「店舗の魅力化」が最大ミッションのスペシャリスト集団

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▲2022年3月25日リニューアルオープンした高知大丸 組子のファサード

佐々木は2022年現在、大丸松坂屋百貨店の店づくり推進部に所属しています。各分野のスペシャリストとともに、魅力あるお店づくりのため尽力しています。

佐々木 「『店づくり推進部』のミッションは、ひとことで言うと“店舗の魅力化”です。ストアデザイン担当のほか、全店の改装案件を束ねるスタッフ、また新しいコンテンツを開発・導入するスタッフや催事の企画運営担当もいます。このような多分野にわたるスペシャリストたちが集まり、魅力ある店舗の実現に向けて取り組んでいます」

ストアデザイン担当である佐々木の役割は、大きく分けて3つあるといいます。

佐々木 「まず1つ目は、店舗改装をするときの内装計画です。百貨店内にテナントが入るケースも多いので、テナントが考える店舗デザインと、百貨店が求める環境デザインとのバランスを調整します。またフロア全体の環境デザインそのものを考えるのも私の仕事です」

佐々木の仕事はそれだけではありません。大丸松坂屋百貨店が独自に運営する企画や、大規模プロジェクトにも携わっています。

佐々木 「2つ目は、独自に運営している企画のデザインづくりです。例えば、カラーアナリストなど専門知識を持つスタッフが、お客様のファッションタイプを診断したり、お買い物のお手伝いをしたりする『ファッションナビプレミアム』や、外商のお客様などにご利用いただくラウンジ機能の空間・サービスの強化にも携わっています。場合によっては、自分たちでデザインすることもありますし、外部デザイナーと協力してデザインを作ることもあります。

そして3つ目は、店舗全体をどうするのかという、大きな視点でのプロジェクト的な仕事になります。私は高知大丸のリニューアルオープンにも関わりましたが、大規模なフロア改装や大型店舗改装、ときには店舗そのもののストアデザインコンセプトを立てることもあります」

各店には内装監理室というものがあり、ストアデザイン担当もその中の一役を担っています。

佐々木 「店舗の改装は内装監理室という組織で進めています。大丸松坂屋百貨店の社員以外にも、建物や内装のプロフェッショナルであるJ.フロント建装の方や、J.フロントサービスの施設担当の方など、グループ会社の中でチームを構成しているケースが多いです」

ストアデザイン担当は総勢6名。そのうち3名は店舗に常駐し、佐々木を含めた残りの3名は東京本社勤務です。佐々木は現在、リニューアルオープンする高知大丸や松坂屋静岡店を担当しています。

佐々木 「どちらも現場の方々とコンタクトを取りながら、一緒にプロジェクトを進めています。例えば高知大丸ではローカリティを全面に出したい想いがありました。その地域の良いところを一番理解しているのは現場の店舗の方々なので、『高知の魅力的なモノやコトって何だろう?』『高知の人ってどんな人だろう?』などブレストをするところから一緒に取り組んでいきましたね」

佐々木はプロジェクトを進めていく中で、人と人のつながりの大切さや、自身が携わる仕事の影響力の大きさを改めて実感できたといいます。

佐々木 「店舗の方々とは、オンラインで打ち合わせをすることもあれば、実際に私が現地へ行くこともあります。東京にも新しい情報がたくさんあるので、『最近こういうのができている』『展示会でこんなものを見てきた』といった情報も共有しながら、一緒に作り上げてきたのは、良い経験でしたね。

高知大丸がリニューアルオープンした時には、商店街一面が高知大丸のフラッグを掲げるなど、地域に愛されている百貨店なんだと実感しました。お店という枠を超えて、人とのつながりを作ったり、地元で活躍する人や企業と協業したり、非常に価値のある仕事であると思えた瞬間でもありました」

日本の伝統技術である組子細工の「土佐組子」と、世界で一番薄い和紙をつくる「日高和紙」と協業して演出したファサード(正面外観)は、こうした佐々木らの想いから生まれたのです。

社員一人ひとりの声を拾い上げてくれる会社。そう感じたことが入社の決め手に

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大学ではデザインを専攻していた佐々木。百貨店への就職を考えたのは、良い暮らしや文化を伝えたいという想いがあったといいます。

