今までのやり方を捨てたのは、”理想”が醸成されたから

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▲人事総務部の淺野 麻妃さん

新卒採用担当になって丸3年を終えた淺野 麻妃さんは、4年目に向けて新たな改革を決断しました。

その背景には、ベーシックが2017年からタイムマネジメントの新プロジェクトを始動したことや、業務効率改善を目的としたクラウドサービスの導入など、全社的に「生産性の向上」が大きなテーマになってきたことがあります。

淺野さん自身が手がける新卒採用も3世代目に突入する段階。今までの反省とそれまで少しずつ醸成されてきた、採用に対する理想を反映した「採用の型」をつくりたいと思うようになっていたタイミングでした。また、ちょうど2017年度春に新卒採用専任の新卒社員が配属され、新卒採用チームがふたり体制になったことも大きな要因です。

淺野さんが課題だと感じていたのはふたつ。ひとつは、採用メディアへの露出やイベント出展だけでは採用効率は上がらないけれど、進捗が芳しくなければ施策を増やすしかない、そして忙殺されるという悪循環。

その上、時代は超がつくほど売り手市場。しわ寄せは、自然と中小ベンチャーへ。良い人材を得るために、どんどん採用コストがあがっていく。これが、ふたつめ。いずれも、普通に行えば費用だのみになりやすい構図になっていたのです。

そこで、淺野さんが掲げたのは、これまで行ってきたメディア露出とイベント出展のほとんどをやめるという大胆な方針。代わりに決めたのは、「自社コンテンツを拡充すること」と、社員に有望な人材を紹介もしくは推薦してもらう「リファラル採用の強化」でした。

従来のやり方をこんなにも大幅に変更して、はたしてちゃんと結果は出るのだろうか。もちろん不安はありました。その中で、淺野さんの支えになっていたのは、「それでも、やってみなければ、それが正しいかも間違っていたかもわからない。大事なのは信じる理想の実現に向けてまず行動してみること」という想いひとつでした。

発信数は必ず守る、とにかく守る。それがジワジワと学生たちに伝わって……

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コンテンツ拡充として行ったのは、ブログやSNS発信、採用広報ツールでの記事公開、そして、そこからの営業横断勉強会やライトニングトーク、Basic Barなどの自社開催イベントへの学生誘致でした。

とくにブログに関しては、もちろん淺野さん自身も記事を書きますが、「そのコンテンツごとに効果的な人に発信してもらう」ことを重要視し、他のメンバーを巻き込んでのコンテンツ発信に力を入れました。

たとえば、代表取締役社長の秋山 勝さんが更新する代表ブログの企画会議も淺野さんが指揮をとり、進捗管理や記事編集にも携わりました。他にも新卒ブログ、エンジニアブログ、イベントレポートなど、そのコンテンツを書くのに効果的なメンバーによる発信を促し続けました。これが多面的にベーシックという会社を知ってもらい、共感してもらうための大事な取り組みでした。

ただ浅野さん本人が「しんどかった」と振り返るのは、設定した期限どおりにきちんと原稿をあげることでした。

淺野さん 「会社を知ってもらうコンテンツを書くことは戦術の中でも大事なことでした。でも最初からすべてスラスラ書けたわけではなくて、長いと5時間くらい時間を取られてしまうことも。

それに、他の第三者が関わることや絶対的な期日がある業務は、いわゆる重要緊急のタスクで優先順位も上がると思うんですけど、コンテンツの期限は自分との約束ごとでしかないので、忙しければ忙しいほど後回しにしたい気持ちとの葛藤が起きやすいんですよね(笑)。たとえ締め切りを破ったところで、そのときにドカンと不利益を被るわけじゃない。

でも、他媒体をやめてまで自分が決めたことすら守れないのは、もう自分は採用担当としての仕事を放棄しているのと一緒だと思ったんです。だから、絶対に締め切りは守るということは貫きました。地味ですが、自分との戦いでしたね(笑)」

その戦いの褒賞は、学生からの反響という形で帰ってきました。エントリーシートや面談の中で、「◯◯の記事を読んでいいなと思った」という言葉が、少しずつ出てくるようになったのです。確実に学生に刺さっているという手応えは、日に日に増していきました。

また、記事は「今日話した内容だけど、この記事が詳しいから後で読んでね」というコミュニケーションツールとしても活躍。時間の節約にもなり、淺野がイチから説明しなくても、記事自体が独立して動いてくれるという効果もありました。

懸念は、発信数を決めたはいいが、はたしてネタは続くのか。

淺野さん 「半強制的に自分の中で書くこと自体が目標になっているので、自然と普段の生活の中でネタ探しのモードになっていました。誰かと何気なく話した会話で、あ、これはネタになるなとか、常にスイッチが入っている状態。

