きっかけはひとりの従業員による社内スピーチ

▲ボッシュ社内で行われたスピーチイベントにて、プラスチック破棄問題を訴える杉村

2018年に、オートモーティブアフターマーケット事業部の杉村 英子が、従業員向けの社内スピーチである「the Spark」で訴えたプラスチック廃棄問題。 その中で、café 1886 at Boschの使い捨てプラスチック用品に関する提案がありました。その後、社内周知のためのポスターデザインの公募も行われ、パワートレインソリューション事業部の原健朗によるデザインが採用されてから、社内での本格的な「プラスチックゴミ削減活動」として周知活動に繋がっていきました。

もともとボッシュは、Invented for life(革新的で人々を魅了する全製品とサービスを通じて生活の質の向上に貢献する)をスローガンに掲げています。また、2020年に全世界において事業活動からの二酸化炭素(CO2)排出を実質的にゼロにする「カーボンニュートラル」を実現する、と記者会見などでも発表しています。

そんなボッシュが運営するcafé 1886 at Boschを担当するのは、大場 直樹。まずカフェでどのような活動ができるのか、他社のプラスチックストロー廃止に関する記事などを読み、事前に調査を行いました。

その結果、日本はEU全体やアメリカと比較して、プラスチックごみを回収後に別の形で利用することが多く、当時の日本の外食産業は一部の大手を除き、プラスチック製品の廃止には消極的な姿勢であるとわかりました。プラスチック製品そのものが低コストで高機能である背景があるためです。café 1886 at Boschでも、同様の理由でプラスチックを使用していました。さらに、店内で回収したごみは100%分別しています。

そのため、当初はcafé 1886 at Boschでも取り組みについて前向きではなく、「プラスチックストロー廃止」という他社の取り組みを一時的なムーブメントとして捉えていました。

しかし、直接的なビジネスへの利益につながるわけではないものの、「これは非常に重要なテーマなので真剣に考えてほしい」という社長のクラウス・メーダーの強い意思表示を受けました。そこで、環境を守るために自分ができることは何なのか、ボッシュのカフェとして模索しようと考えが変わったのです。

まず、この取り組みでの最終ゴールを「カフェで提供する使い捨てプラスチック用品をなくすこと」としました。その目標を実現するため、カフェに関わるスタッフ全員がアンテナを広げ、以下の取り組みをカフェの運営会社と共に決めました。

1.カフェから出るごみ自体を削減:マイカップを持ってきた方には20円引きで飲みものを販売。カフェで販売しているタンブラーを持ってきた方には50円引きで飲みものを販売。

2. 紙製ストロー(または生分解可能なプラスチックストロー)の導入:現在使用しているプラスチックストローの在庫がなくなり次第、代替品に変更。(小さなお子様など、曲がるストローが必要な方や、飲料によっては一部プラスチックストローを継続)

3.テイクアウト用のサラダカップ、プラスチックスプーン、プラスチックフォークも現在使用しているものの在庫がなくなり次第代替品に変更。(サラダカップのフタは代替品がないためプラスチックのまま)

スピーチでプラスチック削減について主張した杉村は、カフェでの取り組みが具体化されたことで、社内外に対してポジティブな貢献があると話します。

杉村 「実際にプラスチック用品を削減するというアクションだけでなく、環境を考慮するというメッセージが込められています。社員だけでなく、その家族や友達にも影響を与え、グローバルに発信できる可能性もあると思います」

 この取り組みについて、社長のメーダーも共感の声を従業員に伝えました。

メーダー 「カフェでの取り組みについては、良い方向に進んでいます。カフェはブランドを発信する場でもあるので、店頭などでボッシュが環境に配慮してアクションを取る会社だと社内外に発信していきたいと思います」

積極的なシェアリングエコノミーのサービス導入

▲café 1886 at Bosch入り口に設置された傘のシェアリングサービス「アイカサ」

店内での取り組みを始めた矢先、café 1886 at BoschのTwitterアカウントに傘のシェアリングエコノミーのサービス「アイカサ」を運営するNature Innovation GroupのCEO丸川 照司さんからコメントをいただきました。

