「営業女性は入社10年で9割が消える」に受けた衝撃

▲エイカレの企画・運営を担う小森(左)と鈴木(右)

2014年からスタートしたエイカレ。ある調査結果に衝撃を受けたことが、その発足のきっかけでした。

小森 「企業変革や人材育成に伴走しているチェンジウェーブでは、以前から『営業で期待している女性が辞めてしまう』といった悩みを聞いていました。同じような課題を持った企業7社が集まって調査をすると、営業職女性(以下、エイジョ)は入社10年で9割が現場から消えることがわかったんです。その結果には強い衝撃を受けました」

当時、営業職として働く女性、そしてその周囲には、「ライフイベントを経て女性が営業職を続けることは難しい」という固定観念がありました。

その一因となっているのが、営業職は長時間労働が当たり前という働き方です。とくに時間の制約を受けることが多い女性は長く働くことが難しいとされていました。

小森 「営業が好き、という営業職女性がなぜ続けられないのか?本当に難しいのか?本人たちのアンコンシャス・バイアスを崩すとともに、営業の働き方を変えないといけないと思ったんです。

エイカレは、エイジョがキャリア構築に前向きな一歩を踏み出す機会として、また最終的には企業の変革につながる仕掛けになることを目標として、スタートしました」

エイカレは半年間かけて、営業変革の実証実験にチームで取り組むプロジェクトです。

まずキックオフでは、エイジョに「現状は自分で変えられる」という前向きな意識を持ってもらうためのプログラムがあります。その後社内で「当たり前を崩し」「働き方・営業モデルを変える」実証実験を行い、最後は発表会でプレゼンをします。

実験を通して仕事のスキルを上げて、「自分たちが変えられた」という体験をしてもらうことが、キャリア観にも変化を促しています。

エイジョをポジティブに変えるために

▲エイカレのキックオフ 2020年からはオンラインで開催

エイカレに参加するエイジョは、必ずしも全員が前向きな気持ちでスタートするわけではありません。参加者の中には、「研修だから仕方なく……」という人もいます。

鈴木 「エイカレは、エイジョが主体となって進めていくプロジェクトです。通常業務の傍ら、チームで課題を設定して、会社を動かす、という実証実験は決して易しいものではありませんが、一種の“修羅場体験”をやり抜いたエイジョは、毎年見事な成長を遂げます。

ですから、そのスタートでいかにやる気になってもらえるか。2日間のキックオフが終わったときに『私が会社を変える』と思ってもらえるか。企業変革で培った“変革のステップ”を取り入れ、丁寧に進めることを意識しています」

エイカレに参加するエイジョの反応は毎年異なります。より価値の高い研修を実施するために、参加者の反応に合わせて進め方を変更することもあります。

鈴木 「スタート時に『いつまで続けられるかわからない』『営業にこだわらなくてもいいかも』と言っていたエイジョが『私が、変える!!』と輝きを増していくのを見るのは本当に嬉しいです。また、インプットとして『大きな組織の動かし方』や『データで語る重要性』なども入れていますので、今後、実務でも役立つものになっていると自負しています」

こうした結果、2021年度キックオフ参加者の満足度は100%、参加企業満足度も、7年連続で100%を維持しています。また、エイカレの実証実験が社内外に展開する事例も生まれました。

小森 「これまでの実験例で社内外に展開された事例として、『なりキリンママ』があります。独身の女性がママになりきって、時短勤務や早退を体験しながら働く取り組みです。なりキリンママの導入によって、チーム営業や業務の見直しにつながり、最終的には生産性が向上したという事例があります」

なりキリンママ以外にも、エイカレではたくさんの実験が生まれ、企業の変革につながった取り組みが実現されています。

エイジョの課題感、モヤモヤが「当たり前」を破壊する

▲「私が変える」一歩を踏み出すエイジョ(営業職女性)

エイカレの柱である実証実験は、エイジョが主体的に取り組むプロジェクトであるからこそ、難しい点もあります。

鈴木 「実際に実証実験のテーマがすぐに思い浮かぶチームはほとんどありませんが、『こうなったらいいな』を大胆に思い描いてもらうことは大事にしています。自分が感じる課題が解消されれば、どういったプラスの要素が生まれるのか。それは会社に、顧客にどんな価値があるのか。『そのテーマはワクワクしますか?』と、問うことも意識しています」

実験計画についてフィードバックする際にもエイジョの「自走する力」を大切にしています。

小森 「フィードバックでは、『あくまで計画だから変更しても大丈夫』ということは伝えています。まずは一歩踏み出してみてPDCAを回し、新たな気付きがあれば変えていいと考えているからです。

また、テーマを潰さないことも大切にしています。エイジョが出したテーマは、自身が抱える問題意識から生まれたものです。企業によって課題の内容も課題意識も異なるので、企業の事情を考慮して進められるように意識しています」

自分たちの課題感から出発するものの、それが「経営層から見てインパクトがあるか」「顧客に価値が出せるか」「定量的に結果が測れるか」など、エイカレにはエイジョが視座を上げるための基準を設けているほか、他社からのフィードバックを受ける場も設けています。

参加者が持っていた固定観念が壊れて、新しいアイデアが生まれる。「破壊と創造」の仕組みで、エイカレは運営されているのです。

「エイカレ」を変革リーダーを育てるプラットフォームに

▲「転居しない転勤」を生み出した、2019年度大賞チーム

2014年から始まったエイカレですが、2018年に一度、その方向性を考え直す機会が訪れました。

鈴木 「2018年ごろになって、エイカレの方向性を考え直すことがありました。すでに女性活躍の成果は出ていると考える企業から『女性だけのプロジェクトに意味はあるのか』と言われることがあったからです」

しかし、ダイバーシティ推進が経営課題の中心へ据えられるようになっても、まだまだ女性には十分に機会提供がされていないこと、女性自身もアンコンシャス・バイアスに捕らわれている現状を鈴木たちは目にします。そのことが、継続という決断を後押ししました。

鈴木 「真の女性活躍という点では、これからが本当に大事な時期だと思っています。役員や上級管理職を育成したいという観点から、エイカレに期待してくださる企業様も多くあります。エイジョが変革エンジンとなるためのプラットフォームであり続けよう、と事務局一同で継続を決めました」

その後、新型コロナウイルスが流行すると、営業活動のオンライン化が進みました。まさに営業は変革のときを迎えていて、エイカレが果たす役割は大きくなっています。

小森 「エイカレを『エイカレ出たんだ、すごい』といわれるような取り組みにしたいです。未来を切り開いていく人が集まった、先駆者のイメージができたらいいなと思います」

鈴木 「顧客のニーズに常に寄り添っている営業の方々は、もともと素晴らしい力を持っています。そこに、エイカレで実証したエビデンス、『自分が変えられた』という経験が加わると、鬼に金棒です。良い意味でわきまえず、“当たり前”を壊せるエイジョの皆さんから、変化の波をさらに広げていきたいです」

変革リーダーを育てるプラットフォームを目指すエイカレは、まだまだその歩みを止めることはありません。エイジョの未来をともに築くため、これからも変革を起こし続けていきます。