ABCに入社したのは特別な縁。大好きな音楽に携わることができた初任配属
西﨑 「私がABCに入社したきっかけは、ちょっと変わっているんです。大学時代にふと思い立って『お遍路』に出かけたのですが、そのことでひょんなことから『探偵!ナイトスクープ』に出演することになり、突き詰めればそれが、入社のきっかけになっています」
「めずらしいでしょう」と懐かしそうに笑う西﨑は、もともとテレビ局に就職できるとは思っていませんでした。
西﨑 「経済学部だったこともあり、就活のときは銀行や証券などを中心に受けていました。ただ、番組出演の縁もあるし、堅めのところだけではなくABCも試しに受けてみようと思って。
最初は記念で受けたようなものでしたが、面接が進むにつれて、志望度が増しました。というのも、面接で関わった人たちが、愛のある人ばかりで、とにかく人柄が良くて。それに加え、高校からバンドを組むなどカルチャーに興味があったこともあって、ABCならやりたいことができるのではないかなと感じたんです」
こうして縁が実り、ABCに入社。初任配属では事業メディア局という、いわゆるイベントセクションに配属されます。中でも西﨑の担当は、当時ABCが運営していたクラシックホールの事業でした。ホールで実施されるイベントの合奏団・指揮者を招聘したり、演奏プログラムを決めたり。時には各地域にある小さな公共ホールを回るツアーを計画したり。西﨑は、川上から川下までを担います。
西﨑 「当初クラシック音楽にはなじみがなかったのですが、音楽が好きだったこともあり、おもしろかったですね。今でも印象的なのは、ある公演の演奏プログラムを決めていたときのこと。指揮者の方がマイナーな曲の演奏をご希望される中、何度も交渉し、ベートーヴェンの『運命』のような、お客さんにも馴染みの深い有名な曲をプログラムに入れてもらいました。
その結果、チケットが完売。演奏者の方も、お客さんが入っているコンサートの方がうれしいですし、あのときは、演奏者とお客さん、双方に本当にいいものに仕上げられたという達成感がありました」
いいアーティストをいかにとるか、どうやって人気の曲を演奏してもらうか、交渉を重ねる日々。同時に、イベント毎にテレビCMやミニ番組を制作。予算書の提出から制作までを担いました。さらに、ABCラジオの番組とコラボし「ラジオ番組×コンサート」という、斬新な企画を行った経験も。
西﨑 「こうして振り返ると、事業メディア局にいた約8年間、本当に幅広い経験をさせてもらいましたね」
営業・マーケティングの世界へ。「データ重視」のテレビビジネスの礎を築く
2014年11月には、東京支社テレビ営業部に異動。「テレビCMの枠を売る」という、テレビビジネスの根幹に足を踏み入れます。
西﨑 「まず担当したのは、スポットデスクというポジションでした。『スポット』とは、番組に関係なく決めた時間に放送されるテレビCMのこと。デスクは、1日の決められた枠の中にスポットCMを割り付けていく作業をします。2年弱この仕事を続けたのち、外回りの営業に。少しでも多くABCにテレビCMを出稿してもらえるよう、実際に広告主のクライアントを訪問して働きかけました」
スポットCMは、ABCの売上の多くを占める重要なもの。西﨑はスポットを入口に、テレビビジネスの基礎に関する深い理解を得ました。そして2018年、主任として営業部を牽引することに。ちょうどこのころ、業界全体のビジネスの動向に、ある変化が訪れていました。
西﨑 「今までずっと、CM枠の価値を決める基本的な指標は視聴率でした。『何パーセントの人気番組だから買ってください』という提案をするのが営業の基本。ですが新たに、マーケティングやデータ活用が叫ばれ始めて。『当番組の視聴者には、こんな特性があります』という切り口で広告主に提案する動きが始まったんです」
西﨑自身も当時、データ活用の重要性を実感していました。あるとき、マーケティング会社からABCの朝番組の視聴者データを購入。「番組の視聴者は主婦層がメインで、鼻炎薬などの薬を買っている人が平均より多い」という視聴者データを担当クライアントに見せたところ、スムーズに出稿してもらえたという経験をしています。
西﨑 「視聴者データを見せることでビジネスチャンスが広がるのだと、リアルに感じた経験でした。そこで、社内でもデータの重要性を強く主張。結果私は、2019年6月から、テレビ視聴データや購買データ等を扱う調査会社で1年間の社外研修をさせてもらえることになりました。
調査会社では、視聴者データを広告主様がどう活用されているのか、そして、ABCがどうすればセールスにつながるのかを勉強しましたね。経験を武器にマーケティング局に異動したあとは、ABC社内でのデータ活用の促進に携わりました」
テレビビジネスにもデータの時代が来る──。西﨑はその潮流をいち早く捉え、率先して学びを深めたのです。ABCのデータ活用の下地を作ることに貢献しました。