丸川さんは、マレーシア留学中、中国のシェア経済に魅了された後、アイカサを立ち上げ、渋谷を中心にサービスをちょうど拡大しているところでした。そして、café 1886 at Boschを使っているひとりのユーザーでもあったため、雨にも環境にも優しいカフェにしたいとTwitterでお声をかけていただきました。

「アイカサ」とは、レンタル傘の置いてある駅やお店などの施設に行き、1日70円という低価格で傘をレンタルできるサービスです。年間8000万本もビニール傘が消費されている日本から、世界に発信していけるエコな取り組みをしていきたいというコンセプトのもと、現在(2020年6月時点)は全国の500カ所に9000本を設置しています。

café 1886 at Boschはボッシュのブランドとしての姿勢や想いを発信する場。ソーシャルグッドを目指すボッシュのカフェだからこそ環境に配慮し、プラスチック製品の使い捨てをなくそうとこの活動に協賛することを決め、2019年2月から、café 1886 at Boschの入口に配置しています。

無料の給水スポットとなることで、ペットボトル削減へ貢献

▲給水スポットを探すアプリ「mymizu」のマップに掲載されている店内の給水スポット。

ボッシュには環境意識の高い従業員が多いこともあり、メンバーのひとりから 「mymizu」という無料の給水スポットを探せるスマートフォン向けのアプリがあるので、カフェに導入ができるのではないかと相談がありました。

mymizuの代表のルイス ロビン 敬さんとすぐにお話しする機会を設けました。最初の打ち合わせから、mymizuの理念に共感し、登録するまでにそう時間はかかりませんでした。mymizuのアプリ内では、給水記録し、削減できたペットボトルの本数やCO2の削減量などを数値化し、見える化できます。たった1本のペットボトルを使わないだけで、0.3kgのCO2削減に貢献できるのです。

2020年現在、コロナウイルス感染予防対策上、給水スポットの使用を中止しています。給水をご希望の方には、カフェスタッフにお声がけいただき、マイボトルに飲料水を入れてお戻ししています。

また、ルイスさんには従業員向けの新規事業ハッカソンでもゲストスピーカーとしても登壇していただきました。それは今後、テクノロジーを駆使して社会課題を解決するアクションについて、従業員にも考えるきっかけをつくっていきたいという意図がありました。

個人の小さな活動が、大きな活動へ発展する可能性

▲2018年に取り組みを開始した当時のボッシュ・ジャパン社長のメーダー、活動の発起人の杉村、カフェ担当の大場

すでに世界の海に存在しているといわれるプラスチックごみは、合計で1億5,000万トン。そこへ少なくとも年間800万トン(重さにして、ジャンボジェット機5万機相当)が、新たに流入していると推定されています。(引用: WWFジャパン 「海洋プラスチック問題について」)

国連の持続可能な開発目標である「SDGs」の17指標の中で「海のゆたかさを守る」にもあるように、WWFジャパンによると多くの海洋に浮かぶゴミが生態系や直接、間接的に漁業・養殖業などへ経済的ダメージを与えています。

この膨大な量のプラスチックゴミに対して、個人でできることはあまりに小さく、意味があるのだろうかと悲観してしまうかもしれません。café 1886 at Boschで行っている取り組み自体も小さな規模です。しかし、こうした取り組みについて以前の記事でシェアした際にも多くの方からポジティブなコメントが集まりました。

最初の一歩を踏み出すことによって、他の人を巻き込んで活動は広がっていく可能性があります。コロナウイルスの感染拡大により多くの人々が自宅で過ごした結果、大気や河川の汚染がなくなり、綺麗になったという報告も各国からあがってきています。行動が現状を変える──それが見える化される事例となりました。

一人ひとりがプラスチックをできるだけ使わない手段を取ることで、環境を変化させられる可能性があります。すでにこうした環境課題の解決に向けて活動されている方も、意識はするもののどう社会課題を解決する活動に参加できるかわからないという方も、私たちと一緒にカフェからアクションを起こしてみませんか?