価格競争に飲み込まれるクリエイターの存在に抱いた違和感

▲あと値決めチームの冨田(左)、専光(中央)、原(右)

多様な働き方が推奨される今日、フリーランスとして働く人も多くいます。しかし、2016年に新卒でネットプロテクションズに入社してから、専光はある違和感を抱くようになりました。

専光 「入社してから3年間は、既存加盟店様のWeb販売の施策を企画、実行していました。実際に施策を実行する中で感じたのは、広告投資がしっかりとできるプレーヤーが消費者に選ばれるということです。

投資が難しかったり、駆けだしで実績が打ちだせなかったりするクリエイターは、価格競争に飲み込まれてしまいます。私はその現実に違和感を抱きました」

たとえば、ネットプロテクションズが抱えるいくつかの既存加盟店に話を聞いてみると、家事代行などの役務サービスを利用したいと考えている人はたくさんいることがわかります。しかし、サービスもとのサイトを訪問する人は多いものの、実際にサービスを利用する人は少ないことが明らかになりました。

専光 「サービスに興味を持ちながらも利用しない理由は、『なんとなく不安』、『後悔したくない』といったネガティブな気持ちが先行したものでした。しかし、サービスを利用した人の満足度は高く、リピート率も高いことがわかったんです。

つまり、初回利用のハードルさえ取り除くことができれば、もっと多くの人がサービスを体験できるようになると考えました。こういった背景から、サービスを体験してもらった上での値決めと支払いを可能にする、『ポストプライシングサービス』を立案したんです」

これまでに前例のなかった、ポストプライシングサービスの「あと値決め」は、消費者の「後悔したくない」という利用ハードルを決済システムによって低くしています。その結果として、事業者と利用者がより気軽につながれるしくみを実現しているのです。


共感を軸に。仲間を集める楽しさと難しさ

▲「あと値決め」をこれからも愛されるサービスに

専光は、あと値決めサービスのリーダーとして、サービスの立案・実装・運用を担っています。しかし、サービスをリリースするまでには、いくつもの苦労がありました。

専光 「これまでに前例のない、ポストプライシングサービスの実現に関して、ネットプロテクションズの中でも疑問を呈する社員はいました。あと値決めをつくるために入社した人はいないし、それぞれで担当している仕事もあります。仲間を集めるという点では、楽しさと難しさの両方を感じました。

そこで、仲間を集めるときは、共感を軸にして集めるようにしましたね。誰もやったことがないからこそ、実現できるかどうかは、やってみないとわからないと考えていたからです。『こんな面白いサービスあるけど、協力してくれない?』といったように、自分から一対一でコミュニケーションを取っていきました」

専光は、意見を取り入れつつ、社内外に仲間をつくれるように取り組みました。結果として、サービスのリリース段階では、約40人の従業員が関わってくれたといいます。そして、2019年の8月末にサービスをリリースしました。

専光 「サービスをリリースする段階では、『こんなサービスうまくいくわけない』という意見もありました。それでも、サービスを開始してから1年あまりで1,000以上の事業者様に導入していただきました。想定したよりも早い段階で、多くの導入実績を得られたと感じています。

社内で自分の想いに共感してくれるメンバーを探すときと同様に、事業者様を集めるときも共感を軸に集めました。中には、5分話を聞いただけで、サービスを理解していただいたこともあります。サービスのリリース時には強く共感してくださった8社に参画していただきました」


「共感の輪」で広がるサービス

▲ポストプライシングサービス「あと値決め」

専光は、仲間を集めるときに大切にした「共感」は、サービスが広がっていく上でも重要なキーワードになると考えています。

専光 「あと値決めは、事業者様を増やすための広告は一切打っていません。にもかかわらず、サービスを導入していただく事業者様は、現在もどんどん広がっています。導入数を目的にはしていなかったので、私も驚いています。

サービスが広がっている大きな理由は、やはり『共感』です。あと値決めに共感した人がシェアしてくれたり、メディアに取り上げられたりして、共感の輪でサービスが広がっています。共感を武器に伸ばしていくスタイルを取っているので、『こんなサービスがあるなら使ってみたい』という連鎖が生まれやすいんです」

あと値決めのサービスについて、「事業者側から料金に納得できないという問い合わせはないのか」とよく尋ねられるといいます。専光はその質問を尋ねられる度に、「前提が異なっている」と感じていました。

専光 「事業者様側の『価格に納得できない』という声は、まったくないわけではありませんが、数としては少ないです。あと値決めを採用する事業者様の多くは、自分の作品や仕事に自信を持っています。

また、サービスを受ける側もサービス提供者を信用しているので、一般的な売り値より価格が下がることはほとんどありません。むしろ、高い値が付くケースのほうが多くなっているんです。

サービスを買って後悔するような人は、それほど多くないと思います。私はあくまでも『最初のハードル』を取り除いているだけです」

あるイラストレーターの実例では、もともとは無償でイラストを提供していたところ、あと値決めを導入したことで、平均価格5,000円に跳ね上がりました。

また、副業としてコーチングを提供するネットプロテクションズのある社員、自らも決済にあと値決めを採用しています。

初回利用のハードルを下げる意味で、あと値決めは大きな役割を発揮しているのです。


個人の努力・才能が適切に評価される社会の実現

▲良いモノが“普通に”広がる世界を目指して

あと値決めは、自社の利益を増やすためのサービスではないと語る専光。そのため、マネタイズ重視にはならないよう配慮しています。

専光 「新しいサービスをリリースするときは、どうしても収益化するモデルを考える必要があります。とはいえ、あと値決めで実現させたいことは、事業者様の成長に寄与することです。

さまざまな点で悩んだ結果、すぐに利益を得ることは難しい設計で、経営層に壁打ちをしました。議論は交わしましたが、最終的には当社のビジョンである『歪みがない事業・関係性をつくる』に合致するサービスとして、承認を得られました」

サービスリリースから約2年が経ち、あと値決めを導入する事業者は増え続けています。あと値決めは、今後どのような社会をつくっていくのでしょうか。

専光 「インターネットが広がったことで、誰でも簡単にサービスをつくり、知ってもらえる社会になりました。しかし、インターネットが当たり前になったからこそ、差別化が難しくなったり、個人は信用されなかったりするケースがあります。

価格は取引と紐付いていて、取引をするには決済が必要です。ただ、価格変動に耐えうる決済の仕組みをつくらないと、定価しか生みだせないんです。自慢ではないですが、あと値決めは価格変動に耐えうる決済サービスなので、私自身もいい事業だと思っています」

あと値決めにより価格の決定構造が変わり、努力や才能が適切に評価される──そういった社会を専光は目指し続けます。