データ分析の領域で、金融業界の業務効率化をサポート
2022年5月現在、金融業界のお客様のデータ分析案件に従事している吉野。住宅ローンの審査や法人の与信、企業Webサイトに外部から怪しいアクセスがないかなどを、機械学習を用いて検知したり、アラートを出したりする仕組みをつくっています。
吉野 「もともとこれらの業務は、人が目で見て確認していたものです。自動化できれば、作業負荷を大幅に軽減できて、判断もスピーディーになりますし、ケアレスミスによる見落としを防ぐことも可能です」
10名弱のメンバーで案件を進める中で、吉野は自分の作業のほかにも、技術的な観点からより良い案をメンバーに提案するなど、知見を活かしたサポートを行っています。
吉野 「チームで“朝会”を実施しています。メンバーに困りごとがないかを聞いて、解決に時間がかかるようなことがあれば、改めて話し合いの場を設けています。
相談内容は、技術的なものや、お客様とのコミュニケーションについてなど、さまざま。相談を受けたときは、答えを教えるのではなく、課題解決を導くというスタンスでコミュニケーションを取っています。教育的な観点を持つように心掛けていますね」
そんな吉野がクレスコに新卒入社したのは、2011年のこと。当時は就職氷河期で、就職活動は難航。次々に採用面接に挑む中、クレスコだけがいい意味で“異質”な企業に映ったといいます。
吉野 「不採用の理由を開示しない企業が多い中、クレスコでは選考ごとに必ず、良かった点だけでなく、改善すべき点も教えてくれたんです。
当時、選考過程でグループワークがありました。自分では“議論”をしていたつもりでしたが、『話し方が討論みたいになっていた。ここは会議をする場だから、相手を立てるような発言をするよう心掛けてみてほしい』と言われました。私にとって、ストレートで切れ味のある、的確なフィードバックだったので、印象的でしたね」
入社後は、金融業界のシステム開発を中心にキャリアを積んできた吉野。証券会社のバックオフィスシステムの品質向上や、銀行で使用しているシステムの改修などの案件で経験を重ねました。
探求心と発信で、開けた世界
吉野がデータ分析業務に初めて関わったのは、銀行のマーケティング部門に常駐していたときのことでした。
吉野 「銀行が顧客にメールマーケティングを行うためのデータ加工業務に携わっており、当時の私の業務は、データ分析をするための、“きれいなデータ”を用意することでした。『どのようにデータを整理すれば、分析しやすくなるのか』を考えながら業務を行うことで、データ分析への学びを深めていきました」
その後、吉野がデータ分析業務に本格的に携わるようになったのも、常駐先での業務がきっかけでした。
吉野 「その銀行のマーケティング部門に常駐していたフロアにいた、別のチームの他社の方と、数年間親しくさせてもらっていたんです。
その方は、私とチームをまたいで協力し合ったこともあり、私の知識や技術レベルをよく知っていました。その方から、私が携わっていた案件がひと段落するというタイミングで『自分の案件に参画しないか』とオファーをいただいて、本格的にデータ分析の案件に携わることになったんです」
当初はデータ分析への理解が浅く、苦戦することも多かったといいます。そんな中で吉野にとって効果的だった勉強法は、“読むこと”でした。
吉野 「当時私はSASというプログラミング言語を扱っていたのですが、マイナーな言語なので、情報が少なくて。なので、SAS社が公開している、SASの基本機能などが書かれたドキュメントを、むさぼるように読みました。業務で関連する部分はないかと、数千ページに及ぶ英語のドキュメントとひたすら向き合っていましたね」
また吉野は、SASのドキュメントの中で、日本語の解説記事が世に出ていないテーマを見つけては、ブログで発信していました。
吉野 「ブログを始めたのは興味や好奇心が最大のきっかけですが、まだ誰も日本語で発信していないことを伝えることにも、大きな価値があると思っていたんです。ブログを通して、SASの第一人者の方と交流する機会も得られました。『自分にしかない』と評価される知識やスキルを身に着けられることが、モチベーションになっていましたね」
