「何それ?」に臆することなく取り組む社風だからできること

私が所属するビジネスプロデュース部は、ビジネス開発局の下部組織です。掲げているミッションは放送事業外収入をつくること。自分たちで事業を動かすというよりも、ABCがホールディングス化していくつか事業会社がある中で、事業会社が新しい事業を生み出せるようにアレンジやサポートするんです。

ビジネスプロデュース部の仕事内容は範囲が広く、その中で私の仕事内容は主にふたつあります。

ひとつは、グループ内のコーポレートベンチャーキャピタル機能である「ABCドリームベンチャーズ」が出資するスタートアップ企業とABCグループとで、新しい事業を探っていくこと。もうひとつは、ABCグループとして「地域創生」に貢献する事業の拡大です。グループ会社の中で、すでに地域創生関連事業を始めている会社がいくつかあったので、横串を刺して事業を広く展開したり、ABCグループ外の企業の皆様とタッグを組んだりすることで、可能性を広げようとしています。

関西の企業だからなのか、ABCには「おもしろいもの好き」というDNAがあります。新しいことや「何それ?」ということに、良い意味で飛びつきがちです。

ビジネスという観点でいくと、ABCドリームベンチャーズでは新しいことに取り組んでいるスタートアップ企業にもアンテナを立てています。ヒアリングしたり出資したりすることで、実際パイプも増えているんです。これまでABCグループになかった領域への進出や、0からの組み立てなど、新しいことにチャレンジしやすい環境になってきています。

一方で、今までやったことない領域に突っ込んでいくからこそ、自分たちだけではできないこともたくさん見えてきました。だから、グループ外の人とも手を組んでいきたいですし、ABCにないようなバックグラウンドを持っている人に集まってもらえると、もっとおもしろくなると思っています。

多様な視点からの“おもしろさ”

新卒でABCに入社をしてから8年間記者をやっていましたが、そこでも「おもしろいもの好き」を発揮するDNAはありました。もちろん報道では正確さや公平性が非常に大事なため、報道局で記者としてやる以上当たり前のように教育されます。

ただ、おもしろさにも種類があるんです。たとえばバラエティ番組のおもしろさは笑えるおもしろさだと思いますが、報道局だと「そういう切り口ね、へぇ〜」というおもしろさもあると思います。僕は選挙の取材が好きでしたが、選挙の取材って人間ドラマなんです。

表に見えてくるのは候補者が街頭やSNSで訴える場面ですが、裏側では地域の回り方に戦略があったり、同じ党内であっても人間関係なんかが複雑だったり、いろいろあるんですよ。そういう人間ドラマから、候補者が訴える政策の裏側にある「想い」や、実現できそうなのかという可能性なんかもうっすら見えてくるんです。

もちろん政策そのものも重要で、全員が取材した情報を持ち寄って意見を交わしたときに、取材の切り口やどこに重点を置くかなどを議論して、おもしろさを追求することにやりがいを感じていました。当時の報道局では上層部からもっと若手に任せていこうという方針があり、神戸支局では史上最年少でキャップを任され、いい経験をさせてもらいました。

僕がビジネス部門に行きたいと思ったのは、入社7年目に参加した新規事業を考えるプログラムがきっかけです。

これは全社の若手から中堅くらいの人が集まり、いろんな部署から1チーム6人の3チームがランダムに集められるんです。そこで3カ月から半年くらい、ABCで新規事業をやるならどんなものが良いかみんなで考えました。僕のチームはアナウンススクールを提案し、ABCでできることや他社との比較、利益の出し方などを話をしました。

その6人の中で「新規ビジネス」を考えたことのある人はほとんどいませんでした。しかしみんな「どうすればおもしろくて世の中にも意味があり、ABCも儲かるのか」について熱く議論したときに、「こういう世界もおもしろそうだな」と思ったんです。テレビ局に入った時は記者や制作以外考えもしていない中で、急にビジネス的な仕事を経験できたので、新たな発見でしたね。

