リアル店舗が持つ強みを活かし、お客様へストーリーを届ける

私は2021年現在、大丸東京店1階の婦人洋品売場でバイヤーをしています。

メインの仕事は、1日〜年単位の数値管理を行い、日々の売上進捗を追っていくことと、様々な展示会に出向き、新しいブランドやアイテムを探すことです。また、半年間の店頭の展開スケジュールや、月ごとの販促計画も策定しています。他にも、見えないところで値札や伝票の作成など、非常に細かい業務もしています。バイヤーと聞くと、華やかに見えますが、実は細かい業務も含めた役割なんです。

婦人洋品売場では、シーズンアイテムからデイリーアイテムまでさまざまなカテゴリーの商品を扱っています。そうした商品展開の計画や発注するアイテムを、フロアマネジャーやリーダーと話し合って決めているんです。展示会に参加することもありますね。

他にも、マーケットの状況やニーズは日々変わっているので、新しい市場開拓のために外に出向くことを意識しています。

プライベートでも名刺を持ち歩いていて、興味のあるお店や面白いと思うイベントがあったら名刺をおいていくことが多いです。日常が仕事につながっている感じですね。

私はトレンドを拾い過ぎず、お客様に関心があることを重要視するべきじゃないかと思っています。最近は特に、どうやってリアル店舗を伸ばしていくか考えていますね。

例えばECサイトやフリマアプリが台頭し、近年は消費の質が大きく変化していますが、その中でリアル店舗ならではの良さがあると思っています。それは百貨店の強みであるギフトマーケットです。例えば、クリスマス、バレンタインデー、母の日、父の日といったマーケットを、私たち百貨店はさらに強化しないといけないと思います。

ネットでギフトを購入して贈ることも出来ますが、大切な人にあげるとしたら実際に自分の目で商品を見たいですよね。コロナ禍でより人と人とのつながりを大切にしたい方が増えていることからも、その気持ちに寄り添うのがリアル店舗である私たちの使命だと思います。

また、モノが売れなくなったのはコトや体験が重視されているからという話を聞きますが、私はコトがあるからモノを買うんじゃないかなって思います。

つまり、「ストーリーが重要」ということです。

ストーリーをお客様に届けられていないことが、モノが売れないことにつながっていると思います。モノを買うまでの全体のストーリーをいかに作るか、今後はここに注力していきたいと考えています。

現場の声が道をつくる。「変えたい」という想いが自分を動かした

2008年に入社した後は、研修を経て紳士雑貨売り場に配属となりました。当時の紳士雑貨のターゲットは50代前後のお客様でしたが、もう少し若い層も取り込み、幅広い年齢層のお客様をターゲットにできないかと考えていました。

当時の若い世代はファッション雑誌やネットからいろんな情報を収集していたので、トレンドを押さえることができれば百貨店のお客様になると思っていたんです。そこに伸びしろを感じ、現場で挑戦したいと思っていました。

配属後は右も左もわからない状態でしたが、何かしら変えたいという想いはずっと持っていました。数字だけでは拾えない情報を、いかにマネージャーやバイヤーに伝えるかに課題認識を絞って仕事をしていましたね。

特に定性的な声、例えば何も買わずに帰ってしまったお客様の声を大事にしていました。一番大事なのは、帰ってしまったお客様がなぜこの売り場では買ってくれなかったのかだと思います。

そうした声を知ることができれば、商品展開や接客の人財育成など改善できることが明確になるため、とにかくお客様の声を拾うことを大事にしていました。

そして、2010年に売り場のリーダーになりました。しかし、当時私は23歳前後で、売り場のメンバーは全員年上だったんです。大変なことも多かったですが、リーダーを務めた期間は非常に充実していました。

その後、2013年に本社のアシスタントバイヤーになりました。

新しい商品の仕入れや、新規のお取引先様を探すことが本社のメインの仕事です。当時は本社と店舗では、売上げ、店頭の魅力化などゴールは同じでしたが、それまでの過程に相違があったように感じます。見えない業務などで生まれていた相違を払拭し、現場と本社の懸け橋になるのが私の役割でした。現場でリーダーをやっていた経験が活きたなと思います。

とくに、現場の声を元にした商品づくりや、店舗にフィットする新規ブランドをいかに引っ張れるかを意識していました。全国の各店メンバーと話し、そこで吸い上げた声を本社に伝えながら、本社の考えも現場に落としていました。

