14年の歳月を経て、第一志望の企業に入社
学生時代からジャーナリズムに強い興味があった藤田。テレビ番組制作に携わりたいという夢を持ち、新聞学やジャーナリズムが学べる大学に進学をしました。就職活動では、メディア関連の企業を受けていたと言います。
藤田 「テレビ局に一通り応募しました。それから、自分が手がけたものでお客さんを笑顔にしたいという想いが番組作りに通じると感じ、テーマパークを運営する企業も受けました」
結果、ABCの局長面接まで進んだ藤田でしたが、あと一歩というところでお見送りの通知を受けます。
藤田 「正直、すごくへこみました。選考の中で自分が考えた企画をおもしろがってくれていたので、いい感触があったんです。いつかはここで働きたいという想いが心に残りました」
最終的に、テーマパークの運営企業から採用通知を受け取った藤田。メディアの仕事に未練はありましたが、悩んだ末「みんなに楽しんでもらえるパレードを作ってみよう!」と気持ちを切り替えて入社を決めました。
藤田 「入社後はパレードの演出を担当しつつ、並行してマーケティングやリサーチといった業務にも携わることになりました。最初は気乗りしなかったのですが、理論を学びリサーチを繰り返していく中で、数字として成果が目に見えるおもしろさにのめり込むようになりましたね」
偶然の出会いをきっかけにマーケティングに惹かれていった藤田。 入社して約3年が経つ頃に、大きな決心をします。
藤田 「フリーランスとして独立することにしたんです。大企業で正社員として働いていると部署異動は避けられなくて、どうしても一つのことを極めることができないと感じていて。もっとマーケティングをやっていきたい、自分の専門性を高めたいと思いました」
フリーランスとなった藤田は、マーケティングのコンサルティングを行う会社に所属をしながら、幅広い案件に携わっていきます。
藤田 「前職のテーマパーク企業での経験に期待を寄せていただくことも多く、上場企業からスポーツ球団まで、さまざまなクライアントが抱える課題に向き合っていきました。マーケターとしての実績はありつつも、コンサルタント未経験だったので、自分自身も必死になって勉強をしましたね。そうやって実績を積むうちに法人化できるまでになりました」
そして、2019年、再び就職する道を選びます。
藤田 「ずっと東京で働いていたんですが、家庭の事情もあり、実家の関西に戻りたいと思うようになったんです。そんなとき、ABCのマーケティング部署が人材募集をしていることを知りました。
新卒のときに行きたかった会社で、メディアに携わるチャンスだと感じました。すぐに選考を受け、ご縁があって内定をいただきました。私から見ると14年越しの内定でした(笑)」
マーケティングの奥深さ、想定外の角度から番組制作に携わる楽しさを実感
入社後はマーケティング戦略部に配属。視聴率や生活者の趣味嗜好を分析し番組制作や編成の参考にするという、テレビ現場で欠かせない役割を果たすことになりました。
藤田 「ベースはそれまで行ってきたマーケティングリサーチのセオリーが活かせるのですが、ちょっと難しいのが『番組コンテンツの調査では、データですべてのことが証明できない』という点です。
たとえば、料理番組の制作の参考にするため、生活者から『どんな料理番組を見たいか』という意見を集めたとします。でも、出てくる答えって、だいたいは想像がつくじゃないですか。ですから、そこから先がマーケターの腕の見せ所なんです。アンケート結果を咀嚼して、どのポイントに着目して『故に、こういった内容が良いです』と提案する事が重要です」
正解がない問いに対して確信を持って答えを提示するには、さまざまな裏付けとそれに至るまでの努力が必要です。藤田の場合は「常に生活者に触れる」ことを最優先課題にしていました。
藤田 「私個人としては、オンライン、オフライン問わず、できるだけたくさんの方とコミュニケーションをとるよう意識してきました。若い方から年配の方まで幅広い年代の方とお会いしながら、生の声を理解するようにしていたんです」
業務上で印象に残っているエピソードは数多くありますが、なかでも一番心に残っているのは、新番組に企画段階から携わったことだと言う藤田。
藤田 「既存の番組に対する分析調査には、ある程度前提条件がありますが、新番組はまっさらな状態なんです。私が参加した新番組は、ジャンルのみが決まっていて、それ以外は一から十まで提案要素がありました。これは本当に難しかったけれど、ものすごく楽しかった。憧れていた番組制作に少しでも携われたと実感することができました」
キャリアを活かして、会社の成長に貢献していく。
マーケティング戦略部の経験を経た藤田は、2022年6月からは朝日放送グループホールディングスのDXメディアデザイン局に在籍しています。世の中がDXの流れへと進んで行く中で、朝日放送グループとしても本腰を入れて取り組んでいこうと2019年に誕生したチームです。
