選択肢や可能性を狭めない理想の働き方を目指す

▲グランディーユ代表の小笠原 恭子

グランディーユが展開するカフェ事業やケータリング事業では、障がい者と健常者が共に働いています。代表の小笠原 恭子は、公的資金を使用せず、利潤追求する法人化を選んだ理由を次のように話します。

小笠原 「健常者の方の場合、自分が理想とする働き方や場所、そしてキャリアアップを目指して職場を選びますよね。ところが、障がい者の方は働く場所が限定されやすく、みなさんが理想とする働き方がなかなか実現できていないと感じていました。

このままでは働き方の選択肢だけでなく、個々が持つ可能性まで狭めてしまうと思い、“誰もが自分らしく働ける場所”を選択できる社会にしたいと思ったんです。その取り組みの一つとして、一般社会に近い労働環境を作るため法人化を選びました」

グランディーユには、福祉制度を利用した労働環境ではなく、自らの意思で働ける環境を求める方々が日々やってきます。その一方で、障がい者を雇用している企業からの相談も増えていきました。

小笠原 「最近では法定雇用率の義務付けや人材不足により、障がい者や働きづらさを抱えた方を雇用する企業が増えています。

しかし、採用はしたものの、コミュニケーションの方法や指導方法がわからない。また突然来なくなってしまったという悩みも多く、お互いが気持ちよく働くためには、企業側へのサポートも必要だと感じました。

私たちの事業では、障がい者や働きづらさを抱えた方の離職率が低く、また定着率も高いといった実績があります。そこで、これまで培ってきたノウハウを伝えることができれば、もっと多くの企業が雇用に積極的になり、社会が豊かになるのではないかと考えました」

2022年2月現在、グランディーユは障がい者雇用で悩む企業のために、培ってきたノウハウを活かしたハンズオン支援も行っています。

自発的に動ける環境を作ることで個々の可能性を広げていく

今では高い定着率を誇るグランディーユですが、始めからスタッフの定着率がよかったわけではありません。

小笠原 「障がい者や働きづらさを抱えた方たちとのコミュニケーションは、当社にとっても大きな課題でした。自分の気持ちを言葉にするのが苦手だったり、コミュニケーションがうまく取れなかったりする方も中にはいます。スタッフが仕事上の悩みや不安を私たち雇用者に伝えられずにいては、働きづらくなり離職にもつながります」

グランディーユでは信頼関係を築くため、スタッフとの面談を繰り返し行い、時間をかけて悩みや不安をヒアリングしました。

その中で小笠原は、「今どこでつまずいてしまっているのか」「自分の課題はなんなのか」がわからないまま過ごしているスタッフが多いことに気付きます。

小笠原 「スタッフ一人ひとりに連絡ノートを用意し、悩みや課題を文章化してもらうようにしました。書く内容は自由で、仕事でこんなことをした、その時どう思ったかなどを書いてもらいます。

ノートに書き出すことで気持ちの整理にもなりますし、私たちもどういった状況だったのかが把握できるようになりました」

連絡ノートをもとに、その日の仕事内容や、自分が取り組むべき課題をスタッフと一緒に振り返る。そうすることで、スタッフは次のステップへと進めるようになっていったのです。しかし、解決すべき課題はこれだけではなかったと小笠原はいいます。

小笠原 「スタッフが自発的に仕事ができずにいることも課題でした。手が空いた時に何をすればいいのか、次にどう動けばいいのかがわからない方が多かったのです。

そこで、指示されるのを待つのではなく、自らが考えて動ける環境にするため、仕事内容をリスト化したシートを壁に貼り出すようにしました」

状況に応じた仕事内容を明確にし、それを文章化することで、誰もが迷わずに動けるようになったのです。

小笠原 「働きやすい環境を作り出すことで、スタッフが自ら進んで動いてくれるようになりました。今までは指示されるのを待っていたスタッフが、自発的に動けるようになったのは、働くことへの自信や楽しみにもつながったと思います。

