いろいろな経験や視点が集まって、共創していくことの楽しさ

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大丸松坂屋百貨店の各店の化粧品フロアには定められている区画があり、そこに各ブランド様に出店していただいています。私は2018年からフロアのリーシング担当として、全国にあるどこの店舗に、どのブランドを配置するかについて、ブランド様と協議しながらフロアを構成していく仕事をしています。

お取引先様は、各ブランドの営業の方や、出店の開発担当の方がメインです。

当社は関係会社も含めて、北海道から博多まで店舗がありますが、それぞれの店舗によってお客様のニーズがまったく異なります。

店舗の特色をよく知る営業戦略、販売促進の担当者が各店舗にいるので、その担当者と協力しながらブランドの導入を進めていきます。お客様の買い方や、好みに合わせることはもちろん、トレンドも踏まえてブランドの選定をしたりします。私の方から「今はこのブランドが来ていますよ」という情報を共有しながら提案することもありますね。

また、ブランドの導入まで至らなくても、店内で期間限定のイベントを開催することもあります。最近ですと、流行りの美容機器を早い段階で同じチームの人が見つけてきたので、各店舗にイベント開催の打診をしました。その結果、この秋冬はほとんどの店舗でやることが決まりましたね。

今はデジタルにも注力をしています。これからは、店舗で物を売るだけではありません。OMOなど、デジタルとどう絡ませるのかというオンラインとオフラインの融合を考える必要があると思っています。ここをどれだけやれるかが百貨店の今後の存続につながると思って取り組んでいます。

化粧品というのは、デジタルとの相性が非常に良いカテゴリです。これからは、デジタルでの接客やECショップなど、さまざまな手法が当たり前になっていくと思います。

デジタルを活用することでツールの幅が広がるので、その中で今後お客様とどうコミュニケーションをとっていくかしっかり考えていきたいですね。

一緒に働いている社員は、色々なカテゴリを経験してきている人ばかりです。今のチームですと化粧品の現場で働いたことがあるのは私だけなんです。

私の上司は、ファッション情報誌の元副編集長。他にも、それぞれのカテゴリにはずっと食品系一本の人や、美術関係一本の人もいて、関わってきたカテゴリやキャリアは多岐にわたりますね。

いろいろな経験や視点が集まって、ひとつの仕事をつくっているというのが、新しい発見もあって非常に楽しいです。

大丸松坂屋百貨店へ入社。「神戸シューズ」のイベントで感じたやりがい

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▲Fが入社後、最初に勤務していた大丸神戸店

学生時代の就職活動では、何かを消費者に届ける、伝えていく仕事に興味があったため広告関係やイベント系の企業を中心に見ていました。

そんな中で大丸松坂屋百貨店を受けたのは、大丸神戸店の雰囲気がよく、非常に好きだったから。兵庫育ちだったこともあり、元々馴染みの百貨店だったんです。

また、当社の採用面接を受けた際、当時の採用部長に「消費者に何かを伝えることは、小売りでもできるよ」と言われ、業界は変われど、ここで自分のやりたいこともできるんだ、と気づきを与えてもらいました。そして、大丸松坂屋百貨店への入社を決めました。

入社後は1年間研修で、大丸神戸店で店頭業務を一通り経験し、その後、同店で婦人靴を担当しました。

1番面白かったことは「神戸シューズ」というイベントです。地域の産業とコラボできないかという声をいただき、神戸の靴屋さんを回ってオリジナルをつくってもらいました。一からデザインするわけではなく、有型ではありますが色や素材を自分でチョイスして、オリジナル婦人靴の販売イベントを2週間ほど行いました。

百貨店での靴の中心価格は15,000円以上だったので、イベントではターゲットを10代にも広げ、安くて日本製の質の良い靴であることを紹介していきました。お客様のニーズはとても高く、よく売れましたね(笑)。現場にいて非常に楽しかったです。 

今年はいつやるの?またやらないの?といった問い合わせがイベントの時期になると増えるので、楽しみにしてくれている人がいると思うとやってよかったな、と思います。自分がつくったつながりで、誰かの役に立っていることはやりがいに感じますね。

婦人靴で色々と経験させてもらい、5年が経ちました。そろそろ新しいことに挑戦したいと感じ、化粧品のプロモーションへ異動することに。

そこでは化粧品だけでなく、婦人服も対象としたイベントスペースの運営を担当しましたね。

全6箇所のイベントスペースを毎週もしくは2週間に1回、企画から運営をしていました。毎週のようにあらゆるカテゴリのイベントを行っていたので、あの膨大なタスクをやり遂げた自分をまずは褒めたいなと思っています(笑)

さまざまなカテゴリの方とお話をする中で「こういうことがやりたい」という声を直接聞けたことは、今の業務でも非常に活きています。

ブランドごとに大事にしているものや、価値を置いているもの、戦略が違うため、当然アプローチ方法も異なります。こちらから提案もしながら、ブランドらしさが一番表現されるような売り場をつくっていきました。

