ステークホルダーを巻き込み、サステナビリティ活動を推進中
2021年9月現在、大丸松坂屋百貨店のサステナビリティ戦略担当として活動を推進している百田。大丸松坂屋百貨店は、J.フロント リテイリンググループの中核事業会社です。
「くらしの『あたらしい幸せ』を発明する。」というグループビジョンの下、「Well-Being Life(心身ともに豊かなくらし)」を追求するサステナビリティ経営をすすめています。その一環として大丸松坂屋百貨店は経営戦略本部の中に推進担当を設置しました。サステナビリティ戦略を担うメンバーは、百田を含めて7人です。
百田 「私が担当する業務は大きく5つあります。なかでも大きな柱となっているのは、サプライチェーン・マネジメントです。
サプライチェーン・マネジメントとは、自社だけでなく、材料や部品の調達から製造、出荷、流通、販売などの「モノの流れ全体」を指すサプライチェーン(供給連鎖)を最適化するための経営手法のこと。噛み砕くと、当社だけではなく、様々なお取引先様やお客様と共に持続可能な社会を実現することを目指すイメージです。
今後、サプライアセスメントを実施する予定で、現在準備の真っ最中です。お取引先様のサステナビリティやSDGsに関するヒアリングを行うため、質問内容などについてホールディングスとも話をしながら進めています」
サステナビリティとは、「持続可能性」という意味です。大丸松坂屋百貨店は、あらゆる企業活動において「サステナビリティ視点」を最上位に位置づけ、持続可能な社会の実現に向けて積極的に取り組んでいます。
百田 「もうひとつの柱は、CSV(共通価値の創造)を社内に浸透させる活動です。CSV は社会貢献性と利益、経済的な部分も両立させていく考え方で、私たちはソーシャルグッドな事業活動と呼んでいます。まず従業員にCSVを理解してもらい、どんなことをするのか知ってもらうことから始めているんです。
それから、『サステナラボ』の運営も私の担当です。サステナラボは、店舗と連携しながら、CSVの取り組みとして具体的な企画を考え、トライする場です。トライして終わりではなく、メンバー間でディスカッションした内容をまとめ、社内イントラを使った情報発信をすることで従業員のCSVへの理解向上も目指しています」
「好きをエネルギーに」という言葉が入社のきっかけに
百田が大丸松坂屋百貨店に新卒入社したのは2018年。会社を選ぶ際、どうしても外せない3つの条件がありました。
百田 「1つ目は、人と関わりながらチームとして働けること。人と話すことが好きなんです。2つ目は、社会貢献できること。3つ目は、いろんなことに挑戦できること。この3つが実現できる会社はないかと探しました」
いろんな業界を幅広く見ていく中で、大丸松坂屋百貨店の採用ポリシーである「好きをエネルギーに」という言葉が心に響いたと語ります。
百田 「大丸松坂屋百貨店の説明を聞いたとき、自分が大切にしている3つのことが実現できる、と直感しました。百貨店は伝統的で、保守的なイメージを抱いていましたが、話を聞いていくにつれ、全然そんなところではない、と感じたんです。危機感が強い業界だからこそ、どんどん若い人にも仕事を任せたい、いろんなことに挑戦してもらいたい、というメッセージに惹かれました」
入社後に百田が配属されたのは、大丸梅田店の婦人靴売り場。そこで接客販売など、百貨店の基礎業務を経験します。
百田 「現場に出た経験が、今に生きています。たった5カ月間ではありましたが、色々なお客様がいること、お客様からの信頼があるからこそ売場の販売員がプライドを持って接客していることを肌で感じられたのは大きな収穫でした。リアルな現場の空気を感じることができたことは、現在の業務にも大いに役立っていると思います」
その後、百田は本社人財開発部に異動し、新卒採用を担当することになりました。
百田 「いつかは全社に関わる仕事をしたいと漠然と思っていました。当時、採用担当は私がメインで、全体を見るリーダーが30代前半、もうひとりのメンバーも20代という、とても若いチームでした。社内外含めて非常に多くの人と話す機会に恵まれましたね。
相手が何を求めているか、一緒にお仕事をしていただくために、何をどんな風に伝えるといいのか、といったコミュニケーション方法も叩き込まれたと思います」
人財開発部に2年半所属した百田は、2021年3月、本社経営戦略本部経営企画部に異動。サステナビリティ戦略の担当となります。
百田 「自分の中では、ある程度新卒採用領域をやり切った感があり、別のチャレンジもしてみたいと考えていました。サステナビリティについてはもともと関心があり、先輩と雑談しながら希望を伝えていたんです」
サステナビリティ戦略の難しさ。壁を超えた先に広がる未来
もともと興味はあったものの、これまでのキャリアとは別の領域に飛び込むことになった百田。サステナビリティ戦略は非常に抽象度も高く、ゴールも明確ではありません。当初は戸惑うこともあったと振り返ります。
