長きに渡る店舗勤務を通じて気づいた、「人」が提供する価値の大きさ

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川上が株式会社カインズに入社したのは、2010年。その後、2021年までに8つの店舗を経験してきました。

川上 「入社以来約12年間、ずっと店舗一筋でした。店舗ごとに違った商品を担当し、4年目には複数の部門を束ねるラインマネジャーに。7年目以降は、店長として小型店から大型店まで複数の店舗を経験しました。

その後、カインズの『育児プロジェクト』に男性としては初めて参加し、育児休業を半年間取得。2022年5月に復帰し、2022年12月現在は販売本部内にある店舗組織人材開発室で、人事領域の業務を担当しています。部署内の組織長やエリアマネジャーをはじめとしたカウンターパートが抱えている人事課題の解決サポートと、販売本部の人事配置サポートが主な役割です」

同じ社内といえども、店舗と本部では取り組む業務がまったく異なります。長い店舗勤務から一転、本部に着任して4カ月、日々模索しながら進めている状況です。

川上 「店舗は、より良いサービスや施策をお客様に届けることが最終ゴール。そのために、社内で決定したことを店舗メンバーにどれだけ納得してもらえるように届けるかがミッションでした。

一方、本部はというと、さまざまな案件を企画して設計し、どう運用するかというところまで綿密に練り上げてから、現場に伝えていきます。大元の企画業務という点は、やはり店舗では経験できないことなので、難しさを感じつつも日々探りながら進めている最中です」

数々の店舗を経験し、自分のキャリアを考えるなかで、川上が気づいたこと。それは、どんなにAIが進化しようと、IT化が進もうと、やはり価値を提供するのは「人」だということでした。

川上 「『人』がお客様に価値を提供するという点にカインズは注力すべきだ、と想いを強くしました。そしてそうなったとき、要になるのは人材の育成、そして顧客を中心とした強い組織なんですよね。『人』を軸にして、それぞれの専門領域で自分の専門性を高めていくにはどうしたらいいのか。次第にそういったことを考えるようになりました」

災害時に目の当たりにした、「カインドネス」で人と地域がひとつになる様

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▲店長時代

大学時代は、商学部でマーケティングや経営を学んだ川上。さらには、サークルで、地域を巻き込んで地元の商店街を盛り上げる活動も行っていました。

川上 「大学の講義とサークル活動の両方を通じて、小売業というフィールドで商売に携わってみたいと思うようになりました。私が就職活動を行っていた時期は、カインズがちょうどオリジナル商品の開発に舵を切り始めたころ。

自分が学んでいた学問の中でも『今後PB(プライベートブランド)がフォーカスされていくだろう』と思っていたところだったので、時代の流れとカインズの方向性がマッチしていると感じ、この会社で商品開発に携わってみたいと、入社を決めました」

入社後は、主に関東の店舗で経験を重ねた川上。出身が埼玉だったので、比較的なじみのあるエリアの担当となりました。

川上 「塗料、自転車、飲料、グリーンなどの商品ジャンルを担当した後、各店舗のラインマネジャーに。その後は副店長、店長という役職も務めさせてもらいました」

順調にキャリアを重ねていくなかで、2019年に経験した台風時の災害対応は川上にとって大きな出来事だったと振り返ります。

川上 「台風15号の影響で、千葉県を中心に大きな被害が出ました。私が店長をしていた八街店は4日間停電。それでも、地域の方々が物資を求めて店舗に殺到し……。当然、店舗メンバーも被災しているわけですが、お客様の前に出たら、そんなことは微塵も感じさせないように応対しなくてはいけない。全力で地域の皆様のニーズに応えるため、発電機でレジを稼働させて対応にあたりました。

緊急時の避難マニュアルはもちろんありますし、災害時の対応マニュアルも、基本的なものはありました。ですが、細かな部分まで設計されているわけではありません。そのうえ、携帯電話もつながらない陸の孤島状態になってしまい、本部の指示を仰ぐこともままならない状態。これはもう、自分たちで決断してなんとかしていくしかなかった。

地域の方々へ的確な対応をするためにも、店舗メンバーの生活の確保をまずは最優先に考えねばなりません。後で叱られてもいい、自分が腹をくくろう。そんな覚悟のもとで、ある程度の制限は設けつつですが、独自の判断でメンバーをサポートしました」

結果、川上がお咎めを受けることはなく、むしろ事後の会社のサポートの手厚さに驚いたと言います。

川上 「エリアが停電しているため情報が得られない中で、様子を見に来てくれたメンバーが情報を集約し、電話がつながる場所まで移動して本部に報告してくれたおかげで、必要な物資が届くようになりました。そのほかにも、会社の迅速なサポートをことあるごとに痛感しましたね。まさに、カインズの社名の由来である『カインドネス』で、人と地域がつながるということを肌で感じられました」

自分の生き方の選択肢のひとつとして、男性初の「育児プロジェクト」参加を実現

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複数店舗での業務、そして被災時の唯一無二の経験を通して、川上が抱くカインズという会社への信頼感は増していきました。また、2年前にカインズの新企業理念を会社全体に浸透させる取り組みがあり、その「理念浸透リーダー」にも抜擢。あらためて、川上の中で自己の目標や価値観を設定し、社内外でどう活かしていくかを深く考えるきっかけとなりました。