また、そこから自分だけでなく周りの状況も見えるようになっていき、そして誰かの役に立ちたいという想いにつながれば嬉しいですね。こうした取り組みによって、働き方の選択肢だけでなく、個々の可能性も広がっていくと考えています。

実際にグランディーユで働くスタッフたちは、働くことに楽しみや喜びを感じ、自分のことを大切にするようになっていく方が多いと感じています」

大切なのは雇用者側の理解と、過保護にならないための線引き

▲グランディーユではカフェやケータリング事業などで障がい者の方々の活躍を支援しています

悩みや不安をしっかり理解することで、スタッフの働き方に対する意識が変わり、そして自分の居場所を見つけられる。この経験から、雇用する側の正しい理解があれば、障がい者も健常者も人材育成の面では何も変わりはないと小笠原はいいます。

小笠原 「雇用する側が大事にしてほしいのは、そのスタッフが“どのようなハンディキャップをもっているか”を理解することです。

たとえば仕事で指示したことができなかった場合、それがハンディキャップからくることなのか、単なるミスなのか、そこをしっかり見極めなければならないからです。できないことをミスだとして怒ることは、絶対にあってはいけません。

その理解さえできていれば、健常者と同じように接し、自分で考えて動いてもらうことができます。少し時間はかかってしまうかもしれませんが、雇用する側の理解があれば立派なスタッフに育ちます。この過程は、健常者も障がい者も一緒なのです」

また障がい者を雇用する上で、過保護になりすぎないことも大切だといいます。

小笠原 「どうしても守ってあげたい、こうしてあげたいと思ってしまいがちなのですが、それが過度な支援になってしまうことが多いのです。

働きたいといってここに来てくれているスタッフは、子どもではなく大人です。障がい者であっても、お給料をもらうのであれば責任を持って働かなければなりません。ですから、ある程度の部分まではサポートするけれど、ここからは自分で考えて動きましょう、という線引きをしています。

その線の部分はスタッフ一人ひとりによって違います。この部分を雇用側がしっかり理解していない限り、いくら色んな人が携わってくださっても、どんどん過保護になってしまう可能性もあります。

障がい者雇用は何か支援をしなければいけない、そのために支援者を雇い、人件費が倍かかると思われている企業もあります。でも、実際はそうではありません。働きやすい環境に整え、誰であっても同じように接することで即戦力にもなりますし、企業の成長速度もあがります」

理解を深めることで障がい者雇用の底上げを目指す

障がい者雇用の課題解決には、雇用する側も働く側も双方で意識を変えていかなければならないとグランディーユは考えます。また経営企画部マネージャーの横田 親は、誇りを持って働く大切さについてこう話します。

横田 「福祉事業は、商品を買ってもらいたいという思いが先行し、値段を低く設定してしまいがちです。経営者も、障がい者の方々も、自分たちが提供するものは付加価値が低いと思い込んでしまっていることが多いと感じています。

しかし、品質のいいものでお客さんが喜んでくださるのなら、適切な値段を設定すべきです。そうすることで、働く喜び、誇りを持つことができるのです」

グランディーユでは障がい者だけでなく、ひきこもりのために社会経験がない方、働きづらさを抱えた人、健常者と、さまざまなスタッフがフラットな関係で働いています。

小笠原 「人材不足、労働力不足が社会問題になっていますが、社会に出てこれていないひきこもりの方や、理想の職場とマッチングできずにニートになっている方など、働きたい人はたくさんいます。もちろん、障がい者もその中に含まれます。

毎日働くのは少しつらい。でも週に1日、1時間だけでも働きたい、そんな想いに応えられる場所がたくさんあれば多くの雇用が生まれます。そのような方たちが働ける場所を広げていくことで、社会全体の雇用を底上げできると考えています。

そのためには、彼らが働き続けたいと思う職場環境づくりと、雇用者側の理解が大切なのです」

グランディーユでは、自分たちが構築したノウハウを多くの企業へ伝えていくとともに、雇用者側の理解を深めていけるよう、これからも発信を続けていきます。さらには、誰もが自分らしく働ける場所を提供し、また働き方の選択肢が広がっていくことを目指します。