社員が幸せに働くことをサポートする、CHOという役割

▲CHOとして、さまざまな取り組みを行う佐藤 佳織

2015年の創業以来、サプライズプロデュースやオリジナルウェディングプロデュースなど、「幸せ」をテーマに事業を行ってきた株式会社スペサンは、お客様を幸せにすることに全力で向き合い、成長してきました。また、お客様の幸せのためなら時間をかけることをいとわない姿勢や、仕事に情熱を注ぎ、最高のパフォーマンスを発揮する風土が定着していました。

しかし一方で、少人数からスタートしたことによる慌ただしい業務進行や社員同士のコミュニケーション、社員の働き方には課題があり、持続可能な成長を実現することは難しいのではないかと懸念されていました。

佐藤 「今、夢中で仕事をして幸せを感じていたとしても、仕事やプライベートの状況が変わり、同じようにあり続けられるとは限りません。しかし働く私たちが幸せで居続けなければ、仕事を通じてお客様に幸せをお届けすることはできないのではないか? 社員が幸せに働くことで、提供するサービスの質も良くなるのではないか? と考えました。

そこで、まずは自身の周りから幸せを感じてもらえるようにしようと思い、自らCHO(Chief Happiness Officer)を名乗り、社員の幸福度を高める施策に取り組み始めました」

日本でも少しずつ浸透し始めたCHOの役割は、社員一人ひとりが幸せを感じながら働くためのサポート。社員の幸福度に関する現状を、科学的なアプローチによって把握、評価し、誰もが幸せに働ける職場環境の構築・改善を行います。

佐藤 「私がCHOとして取り組んだこと自体は難しいものではありません。お花を買ってきてお手洗いに飾ったり、お菓子を配ったり、みんなが喜びそうなことをどんどん実践しました。

勝手にCHOを名乗り始めたので、周囲からの反応は『CHOって何?』『楽しそうにやってるね。いいね!』というもので、好意的に受け止めてもらえて良かったと思っています。

しかし、このまま取り組みを続けるだけでは、“良い人”で終わってしまうという懸念が生まれました。そして次第に幸福度の変化を可視化するものはないかと考えるようになったのです」

幸福度の変化を科学的に可視化するために、心理学や脳科学からのアプローチを調べる中で、佐藤は社員の幸福度を高める小さな取り組みは事業成長につながることが証明されていることを知りました。

佐藤は早速、自身の取り組みを論文やデータをもとに、効果があることを社内にプレゼン。その内容が認められ、2020年には会社公式のCHOになることができました。

個人の取り組みから会社公認へ──新たな施策が始まった矢先の危機

2020年、CHOの取り組みが会社にとっていい影響を与えていると認められたことで、社長直轄のCHO室という部署が新設され、会社全体で社員の幸福度を上げることに注力するようになりました。

佐藤 「幸福度は主観に基づくので、可視化した時に差が出やすいものです。仕事に対してどれだけやりがいや意義を持っているか? 自社のVISION・MISSION・VALUEへの共感度、自分自身が幸せに働いているか? 周囲の人は幸せに働いているか? など、なぜそのように感じるのかを個々にインタビューをすることもありました。

いろいろな論文を読み、幸福度の計測方法を推測し、実証して、結果を蓄積して会社に提示したことで認めてもらえたので、とても嬉しかったです」

社員の幸福度を高めるために、改めて自社の目指す未来や大切にしたい価値観を明確にし、ステートメントを刷新。CHO室が新たなVISION・MISSION・VALUEを浸透させる施策に取り組むことが決定しました。

しかし、新たな取り組みが始まった矢先に、新型コロナウイルスの感染拡大に見舞われました。

佐藤 「コロナが流行しだした頃は、業績の悪化やリモート環境への変化によるコミュニケーションの減少など、社員が幸せを感じる機会が減りました。サプライズプロデュースなどの『リアルイベント』をビジネスとする私たちだからこそ、直接会ってコミュニケーションできないことは幸福度低下をもたらす大きな要因でした」

今後しばらく続くであろうこの状況を放置すれば、これまで培ってきた文化や社員間の絆が損なわれてしまうという危機感が佐藤の中に生まれました。

佐藤 「このような状況下だからこそ、CHOとして社員の幸福度を上げる必要があると使命感を持ちました。まず初めに、それぞれの働き方に合わせて、リモート環境でもコミュニケーションが取れるようにしました。そして、コロナ禍で取り組みがストップしていた、VISION・MISSION・VALUE浸透の取り組みをスタートしました」