ベトナムでの社外研修が、新たな世界の扉に

ビジネス部門に行ってみたいと思うようになり、異動希望も書いたところで、報道局長から「ベトナムで社外研修してみないか?」と声をかけられました。

ちょうどその頃、コンテンツビジネスや海外展開を進める中で、ベトナムの様子を見に行くという研修があったんです。東南アジアは今後伸びていくだろうという見込みの中、勢いのあるベトナムでコンテンツビジネスを進めるに当たって、ベトナムの人の趣向や市場を調査するという目的でした。

ベトナムのテレビプロダクションではABCの「新婚さんいらっしゃい」をローカライズしたコンテンツを放送してくださるなど、もともと付き合いもあったんです。その延長でベトナム映画の制作会社を合弁で立ち上げる企画もしていました。

ベトナムにも日本人スタッフが1〜2名ほどいて、彼らはベトナムのプロダクションにおいて、番組をつくれることと放送局で番組を流せることを生かして、新しいビジネスを起こせないかを中心に考えていたんです。この企画を一緒に考えてもいましたね。ただ僕は経験がなかったので、彼らの考えを聞きながら勉強させてもらっていました。

そして帰国後、ビジネス部門で仕事を始めました。

まるまる1年研修をしていたおかげでベトナムとのつながりができ、スタートアップ企業のベトナム展開を頑張ろうといった中で、Quan(クオン)のキャラクターを活用したデジタルマーケティングキャンペーンをベトナムに売り込むといったこともやりました。帰国前と全然違う仕事になって、正直最初は、おもしろさより大変さを感じました(笑)。営業もデジタルマーケティングもやったことない世界で……。

ただ、記者時代もおもしろさより大変さを感じていました。それでも振り返ると楽しかったなって思っていて、しんどかったことより楽しかったことの方が印象に残っているんです。だから今大変だと思っていることも後から振り返ると大したことないと思える日がくると思うし、余裕が出てきたら「あの時ああやってよかったな」とおもしろさだけが残ると思っています。

過渡期の中での挑戦。新たなABCをつくっていく

今後、ABCでこれまでやったことないような事業にも手を広げていけたらと考えています。

グループの中にいろいろな会社が入ってスタートアップとのコラボがどんどん生まれている中で、これまでのABCとは違う事業をやっていけるはずなので、それを探り当ててやっていきたいです。中でも「地域創生」というテーマは社会的な意義もあると思っています。

地域創生や地方創生っていろいろな定義がありますが、僕はABCの夕方の報道番組「キャスト」でコメンテーターを務める藻谷 浩介さんの言葉に感銘を受けています。それは「地域を盛り上げようと思ったら地域の少子化を止めないといけない。そのためには地域に産業を生み出さないといけない」というもの。

地域創生と聞くと、地方自治体や国からもらえる税金を自分たちの地方に振り分けてもらうことだとイメージするかもしれません。しかしこれは、社会的意義の側面から考えると全然素敵なことではないと思うんです。だから今後は、産業をつくり盛り上げるところができたらいいなと思っています。

ABCは放送局ということもあり、一種、公の器です。そしてABCは今やグループ内にいろんな企業がいて、番組だけでなく、イベントやグランピングなど地域アクティビティとしてのコンテンツをつくることもでき、メディアを使いそれを発信することもできます。また今後は、グループ各社やスタートアップ企業など、ABCがハブとなってつながりを生み出すことで、新しい価値が提供できたらとも考えています。

ABC自身も関西2府4県のローカル局なので、地方の皆さんと一緒に歩んでいけることをやっていきたいですね。

いろいろな面で過渡期なので、今後業界に入ってくる人にとっては、大変な時期だとは思います。ただ、3年前よりは今の方が良いと思うんです。ABCを含めた業界全体が苦しい状況にある中で、「ほんまになんとかせなあかん」という状況になっているんです。これは5年前より3年前、3年前より1年前とどんどん機運が高まっています。

経験がなくて手探りという大変さがありますが、新しいことをやっていこうとする風潮が強まっているので、よりおもしろくなってくると思います。それで成功を重ね、別の柱が見つかれば、もっといろいろなことができるようになると思います。

だから一緒に、勢いよくやっていける人がいたら最高ですね。