実は吉野は2017、2018年に、SASの論文も執筆しています。そのきっかけもブログでした。
吉野 「社外の、同じくブロガーの方とやり取りする中で、『“SASユーザー総会”に出す論文を書いてみないか』と言われたんです。
大学院時代に論文を書いた経験もあったので、論文を書いてみました。そうしたら、“優秀論文賞”を受賞しました。SASに出会った当時は、ここまで活動の幅が広がるとは思っていなかったので、今でもびっくりしています(笑)」
“CET”として課題を解決しつつ、新たな学びも得る
吉野は、クレスコ内で“CET”メンバーという顔も持っています。
吉野 「“CET”とは、“Cresco technical Expert Team”の頭文字を取ったもので、プロジェクトマネジメントや各種ツール、開発言語など、さまざまな分野から選出されたエキスパートの集まりです」
組織が大きくなるにつれ、「わからないことがあっても、誰に聞けばいいかわからない」という声が社内で聞かれるように。そうした課題を解決しながら、組織全体のスキルを高めるのが、CETの意義です。
吉野 「私はSASのCETメンバーです。SASの論文の受賞が社内でも話題になっていたので、任命いただいたきっかけは論文だったのではと思います。他のCETメンバーは、勉強会を開催するなど、積極的に学びを深めたり、社内に知識を伝播するきっかけを作ったりしている社員が多い印象です」
CETメンバーの主な活動は、社内で活用しているコミュニケーションツール “Microsoft Teams”内に設けている、CET専用チャットに寄せられる質問への回答です。
吉野 「マイナーな言語ゆえ、SASに関する質問はほとんどありません(笑)。他の分野への質問も見られるので、回答できることがあれば専門外のものでも積極的に答えるようにしています」
吉野は、CETメンバーとして質問に回答することを通じて、逆に新たな学びを得ていると話します。
吉野 「専門外のことに積極的に答えているからか、これまでの業務で触れてこなかった課題に向き合えるところにおもしろさを感じています。他のCETメンバーの回答を見ることで新たな知識が得られることも多く、飛び交う質問も多種多様で、非常に刺激的ですね」
知識と経験で、人と人との橋渡しへ
今後は、さまざまな人たちの“橋渡し”になりたいと、吉野はいいます。
吉野 「実は、自分自身はゼネラリストだと思っています。いろいろな案件や分野の経験を経て、“ユーザーとベンダー”、“データ分析者とエンジニア”、“フロントエンドとバックエンド”など、それぞれの立場の気持ちがわかるようになりました。
たとえば、データ分析においては、分析の精度が高くても、お客様のビジネスと照らし合わせた結果、活用できないこともあります。そのため、データ分析者には『どのような分析データを提供すれば、お客様のビジネスに貢献できるか』という視点が必要なんです。
お客様に最大の価値を提供することが最大の命題であり、その手段は分析に限る必要はありません。データ分析はあくまでもツールなんですよね。そんな視点を持って、きちんとお互いにとって良い成果が出るように、意識のすり合わせができる橋渡し役になりたいですね」
また、CETに関しても伸びしろがあると語ります。
吉野 「CETは2015年に発足し、2022年現在は50名ほどに増えましたが、もっと増えるべきだし、もっと気軽に質問が寄せられるような環境作りが必要だと考えています。
個人的には、CETメンバー側からも発信する機会を増やしていくべきだと思っています。勉強会を積極的に開催することはもちろん、もっと気軽にチャットなどで情報発信を行うことも可能なはずですから。質問に答えるという受け身の状態ではなく、相互のやり取りが活発になって、社員にとってCETがもっと身近な存在になれれば良いと思っています」
データ分析のエキスパートとして、またゼネラリストとして。持ち前の好奇心と探求心で、絶えず学び、スキルや知識を社内外に惜しみなくシェアしてきた吉野。今後も発信することを通じて、事業や社会の成長に貢献し続けていくでしょう。