子育てで大変なママを、少しでも助けられる場をつくりたい

▲保育士が常駐する親子カフェラフラフラフ

2016年に大阪でラフラフラフをオープンしたオーナーの飯田は、自身の子育て経験をもとに、このカフェをつくることを決めました。

飯田 「子どもを育てるのは本当に大変なことです。まだ子どもが赤ちゃんのころは、買い物に出かけるのも一苦労ですし、外でぐずったり泣いたりしても、誰にも助けを借りることができません。そして子どもが少し大きくなり1~2歳になると、公園や遊び場に連れていく機会も増えますが、他の子に迷惑をかけていないかや遊具で怪我をしないかといったことが気にかかり、片時も目を離せません。

だから、ずっと子どもの後をついて回らないといけないんです。当時は『子どもを気軽に見てもらうことができて、大変なママを少しでも助けてくれるところがあればいいのになぁ』と、ずっと思っていました」

もともとフリーでWEBデザイナーをしていた飯田。子どもが幼稚園の年中に上がったタイミングで「何か今までとは違うことにチャレンジしてみよう」と思い立ちます。

そして「数年前、外で子どもを気軽に見てもらえる場が欲しいと感じていた」ことを思い出し、保育士常駐の親子カフェをつくろうと決めました。

飯田 「当時、保育士資格を保有しながらも保育現場で働いていない『潜在保育士』の問題が社会的ニュースになっていました。私は母が保育士で、知り合いにも保育士が多いので、自分の出産を機に離職する方がとても多いことを知っていました。

保育士は、働く場所が幼稚園、保育園、子ども園などに限定されるため、自分の希望に合う勤務先が見つからず、復職しづらい状況にあります。そこで、当店のような親子カフェで働きたい保育士さんはいないだろうかと募集をかけたところ、想定を超えるたくさんの応募をいただきました」

また、お店の名前を決める際には、Laugh(子供が笑って楽しく過ごせて)、Rough(パパとママが自由にゆっくり過ごせて)、Laugh(お店で働くスタッフや、ワークショップやイベントで関わっていただける地域の方々にも、楽しさを提供できる)──そんなお店を目指して「Laugh Rough Laugh(ラフラフラフ)」と名づけました。

こうして、カフェ運営は順風満帆にスタートしたのです。

ラフラフラフを使って、ママにもスタッフにも活躍の場を広げてほしい

▲コロナ禍以前のカフェの雰囲気

オープン後、イベントを開催する人、ベビーマッサージ教室やアイシングクッキー教室を開催する人など、フリーランスで活動するママがラフラフラフを使ってくれるようになり、カフェは活気づいていきました。

飯田 「イベントを開催し、お客さんが来店してくださると私たちも嬉しいし、イベントを開催するママも、イベントを体験したお客さんが次につながる流れができて嬉しい。お互いにHAPPYな状態を大切にしながら、さまざまなイベントを開催し、おかげさまでとても忙しい状態が続きました」

また当店では、学生のアルバイトスタッフも働いています。あるとき飯田は、ひとりの学生アルバイトが「幼児期のコミュニケーションにおける保護者の声かけの重要性」について卒業論文を書いていることを知りました。

詳しく話を聞いてみたところ、科学的に裏付けされた大変興味深い内容だったので、飯田は「ママたちも、きっとこの内容を知りたいに違いない」と感じました。

飯田 「早速学生スタッフに『うちでイベントを開いて、その卒業論文の内容を発表してみない?』と尋ねてみたところ、ぜひやりたいと言ってくれました。当日は、ママたち以外に、学部の教授や学生のお母さんも来てくださり、とても喜んでいただきました。社会に出る前に人前で発表する機会を持つって、すごく大事なことですよね」

大手企業とは違い、思いついたことをすぐに実行できるのが当店の強みです。スタッフとの会話の中で出てきた「これはどう?」「あれはどう?」といったアイデアを、まずはやってみる風土が、スタッフのやりがいにもつながっています。

