オンラインとリアル店舗を融合させたい。互いに協力し合う仕組みを構築中

▲DEPACO担当メンバー

2022年5月現在、望月の肩書きは、経営戦略本部DX推進部デジタル事業推進部の専任部長兼DEPACO編集長。

望月 「DEPACOはメディアとEC機能を併せ持ったサイトです。大丸松坂屋百貨店で取り扱っているデパコスがオンラインで買えるのはもちろん、メディアとしてコンテンツの提供もしています。私は当社初の編集長という肩書きで、コンテンツ全体の統括をしているほか、事業戦略や事業計画の立案、デパコの売上や予算管理など、事業全体のマネジメントにも携わっています」

コンテンツの中には、編集部のメンバーが顔出しでデパコスを紹介する記事のほか、各化粧品ブランドの美容部員(BA)によるスタッフ投稿や、オンラインによるカウンセリングやセミナーなどもあり、バラエティに富んだ内容になっています。

望月 「デジタル事業推進部内で、DEPACOに関わっているスタッフは22人います。商品を調達するバイヤーチーム、オンラインサービス等を店舗に反映させていくチーム、ほかにも物流担当やカスタマーセンターなど、それぞれチームを組んで役割分担しています。

DEPACOBAとして登場する当社の社員は、化粧品ブランドに勤めた経験があり、ブランド横断でお客様の悩みに応えることができます。現在はオンラインでの実施ですが、彼女らの認知度を高めていくため、今後は店舗イベントにも出演する予定です」

メディアという枠を超え、DEPACOが一つのプラットフォームとなって、オンラインとオフラインを併合したOMOを実現するのが望月のビジョンです。化粧品ブランドのBAによるスタッフ投稿は、現在東京店だけですが、2022年8月までには、心斎橋店や名古屋店とも連携し、徐々に全国の店舗に広げる予定です。

望月 「DEPACOはお客様にとって有益なサイトになるだけでなく、店頭のBAたちもオンラインを通して自発的に活躍の場を広げてもらいたいと思っています。各店の営業部長や化粧品フロアの担当マネジャーにも協力していただき、密にコミュニケーションを取りながら進めています」

DEPACOの事業全体を考える中で、オンラインとリアル店舗が対立関係になってしまうことを危惧した望月。互いに協力し合える仕組み作りにも意欲的に取り組んでいます。

望月 「ECと店頭は対立関係になりやすいですが、そうではなく協力関係にするために、DEPACOの売上が店舗に還元されるような仕組みを作っています。たとえば、店舗BAがDEPACOで素敵な投稿をして、それを見たお客様が化粧品を買ったとします。このときの売上は店舗の売上として記録され、ブランドにもフィードバックするというものです。オンラインでありながら、店頭BAにもモチベーションを感じてもらえる仕組みを考えています」

ライターから百貨店のMDへ。違う視点で大好きな美容業界を見てみたい

▲大丸松坂屋百貨店入社後、出張で訪れたパリの“ボン・マルシェ”で

地元の新聞社で記者として社会人のスタートを切った望月。新聞社を退職後、2009年にファッション&ビューティ業界の週刊紙「WWDJAPAN」の出版元であるINFASパブリケーションズに入社しました。

望月 「新聞社時代の同期が入社していて、『WWDビューティ』が立ち上がって間もないタイミングで声をかけてもらいました。予備知識のない状態で入社したのですが、ビューティ業界に身を置くうち、化粧品が消耗品、嗜好品、ブランド品といった、いろいろな側面を持っているところに魅力を感じていったんです。

またビューティ業界は『人を美しくしたい』と純粋に願う人に支えられています。そんなビューティ業界に携わる人も好きで、これほど興味深い産業はないと思っています」

そんなビューティ業界の最前線を取材していた望月が、大丸松坂屋百貨店への転職を決意した理由について次のように振り返ります。

望月 「37歳のときに、ご縁があって大丸松坂屋百貨店から声を掛けてもらいました。全くやったことのない仕事をさせてもらえるのは、年齢的にも最後のチャンスだと思いました。今まではメディアという第三者的な立場でしたが、百貨店で働くとなると関わり方も当然異なります。違う視点で大好きなビューティ業界を見ながら学んでみたい、また新しいことにもチャレンジしてみたいという想いから転職を決意しました」

望月が転職した2015年は、インバウンドの絶頂期でした。本社営業本部MD(マーチャンダイジング:商品企画開発)戦略推進室化粧品担当として、各店の化粧品フロアの大改装をはじめ、コスメセレクトショップ「アミューズボーテ」や、美・食・雑貨の融合売り場「KiKi YOCOCHO」の立ち上げにも参画します。

望月 「店頭経験は一切なかったのですが、百貨店の社員になると、化粧品が売れないと自分に跳ね返ってきます。入社した当時は、インバウンドの絶頂期でしたから、どの店もお客様を取り込みたいということで、一斉に化粧品フロアの拡大改装が行われていました。そういった中で、お客様からどういった売り場やブランドが求められているのか、という視点で仕事をしていました」

すでにオウンドメディアとして運営していたDEPACOがメディアコマースとしてリニューアルするプロジェクトがスタートし、編集長に就任したのは2021年3月です。ですが、それ以前のMD担当としてもDEPACOと関わり、取引先にもDEPACOの存在を広めていたと話します。

