VSCJは新時代の車づくりに対応する事業部を超えた組織

▲さまざまな自動車機器に関連する事業部を繋げるネットワークのVSCJ

ボッシュのエバンジェリストネットワークとして2019年2月に設立されたVehicle System Campus Japan(以下、VSCJ)。社内7事業部をまとめたVSCJは、各事業部の開発や取り組みを共有し合うことで、お客様に社内で統一されたサービスやトレンドを届けていくことを目的とした組織です。

このVSCJの全体進行と調整役を務める栗田康章は、システムエンジニアリング&技術戦略部に所属しています。もともとこの部署で各事業部に共通する技術や製品の橋渡しをしていた栗田は、業務に携わるうちに各事業部のつながりが極めて重要だということに気付きました。

栗田 「モビリティの進化は目まぐるしいものです。昨今はボッシュが掲げる“PACE”(※)と呼ばれる車の概念を超えた領域での技術革新が進む中、私たちも時代に応じた組織改革が求められています」

ボッシュでは、これまで単一事業部がそれぞれ特化した機能や技術を開発してきました。しかし、時代の流れや技術革新によって顧客の要望は複雑化し、ひとつの事業部では応えられないケースも多くなっています。VSCJは、そうした単一事業部だけでは取り扱えない案件を一手に引き受け、複数事業部の知見を結集した立場から顧客の要望をかなえます。

栗田 「VSCJは社内各事業部のスペシャリストやエキスパートが選ばれて集った組織です。そして運営を担う私は、より効率的かつ効果的にプロジェクトが進むようファシリテートしたり、技術的なサポートをしたりしています」

(※) Personalized(パーソナライズ化)、Automated(自動化)、Connected(ネットワーク化)、Electrified(電動化)の頭文字を取った略称。ボッシュがグローバル全体で進める4つの領域で、これらを通じてソリューションを展開していく。


横のつながりの必要性を強く感じて動き出した新組織

▲VSCJを取りまとめているシステムズエンジニアリング&技術戦略部の栗田

栗田がVSCJに関わることになったのは、2018年のこと。VSCJ発起人であるカーマルチメディア事業部エグゼクティブ・オフィサーの濱畑敏弘から声をかけられ、意見が合致したことからVSCJのサポートに着任しました。

当時、栗田は各事業部の有志が集まる情報共有の場をつくっていました。その取り組みを通じて濱畑と同じように事業部を超えた情報共有の必要性を感じていたのです。

栗田 「VSCJ設立以前の活動は、ボランタリーベースのものです。会社からのオフィシャルなサポートがあったわけではないので、強制力がなく、どうしても通常業務と比べて優先順位が低くなってしまうのが課題でした。

それでも、意欲的なアイデアが出たり、活発な情報共有が行われていたので可能性は感じていて。そんなときにVSCJの話を聞いたので、今よりも先に行けると確信しました」

VSCJでは、まず事業部ごとに、それぞれの顧客が何を求めているのか、それに対してどのような対応をしているのか情報を集約します。その集まった情報をトピックに振り分け、ディスカッションを繰り返していくのです。

栗田 「VSCJは週1回開催と以前より効率的に情報をシェアできるようになり、回を重ねるごとに事業部同士の垣根も低くなっていきました。また、各事業部のエンジニアリング責任者やトップマネジメントにも参加してもらい、プロジェクトの進捗を共有する機会をつくることでいろいろなフィードバックをもらえるようになりましたね」

役割や組織、階層を超えて協力し合い、常に成果を追求するボッシュのカルチャーがあるからこそ、現場だけでなくトップマネジメントも巻き込んだプロジェクトにできたと栗田は振り返ります。

そして、よりVSCJの活動にドライブがかかりメンバーはVSCJ内での活動にとどまらず、VSCJで得た情報を各事業部に還元する役割も担うようになるのです。

栗田 「各事業部同士を結ぶハブとなる方々ですから、負担がかかりすぎないよう、業務量との兼ね合いを調整しながら参加してもらっています。VSCJはあくまでミニマムな組織として構成していますが、クローズドコミュニティにこだわっているわけではありません」

