うために開発やデザイン、プロモーション部をディレクションしながら相手企業との調整をしていきます。社内でも一つの部署内で仕事をしているというより、各部署を横断している特殊なポジションです。
企画の例を挙げると、ダーツライブマシンでIPの人気キャラクターを使ったオリジナルゲームの開発やダーツライブプレイを盛り上げるデジタルコンテンツの制作、さらには、グループのダーツハイブ社と連携して限定デザインのダーツライブカードやグッズの販売など案件によって多岐にわたります。
直近では、『TIGER & BUNNY 2』、TVアニメ『東京リベンジャーズ』、映画『ルパン三世 THE FIRST 』、飲料メーカータイアップ、劇場版『Fate/stay night[Heaven's Feel]』、など。
弊社は、セガサミーグループの一員なので、グループのIP「ソニック」との30周年記念コラボキャンペーンも実施しました。
今の業務の大半が企業コラボやIPコラボなんですが、私がなぜ他企業とのコラボやIP獲得に力を入れているのかというと、より多くの方にダーツを「知ってもらう」、「ダーツに触れてもらう」きっかけに「ツナガル」と捉えているからです。
今では、ダーツ自体の認知度が以前よりは、高まってきたとはいえ、まだまだニッチなスポーツなので、他企業やIPの力を借りて未経験の人にも関心ごととして捉えていただき、注目してもらいたいのです。
たとえば、友達に「ダーツ行こうよ」と誘われても、全く興味がないと「行く」という行動を起こすのは難しい。でも「あのアニメとコラボしているからやってみない?」という誘い方なら少し気になってもらえます。そこから「ダーツをやってみたらおもしろかった」と思っていただけたら最高です。
現在、ダーツライブが社員に掲げている企業哲学に「ヒトはアソぶ。トモにアソぶ。」というフレーズがあります。これは私たちが世の中に何を提供してきたのだろう、何を目的に仕事をしてきたのだろうということを改めて言語化したもの。
ですからこのフレーズには、ダーツライブの創業当時から現在まで変わっていない姿が集約されていると思います。私たちは、絶えず時代と人に寄り添って「場所」を生み出してきました。
ダーツがもたらす楽しさを体感してほしくてお店を、ダーツ仲間がともに盛り上がれるイベントを、ダーツをスポーツとして発展させるために大会を……と、手掛けるサービスのそばにはいつも必ず人と人がいました。
ダーツライブは、常に新しいことに挑戦し続けています。セガのいちプロジェクトから事業化を果たしたというベンチャーマインドは変わっていないのです。
社内ベンチャーとして始動したダーツライブ
私のキャリアは1999年に入社した株式会社セガ・エンタープライゼス(現・株式会社セガ 以下、セガ)から始まりました。
日々、アーケードゲームやオンラインゲームのディレクションやプロデュースのアシスタントとして開発に携わっている中でダーツに触れたことがキッカケで今に至ります。
ゲーム開発者としてアーケードゲームやオンラインゲームに携わっていたのですが、あるときから、仕事後に部署のみんなでダーツへ行くようになったのです。
当時の部長が「夜、遊びに行こうぜ」と、私を含め5人くらいの若手を誘ってくれて。オフィスを出て中華料理をご馳走になり、その後ダーツに行くという流れがいつしか定番になっていき、ゲーム開発よりダーツが楽しいぞ!みたいになったりして(笑)。
そのうち、ダーツ大会への参加を目指すようになりました。当時は30戦のスタッツを紙に書いてダーツ場の店員に手渡し、それが承認されると大会に出場できるという流れだったのですが、30戦の結果を紙に書くのは一苦労。
さらに飲食店でもあるので、どうしても紙が濡れて文字がにじんだり、どこかに紛失したりと、きれいに明確な記録を取るのが難しかったのです。
そこで、当時の部長がプロデュースされていた「ダービーオーナーズクラブ」というゲームが我々ダーツライブシステムのアイデアの発端となりました。
これはマシンに専用カードを挿して、競争馬を育成シミュレーションするゲームなんですが、同じ仕組みを使えばダーツのスコアデータだって残せるのでは?と、今のダーツライブシステムの初期草案が生まれたんです。
みんなで「それだ!」と盛り上がったので社内に持ち帰り、研究開発プロジェクトとして試作をスタートしました。遊びから生まれた発想でしたが、ビジネスとして成立するだろうという確信は密かに持っていましたね。
その後、当時の社長が「やるぞ」と旗を振ってくれたことで、社内研究のプロジェクトから事業化に向けて話が進んでいきました。