最初はそんなに書くことないんじゃないかなと正直ちょっと不安だったんですけど、始めてみたら『これは書いてみたらおもしろいかもな。あ、あれもいいんじゃないか』という感じでどんどん出てきたんです。ネタがあったら書くのではなく、書くと決めて探すということなんだなとわかりました」

そして、もうひとつのリファラル採用の強化も、思いの外大きく動き始めました。

「類は友を呼ぶ」人とのつながりの輪を意識したら、自分の中にも共通点があった

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▲“自分の理想を知る”をテーマに地方で自主開催した就職活動イベントの様子

「良いひとの周りは、良いひとである確率が高い」。

そう仮説立てた淺野さんは、並行して地道な紹介活動を開始しました。対象者は、新卒1年目の社員や、いいと思った学生の友人など。その学生を起点として地方イベントなども行いました。

たとえば、ある社員の出身大学の香川大学で、学生の問題解決をするという主旨で自分の理想を知るをテーマに就職活動のセミナーを開催。学生に集客を任せたり、企画にも入ってもらうというスタイルで、多くの学生が集まり大盛況に。東京だけでなく、地方での積極的な活動も推進しました。

近ごろは後輩にまかせる部分も大きくなってきましたが、淺野さんは、学生と直接話す面談の時間を今もとても重要視しています。「たとえ時間がなくても、短時間で見極めよう、とは思わない。一人ひとりユニークな存在だし、その人の本質にいかに触れられるかを大事にする」。これが淺野さんのポリシー。その中で、ひとりの学生が印象に残っています。

淺野さん 「彼は、エントリーをとにかくたくさん出して就職活動をしていたけれど途中で心が折れて、しばらく就職活動を辞めていたそうなんです。気に入られるように、ウケるようにと書かれた自分のエントリーシートをふと冷静に見たときに、“これは誰やねん”と現実の自分との乖離がひどくて疲れちゃったと。そこからありのままの自分を出して受け入れてくれるところでいい、と吹っ切れたらしくて。

そんな中でベーシックは、ダメなところもひっくるめて本当の自分をみて肯定してくれるという安心感があった。そう言ってくれたんですね。とても嬉しかった」

淺野さんは照れ臭そうに笑います。「自分もベーシックに入ったとき、同じように思った。私も彼と類友なんだなと感じたんです」。

人は生もの。会社も人の集まりでできているから、完全な存在ではない。それが前提にあってその上で、その人の強みを弱さと一緒に受け入れる。そんな土壌がベーシックにある──。

もちろん、その彼は、ベーシックに入社を決めました。

理想を見続ける。それが、想定以上の結果を実現する

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▲2018卒内定者合宿の集合写真

大事なことは理想を持つこと──。ふたつの施策の成功の要因を、淺野さんはそう分析します。

淺野さん 「実際に決めたことを、決めた期間で実行してみることでしか、正解かどうかは検証できない。だから失敗したとしてもやると決めたことは絶対やる!という覚悟でした」

淺野さんは一度、代表の秋山さんから「新卒採用のために、ある企画をやってほしい」と頼まれたことがありました。でも、その内容は、淺野さんが決めた今年度の方針から大きく逸脱すること。「どうしても、やりたくなかった」と吐露します。そこで「なぜやりたくないのか」をA4サイズの用紙にびっしり理由を書き込んで、思い切って秋山さんに談判したのです。

淺野さん 「それでもやってよ、と言われたらやる覚悟でしたけど、答えは意外なもので。秋山からは、自分がやっている仕事にそれだけ熱量をもってくれることが嬉しい、と言われました。知らず知らずのうちに自分の中に断固とした理想ができあがっていたことに、そのときですね、気づいたのは。新卒採用担当になりたてのときはくるもの拒まずで、なんでもやっていたので」

「1エントリー1採用」という状態を理想のゴールにおいたことで、現状とのギャップが明確になり、ぶれずに最後まで走りきれた。もちろん、スケジュールがずれることや内定承諾率に苦戦するなど予想外なこともありましたが、理想を明確にしているから、必要に応じて手段は臨機応変にかえることができた。変化への柔軟性も成功要因のひとつ。

それらの集積が、採用目標人数の達成と採用コストの60%削減という結果に導いたのです。

淺野さん 「もちろん正しいと思う方向に信念を持って取り組んでいたけど、採用はすぐに結果が出る類の仕事ではないので、途中で不安になることも多々ありました。これでひとりも採用できなかったらどうしよう?と。1年終えて成果を目の当たりにしたときは、ようやくホッとして。想いを持って貫くことの大事さを知ることができたし、それがもたらす代えられない経験を手にすることができたなと思います」

ずっと見続けた採用の理想。そこだけを見つめて、やり切ること。その強さが、大きな成果を生み出しました。

※本ストーリーは一般社団法人at Will Workが開催する、働く“ストーリー”を集める5年間限定のアワードプログラム「Work Story Award」を受賞した企業のストーリーです。