活動の可視化は実を結び、やがて新事業部へ橋を渡す

▲VSCJについて、社内で理解と協力を得られるための説明会を実施

VSCJの活動は、2020年10月現在も定期的なブログ発信によって社内に周知されています。活動が広まるにつれ、トピックに応じてメンバー以外の社員が話を聞きにきたり、参加したりといった事例も増えていきます。良い循環が生まれることでさらに上層部からのアドバイスやサポートも増え、以前よりも社内全体を巻き込んだプロジェクトが進行しやすくなりました。

栗田 「VSCJの取り組みの具体例として、ビークルコンピュータの開発が挙げられます。

ビークルコンピュータは車載ネットワークを統合管理するもので、これまで各事業部がそれぞれ開発し、顧客へアプローチをしていました。しかし、お客様のビークルコンピュータに対する要求を事業部同士で共有し見直すと、ボッシュとしていろいろなアプローチが可能だとわかったのです。

その情報を共有することで、お客様への提案の重複が避けられ、かつ広範な領域での提案ができるようになりました。お客様にワンボイスで『ボッシュが何をやっているのか』伝えられるようになり、同時にお客様のニーズもキャッチアップしやすくなったのです」

設立同時期にVSCJの活動をまとめた社内イベントが開催され、2日間にわたり行われたポスターセッションは、初めて社内に広くVSCJの活動を公開する機会となりました。

栗田 「社内からは『こんな活動をしていたんですね』、『定期的に開催してほしい』といった声をいただき、このイベントをきっかけにVSCJへの参加を希望した方もいました。

また、当日集めたアンケートで最も多かったのは『横のつながりを改善してほしい』という要望です。VSCJが社内にあることの意義を、あらためて感じる結果でしたね」

こうしたVSCJの取り組みが先導する形で、2021年にはクロスドメイン コンピューティング ソリューション(以下、XC)事業部が設立されます。XC事業部とはドイツ本社でスタートした新事業部で、電子システムと必須ソフトウェアをワンストップで提供することを目的としています。

すでに各部署をまとめたビークルコンピュータのプロジェクトを進めていたVSCJは、XC事業部設立以前から、事業部を横断したプロジェクト推進とお客様へのアプローチを実現していました。VSCJが先進的かつ顧客ニーズや時代の変化に応じた存在だったということが、あらためて実証されたと言えるかもしれません。


新設の組織同士が手を取り合い、革新を進める

栗田 「これまでは事業部間に薄いバリアのようなものがあって、連携したほうが好ましい場合でも、なかなか協力しづらい状況も一部ありました。しかし、VSCJメンバーがお互いを理解し、協力し合っていくことで、バリアは少しずつ減っているように感じます」

より良いサービスに直結する社内の横のつながりを強めていくためには、一人ひとりの興味関心が他部署に向くことが大切です。VSCJから始まった革新は、まだ社内のほんの一部にとどまります。個々の社員が興味を広く持って仕事に臨むため、栗田は2つの目標を掲げています。

栗田 「第一に、VSCJが率先して横のつながりを生かした実績をつくりたいです。ビジネスに貢献するプロジェクトを増やすことで、事業部を超えてイノベーションを起こすマインドを、社内に啓もうしていきます。

そして、インビークル(in-Vehicle、車載)だけでなく、より広い領域での連携を強めていきたいです。モビリティの変革はクラウドやバックエンドといった車の外の領域にも広がりつつあります。アウトビークル(out-Vehicle、外の環境)を含めた連携も加速することが、VSCJの次なるビジョンです」

XC事業部設立を機にこうしたソリューションに関わる一部事業は独立したものの、今後も他事業部との柔軟な連携は欠かせません。栗田が掲げた2つの目標を達成していくためにも、VSCJとXC事業部は深い協力関係を構築していくといいます。

栗田 「VSCJでの活動が社内の横のつながりを強化し、単一事業部ではできないソリューションを生み出す契機となることを願っています。そして、VSCJだけでは限界があるこの取り組みを、社内全体に広げていきたいです」

VSCJは社内には新たな挑戦の場を、そして社外には適切なサービスやソリューションを提供し、双方に価値をもたらします。まだその歩みは始まったばかり。変容し続けるモビリティ市場の中で、VSCJもまた成長を続けます。