佐々木 「大学では『生活デザイン学科』というところで、特に生活のなかでの人とモノ、空間やその営みとの関係に注目するような授業を受けていました。ゼミではプロダクトデザインを専攻していて、将来は自分でモノを作るよりも、今ある魅力的なモノやこれから生まれてくるモノの良さを伝える側になりたいと思っていました。百貨店は、衣食住さまざまなモノを扱い、豊かな暮らしを提案していると考え、この業界に興味を持つようになったんです。

私は京都府出身なんですが、私の中では京都といえば大丸のイメージが強くありました。大丸松坂屋百貨店の説明会に行った際に、いいモノを伝えるだけにとどまらず、新しいことにも挑戦する姿勢が他社よりも一番感じられたんです。当時、ポケモンセンターや東急ハンズのテナントなども誘致していて、従来の百貨店らしさにとらわれない考え方が、とても面白いと思いました」

また面接時でも、他社にはない取り組みが大丸松坂屋百貨店にはあったと話します。

佐々木 「面接では、終了時に毎回『フィードバックシート』をもらいました。そこには、面接時には伝えられなかったことや、自分の想いをすべてぶつけられる形式が取られていたんです。他社ではそういうものがなかったので、話すのがあまり得意ではない私にはそれがとても嬉しくて、いつも思いの丈を書いて帰っていました(笑)。そういう声を拾い上げてくれるのは、とても素敵なことだと思いますし、社員一人ひとりを見てくれる会社なんだろうなと感じられたことも入社の決め手です」

2014年に入社した佐々木。店舗で商品に関わる仕事がしたいという希望がかない、大丸京都店で、販売に加え、商品計画の補佐というポジションを任されます。

佐々木 「やりたかった商品に携わる仕事ができたのはすごく楽しかったですね。私は紳士雑貨売場に配属され、そこで販売だけでなく、バイヤーと一緒に商品展開の計画を検討したり、セール商材の取り扱いなども行っていました」

商品知識を身につけながら現場をこなす中、2年目から商品担当になれたのは、佐々木の向上心の賜物でした。

佐々木 「やりたいことを自分のやりたいままにできるという環境に面白さを感じていました。たとえば『この商品をこっちに移動させよう』と思ったら、今日にでもできてしまうような場所ではあるので。本当に小さなことなんですが、自分の思うように行動して、それが『やっぱり売れたね』という結果につながるサイクルが目に見えるのが早くて、そこに楽しさを感じていましたね」

やりたいことをかなえるため、佐々木は当時からマネジャーらとも積極的にコミュニケーションを取っていたといいます。

佐々木 「当時のマネジャーには、面談のたびに自分の意見を伝えていました。そういった中で、IFI(一般財団法人ファッション産業人材育成機構)が運営するIFIビジネス・スクールの関西研修に参加する機会をいただきました。商品の仕入れから店頭に並べるまで、VMD(ビジュアル・マーチャンダイジング)も含めてファッションのMD(マーチャンダイジング=商品計画・商品化計画)を学ぶことができました」

佐々木は大丸京都店で3年間勤務し、そこで自分がやりたかったこと、そして多くの学びと経験を得ることができたといいます。

未来のタネはどこにでもある。人とのコミュニケーションから得た気付き

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▲松坂屋名古屋店「ファッションナビプレミアム」

大丸京都店の紳士雑貨売場を経て、2017年には未来定番研究所に異動した佐々木。この異動は、佐々木にとって晴天の霹靂だったと振り返ります。

佐々木 「当時は『何で私なんだろう』と思いましたね(笑)。これは私の推測なんですが、当時京都店で活動していた「next K」という有志の会がありまして。これは若手社員らが閉店後に集まって、普段の業務の枠にとらわれず何か面白いことを考えようという集まりだったんです。そこで、私もいろいろな提案をしていて、そうした姿勢を買っていただけたのかなと思います」

未来定番研究所では、オウンドメディア「FUTURE IS NOW」(=略称、F.I.N.)立ち上げに関わり、連載の企画や編集・サイト運用・イベント計画に携わりました。