まずは何がどう面白いのかを実際に見てもらうためロケーションを用意して、ネットワークダーツシステム「ダーツライブ」を初披露したのが、2003年のこと。社内ベンチャーだった取り組みが、株式会社ダーツライブになったのです。
2023年にはサービス開始20周年を迎えますが、現在では約2900店舗という場所に、ダーツライブのマシンが約7400台が市場にあります(※)。年を追うごとに、ダーツがコミュニケーションツールとしてもスポーツとしても世の中に「楽しい」を提供できていることを実感しています。
※2022年3月末時点
成長したダーツライブを武器に次のステージへ
そんな「場所」に、さらに多くの人たちに気が付いてもらうための取り組みの一つが、有名IPとコラボレーションです。施策を進めていると、ときに想像を超える効果が生まれることがあります。
たとえば、2015年に実施した『劇場版 TIGER & BUNNY -The Rising-』とのコラボレーションです。ダーツの得点によって作品のイラストが描かれたゲーム画面が獲得できたり、ダーツが難しいポイントに刺さると人気声優の声が演出として発生したりするという企画だったんですね。
しかし、すべてを見るためにはダーツの腕が必要で、ダーツ未経験のファンの方には少し高いハードルでした。そこで、ダーツが上手な人と作品ファンの方が一緒に遊びに行き、上手な人が出したゲーム画面や演出をファンの方が写真撮影して楽しむという特殊なコミュニティが生まれたのです。
世の中の人たちが好きなものを我々のサービスの中で表現し、その表現に関心を持った人がダーツに興味を持っていただく──。ここは私が大切にしている部分です。
もちろん、ただ人気作品のIPを獲得して調整して実施して、運任せのように流れが生まれるのを待っているわけではありません。戦略を立てて、流れを呼び起こしていくことが重要です。
最近では、2021年に実施した『東京リベンジャーズ』とのコラボレーション。もともとは、11月1日に情報解禁することが決まっていました。ですが敢えて前日の10月31日にSNSだけで「東京リベンジャーズとコラボ決定」という画像だけ投稿することに。いわゆるティザー告知、“匂わせ”と呼ばれるものです。
これは、10月31日という「ハロウィン」の日が作品の中で扱われている大事な日ということとその年のハロウィンでは、東京リベンジャーズのコスプレなどが流行るだろうというリサーチを経ての仕掛けでした。
そして、リサーチ結果から予想が当たり、世の中的にその日は、一般人から有名人まで『東京リベンジャーズ』の仮装をしている人が多くいるような状態。そんな中でSNSに画像を投稿したことで、ダーツユーザーに留まらず作品ファンの方々の中でも「え?何!?」と話題となったのです。
そして、間髪入れずにファンの中で話題になっている翌日に詳細情報を発表し、11月2日からコラボレーションアイテムの販売を開始。その結果、キャンペーン実施前から注目してもらい実際にアイテムを購入いただき、アイテムを使うためにダーツをプレイしに行くという流れが生まれ、我々にとってはダーツのプレイ数が伸びるという好循環を生むことができました。
常にこういう成功ばかりではないのですが、仲間と一緒に成功体験を得て、一歩成長し、また新しいことに取り組む。そのトライ&エラーの繰り返しで、企業としても成長を重ねているのだと思います。
変わらない企業哲学で、これからも
創業当初から比べると大きく成長したように感じますが、ダーツライブは道の途中、発展途上にあると思っています。セガサミーグループにいるけれど、まだまだ中小企業で伸びしろがあるんです。
ホールディングスの一員というのは強みです。グループ各社の多岐に渡る事業や技術の力を、ダーツライブとしておいしく料理して世の中に届けることもできますし、そういうことが柔軟にできるのはダーツライブならでは。グループ他社を見渡しても、実はダーツライブにしかない強みってたくさんあるんですよ。
それに一つのサービスを20年も続けて、しかもそれが廃れずに進化し続けているなんて、世の中的にも少ない。そこにおごることなく、どんどんチャレンジをし続けているからこそ、「とがっている会社」でいられるんだと思います。
だからこそ、私はこの仕事が楽しいのです。
セガの一角で生まれたプロジェクトから会社がはじまり、当時スローガンに掲げた「ダーツを10年後には文化にしよう」から20年。ダーツは「ナイトエンターテインメント」から「スポーツ」にまで広がりつつあります。
これからも私はフロンティアスピリッツを胸に、会社というステージの最前線に立ちながら、ダーツライブにしかできないことを仕掛けていきたいと思います。