百田 「異動して大変だと感じたことが大きく2つありました。ひとつは、専門的な言葉や知識。これからさらに勉強しなくては……と今でも思っていますが、最初は全然追いつけませんでした。もうひとつは、たとえば“温室効果ガスをいつまでにどれくらい減らすか”などホールディングスとして掲げている数値目標に対して、私たちは具体的に何を進めていくのか、道筋を組み立てるのが難しい点です」
数値的なゴールはあるものの、達成するためには、現場の従業員や取引先などの協力が欠かせません。あらゆるステークホルダーを巻き込むために、議論を重ねる日々。そうするうちに、普段の業務の中での具体的な課題が見えてきた、と百田は語ります。
百田 「サプライチェーン・マネジメントなどの取り組みについては、当社内で初めてのものもあります。誰も正解がわからない中、まず誰に相談して、どんな人をどこまで巻き込むか。本当に難しく、手探り状態です。ソーシャルグッドな事業活動=CSVに関しても、私たちと現場の間にギャップがある。
すべての事業を一本化することは難しいですが、CSV の推進は会社や店舗、売り場にとって意味がある活動だということを伝えないといけません」
サステナビリティ戦略担当ができて約半年。全国の店舗との協力体制もできつつあります。たとえば、家庭で余った食材などを持ち寄って必要な人に届ける「フードドライブ」は松坂屋名古屋店と、ビニール傘の廃棄を減らす「ビニール傘研究会」は、大丸梅田店・大丸東京店と協力して進めています。
百田 「本社や店舗、どちらかが主導する形ではなく、従業員全員が同じ意識を持って取り組んでいます。最初はどういうコンセプトで行いたいかなどを、私たちと店舗の方とで議論するところから始めました。
最終的な店頭表現にあたっては、店舗の販促担当にも協力してもらうことになりますが、その場合は店舗のメンバーから説明していただく……といった具合に、連携しながら取り組みを進められた手ごたえはありますね」
サステナビリティの取り組みは、大丸松坂屋百貨店の企業イメージを大きく変えることになる、という百田。
百田 「特に若い方のなかには、百貨店に対してあまりポジティブなイメージがない場合もあると思いますが、サステナビリティの領域でしっかりと取り組み、成果につなげることが、企業イメージの向上にも繋がるのではないかと考えています。
まだまだ始まったばかりですが、当社の将来に向けて鍵となる部分を担っていることがやりがいのひとつですし、自分が今後生きていく世界をより良くできる、その一端を担えることが大きな充実感に繋がっています」
挑戦できる社風を糧に、サステナビリティ戦略を牽引する
株式会社東洋経済新報社が2021年3月に発表した「第15回CSR企業ランキング(2021年版)」で、J.フロント リテイリングは「CSR3部門合計」で第2位、「環境」部門では堂々第1位を獲得しました。
また、同じくJFRグループとして、国際的な環境非営利団体CDPよる、2020年度の気候変動に関する調査において、最高評価であるAリストに初めて選定され、気候変動への取り組みや情報開示に関する先進企業として認定されています。
百田 「ホールディングスとしてはサステナビリティの取り組みに関して、一定の評価をいただいている状況ですが、今後も新しい挑戦をしていきます。具体的には、当社単独ではなくサプライチェーン全体で温室効果ガスを削減を実現するための取り組みを開始する予定です。」
サステナビリティ戦略担当の百田は、中長期的展望も視野に入れて行動しています。
百田 「今の領域で、自分の中で成果が出せたと確信できるまでやり遂げたいですね。これまでいろいろな取り組みを進めているので社内の情報連携は、以前より進んでいます。今行っているサステナラボの拡大版のようなことができれば、アウトプットの機会も増えていくはずです」
また現在の業務に携わるにつて、様々な仕事を知りたいという気持ちも最近出てきた、と百田は語ります。
百田 「業界を取り巻く厳しい状況の中、『何かしなければ』という意識が強く、部内のミーティングでは10年後、20年後を見据えた意見が交わされています。大丸松坂屋百貨店のリソースを使ってできることはたくさんありますし、チャレンジしていこうという社風が浸透していると思います。
具体的には決まっていませんが、様々な現場を見ることで、私自身も新しいチャレンジができる気がしています。いろいろなグループ企業があるので、いつかは全然違う業界・業種にも挑戦できたら面白いな、と」
これまでにさまざまな業務に携わり、多くの人と関わってきた百田。部門が異なっても、大丸松坂屋百貨店で働く人に共通して感じる部分があるといいます。
百田 「個人的に感じたのは、情に厚く、親切な良い人が多いこと。“どんな仕事をするか”に加え、“どんな人と働くか”は、とても大切だと思うんです。大丸松坂屋百貨店で働く人は、ハートフルで親切。情に厚い人が多いと思います。
また一方で、『好きはエネルギー』と掲げているだけあって、想いを重視してくれる環境だと感じています。やりたいことがあって、それを伝えることができる人や、自分で切り開いてやる、くらいの気持ちがある人にとっては最高に良い会社なのではないでしょうか」
「好き」をエネルギーに変えた百田。最前線でサステナビリティ戦略を牽引し、巻き込み力を発揮しながら、さらなる挑戦を続けます。