新型カフェサービス内容公開

■レジ待ちと現金支払いによる多くの負担を軽減
店舗体験で最もストレスの溜まる部分はレジ周りにあります。飲食店では、混雑時に着席できず長時間列に並ぶことによって注文を諦めてしまうことがあります。また、現金による支払い方法を提供し続けることで、開店前の金種の用意や閉店後のレジ締め、売上金の回収など、接客以外の仕事に多くの時間を割く必要があります。昨今、様々な支払い方法が増える中、スタッフの作業負担は増え続けています。
当社では現金を扱わず、注文や支払いをスマホアプリに限定しています。こうすることで列に並ばずに注文できるため、支払いで後ろの方を待たせることはありません。また、時間帯に応じたメニューの調整など、店舗運営中でも柔軟にコントロールすることができます。さらに顧客毎のステータスに応じて動的な値付けや特別なサービスを提供することも可能で、ロイヤリティの高い顧客との関係を構築できるようになっています。
モバイルからの注文に特化することで、店舗の外から注文することも可能になりました。必要に応じてGPSやビーコンを組み合わせて来店を予測し、タイムリーなサービス提供を実現しています。
商品の持ち帰りを希望する顧客は、店内のデジタルサイネージで自分の注文がどのステータスにあるか確認することができます。そして能動的にチェックインを行うことで、即座に商品を受け取れます。このように、今まで順次実行されていた一連の手続きが非同期に、そしてストレスなくスムーズに体験することができます。
当店には物販エリアが併設されています。このエリアではスマホアプリをかざしてチェックインすることで、レジレスの店舗体験をすることができます。店内に設置された各種センサーとつながったシステムにより、どの顧客がいつどの商品を手に取って持ち去ったかを把握することができます。顧客が物販エリアの外に出ると、自動的に決済まで完了する仕組みになっています。
各センサーは独立して動いていますが、クラウド側で総合的な推定を行っていて、顧客毎の動線の確認、カゴ入れ、カゴ落ち、購入などの判定が可能です。手に取ったけれども結果的に購入しなかった商品については、退店後にクーポンや詳細情報を通知することで、引き続き自宅で再検討してもらうといった後追いをすることができるようになっています。この仕組みは2018年6月より実験を重ねており、この度初めて一般の方が利用できるようになりました。実験の過程は「日経MJ」に掲載されています。
米中で無人コンビニ沸騰 機動力の良さ日本でも(2018/7/27付「日経MJ」)
https://www.nikkei.com/article/DGXKZO33435940W8A720C1H56A00/
■オンラインで分かることをオフラインでも
店舗内で起こるすべての現象がデータとして蓄積されるため、今までオンラインでしか分からなかったことがオフラインでも把握できるようになります。詳細な履歴から細かい複数のセグメントを作り、スマホアプリを経由して顧客向けのキャンペーンを行なって効果を測定することができます。
今までは人通りの多い路面店であることが売上に直結する大きな要素でした。今後は立地が良くない店舗でも、オンラインとオフラインが繋がったデータに基づく顧客との良い関係性を築くことで、購買単価や来店頻度を上げることができるはずです。属人性の高い店舗運営をデータによる見える化で本部から改善を図ることができ、更に少人数での運営が可能となり、顧客へのサービス提供に注力することができます。
■専用のハードウェアを制作して横展開に対応
ウォークスルー決済を実現するため、商品棚にセンサーを仕込んでいます。センサーから収集したデータは小型のエッジサーバーを経由してクラウドに送信される仕組みです。エッジサーバーでは、複数のセンサーから上がってくるデータを集約して一次加工したり、WiFiやBluetoothなどの通信方法を選択したり、センサー自体の死活監視などを行っています。今回は専用のハードウェアを制作したことで、既存の店舗什器を活用し、今後の量産に向けたテンプレート化に成功しました。
■今後の予定
今後は店内だけの体験に留まらず、周辺オフィスへの宅配やECとの連携、イベントやワークショップへの送客、お友達へのメッセージ付きギフト、クレジットカード決済以外の支払い方法(交通系ICカード、QRコード系など)、サブスクリプションによる飲み放題への対応などを進めていきます。
また、クラウド型のコールセンターを導入することで、混雑状況や在庫の確認といった問い合わせには店舗のリアルタイムなデータに基づき自動的に応答します。注文傾向の分析やセンサーによる在庫状況の確認により、食材の自動発注を行います。これらの施策によって現場とITをつないだ一気通貫のノウハウを蓄積し、既存の企業顧客向けに付加価値の高いサービス提供に努めます。そして、カフェに限らず他業態のオフラインの体験をオンラインと境目なく繋げ、店舗運営の改善やサービス向上に繋がる実験店の運営を継続的に行います。
クラスメソッドでは「やってみた系技術ブログ」として様々な技術ノウハウを発信するDevelopers.IOを運営しています。当店に関する取り組みについても、同様の「やってみた系店舗運営」として広くナレッジの発信を続けてまいります。