マンション管理のベテランが提唱する、8つの「心得」

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▲常に携帯できるよう、名刺サイズでラミネートされた「心得カード」。経営ビジョンを具体的な行動へと落とし込み、山内が独自で作成したものだ

大和ライフネクストの経営ビジョンは、「LEAD NEXTYLE あしたのあたり前を、あなたに。」── 目まぐるしく変化する世の中の多様な課題に応え続け、“あしたのあたり前”をつくり、届ける。そんな決意をひとつの言葉で表したものです。 従業員一人ひとりが、自らの個性・感性を大切に、時代のニーズに合わせて変化・進化し続けながら、 日々いくつもの「あたり前」を積み重ねてきました。現在シニアフロントマネージャーとして住民の暮らしを支える山内も、そのひとりです。

山内 「これを作ったのは、フロントマネージャー(大和ライフネクストに勤める分譲マンション管理員の呼称、以下FM)として10年目を迎えた節目のとき。もともとは、日々の業務がマンネリ化していた自分に対する、戒めの目的だったんです」

そう語りながら取り出したのは、ラミネートが施された小さな名刺サイズのカード。「FMの心得」と書かれたカードには、全部で8つの項目が記載されています。 

1)FMの第一の任務は、顧客満足の獲得である。
2)FMの第二の任務は、収益への貢献である。
3)FMは次の事項を心掛ける。
 ① 「挨拶と身だしなみ」に注意する。
 ② お客様の立場で細部に留意する。
 ③ 「MS(マンション)は法律と規則の塊」を理解する。
 ④ 委託契約の完全なる履行を心掛ける。
 ⑤ FM業務は「清掃作業が7割」と心得る。
 ⑥ 「管理室は管理の象徴」、常に整理整頓。

もともとはホテル業界で長年サービス業に携わっていたという山内。接客の最前線であるフロント部門で活躍するかたわら、客室や施設などのハード面を支える建物管理の重要性を認識するようになり、今度は裏方として人の暮らしを支えたいという想いから、大和ライフネクストに入社しました。

そんな山内が、“あしたのあたり前”をつくるために「管理員としてどうあるべきか」を10年間考え続け、したためておいたものを簡潔にまとめたものが、この「心得」なのだといいます。

「覚える」のではなく、困ったときや失敗したときに「振り返る」ために

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▲新入社員や新人FMの教育も担当する山内。業務の確認から日常会話まで、日々のコミュニケーションを欠かさない

坂本 「 立ち止まったときには、いつもこの『心得』に戻ってくるようにしています」

そう語るのは、2019年に大和ライフネクストに入社し、分譲マンションの事業計画や課題解決型の提案などを行うリビングコーディネーターとして4年目を迎える坂本 陵介(写真右)。坂本は入社して間もないときに山内から「心得」を説かれ、その内容に何度も助けられてきたといいます。

坂本 「教えてもらった当時は、正直あまりピンとこなかったものもあります。ただ、働き続けるうちに、あらゆる問題を解決するためのヒントとなるさまざまな経験が、この8つの『心得』に詰まっているということに気がつきました」

山内 「人から教えてもらったこと、自分の失敗から学んだこと、他人の失敗から学んだことが、この『心得』に詰まっているんです。もちろん他にもたくさんありますが、これがなくては話にならないというものだけあえて絞って載せました。『心得』に書いてあることは、私にとって、FMとしての“努力目標”ではなく、FMが“必ずやらなければならないこと”ばかりなんです」

この「心得」は毎日見たり覚えたりするものではなく、どうするべきかの判断を迷ったときや、失敗の原因を振り返るときの指針となるものだと山内はいいます。だからこそ、どこかに掲示したりするのではなく、困ったときにいつでも見られるように、名刺サイズでラミネートしたものを作成しました。山内が年に3~4件ほど担当していた新人研修の際にも、自作の「心得」をもとに、長年の経験から得た学びを次の世代へと伝えています。

「建物は自分のものではない」という大きな気づき

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▲常に柔らかい物腰で笑顔を絶やさない山内だが、自作の「心得」を誰よりも厳しく順守しながら日々の業務にあたっている

ホテルスタッフとマンションの管理員という2つの仕事に関して、業界は違えど、お客様と毎日接するところや、お客様が安心して快適に過ごせることを目的とするところなど共通点も多く、根本は大きく変わらないと語る山内。それでも、当初は大きなギャップに苦しみました。

山内 「ホテルのフロント時代、建物は『ホテルのもの』であり、お客様のために変えたほうが良いと思ったものに関しては、なんでもすぐに変えられたんです。一方でマンション管理においては、建物は管理組合(お客様)のもの。意思決定権は私たちではなく、常にお客様にあるのです」

マンションの所有者は、そこに住む住民一人ひとり。生活も価値観も何もかもが異なる人々が集い、一定のルールのもとで同じ建物を共有しながら生活するマンションの世界においては、住民代表の集まりである「管理組合」が住民の意見をもとに維持・管理を行うのが鉄則で、それをサポートするのが管理会社であり、管理員の立場です。

お客様の暮らしをより良くしたいという強い想いを持って仕事に取り組むがゆえに、建物を管理・所有するホテルスタッフの立場から、建物を所有せずに管理する管理員の立場へと思考を切り替えるのに長い時間を要したと山内は語ります。そこで得た気づきを、自作の「心得」の中に端的に盛り込んだのが、以下の一文です。

──③「MS(マンション)は、法律と規則の塊」(であること)を理解する──

時代に合わせて進化し、引き継がれていく「心得」

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▲マンション管理の最前線で働く山内と坂本。年齢も業務内容も異なる2人だが、彼らは「心得」を通じた深い絆でつながっている

分譲マンション「D’レスティア八乙女」で10年以上FMを勤め上げ、2021年に定年を迎えた山内。現在はシニアフロントマネージャーとして、大和ライフネクストが管理するさまざまな分譲マンションをまわり、管理員の代行業務などを担当しています。

山内 「先日(代行業務で)訪れたある分譲マンションで、『心得カード』を渡したことがあるスタッフと偶然再会しました。彼女は、私が作った『心得』を取り入れながら真摯に業務に取り組んでいて、お客様からの評価も高かったんです。以前伝えたことが彼女自身の役に立っていて、それがしっかりと結果につながっていることが、本当に嬉しかったですね」

圧倒的な熱意をもって「心得」を説き、それを自らの体験をもとに常にアップデートし続けている山内の姿勢に感銘を受け、彼の「心得」を自らの指針として取り入れる従業員は多いといいます。もちろん、新入社員のときに山内の研修を受けた坂本も、そのひとり。

坂本 「今後の目標は、新しいことをやり続けること。ルーティーンワークではなく、自ら発案をし、成果を出せるようになりたいです」

山内が教えてくれた「心得」は、新しいことに挑戦していく勇気を与えてくれ、迷ったり失敗をしてしまったときには、きっとこれからも自分の支えとなってくれる──坂本はそう語ります。

山内 「FMにとって一番大切なのは、『心得』の最初にも書いた“顧客満足の獲得”であることは間違いありません。それを達成するために必要なのが、その他の項目に書いてあることであり、それらは日々の業務の中で常に見直され、更新されていくべきものなのです」

「心得」を自らの業務内で徹底的に実践し効果を実証しているからこそ、自分だけの経験と学びに留めることなく、次の世代に伝えていかなければならないと力強く語る山内。ユニフォームのポケットに忍ばせた「心得カード」の8か条を胸に、これからもマンションに住む人々の暮らしを支えていきます。