福祉の道はひとつじゃない。人のためになる仕事を求めて出会った大和ライフネクスト

article image 1
▲ 入社当時の南(写真右)。左は担当支店のフロントマネージャー(管理員)

2001年に大和ライフネクストに入社し、2023年1月現在はシニア向けサービスを担当するプレシャスライフデザイン部で部長を務めています。振り返ると、私がこれまで歩んできたキャリアの根底には常に「福祉」への意識がありました。

きっかけは、母親が看護師をやっていたこともありますが、私自身が小さいころに難病を患ったことがあり、その際に多くの人に助けてもらった経験があるので、自然と福祉の分野に興味を持つようになりました。街のボランティア活動や募金活動などにも積極的に参加していました。

大学では福祉系の学部に進学しましたが、新卒で入社したのは建築会社でした。建築会社を選んだのは、「福祉」の気持ちを持った人間が一般企業にいてもいいのではないかという想いと、いずれ福祉施設を建ててみたいという想いがあったからです。入社後は約8年間、営業を担当していましたが、実際に特別支援学校の建設などにも携わることができて、とても良い経験になったと思います。

その後、子どもの誕生をきっかけにキャリアを見直す機会があり、知人の紹介から大和ライフネクストを知りました。

当時は、営業の経験を活かせて、かつ福祉業界で「人のため」になる仕事にもなんらかの形で関わりたいと思っていたので、車いすメーカーの営業職などを検討していました。最終的に入社の決め手となったのは、当時の人事課長から言われた“福祉だけが人のためなのではなく、大和ライフネクストでは色んな事業がすべて「人のため」になっている”という言葉でした。

大切なのは「手前の準備」。高齢になる家族に対して“そろそろ”を考えるきっかけを

article image 2

私が所属する「プレシャスライフデザイン部」は、シニア向けサービスを手掛ける、マンション管理会社としては少し特殊な仕事をしている部署です。

配属された当時、部署には介護の現場を経験したことがあるスタッフが多く在籍していましたが、福祉に関する経験や知識がある一方で、会社としての数字目標に対する意識が足りない部分がありました。“福祉につながることであれば売り上げを気にしなくていい”ではなく、福祉として人のお役に立ちながらも、会社として利益を上げなけばいけない。まずはそういった意識改革のところから着手しました。

もう一つの大きなミッションが、複雑化していたサービス体系を見直し、窓口を一本化することでした。当時、有料老人ホームの紹介を中心に、マンション内で起こった孤立死への対応、相続手続きや不動産売却のサポートなどを行っていましたが、いずれもシニアライフにまつわるサービスでありながら窓口はバラバラ、社内の人間であってもどこに問い合わせれば良いか分からないような状態だったのです。そこで統一の窓口として立ち上げたのが「プレシャスライフ相談室」です。

そして、このサービスをより分かりやすくお客様に伝えるべく生み出したのが、“そろそろごと”というキャッチフレーズです。

たとえば、有料老人ホーム入居にあたってのご相談は、入居されるご本人様ではなく、面倒をみる子ども世代から寄せられることがほとんどです。仕事や家庭の事情などで親の世話ができなくなった、介護疲れが限界に達したなどの理由が多いですが、中にはまだ老人ホームに入りたくない親と揉めてしまうことも。そうなる前に「親のことをそろそろ考えてみませんか?」と問いかけることができれば、と考えたのです。

身寄りがない方であれば、事前に身元保証の契約を結んでおけばスムーズに入居できたり、認知症になって口座が動かせなくなる前に家族信託などを結んでおけば、認知症になった後でも入居資金の用意がスムーズにできたりと、大切なのは“一歩手前の準備”であることを何度も痛感してきました。あのときに準備しておけばよかった……。と後悔しないためにも、見て見ぬふりをしている“そろそろ”考えなけばいけないあれこれと向き合うきっかけを作りたいという想いから、このネーミングにたどりつき、2022年よりホームページやパンフレットなどを一新しました。

シニア向けサービスの展開は、マンション管理会社としての使命である

article image 3

今でも強く印象に残っているのが、マンションで孤立死が起こってしまったときのことです。

高齢者の一人暮らしで、亡くなった半年後に、孤立死が発覚しました。きっかけは、コロナ禍で普及したドア前配達(いわゆる「置き配」)が玄関前にどんどん積み上げられていく様子を、管理員が不審に思って確認をしたことでした。