「ふるさと納税」をフックに地域を盛り上げる、前例のないビジネスに挑戦
2022年6月に営業局ビジネスイノベーション部に異動してから主に取り組んでいるのは、ふるさと納税を切り口とした地域創生事業です。
西﨑 「2021年の8月に、ABCは、ふるさと納税のポータルサイト『ふるラボ』を立ち上げたんですが、まさにわれわれが自治体の皆様のパートナーになり、各自治体様のふるさと納税の寄付拡大につながるようなお手伝いをしています」
ふるさと納税に関するポータルサイトを立ち上げたのは、テレビ局の中でもABCが初めて。テレビならではの発信力を活用し、地域創生を盛り上げます。
西﨑 「サイト内での告知だけでなく、マスメディアたるテレビという媒体の、強力な発信力を活用して、各地域の魅力や返礼品の紹介を行うのが、我々の特徴であり、強みです。自治体の皆様の多くは、寄付金を増やしたいという思いの中で、プロモーションについて課題をお持ちでいらっしゃいます。そのお悩みの解決の一つとして「テレビ局と手を組む」という選択肢を加えて頂ければと、ご案内をしているところでございます。」
テレビというビッグメディアを使うことで、自治体は、今までアプローチできなかったような大勢の人たちに地域の魅力を発信できます。
西﨑 「たとえば、北海道のある自治体様が返礼品とされている特産品を、テレビでご紹介したところ、寄付が爆発的に増加!町の発展に大きく寄与することができました。テレビ離れなど叫ばれ始めておりますが、まだまだ、テレビというメディアには、“強力なリーチ力があるんだ!”と、“人々の感情を動かす力があるんだ!”と、まざまざと感じた事例でした。ほかにも、朝の人気番組「おはよう朝日です」とタイアップし、自治体様と返礼品を作ったりしており、単なるプロモーションだけでなく、まさに、テレビの力を活かして町の魅力を一緒に作っていくということにも取り組んでいます。今後も、多くの自治体様と共に次の打ち手を考えているところですが、「単純にCMを流す」という世界とはまったく違う世界にいるかもしれませんね」
テレビ局のビジネスセクションにいると、視聴者たるお客様の顔がなかなか見えにくいもの。営業部にいるときの「お客様」は基本的に広告主でした。しかし今は、地方自治体や事業者、そしてそこに住む人たちと関われる。お客様の顔が見える仕事に、やりがいを見出しています。
西﨑 「最近では、ポータルサイト自体をさらに盛り上げるべく、サイトのリブランディングにも着手しました。また『M-1グランプリ』を放送するテレビ局ならではの切り口で、「日本一おもしろいふるさと納税サイト」を目指そうと、M-1優勝芸人でいらっしゃる、ますだおかださんとコラボした動画コンテンツを作りました」
ABCの持ち味を活かした発信を、試行錯誤中。『ふるラボ』の認知を広げるべく、邁進する日々です。
既存のビジネスとは違った世界観で、イニシアチブを取っていきたい
ふるさと納税の事業で、関西の自治体・中小企業を発展に導きたいと、西崎は意気込みます。
西﨑 「ABCは、関西の放送局。ふるさと納税を一つのきっかけとしたこの地域創生事業で、関西の自治体が注目されれば、地域の発展につながります。そのお手伝いができればと思うんです。テレビは、皆様の生活の隣にあるメディア。ABC独自のリソースを活かしながら、盛り上げていきたいですね」
ABCの中でも特殊な業務に取り組む日々の中で感じるのは、「主流ではないビジネス」ならではのおもしろみです。
西﨑 「広告会社や広告主の皆様がいて……。という既存のテレビビジネスの世界観だけでなく、さまざまな会社とつながりながら仕事をしたいと考えるようになりました。
ビジネスイノベーション部には、社内の中でもめずらしい経歴を持ったメンバーがいます。大手航空会社の方が出向してきていたり、大手商社出身の方がアドバイザーとして入っていたり。皆さんが持っているネットワークが、本当におもしろくて。航空会社の方は各自治体の観光セクションと深くつながっておられるし、商社出身の方はABCにとっては未知に近い物流業界に強いネットワークを持っておられる。
そういった方々の新しいネットワークを使って、新しいビジネスを組み立てていくことに非常に興味があります」
これまでにないビジネスを、ABCがイニシアチブを取って行う。テレビビジネスの常識を覆すエキサイティングな取り組みに、ワクワクしています。
西﨑 「入社以来、会社に導かれるかたちで、いろいろなビジネスに携わってきました。ありがたいなと思いますね。そんな今、内心課題に思っているのは、自分がこれまでテレビ局しか知らずにやってきたこと。だから、他のビジネスモデルを勉強したり、人脈を広げたり、いろいろ頑張らないといけないと感じています」
多彩な経験と実績を持ちながらも、あくまで謙虚な姿勢を貫く西﨑。自身をアップデートしながら、まだ見ぬABCの可能性を切り拓き続けます。