“計画そのもの”に価値が生まれる。それが診断業務のおもしろさ
私が担当している建物診断業務は、簡単に言うと「マンション版人間ドック」です。
みなさん、年に一度健康診断や人間ドックを受けますよね。同じように建物の劣化状況、いわば健康状態を見極めて、修繕計画のご提案をしています。「ビルディングドクター」という資格もあり、私自身も「建物のお医者さん」という気持ちで仕事に取り組んでいるんです。
具体的な業務は、マンションの建物自体(躯体やタイル・塗装など仕上材)や設備(給水管・排水管、電気設備など)の劣化診断調査ですね。その劣化状況に応じていつ修繕が必要で、どこまで直さないといけなくて、それにはいくらかかるのかなどを見極め、そこから将来を見据えた30年間にわたる修繕計画を立案します。
単発の工事提案ではなく、時には「工事をしない」という提案も含め、“最善な計画”を立案することで対価をいただく仕事です。計画そのものに価値が生まれるというのは、他の仕事にないおもしろさですね。
劣化診断業務は、タイルや塗装を強制的に剥がして調査をする破壊調査や、配管内の状況を確認するため内視鏡調査などさまざまな専門機器を使用して調査します。一方で、ここ数年力を入れて取り組んでいるのが、建築以外でも用いられている最新技術の導入です。
たとえば今は、ドローンによる外壁調査や3Dモデルを使用した建物の見える化に注力しています。目視では確認しづらい高層部分の外壁もドローンがあれば簡単に調査することができますし、調査結果を3Dモデル化することで、格段にイメージしやすくなります。
見える化・わかりやすさが必要なのは、何も私たちが作業をしやすいからだけではありません。お住まいの方が建物の健康状態を理解し、次に何をしなければならないのか気付いてもらうことにも役立ちます。
いくら精度の高い診断を行っても、お住まいの方に伝わらない専門用語や数値だけで報告していると、まず興味を持ってもらえません。そんなことがないように、いつもできるだけかみ砕いて説明し、最新技術も活用しながらお客様に納得感のある提案を心掛けています。
一度建築を離れて良さを再確認。そして、大和ライフネクストへ
父と祖父が建築の現場監督だったこともあり、小さいころからよく現場に連れて行ってもらいました。その影響もあり、幼稚園の卒業アルバムには「将来、建築士になる」と書いてありました(笑)。
大学では建築学科に進み、卒業後はゼネコンに入社。現場監督として新築されるマンション・物流施設の施工管理をしていました。作業員さんの中には自分の父や祖父と同年代の方もいたので、コミュニケーションの取り方には気をつけていましたね。
時には失敗することもありましたが、先輩や職人さんに建築に関することはもちろん、話し方や立ち振る舞いなどを教われた良い経験でした。上から目線にならないようなコミュニケーションを心がけるようになったのは、その経験が大きいですね。
現場監督の仕事をしていると、売り主の不動産会社の営業担当と接する機会も多いので、コミュニケーションを武器に仕事をしている姿をよく見かけました。その姿に惹かれ、次第に自分もそのフィールドで勝負したいと思うようになりました。
また工事現場の中で生活していたので、外の世界を見てみたいという想いもあり、学びの多い職場ではありましたが転職を決意したんです。
2社目ではレストランの法人営業と広報活動を担当していました。ちょうど新店舗を計画している時に面接を受けたのですが、私がゼネコン出身ということもあり、工事担当として店舗立ち上げを任されました。内装や設備を施工会社と一緒に計画しながらのお店づくりは楽しかったですね。
営業で外回りが多かったのですが、やっぱり建築が好きなので、結局歩いていても建物を観察したり、建設現場を眺めてしまったりする自分がいました。一度建築を離れてみて、あらためて「カッコいいな」「またやりたいな」という想いが芽生えて、また戻りたいと考え、もう一度建築の仕事を探し始めたんです。
以前はイチからつくる側を、2社目で計画する側を経験したので、次は建築業界に戻って計画する側・監理する側としてやっていきたいという想いで転職活動をしていました。