その後、社内で行ったアンケート調査では、孤立死の対応をしたことがある管理員が一定の割合でいることが判明したのです。そこで私たちが取り掛かったのが、孤立死を未然に防ぐための心掛けと、発生してしまったときの対応方法をまとめた、管理員向けの“孤立死対応マニュアル”の作成でした。

シニア向けサービスにおいては、マンションの最前線でお客様と接する管理員との連携が必要不可欠です。お客様の異変に気がついたり、お客様からご相談を受けたりすることが多い管理員に対して、マニュアルやご案内用のパンフレットなどのツールを提供することで、その先にいるお客様に広く私たちのサービスを認知してもらいたいと考えています。

ちなみに、この孤立死対応マニュアルは、当社の管理員向けに作成したものですが、孤立死の問題が深刻化している社会情勢を鑑み、現在はウェブサイトにて一般公開をしています

「なぜ管理会社が、孤立死対応マニュアルなんて作るの?」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。

大和ライフネクストは、マンション管理サービスを通じて人々の暮らしを支える会社です。マンションには、お客様の居住スペースである「専有部分」と、住民が共同で使用する階段や廊下などの「共用部分」があり、当社は「共用部分」の管理をしています。管理会社は原則として、お客様のプライベートな空間である「専有部分」に関わることはできません。

孤立死が発生するのはもちろん「専有部分」ですが、そこで起こることが管理会社に関係がないかというと、全くそうではありません。なぜなら、共用部分の管理をするということは、そこに住まう人々の様子が見える、日常的につながりが持てるということでもあるからです。そんな仕事は世の中になかなかありません。だからこそ、マンションで暮らす人々が高齢化していくなかで、私たちが何もしないという選択肢はないと思っています。

目指すは、すべての住民が頼れる“ユニバーサルデザイン”の相談窓口

article image 4
▲オンラインセミナーの配信にあたり、音量や画面の調整を行う様子

現在、首都圏と関西圏に拠点を置く「プレシャスライフ相談室」のサービスを、大和ライフネクストが管理する全国各地の管理受託マンションに行き渡らせるための取り組みのほか、他企業との協業なども視野に入れながらシニア向けサービスの新たな可能性を探っています。

また、プレシャスライフ相談室ではこれまで、有料老人ホームのご紹介や不動産売却のサポート等を中心に行ってきましたが、これからはマンションにお住まいの方々の健康寿命を延ばすための取り組みにも力を入れていきたいと考えています。

最近では、外部の講師をお招きして社外向けのオンラインセミナー配信に挑戦しています。テーマは「元気な間に整理するべきこと」「介護にできる限り頼らないための予防策」など、いずれも老人ホームなどをご紹介するもっと前の段階のことです。

当社にはスタジオ型情報発信プラットフォーム「赤坂プラスタ」があるので、撮影から配信まですべて自前でやっています。マンションに住まうお客様とそのご家族が健康で楽しく暮らせる期間を一日でも長くしたいという想いがあるので、これからもさまざまなチャネルでの情報発信に取り組んでいきたいですね。

そもそも福祉というのは、高齢者のためだけにあるものではありません。ジェンダーマイノリティや障がい者も含め、「ふだん」の「くらし」の「しあわせ」と言われるように、すべての人が幸せに暮らしていくためのお手伝いをするのが福祉です。だからこそ、私たちが最終的に目指すべきは “ユニバーサルデザインのマンション管理──マンションに住むすべての人が抱える問題や悩みに対応できる体制を整えること。今注力しているシニア向けサービスも、あくまでこの一環であると考えます。

建物の高経年化、住民の高齢化、理事会役員のなり手不足、そして修繕積立金不足など、多くの社会課題を抱えるマンション業界ですが、当社が掲げる経営ビジョン「LEAD NEXTYLE あしたのあたり前を、あなたに」という言葉の通り、お客様の未来の安心を作り出していきたい。だからこそ私たち「プレシャスライフ相談室」は、これからもお客様一人ひとりのお困りごとに全力で向き合っていきます。