女性の起業をもっと増やしたい

▲Yourのメンバー

女性起業家創出のスタートアップ・アトリエ「Your」立ち上げの背景にあったのは、uni'queの若宮が、これまで多くの女性から起業の相談を受けてきたことでした。

若宮 「過去150名以上の女性から事業アイディアを聞いてきましたが、そのうち実際に起業まで踏み出せたのはわずか数名でした。彼女たちの相談に乗るなかで、なかなか起業できないのは単に資金が不足しているからではなく、起業に取り組める環境が不足しているからではないかと考えるようになりました」

のちにLetterMeを創業する西村もまた、起業する環境から遠くにいると感じてしまった一人です。

西村 「学生時代から自分の事業をつくりたいと思っていましたが、周りに起業している友人や知人はおらず、『どうしたらいいのかわからない』という状態でした。

でも、起業の夢を諦めきれず、大阪で8年勤めた会社を辞めて、東京のスタートアップ企業に飛び込みました。まずは経験や人脈をつくり、新たな一歩を踏み出そうと考えたのです」

しかし、飛び込んだ環境で西村の中には、ある違和感が生まれてしまいます。

西村 「飛び込んだ先は、男性主体のフルコミットの組織体制のもと、いかに覚悟をもってやるかといった空気感が漂い、大きなマーケットでマネタイズできるか、などの話が飛び交う環境でした。

たった一人で東京に出てきて、夢に向けて踏み出したものの、その環境に合わず、わずか3カ月で離脱してしまいました」

スタートアップを取り巻く状況について、若宮はこう話します。

若宮 「これまでの経験から、男性中心的なスタートアップ環境では、事業規模と急成長を求めるユニコーン型の起業を目指すことが多く、また投資家もそのような事業に投資する傾向があると感じています。

すると、その環境ではプライベートを犠牲にしたフルコミットが求められ、『事業を立ち上げたのだから、結婚、出産、子育ては後回しだよね』という空気ができ上がってしまいます。

すべてを注ぎ込む、そうした起業のあり方ももちろん素晴らしいと思います。しかし、最短直線距離で速く走り切るスピードスケート型の起業のやり方しかないのでしょうか。違うと思います。事業は人がつくるものです。人が主体であるのに、その人の生き方がナチュラルではなくなるのは、おかしいのではないかと感じました」

そこでuni'queは2019年、資金の提供やアドバイスに留まらず、柔軟な働き方も実現しながら伴走型で一緒に事業を立ち上げる、スタートアップ・アトリエ「Your」を発足させることにしたのです。

アート思考で事業アイディアを引き出す

▲LetterMe西村事業ピッチ風景

Yourでは、これまで女性主体の新規事業を何度も生み出してきた若宮と、uni'queのBtoC事業「YourNail」を立ち上げたメンバーが直接アドバイスをし、事業創出をサポートしていきます。

資金調達やエンジニアなどのメンバー集めといった部分のサポートはもちろん、事業のメンタリングも重視。市場規模や顕在ニーズのみを優先せず、起業家の当事者視点に基づく「アート思考」での事業開発に重きを置いています。

西村は「このアート思考でのメンタリングがなければ、自身の事業をカタチにすることはできなかった」と、振り返っています。

そんな彼女がそもそもYourと出会ったのは、「やりたい事業」という起業のタネはあったものの、はっきりとしたカタチにはなっておらず、他のものを探した方がいいのではないかと感じていたタイミングでした。

その起業のタネとして、西村の中にずっとあったのが「自分からの手紙」でした。

西村 「人生の中で30歳という年齢をひとつの大きな節目だと思っていた私は、25歳の時、30歳の自分へ向けて手紙を書きました。自分を見失い、これからの方向性で迷っていた時に、その手紙が支えになりました」

西村は、そこで手紙の中の言葉に救われ、自分の心の声を聞くことが大切だと気づきました。カウンセリングやコーチングではない、何か新たな力が手紙にはあるのでは、と感じたのです。