現場のさまざまな経験から感じていた「変えたい」という思いに対し、本社という上流からも取り組むことができたんです。

そして、2016年に本社バイヤーになりました。

今でも徹底的に現場の声を聞いていますが、当時から各店のバイヤーや販売員さんと直接話すことを大事にしていました。面と向かって話さないと伝わらないことがあると思うんです。

やはり、現場の声が一番の生きる道だと思っています。自主編集売り場には自社の社員が多いため、情報や想いを正しく落とし込むことさえできれば、非常に販売力のある売り場ができることを確信し、続けています。

バイヤー目線と現場目線が自分の強み。リアル価値の向上へ挑戦する日々

一番大変だったのは、本社バイヤーとして海外出張をした経験です。

海外の展示会は日本の展示会よりも時期が早く、半年以上先を見据えて商品を発注しなければいけません。

加えて、大量に発注するので大きな額で買わなければいけないんです。売れないものを買ってしまうと会社の大きな損害になるので、プレッシャーが非常にありました。

海外出張の際には、事前に売り上げと消化の計画を考えていきます。また、他社情報や現場の声を入念に聞き、当社の店舗でどういう商品が売れているのかを調べました。それでも実際に展示会に行ってみると、少しイメージと違う商品が並んでいることがあるので、常に緊張感はありましたね。

他にも、販売員さんと同じ目線で仕事することも多いです。販売員さんから「この売り場のレイアウトじゃ売れない」と言われれば、どうしたら売れるか一緒に考えていきます。こうした部分でも現場でのリーダー経験が活きていると感じますね。

今では現場目線のリーダー経験と本社バイヤーでの経験が私の大きな強みです。その中でトップダウンでなく、いかに売り場メンバーが売り場をつくれるかを一番重視しています。販売員さんの想い、本社の想い、店舗のバイヤーの想いが三位一体のように思えたのは、自分の中で非常に大きかったですね。

物が売れる時代であれば、トレンドを意識し、新しい物をどんどん仕入れて販売すれば良かったかもしれません。今はそうではなく、ECではできないリアル店舗の強みを活かすことが必要だと思うんです。

いかにお客様や販売員さんとともに良い商品と出会い、そのストーリーを伝えていけるかが重要だと思っています。

コロナだから初めて見えてくる部分も出てきています。例えば、「入店客数が少ないからこそできることがもっとあるよね」と視点を変えることができました。今はまだ何がお客様にヒットするのかわからないのですが、いろんなことにチャレンジできる楽しさはやりがいになっています。

リアル店舗が持つ人の力──私たちにしかできない価値提案をこれからも

5年ほどバイヤーをやっていますが、今後も担当したいです。コロナの影響で、百貨店はモノへの原点回帰を求められているのではと思っています。

なので、お取引先様との共存共栄や店舗での仕掛けづくり、お客様の心をくすぐるような品揃えという部分に、モノ軸・コト軸・サービス軸などを考えて注力していきたいんです。

モノだけじゃなく、人を絡めてストーリーを伝えていけるのがリアル店舗の価値だと思っています。そこをさらに向上させるために、販売員のマネジメントや育成も同時に考えていきたいですね。

例えばECで商品の詳細をさらに聞きたいときって、チャットでのやり取りになってしまいますよね。より熱量を伝えることができるのは人ですし、それはいつまでも変わらない部分であると思うんです。

だからこそ「人」がいるリアル店舗の強みを活かしていきたいですよね。もっと人に焦点を当てて、例えば「この人がいるから買いに来ました」と言ってもらえる店舗づくりをしてもいいのかなと思います。

バイヤーとして意識していることは、周りを見る視点です。実はバイヤーの仕事をし始めた2013年ごろ、ファッションのビジネススクールに行かせてもらいました。そこで「今日1日を通して、オシャレだと思った人に会いましたか」と先生から聞かれた時、私を含めて他のメンバーもすぐには答えられなかったんです。

7〜8年前の話ですが、今でもそういった視点を意識していますね。出かける際は人間観察をすごくしていて、オシャレな人を絶対に見つけるようにしています。それが、人もモノも好きという点につながっているのかもしれません。

大丸松坂屋百貨店のバイヤーとして働く上で非常に面白いポイントは、ターミナルに立地する店舗においては、良いも悪いもお客様が定まっていないという点です。全国からいらっしゃるたくさんのお客様と出会うことができます。

何が当たるかわからないですが、そうした中で試行錯誤を重ねられる面白さが、この仕事の醍醐味です。いろいろなお客様に刺さる、あらゆる商品を提案できるのは、間違いなく私達にしかできないことだと思います。