健康診断の結果に抱いた危機感。フルリモートでの新たな問題

▲運動比率の低さとメンバーの高齢化を示したデータ

2020年の2月末より、新型コロナウイルス感染症対策の一環として全社フルリモートワークを取り入れたウイングアーク1st株式会社(以下、ウイングアーク1st)。この判断は、2020年3月から開始予定だった「健康経営」に大きな影響を与えました。

Wellness推進室で健康経営エキスパートアドバイザーを務める鳥越は、当時を次のように振り返ります。

鳥越 「2018年に実施した健康診断の設問の中で、『汗をかく運動が週1日以下』のメンバーが多かったんです。また、2025年にはおよそ600名いるメンバーのうち、およそ170名が50歳以上になる見込みでした。

私は『この状態が続くのはよくない』という思いで、2019年あたりから健康経営の施策をいろいろと考えていました。そして、私が健康経営の担当者になるタイミングで、全メンバーを巻き込んだ健康施策を実施したいと計画していたんです。

たとえば、エクササイズ大会や体力測定会など、メンバーが集まってできる企画を進めており、2020年の3月から施策を始める予定でした。ところが、フルリモートになったことでメンバーが集まれなくなりました。企画はすべて白紙です。私の頭の中も真っ白になってしまいました」

全社フルリモートワークになったことで、メンバーの運動量はさらに激減。また、運動量だけでなく新たな問題も出始めます。

鳥越 「社内調査を実施すると、運動量が激減したことにより、腰痛や肩こりを訴えるメンバーが増加しました。それだけではなく、コミュニケーションが取りづらいことも明らかになったんです。

オンラインでのミーティングは実施していましたが、リモートワークでは気軽にコミュニケーションを取ることが難しくなります。とくにひとり暮らしのメンバーは、誰とも会話せずに1日が終わる日もあることがわかりました。

この状態が長く続いてしまうと、心身ともに不健康になるリスクが高まってしまい、組織全体の生産性・業績低下につながってしまうという危機感が生まれましたね」

働くメンバーの「生活の質」を高めるために何ができるのか、鳥越は頭を悩ませる日々が続きました。

「社長の声掛け」で参加率が大幅改善

▲全社総会の様子

ウイングアーク1stには、多くの企業で設置されている「衛生委員会」の役割をこなす存在として、「Wellness委員会」があります。札幌・新潟・大阪などそれぞれの拠点に担当者が置かれており、メンバーは16人で構成されています。

鳥越は、新しい企画を考えるにあたって、Wellness委員会のメンバーに相談をしました。

鳥越 「企画が白紙になってしまった以上、また新しい健康施策を考え直す必要がありました。しかし、私ひとりでは難しいと考えたので、Wellness委員会のメンバーに『リモート環境下でもできる健康施策を一緒に考えてほしい』と呼びかけました。

さまざまなアイデアが飛び交った中で、『アプリを使ったウォーキング大会ならできるんじゃないか』という結論になり、実施を決めました。Wellness委員会のメンバーは、もちろん本業がある中での参加になるので、無理のない範囲で参加してもらえるように配慮しましたね」

全社ウォーキング大会の実施が決まったものの、鳥越はある不安を抱えていました。

鳥越 「実施は決めたものの、『どれぐらいのメンバーが参加してくれるだろうか』という不安はありました。アプリを提供している企業の担当者さんと話をしたときは『3割参加すればいいほう』といわれていましたが、私は最低でも5割、できればさらに多くのメンバーが参加してくれたら嬉しいと考えていたんです。

実際にアプリの登録を促すメールを送信し、Wellness委員会のメンバーにも周知の協力をしてもらいましたが、エントリー数はなかなか増えない状態が続きました。すでに健康意識が高いメンバーは、自身でジムに通ったりランニングをしたりするので、登録してくれます。ただ、自身の健康に興味がないメンバーも多いようで、すぐにエントリーしてもらえませんでした」

悩んだ鳥越は、社長に宣伝の依頼をします。すると、参加率に大きな変化が生まれました。

鳥越 「全メンバーが集まった総会のタイミングで、社長がメンバーに向けて、アプリに登録するためのQRコードを画面に映したんです。すると、5割程度だった参加率は8割になりました。

並行して、私たちWellness委員会も、参加するだけでもらえる参加賞の用意や、社長の歩数にもっとも近いかつ社長に勝った人に送られる『社長賞』など、誰にでも当選の可能性がある表彰を用意しました。とにかく気軽に参加してほしいことをアピールしたんです。

社長に協力していただいたことと、Wellness委員会の試行錯誤の結果が参加率を高める要因となりましたね」

「どれぐらい歩いた?」から始まるコミュニケーション

▲社内コミュニケーションの一例

しかし、ただ各自がウォーキングをするだけでは、社内コミュニケーションが生まれることは期待できません。そこで、同社では自社製品であるBIダッシュボード「MotionBoard」を活用し、ウォーキングの進捗状況を社内で共有できるようにしました。

鳥越 「MotionBoardを活用したウォーキング大会用のダッシュボードは私が作成したものではありませんが、作成したメンバーからはたくさんの苦労話を聞きました。その甲斐もあって、ほかのメンバーがどれだけ頑張っているのか、みんなが見ることができます。『あいつは頑張ってるから自分も頑張らないと』という意識が、芽生えたと思います」

また、ウォーキング大会ではチーム戦を採用。このチーム戦の導入は、コミュニケーションが生まれる大きなきっかけになったといいます。

鳥越 「チーム戦になると団結力が生まれて、『あのチームには負けたくないよね』となるんです。なので、仕事を始めるときの最初の会話は『最近どれぐらい歩いてる?』から始まるようになりました。全社ウォーキング大会は、リモートでもコミュニケーションが生まれるきっかけを作りだすことができています」

コミュニケーションが生まれただけではなく、メンバーの健康意識にも変化が表れました。

鳥越 「健康経営に関するアンケートを取ると、およそ44%のメンバーが健康づくりに関する意識や行動に変化があったと回答しました。また、『1日30分以上の軽く汗をかく運動が週2日以上』の割合は、2019年が24.6%だったのに対し2020年は38%になりました。食事や睡眠に関する項目でもいい結果が出ていたので、健康経営を進める立場の私としては嬉しく感じていますね」

フルリモートでも会社はひとつになれる

▲ゴールすると表示される画像

働き方の変化にともない、隣にいた人といつでも雑談ができる環境ではなくなりました。しかし、たとえ働く場所がバラバラでも、会社はひとつになれることを鳥越は感じています。

鳥越 「リモートワークだと、『あの人は今忙しいかな?』と考えてしまって、聞きたいことも聞きづらくなってしまうんです。でも、仕事以外のことを話せるきっかけを作れたら、『忙しくて聞きづらい』といったハードルもなくせると考えています。

もっと交流を増やして、メンバーがさらに一体感を抱けるようにしていきたいです。リモートでも会社はひとつになれますし、『ちゃんとみんながいるんだよ』という感覚を抱いてもらえたら、メンバーも安心して働けると思います」

コミュニケーションが自然に生まれ、メンタルの調子がよくなっていく。そして、意識しないうちにメンバーの健康意識が高まり、みんなが健康になっている。そういった会社を目指すために、鳥越は今後も健康施策を考え続け、健康経営に取り組んでいきます。