飯田 「普段からスタッフとは、業務内容だけではなく夢や目標、やりたいこととお店のコラボレーションといった深い話をしているので、みんなすごく仲良くなるんです」

こうした業務を超えた関わり合いは、スタッフにもとても喜ばれています。

危機的状況下で再認識した、お店を応援してくれるお客さんの存在

▲多くのママに支えられているラフラフラフ

これまで順調に運営を続けてきたラフラフラフですが、新型コロナウィルス(以下、コロナ)の影響で状況は一変します。

飯田 「2020年2月以降、企画していたイベントはすべて中止となりました。もともと当店は、食事よりも場の提供に力をいれていましたが、他の飲食店が続々とテイクアウトを始めたことを受け、私たちも何かしなければと考えるようになりました。そこで栄養士スタッフとアイデアを模索した結果、お弁当を販売することになりました」

とはいえ「普通のお弁当をつくったところで、果たして売れるのだろうか」と考えていた矢先、大阪で緊急事態宣言が発表され、幼稚園や小学校が休校になってしまいました。

飯田 「お仕事が在宅ワークに切り替わったママも多く、自宅で仕事をしながら子どもたちのお昼ご飯まで用意するなんて、ママがますます大変な状況になると思いました。早速栄養士スタッフに『給食のようなお弁当レシピを考えてほしい』と声をかけ、成長期における必要な栄養をたっぷり取れる『給食弁当』を販売することにしました。

その栄養士スタッフは、今まであまり前に出るタイプではありませんでしたが、給食弁当をきっかけに自分のスキルを存分に生かすことができ、やりがいも大きくなったようです」

給食弁当の告知はほぼSNSのみでしたが、噂を聞きつけた多くのママがお店に買いに来てくれました。そのときに、お客さんから応援の言葉をたくさんかけられた飯田は、こんな風に感じたと言います。

飯田 「コロナの前までは、場を提供することに忙しく、お客さんと触れ合うことにまで手が回りませんでした。ところが『給食弁当』を始めたことで、わざわざお店に足を運んでくださったお客さんと話をする機会も増え『ラフラフラフを助けたい、ここがなくなるのは嫌だから頑張ってほしい』という声をたくさんいただきました。こんなにも多くの方から応援されているんだということを、あらためて実感しました」

コロナがきっかけで、もともと飯田が持っていた「ママの力になりたい」という想いが、より一層明確になっていきました。

眠れるママたちのスキルを、ラフラフラフでもっと解き放ちたい

▲多くのママが自分のスキルに気づき、笑顔になれるように

コロナで大変なことは増えましたが、それが逆に良かったと飯田は話します。

飯田 「コロナ禍にママたちと直接触れ合う中で、自分の想いを再確認することができました。今はカフェとして場の提供をしたり、お弁当をつくって販売したりしていますが、それ以外にもママが本当に困っている部分を手助けしていけるようにしたいです。

またスタッフには常々『うちを踏み台にして活躍してほしい。やりたいことがあったらどんどんやってほしい』と伝えていますが、そこにもさらに力を入れていきたいですね」

給食弁当をきっかけに栄養士スタッフが活躍し、その姿を見た後輩たちが「自分たちもスキルを生かしてこんなことがしたい」と提案してくれるようになりました。それらのアイデアを、どんどん実現できるお店になりたいと飯田は話します。

飯田 「私は『潜在的プロフェッショナル』と呼んでいますが、多くのママが、自分の中に眠っているスキルに気づいていないと思うんです。出産し、社会的活動から離れたとしても、過去に学校で学んだり、会社で働いた経験をみんな持っています。それらを生かせないのは、ママにとっても社会にとっても大きな損失です。

だからママには、自分の持つ経験やスキルに気づき、再びイキイキ仕事をするようになってもらいたいですし、その場がないのであれば、一緒につくっていける存在になりたいです」

潜在的プロフェッショナルのママたちが再び輝ける世の中を目指して、飯田の挑戦はこれからも続きます。