望月 「DEPACOをリニューアルしメディアコマースを始めるといっても、協力してくれる取引先がいなければ何もできません。その取引先の窓口となるのがMD担当だったので、編集長就任前から『DEPACOの新しい取り組みを始めます』といって取引先を回っていたんです」

いつでもどこでもコスメを選べるワクワク感をお客様に提供したい

▲DEPACOで発信した記事の例

大丸松坂屋百貨店は店舗を含むさまざまなメディアを通して、お客様にとって有益な情報をお届けし、「人の力」を活用して、オンラインでもオフラインでも、商品だけでない新たな体験価値の提供を目指しています。DEPACOも、その実現に向けたプロジェクトの1つであり、それゆえ編集長という肩書きの重要性を望月はこう考えます。

望月 「リアル店舗もオンラインも、価値を伝えるという視点で見るとメディアになります。また当社の今後の方向性や道筋にもDEPACOは大きく関係しています。だからこそ担当者レベルの主導ではなく、大丸松坂屋百貨店で初となる『編集長』という肩書きを掲げる意味があったのだと思います」

そんなDEPACOのターゲットは、デパートのブランド化粧品に興味はあるけれど、どれを選んでいいか分からない、といったデパコス初心者のお客様です。素敵なデパコスとの出会いの架け橋になりたい、と望月は願っています。

望月 「私たちのミッションは、“いつでもどこでもコスメを選ぶワクワク感を提供すること”です。なかなか店舗に足を運べない方や、カウンターに座りながらの接客よりも、もっと気軽に買い物をしたいお客様も多いと思います。私たちは、そんなお客様に代わって知りたいことを取材し、情報を発信することを心掛けています」

他社との差別化を図るため、DEPACOではさまざまな取り組みを実践しています。

望月 「単純に商品を並べるだけでは既存のECモールなどにはかないません。DEPACOがもともと掲げていた“身近なプロに教わっちゃおう”というコンセプトは変えずに、お客様の身近な存在であることを常に意識しています。そのため編集部のメンバーは顔を出して記事に登場していますし、みんなでブレストしながら、時代に合わせて距離の近い、顔の見える関係を目指しています」

ですが、DEPACO編集長として業務を進めていく中で、さまざまな課題に直面することもあると望月は話します。

望月 「オンラインの世界は、100%完成させてローンチするのではなく、日々アジャイル開発のように進めていくものですから、想定外の問題が出てくることもあります。また、総勢20人超という多くの人材をマネジメントするのも初めてのことで、苦労する部分もありますが、やりがいも感じています」

そういった中で、望月はメンバーとコミュニケーションを取る上で大切にしていることがあるといいます。

望月 「今まで自分の部下とは、毎週1人30分の1対1ミーティングを行っていましたが、メンバーが20人以上となるとそれは難しいです。そのため今後は、チームリーダーがメインになりますが、それ以外でも直接関わるメンバーだけでなく、間接的に関わるメンバーともコミュニケーションを取っていきたいですね。

思ったように進まない問題点や課題の端緒がすぐに発見できる組織風土を目指しています。『望月さんなら言っても大丈夫』と心理的安全性が保たれる、信頼関係を築くことが目標です」

自分が楽しむことが何よりも大事。チャレンジを恐れず目の前の仕事にコミット

新聞記者、ビューティ業界紙の編集・記者、百貨店のMD担当者を経てDEPACO編集長になった望月。今後の展望についてこう語ります。

望月 「キャリア志向は正直あまりないのですが、会社の期待に応えたいという思いはありますね。仕事もご縁だと思っていますので、そうしたご縁を大事にしながら、私は与えられた場所で成果を出すことを目指してきました。目の前の仕事にコミットすれば、自然と新しい道が開けていくのではないでしょうか」

新しい環境、新しい仕事に挑戦し続けた結果、今の望月があります。

望月 「1度きりの人生ですから、チャレンジすることを恐れずにいたいです。大丸松坂屋百貨店に転職する前は、WWDで副編集長をしていました。その先のキャリアも見えていたのですが、転職して挑戦する道を選びました。私は根っからの楽天家ですし、いろいろ挫折したこともありますが、楽しみながら仕事をしたいと思っています」

自身が楽しむことが仕事において重要だと望月は考えます。こうした望月の想いは、チームを作る上でも必要だといいます。

望月 「自分が楽しんでいないと、周りも楽しめないと思うんです。MD担当時代はさまざまな取引先を巻き込みながら仕事をしていましたが、自分がワクワクしていないと相手に良さを伝えることができません。そのため仕事においても、チームを作る上でも、自分が一番楽しむことが重要だと思っています」

そんな望月は、大丸松坂屋百貨店の良さについて次のように話します。

望月 「私は大丸松坂屋百貨店にはとても感謝しているんです。当社は私のような外から来た人でも、活躍できるポジションにおいてくれる度量の深さがあります。だからとてもやりやすいですし、今まで続けてこられたんだと思います」

外から来た人に興味を抱き、活躍できる場を提供する社風のおかげで、異業種から転職してくる人も少なくありません。

望月 「また新しい提案にも耳を傾け、面白がってくれる風土もあります。百貨店の枠組みを超えたところで、商売をしていくことを模索しているので、多種多様な人の可能性を活かすことができる場だと思っています」

お客様にワクワク感を提供するためには、自身が「仕事を楽しむこと」を大事にしている望月。仕事に関わるさまざまなご縁を大切にしながら、望月はこれからも挑戦を続けていきます。