藤田 「私が担当しているのは、一言でいうと事業マーケティングです。主なミッションはふたつ。ひとつは、朝日放送グループ内のデジタル商材を活かすこと。企業に対して既存の商材を提供したり、リクエストがあれば新しいデジタル商材をゼロから企画開発したりすることもあります。
もうひとつは、そこで得た知見をもとにグループ会社の事業利益を上げていくためのサポートをすることです。これまではテレビ番組のマーケティング担当だったのが、現在は朝日放送グループに所属する企業全体のマーケティング担当をさせていただくと理解しています」
新たなこのポジションへの異動は藤田自身が望んだもの。朝日放送グループという企業だからこそできるアプローチに魅力を感じたと言います。
藤田 「朝日放送グループにはすでに強固なネームバリューがあります。これを活用して、どうビジネスをゼロから生み出していくか、事業内容をどう変えていくかといった部分に関われることにやりがいを感じています」
実務に取り組む中で、朝日放送グループのさらなる飛躍のためのカギと課題がいくつも見えてきたと、藤田は語ります。たとえば、テレビコンテンツの固定概念にとらわれ、縛られているビジネスがまだまだ多いこと。自らのビジネス領域を固定せず、柔軟な思考で可能性を広げていくことが藤田のミッションです。
藤田 「ABCに転職した当初は、やはり番組制作をやりたいという想いが強かったです。ですが、マーケティング戦略部での仕事をする中で、そこで働く先輩の姿から学ぶことも多かったですし、何よりテレビ番組制作にはその道のプロが既にいらっしゃり、この年齢から自分が入り込むポジションはもうないと感じました。
であれば、私はマーケティングのプロとしてこれまでのキャリアを活かして、この会社を少しでも大きくすることに貢献したいと思ったんです。それは、ほかの社員の誰でもない、私にしかできないことだと自負しています」
目の前の仕事を好きになれる人には、やりたいことが自然と訪れるもの
今回、藤田が自身のキャリアを振り返って感じたのは、「過去が成功か失敗かは、その人の未来が決める」というもの。新卒であれ、中途であれ、最初から100%満足する会社など存在しない。そう藤田は言います。
藤田 「どんなに入りたかった会社でも、配属された部署が希望と違うこともあります。置かれた場所でどう行動を起こすかがすべてですよね。たとえ今いる場所に不満が生じて辞めることになったとしても、次の場所で頑張ることで人生どのようにでも進んでいけるし、多くの場合、その不満も挫折もいつか自分を助けてくれますから。
私自身、最初のキャリアは望み通りじゃなかったですし、フリーランス時代も笑えないようなたくさんの失敗をしてきました(笑)」
それでも、都度、自分が下した選択肢に間違いはなかったと藤田は言います。
藤田 「私の場合は、毎日、その瞬間瞬間を走ることに精一杯で、気づいたら今日ここにいるみたいな感じで、悩む暇もありませんでした。もちろん、人によっていろいろと思い悩む時間があっていいと思います。
ただひとつ言えることは、どれだけ悩んでも、どんな理由でも、最終的には『自分で決断せよ』ということでしょうか。自分で決めたことならば、たとえ失敗したなと思っても、学びを得て、軌道修正することができますから。人に決めてもらったことに対しては、人は後悔するようにできていると思います。
もしかすると、みんな、学校の試験みたいに何につけても正解を一発で当てようとしすぎているのかもしれません。でも、人生で出会う設問は正直やってみないとわからないんです。やってみた上で、正解自体がないこともあります。だからこそ、自分がやりたいことに向かって自己決定のもとで突き進んでいくことが大切だと思います」
最後に、やりたいことが見つからないと悩む人たちへ向けて、藤田から熱いメッセージです。
藤田 「やりたいことを探そう、というスタンスだと、意外と見つからなかったりするんです。これまで接してきた経営者の方々もよく『今やっていることを好きにならへん奴って、たぶん何をやっても好きになれへんで』と話していました。今取り組んでいることにポジティブに向き合える人は、やりたいことを見つけると言うよりも、向こうからやってきたりするんです。不思議なもので。
私も、新卒の時に志した番組制作に携わる道は直接的には叶わなかったけれど、別の道に進んでマーケティングに出会い、その中で興味が持てる事柄を見つけて、気づいたら今の場所にいた。流れに身を投じて、とにかく目の前のことに真摯に向き合っていれば、自ずと納得できる場所に行き着くのではないでしょうか。
そういう意味で、失敗か成功かは後々決まるんです。今じゃない。自分の未来は、自分のこれからの無数の決断が導いていく。これから就職先を探そうとしている人たちには、そんな想いで就職活動に向き合ってみてほしいなと思います」