西村 「自分が事業をするのなら、これをカタチにしたい。でもどうすればいいのかわからない。そんなモヤモヤとした想いが、Yourのアート思考的なメンタリングによって『LetterMe』というハッキリとした事業アイディアに昇華されていきました。

自分らしく生きるには、自分と向き合い、心の声を軸に決断すること、そしてそれを習慣にしていくことが重要です。大切にしていた『自分に向き合う時間』を事業にできたのは、売上やニーズを求めるばかりではなく、事業をする本人の視点を大切にするYourだからこそだと思っています」

Yourによって、自分がやりたい事業をカタチにした西村は、2020年12月に「LetterMe」をリリースしました。2020年8月にYourにジョインしてから、わずか4カ月というスピードで立ち上げに成功。東京都のAPTWomenや経産省NEXT INNOVATOR始動に採択されるなど、まもなくの分社化に向けて事業を育てています。

複業、フルリモートでも起業はできる

▲Yourから生まれた事業

Yourでは多様な働き方を選択できる環境も整え、子育て中でフルリモートの女性や複業スタイルで働く女性でも起業にチャレンジできるようにしました。

Yourでフェムテック事業「よりそる」を立ち上げた高本 玲代は、複業、子育て中でありながらオーナーとして運営中。LetterMeを立ち上げた西村も、複業しながらフルリモートで事業を運営しています。

若宮 「当社は創業以来、柔軟な働き方の実験として基本的に全員複業を掲げています。そのためメンバーの時間を合わせるのが非常に難しい。実際、LetterMe西村やよりそる高本とはこれまで一度しか会ったことがありません。それでも事業は工夫すれば作れます。

たとえば、みんなの予定を合わせて会議の日程を組むとなると、事業のスピードが落ちてしまうので、社内会議は週5時間以下、実行・時後報告OKなど大きく権限移譲した組織体制にしています」

西村 「リアルに会わないので事業オーナー同士の交流を重視しており、ナレッジやビジネス機会を共有し合うコミュニティ的な組織です。提携企業候補を紹介し合ったり、媒体露出の機会を提供し合ったりすることで、独立しつつシナジーのあるコミュニティになっていると感じています」

事業のあり方や働き方の多様な世界へ

▲Yourは女性の起業を後押しします

自身の事業立ち上げに成功し、分社化に向けて日々挑戦中の西村。起業に挑戦したいけれど、きっかけや環境がない女性にYourをもっと広げていきたいと話します。

西村 「私がYourに出会っていなければ、たとえ起業していたとしても『LetterMe』は生まれていなかったと思っています。

Yourは、事業アイディアのブラッシュアップ、サービスのシステム立ち上げ、事業拡大のための資金提供という、機能的なサポートがあるのはもちろんですが、『自分がどうありたいのか』について考え自由に動ける場所です。

だからこそ、自分が大事にしたいものを事業として挑戦でき、自分らしさを追求した結果、LetterMeは生まれています」

また西村は、Yourのメンバーと情報交換しながら協力し合い、お互いの事業を成長させていける環境に支えられていたという実感を持っています。

西村 「事業は違えど、一緒に成長過程を見れるというのは『自分は一人じゃないんだ』と感じられ、心強く思います。それでいて自立を促してくれるので、起業家としての自信や覚悟もつけられる。

経験も人脈もなく、たった一人で東京に出てきた私が、LetterMeというサービスを世の中に届け、挑戦し続けられるのは、Yourという居場所があったからこそです」

そして、若宮は「女性」だけでなく、全ての人が起業にチャレンジできる世の中を目指しています。

若宮 「Yourをスタートアップ・アトリエと呼んでいるのは、それぞれがそれぞれのカタチを見つけていく、プラットホーム的な場だからです。事業スタイルや事業規模だけじゃない、多様な事業のあり方があっていいと思っています。

また、Yourは女性に特化していますが、起業は男女関係なく、属性もマイノリティの人がいていいし、働き方も多様であっていい。

新しい事業をするのに、『今までの価値観でかたまったものではなく、そういうカタチもいいんじゃないの?』といって、後押しできる場がYourです」

事業や働き方だけでなく、生き方のダイバーシティを増やす挑戦はこれからも続いていきます。