そして2021年、パートナーが妊娠した川上は、育児プロジェクト参加を宣言したのです。

川上 「厳密に言えば、育児休業を取ったのは私が第一号ではないんですよ。これまでにも、大々的に発表はせず取っていた人はいました。でも、男性の育児休業取得者は、制度こそあるものの、まだまだマイノリティだったんですよね。私はそれなりに大きな店舗の店長という立場だったので、育児休業を堂々と取得すれば、社内に対してかなりのインパクトがあるなと思いました」

元来、ファーストペンギン(率先して新しいことに飛び込んでいく、第一号となるような人)になりがちだったと言う川上。まだ誰もチャレンジしていない領域でも、そこに自分の成長と、周囲にとっての勝算があると思ったら、迷わず突き進んでいきます。

川上 「今回は、社内でちょうど『育児プロジェクト』が立ち上がり、そのプロジェクトの第一号として、私が育児休業を半年間取得することになりました。カインズでの仕事は、頻繁に異動もありますし、決して楽な業務ばかりではありません。誰しもがタフな経験を積んでいます。だからこそ、家族を大切にし、自分自身もハッピーになれるような働き方を切り拓いていきたい、そう思ったんです」

育児休業を取得すると決めたとき、川上には絶対にこだわりたいことがありました。それは、異動原簿にハッキリと「育児休業のため」と記載することです。

川上 「長期の休業に入る人の異動先は、その理由が育児休業でも、介護のためでも体調不良でも、全部ひとまとめで『人事部付』になるんです。それが、人事異動リストの一番下にこっそり載る。これって違和感がありませんか?私はすごく嫌だったんです。だから、リストの一行目に『育児休業を取得しました』と載せてほしい旨をお願いしました」

この川上の行動に対する反響は、想像以上に大きかったと言います。否定的なコメントや反応はほとんどなく、特に女性メンバーからのあたたかい反応が印象的でした。

川上 「じつは3人目の子どもでの育児休業だったのですが、妻とツーオペで半年間育児をするなかで、本当に学びが多かったです。家事や育児は終わりの見えない修行であること、妻の体調面を最優先にすること、コミュニケーションは受け手がすべてであること……。育児休業を取らなければ絶対に気づけなかったことばかりです。これらは確実に、仕事にもプラスとなっています」

ちなみに、育児休業を取ると話したときの奥様の反応は一言、「本当に大丈夫?」だったのだとか……。

川上 「もともと、結構恨まれていましたから(苦笑)。急な異動で引っ越しをしたり、災害時に家庭を二番手に回して現場に向かったりしていましたからね。妻としては、会社に対する不満や不安が大きかったのだと思います。だからこそ、私が育児プロジェクトを取ったことで、むしろそういったこれまで溜まってきた心配材料は払拭できたようです。忙しい中でも会話が増え、夫婦の関係性も良くなりました。

もちろん、すべての男性に育児プロジェクト参加を勧めたいわけではありませんし、取得することが正解だとも思いません。育休はあくまでも、生き方の選択肢のひとつに過ぎないと思っています。メンバー一人ひとりが自分のキャリア形成を見つめ、働き方、生き方を模索する中で、私にとってはこの形がまさに必要だっただけですね」

自分のため、会社のために。常に新たな道を切り拓いていく

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常にファーストペンギンとして、社内に新しい風を送り込んでいる川上。現に、川上が育児休業を取得して以降、「育児プロジェクト」を通して育休を取りたいという人の割合が増えています。

川上 「ずいぶんと育休を取得しやすくなったと聞きますね。私の部署にもいますし、店長で育休中の男性スタッフもいます。人づてにも、『川上さんが育休を取った様子を見て、自分も取りたいと思っている』という声を耳にするようにもなりました。自分の知らないところで、誰かを前向きな気持ちにしたり、会社に対する安心感やエンゲージメントに寄与したりできていることに、喜びを感じます」

ちなみに、育児休業中は、家事や育児に加えて、GLOBISという経営大学院に通うなど、自分自身の学びに対しても時間を使っていました。

川上 「正直、育休中は、特にこれといった課題などが課されていないんです。会社として、業務に関することはさせられないというジレンマがあるとは思うのですが、やはり何かしらの形で会社に関わる部分を残すべきではないかと思います。休んでいる側としては、社会から切り離されている感じがしてしまうんですよ。そのあたりは、今後の課題だと思います」

「あまり偉そうなことは言えないけれど」と前置きしつつ、自らを「カインズで働く同世代の中ではトップランナーでありたい」と語る川上。

カインドネスの好循環モデルという戦略を推し進め、この物価時代において、顧客に価値を提供していくためには、自身のキャリア形成や自立した人材を会社は求めています。

それこそ自分だ、そう胸を張って言えるように。今回の育児プロジェクトしかり、川上はこれからもカインズの先頭で、未来へと引っ張っていく役割を担っていきます。