自ら工事を施工する管理会社が多い中で、大和ライフネクストは私が希望していた計画・監理する側に立って、建築に携わるスタンスの企業でした。そこが一番の決め手となり、入社をしました。
“最善“を提案できるのが、この仕事の価値
入社後、最初に配属されたのは現場で工事監理をする部門でした。
1社目のゼネコンとは異なり、お客様が住んでいるマンションが工事現場になります。そのため、現場ごとにお客様と直接コミュニケーションが取ることができ、ご満足いただけたことを実感できるのがモチベーションでした。
その後、建物診断課に異動することになりますが、工事監理の経験はもちろん、この時にお客様からいただいたご要望などを、できるだけ計画や提案資料の中に組み込むようになりましたね。
建物診断という仕事で最初にぶつかったハードルは、一番大切な「将来の修繕計画」というテーマに、お客様がなかなか興味を持ってくださらないことでした。
たとえば調査をした結果が悪かったときは、劣化状態や修繕計画よりもお金がかかることへの不安が先行してしまったり、逆に状態が良くて工事を延ばすことができたときは、「じゃあ私たちは何もしなくていいのね」と言われてしまったり。
最初は結構悩みましたし、今でもどうしたらみなさんに興味を持っていただけるのかと常に考えています。
その課題を解決するための取り組みが、わかりやすい説明に加えて、ドローンや3Dモデルを使うことにもつながりました。やはりドローンや3Dモデルを目の前で動かすと「すごいね」と関心を持っていただけます。またイメージが鮮明になることで、そのあとの修繕計画も自分事として捉えていただけるようになりました。
このように熱量を持って仕事に取り組めるのは、私たちのご提案する修繕計画に自信を持っているからです。
当社は一時的に施工する立場ではなく、計画・監理をする立場だからこそ、延命や仕様変更などを含めたお客様・マンションにとって“最善“を提案できる。
それは“管理会社の建物診断”という業務形態だからこそ提供できる価値です。
最終的には同じように工事の実施をご提案することになったとしても、このような目線や立場で考え抜くことがとても大事だと思っています。
「気付く力」で、周りの『ヒト』と『モノ』をアップデートし続ける
3Dモデルやドローンに限らず、新しい技術はどんどん世の中に出てきています。
私は新しいことを取り込んでいくことが好きなので、いろいろなセミナーや新しい展示会などに積極的に参加するようにしています。そこで当社の業務に取り込めるものがないか、常にアンテナを張り巡らしていかねばならないと感じていますね。
最近気になっているのは、センサー技術や高性能カメラ。今だと1億5,000万画素というレベルのカメラが出ています。車のセンサーもそうですが、人を認識する技術も上がってきているので、それをドローンに搭載して何ができるのか、なんて考えるだけでワクワクしますね。
もう少しするとドローンの無人飛行が日本でも可能になると言われています。
そこに向けて当社でも何かできないか、日々勉強をしているんです。
私は前職含め、ずっと新しいことに取り組んできました。ただ、どちらかというと一つひとつを楽しんで深掘りした結果、新しいことがやりたくなるタイプなんです。
実際、建築を楽しんで深掘りした結果、建築の領域を超えて新しい技術にも興味がわいてきましたし、今その領域を深掘りして楽しんでいます。会社に勤めているので、自分がイメージするやりたい仕事だけでなく、一つひとつの業務を深掘りしていく中で楽しみを見つけてきました。
そのため後輩には「気付く力を持ちなさい」とアドバイスしています。
建物を見た時に何か気になるところ、おかしなところに気付く力を持っていると、別の業務でも「ここはちょっとおかしいな」と気付けるようになります。そこからプラスαで「別の方法で取り組んでみよう」と新しいものにどんどん興味が広がっていくといいですよね。
今後も診断業務を深掘りし、新しい分野にもアンテナを張りながら、自身の知識と商品をアップデートする。そうやって楽しんでいきたいと思っています。