気軽に化粧品を試してほしい──学生とコラボした新しい取り組み

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その後、念願の化粧品のサブマネジャーになりました。

今となってはデパコスをお客様ご自身が気軽に試して自由に選べるセミセルフショップが多くありますが、当時はそういった場所がまだまだ少なかったのです。

「化粧品フロアって買いづらい」と思われることが多く、化粧品フロアの1番の課題って異常な敷居の高さだと思うんです……。

しかし決して敷居は高くないですし、化粧品を試した後買わなくてもまったく問題有りません。ですので、それを解決ができるイベントを開催することに決めました。

お客様が気軽に商品を試せる場所をつくりたいと思い、化粧品のサンプルを貸して欲しいとブランドさんに交渉しました。

ただその時に、化粧品のサンプルは貸せるけれども、人は出せないとブランドさんに言われて、思いついたのが、学生さんとのコラボです。

学生さんが対応することでお客様にとってコミュニケーションのハードルが下がるうえに、安心感を与えることができると思いました。

思いついてすぐに、近隣にあるメイク学校の代表番号に電話をかけましたね(笑)。ありがたいことに先方も快諾をしてくれました。

学生さんにとってもお客様と直接接することで勉強になるだけでなく、ブランドの若手BA(ビューティアドバイザー)が学生さんに教える立場を経験することで、若手の成長にもつながりました。関わる全員にメリットのある良い企画となり、新しいチャレンジでしたが非常に好評でした。それをきっかけに、今でも学生さんとのコラボイベントは開催しています。

これまでの店舗でのチャレンジを経て、その後MDとして、本社に異動となりました。当時はインバウンドの効果もあって化粧品が盛り上がっていましたし、京都・札幌・神戸・名古屋・心斎橋の化粧品のフロア改装を立て続けに行う非常に忙しい時期でした。

非常に大変で、最初1年くらいの記憶がほぼありません。(笑)

MDとしてとても嬉しかったのは、今まで大丸・松坂屋で展開していなかったブランドを導入できたときです。

ある香水の人気ブランドに携わった際、東京など本州には店舗があったんですが、当時、北海道にはショップがなかったんです。ニーズがあることはわかっていたのでリーシングを行った結果、大丸札幌店への導入に成功しました。「〇〇初」と大々的に取り上げてもらい、オープン初日から列ができたんです。

「今まで東京に行く時に、この香水を買っていたのでありがたいです」「やっと札幌に入ってくれたんですね」とお客様から喜びのお声を直接いただき、本当に嬉しいなと思いましたね。

最近は、ECの流れがありますが、香水や化粧品は皆さん実際に試したいと思うので、デジタルだけで完結することはないと思っています。

肌に乗せてみたいし、香りだったら嗅いでみたいと思いますよね。バランスを見ながら、試せる場をいかに増やせるかが自分のミッションだと思います。

今までの経験が活きているなと思うのは、現場の声として私の意見を尊重してもらえるときです。ブランドさんも「お店ではこうですよ」という現場のリアルな意見は聞いてくれることが多いですね。

現場を知っている強みは自分にしかないと思っているので、普段からお客様の声や現場での分析など積極的に伝えることを意識しています。

挑戦できる環境があるからこそ、際立つ大丸松坂屋百貨店のチャレンジ精神

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2021年2月現在、百貨店業界は厳しい状態ではありますが、大丸松坂屋百貨店はその中でもチャレンジ精神がある会社だと思っています。

百貨店事業だけではなく、GINZA SIXをつくったり、静岡では松坂屋とPARCOがコラボしたり、J.フロント リテイリンググループ全体でさまざまな挑戦しています。

社内報で他の活動を知ることも多く、周りの社員も面白いことをやっているなと思うと、ワクワクしますね。

私自身も化粧品や婦人靴などの新しい企画を提案してきました。自分で企画してやるのは、もちろん大変で根性がないと難しいことですが、今まで私が携わってきた上司は応援をしてくれる人たちばかりでした。

私がやりたいことに対して、いつも「やってみろ」と言ってくれました。もちろん気持ちだけの甘い提案だとはじかれますが(笑)。「いいんじゃない、企画書書いてみなよ」と言ってくれる上司が多く、非常に恵まれているなと思います。

今までの経験を通して、会社として個人のチャレンジを聞き入れて新しい取り組みをしていく雰囲気があると感じますね。やりたいことは口に出したほうがいい会社だと思います。

今後は、引き続き化粧品を担当したいですね。現場のことに限らず、次の課題になるデジタルとの融合に関するプロジェクトに携われているため、非常に勉強になっています。

振り返ると、今まで様々な挑戦をしてきました。新しい仕事や企画が浮かぶ時は、いつも「現状のままでいいのか」と考えることからスタートしていると思います。

たとえば靴の品揃えに変化がないことや化粧品フロアに入りにくいという課題に対して、まずは何かしらやってみるということを意識していました。普段から、まだやっていないうちからできないと決めつけない、できない理由を探さないというのを大事にしています。私自身、批評家にはなりたくないので。

最終的に、私たちの試行錯誤した結果生み出された価値が、お客様にとって新しい発見になるといいなと思います。こういったものって便利なんだという感動、驚きを提供していきたいです。

既にその便利さを知っている人だけでなく、まだ知らない人にいかに届けるのかも含めて、百貨店の新しい可能性を探していきたいですね。


※所属部署・担当は、取材当時のものです。