コロナ禍でも環境づくりを止めない。“今”に合わせた形を、つくり続ける

▲VISION・MISSION・VALUEを意識できるように作った、さまざまなアイテム

VISION・MISSION・VALUEの浸透のための企画は、コロナ禍で振り出しに戻ることも多くありました。しかし、このまま何も取り組みをしなければ、社員の幸福度は低いままだという危機感はますます強くなっていくばかり。そこで、リモート環境でも使えて、刷新したVISION・MISSION・VALUEの理解を深めることができる、さまざまなアイテムを開発しリリースしました。

佐藤 「リモート環境の中、日々のコミュニケーションでVISION・MISSION・VALUEが意識できるような、オリジナルのデスクトップ背景やクレドカード、社内コミュニケーションツールSlackで使えるVALUEスタンプなどをリリース。変化し続ける環境の中で、“今”に合わせた最適な形を追求し続けました」

他にも、リモート環境で不足しがちな社内コミュニケーションを促す場として、「Wednesday Café Time」を実施。週1回、業務とは関係なくコミュニケーションができる機会として、メンバーたちもリラックスしてこの時間を楽しんでいます。

佐藤 「Wednesday Café Timeでは、さまざまな企画や発信を行いました。企画の一つとして、社員全員で会社のオリジナルキャラクターを開発するプロジェクトを実施。社員全員で、自社の特徴を客観的に捉えながら、ブレインストーミングし、オリジナルキャラクター『スペさん』が誕生しました。

完全にゼロからキャラクターを作るプロセスを通じて、自社への理解が深まり、VISION・MISSION・VALUEをメンバー自身が考える機会となりましたね」

また、コロナ禍で幸福度が下がっているのは、自社だけではないと考えた佐藤。共に働く仲間を幸せにしたい人のためのオンラインコミュニティ「HAPPY LINK LAB(ハッピーリンクラボ)」を発足し、CHOの活動を社外にも広めています。

佐藤 「業界や職種、企業によっては、“幸せに働く”ということが、まだまだポジティブに聞こえない場合もあると思います。私自身、幸せに働くことの大切さや期待できる効果について、社外の人に魅力的に伝えることの難しさを感じています。だからこそコミュニティでは、参加して良かったと思ってもらえるような情報発信と、参加者が主体性を持ってもらえるような企画立案を常に心がけて取り組んでいます」

自社の社員の幸せに向き合ってきた経験やノウハウを共有し、同じ志を持った人々のつながりの創出に成功したHAPPY LINK LAB。現在の会員は217名(2022年1月現在)と、継続して増加中です。

より多くの会社へCHOの取り組みを届けて、幸せの連鎖を起こす

▲幸せの連鎖を起こすスペサン社員

CHOが主宰するHAPPY LINK LABの取り組みと、社内浸透が根付いたことで、より多くの会社に幸せの連鎖を起こしたいという想いが、法人向けの新事業の立ち上げにも繋がりました。

新事業「Cultive(カルティブ)」では、幸福学の第一人者である慶應義塾大学の前野 隆司教授にもアドバイザーとして参画いただき、「良質な企業文化醸成の結果、働く社員の幸福度が高まり、パフォーマンスと業績が改善するプログラム」を目指しました。

働く全ての人が「幸せに働くこと」を実現できるように、自社の取り組みを体系化。良質な企業文化づくりを通して、企業の中長期的な成長を支援するハンズオン型カルチャー醸成プログラム「Cultive(カルティブ)」が完成し、ローンチすることができました。

Cultiveは、企業文化醸成のためのコンサルティングだけでなく、イベントの場づくりや必要なツールのデザイン・製作まで、ワンストップで請け負います。それにより、お客様に寄り添った価値提供を実現しています。

コロナ禍によって大打撃を受けた会社の事業を法人向けの新事業にシフトしたことで、前年同時期比280%超えの売り上げ達成につながりました。

佐藤 「Cultiveをローンチした後、お客様とお話しする中でVISION・MISSION・VALUEを持っていない企業が多いことに気づきました。幸せに働く社員を増やすというテーマは重要だけれど、緊急度や優先度は低く捉えられがちで、認知度も低い状態です。そのため、Cultiveを提案するときに、なぜ必要なのか? という重要性を伝えることに苦労しています。

一方で、Cultiveを導入してくださった企業からは、企業が持つ文化や価値観を抽出して言語化することで、『自分達の仕事に意義を感じて働くようになった』『会社全体の一体感が増した』というお声を頂くことも増えました。実際にVISION・MISSION・VALUEが浸透していく様子を見ると、とても嬉しくなります」

コロナ禍で働く環境が大きく変わっています。そんな状況でも、たくさんの会社や働く人が、“もっと幸せに働くこと”に意識を向けて仕事に取り組めるように、CHO佐藤の挑戦は続きます。