佐々木 「未来の定番になるモノやコトを探してくるというのが、発足時の大きなミッションです。メディアを通じて新しい取り組みをする方々から未来のタネを集め、その情報を社内外に共有したいという考えがあったので、まずはオウンドメディアを立ち上げようというところからスタートしました」

オウンドメディアを通じて、たくさんの気づきを得ることができたと語る佐々木。

佐々木 「さまざまな分野の方とお話していると、『これは百貨店に置き換えられるな』と思うことが多々ありました。他の方がやっていることや考えを聞いていくうちに、そこから多くの気づきを得ることができたんです。『未来のタネ』はどこにでもあると思い、積極的に業界以外の人と話す機会を作りましたね」

こうした気づきもあって、佐々木は2020年に公募で現在の店づくり推進部に異動します。

佐々木 「EC(サイト)がどんどん出てきて、ネットですぐにモノが買える時代になってきました。そういった中で、わざわざ百貨店に来てもらうためには、モノも大事ですが空間が非常に重要だと考えていたんです。ちょうど大丸心斎橋店本館リニューアルの時期で、『あの場所で買いたい』と思ってもらえる動機づくりは、これからの実店舗には必要だと思いました。その役割を担える部署はここしかないと思い、またデザインを勉強してきたことも強みになると考えて自ら手を挙げました」

店づくり推進部に異動してきた佐々木にとって、最初の仕事は会員様専用サービス 「ファッションナビ プレミアム 」の診断サービス内容の見直しに伴う店舗デザイン刷新でした。

佐々木 「より上質なサービス内容へと見直しが行われ、それにふさわしい空間づくりを目指してディレクションを実施したんです。自分が描いたプランが、そのまま立ち上がって売場になったときには、とても感動しましたね」

業務を進めていく上で、いろいろな方の意見を取り入れることも意識したと佐々木は語ります。

佐々木 「ファッションナビ担当の方とは、密にチャットや打ち合わせをして、デザインの方向性から接客サービスで必要な機能など、いろいろな意見を取り入れながら図面を作り上げていきました。自分の成果が目に見える大きな仕事でしたから、図面が完成するまでに2、3カ月と時間がかかりましたが、すごく良い経験になりましたね」

買うだけが目的ではない。百貨店の枠を超えた新たな体験ができる空間に

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佐々木にとって、やりがいを感じる瞬間について次のように話します。

佐々木 「ファッションナビやプロジェクトもそうですが、完成した様子を見たときに『ああ、やってて良かった』と思います。もちろんお客様に喜んでいただくのが第一ですが、スタッフから『接客がやりやすくなった』と声をかけてもらうなど、メンバーの働きやすさにもつながると、広がりがあって非常に嬉しいです」

買う目的以外にもご来店いただける動機づくりも大事だと語る佐々木。そのためには、「こんな体験ができる」という今までにない新たな空間づくりの重要性も感じています。

佐々木 「今の百貨店は、売場、通路、休憩スペースが分断されているように感じています。それを館全体が1つの空間になるように編集していきたいと思っています。売場はもちろんですが、そこには集うための場所や何かの発見ができる場所、また憩いのスペースがあってもいいですし、売場以外のところにもいろいろ仕掛けておく必要があると考えています」

入社から10年弱、中堅社員となった佐々木は、大丸松坂屋百貨店の魅力をこう語ります。

佐々木 「入社前から持っていた“社員一人ひとりを見てくれる会社”という印象は今でも変わっていません。店づくりの分野にはプロフェッショナルな社員がたくさんいます。一方で、若手の新鮮な目線を生かした発信はまだまだ足りないところも多いと感じます。

これから就職を考えているみなさんには、ぜひ大丸松坂屋百貨店に入社して、どんどん声をあげていただきたいですね。フォローする体制が万全に備わっている会社ですから、ベテランの知識やノウハウと、若い新しい発想が融合していけば、今までにない百貨店を実現させられると考えています」

そんな佐々木もやりたいことを実現させるため、若手時代から自らの意見や想いを恐れずに発信してきました。それが佐々木のキャリアアップにつながり、現在の空間づくりという大きな仕事につながっています。今後も果敢にチャレンジしていく佐々木の活躍から目が離せません。